『マキビ君・・・カズシは死んだ。

 もう―――ナデシコには帰ってはこないんだ。』



 静かな目で、僕を見詰めて―――シュンさんはそう言った。




 バシンッ!!



 コンソールに掌を叩きつけ・・・



    ダダダダダダダダ!!



 僕はオペレーター席から駆け出した。

 何から逃げ出したいのかも、理解出来ないままに・・・








君の名は


 







「何ですか、それは!?」



 ナデシコに戻ってから、俺達はすぐにマキビ君の元に行った。

 マキビ君が俺の隣に居るカ・・・もとい、
サングラスに黒のマントを羽織った大男に話しかける。



「・・・知らない方が良い」



「それに・・・シュンさんが死んだって・・・・!

 何で本当の事を言ってくれなかったんですか!?」



「教える必要が・・・無かったからだ」



 そして、しばしの沈黙が続く。

 ・・・ん、蝉の鳴き声か?

 オモイカネか、
にくい演出をしてくれるな。(ニヤリ)

 そして大男が無言で認識票を取り出す。



「ハーリー、君に受け取ってもらいたいものがある」



「!? 僕・・・そんな物貰えません!

 それはカズシさんが軍に居るかぎり必要な物じゃありませんか!」



「もう必要ないんだ・・・。

 君の知っているタカバ カズシは死んだ。

 彼の生きた証、受け取って欲しい」



「それ、かっこつけてますよ」



「違うんだよ、ハーリー・・・。


 イネスさんの薬で体が滅茶苦茶になっちゃってね」



 納得できる理由だ。

 皆も首を縦に振っている。

 ・・・イネスさんが不機嫌そうにしているが俺は関係ない。




 ゴオオオォォォォォォン・・・・・・



 オモイカネ、お前にも雅がわかるのか!?



「それからなんだよ・・・

 特に
がね、駄目なんだよ。

 感情が高ぶると、ボゥッと
伸びるのさ。

 漫画だろ?」



 漫画でもそんな物は無いと思うが・・・?



「もう・・・
君で遊んであげる事が出来ない」



 十分遊んでいるだろう?

 そんな突っ込みは心の中で留めて置く。



「・・・何で俺がおきてるんだ?

 意識不明なはずなのに」



「そんな事、作者の都合です。

 ところでアキトさん、このシーン、あの時に似ていませんか?」



「あ、そう言えばホウメイさんに呼ばれてたんだ。

 それじゃあルリちゃん、また後で」



「ふふ、アキトさん。

 もしかして元ネタは漫画ですか?

 後でお仕置きです!」














「何処に居るんですか、イネス女史!!」



 ブリッジの入り口・・・俺の耳元で大声が聞こえる。

 でも、今の俺にはどうでも良い事だ。



「あら、ナカザト君じゃない?

 一体どうしたの?




「どうしたのじゃないでしょう!

 いつになったら俺は元に戻れるんですか!?」




 ・・・ナカザト?

 それにこの声、どこかで聞いた覚えがあったような・・・。

 もしかして・・・。



「・・・お前、ナカザト ケイジか?」



「お。ジュンじゃないか?

 どうしたんだ、そんなくらい顔をして」



「お前には関係ないだろう。

 それより何の用事で来たんだ?」



「!! そうだったな。

 イネス女史、薬の方はどうなったんですか!?」



「それがね・・・ちょっとした事情で完成するのが遅くなっちゃったのよ」



「な!?

 どういう事ですか、ちゃんと
説めグベッ!」



 ・・・俺は瞬時の判断でナカザトの口を塞いだ。

 ヤバイ、間に合わなかったか!?



「説明・・・したい所だけど今回は無しよ。

 見てもらえばすぐにわかるわ。

 さ、入ってらっしゃい」



 そして入ってきた人は・・・・・それは。



「・・・・・チハヤ、だよな?」



「・・・はい」



 確かにチハヤだ・・・。


 頭にネコ耳がついている事を除けばだ。



「イネスさん、何でチハヤの耳があんな風になっているんですか?」



 チハヤが何故生きているのか?

 こんな細かい事をナデシコでは
考える必要は無い。

 それに説明を聞く余裕も無い。



「人が折角ダミー人形を持ってジャンプして宇宙空間で危険な作業までやったのに・・・。

 まぁ良いわ。


 薬の副作用よ」



「薬って・・・何の薬ですか?」




「デス・リミットよ」



 一瞬・・・そう、一瞬ブリッジの時間が止まった。



「薬は効果が大きくなると共に副作用の確率も上がってくるのよ。

 そしてこの薬の効果は第一段階として強制的な蘇生、

 副作用の第一段階として筋力が倍増して痛覚が無くなる。

 まあ、チハヤさんの場合は火傷が酷かったから痛覚が無くなる効果だけよ。

 そして最終段階として体の一部が動物のパワーが得られるのよ!」



「イネスさんそんな事聞いていないぞ!!」



「あら、ちゃんと説明したはずよ?

 ちなみにチハヤさんはネコ。

 ナカザト君は象。

 カズシさんは首が伸びると言っていたから・・・
麒麟ね」



「ところでナカザト、何でお前はそうなったんだ?」



「ちょっと金欠でな。

 良いバイトがあったから来てみたら・・・これだよ」




「ヌオオォォォォォ!!」



 俺がナカザトに小声で話していたらカズシ補佐官が急に唸り声を上げた。



「ウオオォォォォォォ!!!」





 ・・・見事なまでに首が伸びていた。













「ところでジュン、あの娘って誰なんだ?

 結構可愛いじゃねぇか」



 ナカザトがカズシ補佐官を無視して馬鹿みたいなにやけた顔で話しかけてくる。

 まあ・・・俺も心の中では似てるようなモノだ。



「俺の・・・好きな人だよ」




「そうか、そうだったのか。

 さっきの態度と良い、あの娘の気のかけ方といい・・・。


 許す訳にはいかん!

 ォォォォオオオオオオオ!!」




 なんだ、この光は!?





「ナカザト象 参・上!」





「・・・何やってるんだ、ナカザト?」



「違う、私はナカザト像であってナカザトと言う男ではない!

 アオイ ジュン、貴様をこのまま野放しにしておくわけにはいかん!!

 言っておくが、決してジュンに彼女が出来たとかじゃないぞ」



 そんなこと一々言っていたらキリが無いぞ。




  ポン



「ナカザト象、お前と会ったのも何かの縁だ。

 俺も加勢する」



 俺の右肩を抑えながらナカザトに話をする

 ち、逃げ道が!




  ポン



「ジュン、そろそろ祭りの時間だ。

 え、何の祭りか、だって?

 決まってるだろ、
お前の血祭りだよ!」



 完全に・・・逃げ道が無くなった・・・・・。

 ヤバイ、この眼は・・・マジだ!




「行くぞ、タカバ麒麟!!」



「おう、ナカザト象!!」




「「必イイイィィィ殺アアァァァツゥ!

 コンビネエェショォン・クラアァァッシュゥゥゥゥ!!」」




 ・・・父さん、母さん、人間って空を飛べるんだね。

 俺、何で鳥が空を飛ぶかわかった気がするよ。

 だって、こんなに空がきれいなんだ。

 翼があれば誰だって飛びたくなるよね。





 ・・・・・あれ、
ゴートさん?





「野郎ども、ユダを格納庫に連れて行け!」



『イー!』



「ユダよ、血祭りはまだまだこれからだぜ!」




















 あとがき

あ〜、調子に乗ってこんな物を〜!!

言っておくけど、これはBEN波の所為だからね。(大汗)

ちなみに、こんな作品が頭の中にまだ沢山あります。

・・・と、なるとライザの分も書かなきゃだめかな?(笑)

もうすぐ卒業考査なのにこんな事やってていいのか、俺!!!