Gemini時ナデ編

   くぃーん・おぶ・だーくねす  

   序章 第四話 王子様と女王様の戦い




 統合軍が集結を終えたのは、エヴァがマモルの自宅を訪れた四日後のことであった。
 集結地はヨコスカベイ。集結した艦艇数は、当初の予定を大幅に上回る七十二隻に及んだ。
 西欧方面軍が二十隻を提供すると宣言したことによって、各方面軍がそれに対抗するように多く艦艇を供出した結果である。
 戦時中でもそうお目にかかれない規模の艦隊がそこにはあった。
 その艦隊の一角を担うナデシコとシャクヤクもヨコスカベイに寄航していた。
 ヨコスカベイで補給と作戦の確認をした後、秩父方面への展開を開始することになっている。
 そのナデシコのモニターに陣頭指揮を執るミスマル・コウイチロウの姿が映し出されていた。
 ブリッジクルーが集まる中、シャクヤクからナデシコとの連携確認のため訪れていた千沙と北斗も一緒にコウイチロウの話を聞いていた。
 コウイチロウは、自らが持ち込んだデータを元に話を進めている。
 コウイチロウが映っているウィンドウの端に、連合軍の制服を纏ったマモルの写真が映し出されている。

『今回の作戦目的は反統合政府組織の首魁を逮捕あるいは抹殺することである』

 コウイチロウは写真を指差す。

『この人物。アマヤマ・マモル元連合軍中将が、反統合政府組織の首魁と見られており、強大な組織を構築し、統合政府に対して戦争を仕掛けて来るとの情報があり、我々は先手を打って討伐することを決定した』

「アマヤマ閣下を討伐だと!?」

 シュンが思わず声を上げた。

「どうしたんですか? シュンさん」

 ユリカがシュンに訊く。

「アマヤマ中将といえば、連合軍内部でも絶大な支持を集める将校の一人で、先の戦争では、連合軍全体の崩壊を食い止めたといわれるほどの人物だ。その人物を討伐などすれば……」

 それは、容易に先が予想できることだった。

『無論、アマヤマ中将ほどの影響力を持つ方の逮捕には、多少の反感が出て来るであろう事は覚悟の上のことである……』

 コウイチロウの話を聞きながら、シュンは、マモルのことを語る。

「アマヤマ元中将は、独自の戦力を保有していると言われている。特に直属の部下『ケルベロス』は、表にこそ出てこなかったが、戦闘において右に出るものがいないといわれたほどの実力者だ……ただではすまないぞ」

 暗い顔のシュンの一方で、コウイチロウの話は続いている。

『しかし我々は、やらねばならない。地球圏の恒久平和のために』

 それは、言葉の上ではこの上ない理想であろう。しかし現実はどうであろうか。ただ、マモルの生活を幸福を破壊するだけではないのか。

『秩父に到着次第、降伏勧告を出し、従わない場合は、周囲一帯に対して空爆を含む一斉攻撃を行う』

 幾ら手強いとはいえ、個人であるマモルにここまでの攻撃を加えるのは、それだけマモルを恐れているということに他ならなかった。

『作戦の説明は以上だ』

 そういうとコウイチロウは通信を切った。
 通信が終わるとシュンは途端に頭を抱える。

「裏があるとは思っていたが……まさか、アマヤマ元中将が敵だとは……」

「その人が敵だと、何か問題があるんですか?」

 ユリカが、シュンに訊く。

「アマヤマ元中将は、戦争末期に『鬼の守銭奴』と呼ばれた管理局局長だったんだが……それ以前、戦争初期から中期にかけては、『姿なき死神』と呼ばれ、味方にも恐れられた兵士でもあったんだ」

「凄い人ねぇ」

 ミナトが暢気にそう言ったが、シュンの表情は険しかった。

「言っておくが、その実力は、アキトが出てくるまで軍内部じゃ並ぶ者無し、連合軍最強の女って言われてたほどだったんだ……何しろ、たった一人で半年間南米の前線になったアマゾンを死守してたんだからな」

「たった一人で!?」

 真っ先にその壮絶さに驚いたのは、千沙であった。
 パイロットでもある彼女には、その凄さがすぐに伝わった。

「そうだ。それも白兵戦でジョロやバッタを相手に半年間戦ってたんだ」

 流石にそう言われれば、マモルの強さも分かる。
 下手をすればアキト並の強さを持っているということになる。
 そんな真似ができる兵士が、いったいどれほどいるというのか。

「個人の実力、組織の統率力、資金や物資の管理まで、アマヤマ元中将に並ぶものなんて、そうはいない。しかも、アマヤマ元中将は、ナデシコと対等に戦えると言われる戦闘集団を保有してるといわれている」

「ほう、面白いではないか」

 北斗が、面白そうに笑う。
 しかし、今のシュンにそれを頼もしいと思える余裕は無かった。
 ある意味において、マモルは、アキトや北斗以上に恐ろしい。それがシュンの考えだった。

「面白いで済めばいいがな……」

 シュンは最悪の状況を早くも考えていた。
 マモルが本気で戦争を仕掛けてくるという、最悪の想像を。



 四日の間に、マモル達は戦う準備を粗方終えていた。
 機動兵器の調整から、物資の搬入、戦闘シミュレーションに至るまで。準備の大半は、既に終了し、更に、民間人の避難を現在は行っていた。
 マモルの住む地域で不発弾が発見されたため、調査と処理のため、数日間避難するように、という嘘の警報を出し、現在この地域には誰もいない状況になっている。
 戦う準備は、殆ど終わっているといっていい状況だった。
 ソメイヨシノのある格納庫にビニールシートを広げて、マモル達は、昼食をとっていた。
 エヴァは、情報操作のために席をはずしているため、マモル、アキト、マリの三人だけである。

「タケミカヅチはどう?」

 マモルが、おにぎりを口にしながら聞いた。

「悪くない。ブローディア程ではないけれど、あれなら十分戦えるよ。まぁ……PTBのオーバーヒートが問題といえば問題かな。チャージに時間が掛かる上に冷却に更に時間が掛かるのは……」

「一戦場で一回が限度なのは、仕方ないことよ。スサノオならそんなことは無いんだけど……元々タケミカヅチ専用の装備ではないから、不具合は出るわ」

「まぁ、それでも十分すぎるけどね。統合軍を相手にするには」

「頼りにしてるわ」

 マモルは、そういって微笑むと、アキトの顔に手を伸ばした。
 アキトは、その動きに首を傾げる。
 マモルは、そのまま手を伸ばし、アキトの頬に付いていたご飯粒をとる。

「お弁当付いてたよ」

 そのまま取ったご飯粒を自分の口の中に入れた。
 その何ともいえない可愛らしさに、アキトの顔が赤くなる。

「あ、ありがとう」

「どういたしまして。あなた」

 そう言ってもう一度笑うと、マモルはマリの世話を始めた。
 アキトは、この上ない幸福を感じていた。
 少なくとも、今は。



 ヤガミ・ナオは、ナデシコからの帰還命令を受けて、ナデシコへ帰還する途中であった。
 散々振り回された挙句の帰還命令である。
 ナオとしては、結構きついものがある。

「やっと帰れる……いったいなんだったんだろうな、俺の捜索は……」

 ナオの心は寒かった。



 出撃準備が慌しく行われる中、ナデシコのルリは、今回の作戦目標であるアマヤマ・マモルについて調べていた。
 シュンの説明に引っかかるものを感じたためでもあるが、アキト捜索の交換条件として討伐しなければならない相手である。調べておきたいと思うのは、当然の考えだったのかもしれない。
 もっとも、某同盟の他の面々は気にもしていないようであったが。

「アマヤマ・マモル連合軍退役中将……年齢は……アキトさんと同じ歳……2194年連合軍南米方面軍に二等兵として入隊……二等兵?」

 中将で退役したというのに、二等兵?
 しかも、アキトと同じ歳で……。
 ルリは、早くも薄ら寒いものを感じていた。

「南米方面軍アマゾン防衛線に配属されるも二週間で所属部隊が壊滅、以後半年間、ほぼ独力で戦線を維持。防衛任務を全うする。通算戦果は……ジョロ・バッタを合わせて約一千体……!? なにこの戦果……まるで……」

 ルリは、思わず口にしそうになったことを飲み込んだ。
 非科学的ではあるが、口にして本当にそうなったら困る。

「その後、アフリカ、中東、南極などを転戦し戦果を挙げ続ける……付けられた異名は『姿なき死神』……歩兵の後、様々な兵種に配置換えされるも機動兵器及び戦艦を含む教導部隊の教官としての従軍を最後に、後方勤務へ転属。各部署を転々とし管理局副局長に就任。内部告発による局長更迭に伴い局長に就任し中将に昇進する……たった数年で二等兵から中将……」

 冗談のような出世。有り得ないほどの昇進。
 本当に、何者だというのだろうか。

「管理局時代、組織を刷新し立て直しを図った上で、独自の情報組織を設立……管理局局長として手腕を発揮するも……軍を追われる形で退役」

 そして、現在に至る。
 本当に、よく分からない経歴の持ち主である。

「でも、どういうこと? 2194年より前の経歴が一つも見つからない……まるで、そこからこの世界に現れたような……」

 そこでルリはハッとした。一つの可能性が、頭をよぎった。

「まさか……逆行者……? でも、いったい誰が……」

 この世界に一緒に逆行してきそうな人物は、既にこのナデシコに集結している。サブロウタは、ナデシコにはいないが、存在は確認されている。
 他にいるとは考えにくい。だが、しかし……。

「確かめないと、いけないかもしれませんね……」

 アマヤマ・マモルが、何者であるのか、調べなくてはならない。
 敵か味方かも含めて。



 統合軍のマモルの討伐作戦は、マモルがその準備を始めた五日後になってようやく開始された。
 これは、マモルとエヴァの情報操作によるものと、各方面軍が見栄のために無理をして多くの艦艇を出そうとした結果によるものであった。
 しかし、作戦発動からは流石に早く、マモルの住む地域は、あっという間に包囲された。
 幸いであったのは、民家のある部分から少し外れた部分に統合軍が展開したことであろう。これは、エヴァの手腕によるところが大きい。
 マモルの部下の中でも、エヴァの諜報戦能力は突出している。この程度のことなら朝飯前なのだった。
 討伐艦隊の総旗艦であり、自身の艦である『トビウメ』の艦橋で眼下の光景を見ながら、コウイチロウは、マイクを持って全周囲放送を流し始める。

「我々は、統合軍反統合政府組織討伐艦隊である。アマヤマ元連合軍中将に勧告する、直ちに降伏されよ。さもなくば攻撃する。これは、脅しではない」

 この放送は、あくまでも形式上のものであった。
 大義名分を得るための、形式上の警告。
 だから、返答は期待していなかった。返答が来るとは考えていなかった。
 だが、その予想に反して、返答が入る。
 その場に展開している、全ての戦艦に。
 ウィンドウにマモルの顔が映し出され、返答の言葉が語られる。

『私は、元連合軍中将、アマヤマ・マモルである。ただの一般人に対して、この仕打ちはいったいどういう了見であるか、お聞きしたい』

 返答が来ると思っていなかったコウイチロウは、一瞬動揺したが、さすがに優秀な軍人だけあって、すぐに持ち直す。

「貴方に反統合政府的活動を行っている嫌疑がかけられております」

『事実無根だ。証拠はあるのか?』

「既に元管理局局員から証言は得ております」

『それは証拠にはなるまい』

「軍高官を裁くのに、物的証拠が必要でしたかな?」

『言うようになったな、ミスマル……事情は了解した。だが、私は降伏しない。最後まで戦う……それが、私の答えよ!』

 マモルがそう言うのと同時に、地上から幾つかの線が延び、何隻かの戦艦を貫き、その内の四隻が大破、地上に落着した。

「なんだ! 何があった!?」

「地上からの攻撃です! 光学兵器や重力兵器ではありません! 物理兵器です!」

「なにぃっ!?」

『これは挨拶代わりよ、ミスマル……。悪いけど、今回ばかりは本気で行かせてもらうわ……』

 そこで通信は切れた。
 一瞬の静寂。しかしそれは、嵐の前の静けさであった。

「前方にボース粒子反応!」

「なんだと!?」

 艦隊前方にボソンの光に包まれた何かが現れる。

「全長六メートル。幅十メートル……機動兵器です!」

「馬鹿な! 全長六メートルの機動兵器が、単独ジャンプなどと……!」

 コウイチロウが声を荒げるが、事実として、紅く塗装された機動兵器がそこに現れた。
 マモル専用の電子戦特化型機動兵器『カグツチ』。
 その姿は、まるで死神のようであった。そして、事実、死神がそこには乗っていた。
 『姿無き死神』の異名を持つアマヤマ・マモルが、そこにいた。



 マモルはカグツチのコックピットで、統合軍の討伐艦隊を見据えていた。
 アキトが下方から攻撃を加え、四隻が戦闘不能になっているため、残りは六十八隻。
 対してこちらは、機動兵器二機に戦艦が一隻。戦力的には、大きく劣っている。
 果たして、どこまで戦えるものか。
 マモルは、こんな不利な状況下であるというのに、口角が上がるのを抑えることができなかった。
 面白い。楽しい。嬉しい……全力で戦える。
 どれくらいぶりであろうか、自身が全力を出して戦おうとするのは。
 アマゾンの時は、装備が不十分で、全力は出したが、満足はできなかった。
 それ以降、何度も戦場には出たが、満足には遠く及ばなかった。
 今回はどうだろう。カグツチがあるとはいえ、十分な装備ではない。
 カグツチの本来の性能を出し切るためには、やはり追加装備であるヤタガラスが必要である。
 無いものねだりをしても仕方がないが、十分とは言えない。
 もっと時間があれば、もっと楽しめただろうに。
 それだけに、嬉しい反面、怒りもある。もとよりするつもりなどないが、手心を加えることは、できそうになかった。

「それじゃあ、まずは御挨拶といきましょうか……」

 マモルの呟きに応えるように、カグツチの肩に付けられたミサイルポッドから、左右四発ずつミサイルが発射される。

「遠隔イメージ伝達。目標、敵前衛八隻の機関部!」

 発射されたミサイルがボソンの光を発して消える。
 そして次の瞬間、艦隊の前衛にいた八隻の戦艦の機関部が爆発した。
 戦闘不能になるほどではなかったが、敵の士気を挫くという点では、十分な効果を発揮した。
 マモルが放ったミサイルは、言ってしまえばボソン砲のようなものである。それも遠隔操作可能、複数同時使用可能、内部へのピンポイント攻撃可能という、凶悪極まりない兵器であった。
 威力こそ高くないが不可避にしてピンポイント攻撃可能。それは、戦艦という逃げ場のない空間で戦わねばならない兵士にとって、脅威以外の何ものでもなかった。
 もっとも、この攻撃に関しては、カグツチだけが使用可能であり、且つ開発中の試作品であるため、先程放った八発しか存在しない。
 しかし、艦隊側は、そんな情報は知らない。故に、脅しとしては、十分な効果を発揮した。

「まずは軽い御挨拶。本気で掛かってきて頂戴ね……そうじゃないとつまらないから」

 マモルは、艶かしく唇を舐めた。
 そこには、母でもなく女でもなく、ただ戦いを求める獣がいた。



 マモルが戦闘を始めたのをアキトは地上から見上げていた。
 敵艦隊が機動兵器を出して、マモルのカグツチを追っている。
 数十機の機動兵器を相手に、マモルはほぼ全ての攻撃を避け、一機ずつ丁寧に落としていく。
 わざと丁寧にやっているように見る。わざと、自分に攻撃が集中するように動いているように見える。
 予定通りに。
 敵の攻撃をことごとくよけるその姿は、あるいは天女が舞を舞っているようにすら見えた。
 だが、それは死の舞踏であった。美しいその姿に引き寄せられたものたちは、魂を抜き取られるように倒される。
 差し詰め、セイレーンのようであった。
 マモルの動きに、アキトは感心しつつも、口元に笑みを浮かべていた。
 その動きは予想以上だった。
 戦艦も含めてカグツチに向かって集まりつつある艦隊。全ては、マモルの想定通りに進んでいる。
 ただ一つの想定外を覗けばだが。
 アキトは、ナデシコと並んで、艦隊から少し離れた場所で事の推移を見守っているシャクヤクに視線を向ける。
 シャクヤクがこの戦場にいることは、マモルにとってもアキトにとっても想定外のことであった。
 北斗が出てきたら、マモルの立てた作戦が崩れかねない。
 アキトとしては、そんな事態は、なんとしてでも避けたかった。
 しかし、まだ出てきていないものを警戒して動かないのでは、それこそ作戦に支障をきたす。
 注意しつつも自分の役割をこなすことに集中せねばならなかった。
 アキトは、意を決すると、カグツチに向かって移動を始めた。
 駄目押しで、敵をもう少し引きつけるために。



 討伐艦隊は、前方に現れた紅い機動兵器を追って、密集しつつあった。
 数百に及ぶ機動兵器を出撃させながらも、未だに仕留められず、艦砲射撃まで行っているというのに、傷一つつけられていない。
 更にそこに、もう一機、継ぎ接ぎされたような機体まで現われたことで、討伐艦隊は、いよいよ一箇所に密集しつつあった。
 もし、敵が少数であると侮っていなければ、あるいは、もう少し冷静であったならば、このような艦隊運動などしなかっただろう。

「艦同士の距離が近すぎます。もう少し距離を置かなければ、接触の危険性が……」

 オペレーターの一人が、コウイチロウに進言した。

「ぬぅ……。眼前の敵に惑わされたか……各艦後退しつつ、艦同士の距離をとれ!」

 そう言った矢先であった。

「艦隊後方にボース粒子反応!」

「なにっ!?」

「質量推定……全長三百メートル、全幅百五十メートル、戦艦クラスです!」

 艦橋のモニターには、後方に現われた戦艦の姿が映し出されていた。
 見るものが見れば、それが、ユーチャリスに似ていたことに気づいただろう。
 ユーチャリスに似たその戦艦は、ソメイヨシノ。マモルの所有する戦艦である。

「アマヤマめ、戦艦まで隠し持っていたか!」

「正体不明艦に重力波反応! グラビティブラストです!」 

「いかん!」

「直撃来ます!」

 次の瞬間、艦隊は重力波に包まれた。



 突然現われた戦艦の姿をナデシコに乗っているマシンチャイルドの三人も見ていた。

「ルリさん、あれは……」

 ハーリーが、遠慮がちにルリに声をかける。
 それに対して、ルリからの返答はなかった。
 ルリは、独り言のような言葉をただ呟いていた。

「そんな、まさか……なんでユーチャリスが……まさか、アキトさんがいなくなったことと、何か関係があるんじゃ……」

 それは、的を得ているようで的を外した考えであった。

「ユーチャ……正体不明艦ブラビティブラストを発射、討伐艦隊に被害多数。大破二十五、中破十二、小破十五……」

 ラピスが淡々と報告する。
 しかし、心なしか、その口調は固かった。



 グラビティブラストが発射される瞬間、マモルとアキトは、ボソンジャンプでソメイヨシノの上空まで移動していた。
 敵艦隊の半数近くが戦闘不能に陥っている。
 その結果に、ひとまずマモルは満足そうであった。
 集結した三人は、盗聴対策として有線での通信で話している。

「まずは、予想通り……ここからね、本当の戦いは」

『連中も本気になるだろうし、もう隠し玉はないからな……それに、シャクヤクも、そろそろ動き出すだろうしな』

「北斗か……厄介なことね」

 マモルは溜息を吐いた。

「でも、やるしかないでしょう。マリ、予定通り、敵艦隊の混乱に乗じて敵艦隊のシステムを制圧して」

『わかった』

「アキトさん、悪いけど、シャクヤクとナデシコをしばらく足止めしてくれる? 少しの間でいいの、その間にシャクヤクとナデシコのシステムを私が制圧するから」

『何とかしよう』

「頼むわね」

 マモルは、指の骨を鳴らし、本気の一歩手前ほどまで気合を入れる。

「やるわよ……!」

 こうなるまでの生活が心地よかったのは、アキトだけではない。
 アキトが来てからのここでの生活は、マモルにとっても心地よいものであった。
 だから、それを壊すものには容赦しない。それが、マモルの決意だった。



 シャクヤクでは、北斗が発進準備に入っていた。
 他の優華部隊の面々も出撃準備をしてはいるが、準備が整っていない。
 軍艦ではあるが、今回の出撃に関しては、軍人とはいえ一人の人間を討伐するという話であったし、その軍人はアキトではないという話であった。
 幾ら強い軍人でも、アキトでないのならば、自分達が出撃する機会はないだろうと考えていたのだ。
 一時的に艦を預かっている千沙の不手際といえないこともないが、誰も予想できなかった事態でもあった。
 発進準備に入っている北斗とて、十分な準備ができているわけではない。
 不十分な準備であるのはマモル達も同じであったが、討伐艦隊側にいるシャクヤクは、その比ではなかった。
 いささか、目の前のアキト捜索に気を囚われすぎていた。今となっては悔やまれる。

「……ダリア、北斗出るぞ!」

 真紅の羅刹が出撃する。
 期せずして、漆黒の戦神と戦うために。



 ソメイヨシノの艦橋には、現在マリとエヴァの二人だけがいる。
 エヴァは、護衛として乗り込んでいるが、エヴァはエヴァでやることがあるらしく、装具の点検をしている。
 エヴァは、マリと仲が悪いわけではない。寧ろ仲は良い方だが、エヴァはあくまでもマモルの部下である。
 マモルのために動いている時は、マリに構うことはあまりない。
 そして、マリも、エヴァと仲が悪いわけではなかったが、マリにとっては、マモルが全てであり、マモルのために何かするときは、他の誰の介入も許さなかった。
 マリには今、アキトという父の存在もあるが、それでも優先すべきは、あくまでもマモルであった。
 ある意味で似たもの同士。それ故、ソメイヨシノの艦橋は、静かであった。
 マリは、自身専用に作られた座席に座り、IFS端末からソメイヨシノのシステムを利用し、敵艦隊にクラッキングを仕掛けている。
 素質や能力の上では、マリは、ルリさえも凌駕する。
 だが、実戦経験という点では、ルリ達に遠く及ばない。
 表情には出さないが、マリは内心焦っていた。
 うまくやるんだという思いが先行し、焦りが心を満たしていた。
 そして、心を満たしていたのは、焦りばかりではなかった。
 ある種の憎悪。ある意味における純粋な憎悪。

(許さない……お母さんとの生活を邪魔をする奴等は、誰一人許さない……!)

 マリにとってはマモルが全て。今はアキトもいるが、マリの世界にいる人間は極僅かである。
 それでも、その極僅かな人だけしかいない世界でも、マリにとっては、大切な世界であった。
 だから、それを壊そうとするものに憎悪した。
 それが、幼いマリの、己の心を守るための自己防衛手段だった。



 アキトは、シャクヤクから、ダリヤが出撃してきたのをすぐに察した。
 それは、アキトが北斗との戦いに専念せねばならないことを示しており、実質的に一人分戦力が減ることを意味していた。
 それでも、放置するわけにはいかない。
 アキトが今乗るタケミカヅチでどこまで戦えるものか、正直自信はなかったが、やるしかなかった。
 タケミカヅチは良い機体であり、アキトの好みにも合致する。小型相転移エンジンを搭載している点でも、ダリヤに引けは取らないが、兵装には不安があった。
 マモルの話では、元々タケミカヅチは、単独ボソンジャンプの実験機であったものに、試作兵器であったPTBを搭載した機体であり、ブローディアほど実戦向きではない。
 ブラックサレナよりかは、機体としての性能は上であろうが、北斗を相手にするには、不安が大きかった。

「それでも、やらなくちゃ……マモルを守るって決めたんだから……無茶な戦いになるけど付き合ってくれよ、タケミカヅチ……」

『了解』

『死力を尽くします』

「死力を尽くすか……随分と人間くさいな、タケミカヅチ」

『そうあるように、マイマスターマモルから命令されましたので』

「そうか……」

『お気に召しませんでしたか?』

「いや、そんなことはないよ」

 アキトは苦笑する。
 そして、表情を厳しいものにして、迫ってくるダリヤを見る。

「いくぞタケミカヅチ。俺達の戦いを始めよう」

『了解。マイマスター……アキト』

 漆黒の戦神は行く。真紅の羅刹と戦うために。
 愛するものを守るために。



 マモルは、己の作業に取り掛かる前に準備をしていた。
 無論、その間に機体の動きをとめるようなことはしない。
 迫ってくる機動兵器をいなしながら、上半身の服を脱ぎ、上半身を下着だけにする。マモルの背中には、光り輝く紋章のようなものが浮かび上がっている。
 さらに首の後ろ側と鎖骨の間の窪み、鳩尾辺りから何本ものコードを伸ばし、座席やコックピットの各所に接続する。
 両手には、コードの繋がった黒い手袋を嵌め、座席の左右から、二つのキーボードを出してきて、座席前方にセットする。

「できるだけ100%の力は出したくはないんだけど……ルリちゃん達相手じゃ、そうも言ってられないかもしれないからね……」

 出し惜しみをするわけではない。全力は出す。100%の力を最初から出せるなら、それに越したことはない。
 しかし、今のマモルの体では、マモルの100%にどれ程もってくれるものか、怪しいところであった。
 出来得ることなら、60%から70%の力で押し切りたいところであった。多くても80%以内には抑えたい。

「理屈の上では、三割でルリちゃん達三人とタメの筈なんだけど……そればかりに集中できる状況でもないしねぇ」

 もし用意できうる最高の装備で、ルリ達三人と戦うことができていたら、この上ない実戦データの収集になったであろうに。

「世の中、ままならないものだわ……これまでの人生、ままならないことしかなかったけれど」

 それでもマモルは、面白そうに笑う。
 ことごとく、奪われ、壊されるばかりの人生。得るものは少なく、得たものも得た以上のものも失われる。奪われる。
 『この世界』のアキトの人生などまだましな分類に入るだろう。ともすれば、とりあえずはまともな結末を迎えることができる人生だ。マモル自身の人生に比べれば。
 僅かに得た、幸福ともいえるささやかな余生さえ、今、こうして壊されている。この戦いが終わったからといって、完全には元には戻らない。秩父にいることもできなくなるだろう。
 マリとアキトとの生活をもう一度はじめることはできるかもしれない。でもそれは、元通りの生活ではないし、この戦いに勝ったからといって、すぐに取り戻せるものでもない。状況がそれを許さない。
 もはや、幸福な余生は終わったのだ。これから待つのは、どう転んでも、過酷で長い戦いの連続であろう。その間に僅かばかりの幸福を見出すしかない。

「……それでも、マリを残して死ぬわけにも、マリを死なせるわけにもいかない以上、戦うしかないじゃない……せめて、あの子が一人で生きていけるくらいの歳になるまでは……」

 マモルは、軽く目を閉じて、開いた。瞳が金色に変わり、全身を光の筋が走る。

「さて……じゃあ、はじめましょうか。まずは、邪魔な機動兵器共を排除するとしましょうか……ネットワークシステムオープン、首部コネクタ起動……敵性機動兵器数算定……」

『ネットワークシステムオープン、ネットワーク接続』

『首部コネクタ起動、同調率79.68%、使用率19.22%』

『敵性機動兵器数算定開始……完了……』

『敵性機動兵器数、出撃中572機、待機中221機』

 次々にモニターが表示される。
 マモルは、それを元に、行動を開始する。

「待機中を含む全敵性機動兵器のシステムに接続。プログラム『mistake』を起動」

 表面上、マモルに変化はない。しかし、首から伸びたコード、それを含む首部コネクタを通し、マモルは、脳で考えたことを直接カグツチに伝え、システムを操る。
 このコネクタは、一種のIFSのようなものだが、IFSよりもその伝達率や処理能力で、大きく上回る。ただし、脳に直接接続することになるため、そのリスクもIFSの比ではない。
 マモルか機械化した脳でなければ、一瞬にして脳が焼けるか、爆発してしまうことだろう。
 そういった意味で、マモルは、脳から一般の人間から逸脱していた。

『敵性機動兵器全機のシステムに接続完了』

「いい子ね、カグツチ。ヤタガラスがなくても、なかなか早いじゃない」

 マモルは、ニヤリと笑った。
 この状態を維持できるわけではないが、出だしとしては、悪くない。

「プログラム『mistake』を注入開始、ダミーは、1に対してランダムに20から40」

『了解、プログラム『mistake』注入を開始します』

『ダミー数20・40』

「さぁて、お手並み拝見といきますか……それなりに楽しませてね、ルリちゃん、ラピス」

 戦いの中にあって、マモルは、楽しんでいた。
 ルリ達と戦う機会など、これから先そうそうあるものでもないだろう。ならば、楽しまなければ、損というものだ。
 折角、彼女たちと戦える力があるのだから。



 周囲の状況を把握しているルリがナデシコで一番にその異変を察した。

「これは……」

「どうしたの?ルリちゃん」

 ユリカが、ルリの呟きを耳にして聞き返した。

「討伐艦隊の機動兵器で同士討ちが起こっています。見当違いの方向に撃つ機動兵器も確認できます」

「ど、どういうこと?」

 ブリッジが騒然とする。
 敵は、一隻の戦艦と二機の機動兵器しかないというのに、何で同士討ちなど起きるのか。
 今同士討ちなど、利敵行為でしかないというのに。

「討伐艦隊側の機動兵器のシステムにウィルスのようなものが注入された痕跡があります。それかもしれません」

「ウィルス?」

「詳しくは調べてみなければ分かりませんが……センサーやモニターなどが正常に動いていない可能性が高いとおもいます」

「……ルリちゃん、調べてみてくれる?」

「わかりました」

 そう答えながらも、ルリは不安を感じていた。
 相手の意図に嵌っているのではないかという不安を。



 カグツチの中で、マモルは笑っていた。
 自分の意図した通りに事が運んでいる。

「掛かったわね、ルリちゃん……カグツチ、一気にシャクヤクとナデシコのシステムを制圧するわよ! 胸部コネクタ起動! システム接続開始! 『mistake』管理割合を20%に下げて!」

『胸部コネクタ起動、同調率72.77%、使用率24.92%』

『シャクヤクのシステムと接続』

『ナデシコのシステムと接続』

『『mistake』管理割合を20%まで下げます』

『『mistake』管理割合現在20.52%』

「ルリちゃんが『mistake』解析を行っている間に、ナデシコの防壁を突破する!」

『了解』

 マモルの胸部コネクタを通じてオモイカネへの攻撃が始まった。
 意外と言おうか、必然と言おうか、マモルがナデシコへの攻撃を行うのは、これがはじめてであった。
 これは一つの決別であり、覚悟であった。
 マモルにとっての、ケジメでもあったのかもしれない。



 その頃、トビウメでは、艦隊全体に起きている異変に対応できずにいた。
 トビウメの中は、クルー達の悲鳴にも似た声で埋め尽くされている。

「味方が同士討ちを始めています! でたらめな射撃をするものも……!」

「何だ、何が起こっている!?」

 流石のコウイチロウもこの事態には慌てた。

「分かりません! 原因不明です!」

 この時点で、トビウメのクルーが、その原因を突き止められなかったのは無理からぬことだ。
 マシンチャイルドであるルリでようやく見つけられる程度の異変が原因なのだから。
 トビウメのクルー達に罪はあるまい。
 そして、次に起こる事態も、彼等では対処の仕様のないことであった。

「システムに異常発生!」

「今度は何だ!?」

「クラッキングです! 外部からシステムに侵入を受けています!」

「対処しろ!」

「無理です! あまりにも侵食スピードが速すぎます!」

 クルーの返答にコウイチロウは愕然となった。
 対処できない、どんな事態になっているかも分からない、どこからどういう風に攻撃されているのかさえ分からない。
 それではまるで……。

「『姿無き死神』……」

 思わずつぶやいたその言葉は、まさしくその事態に直面するクルー達の心情を表していた。



 ナデシコは、この事態にどうするべきか決めあぐねていた。
 正体不明艦を撃沈すべきなのかもしれないが、正体不明艦に背を向けている今、反撃しようにも、下手な回頭をすれば、狙い撃ちされる可能性が高かった。
 それに正体不明艦は、ディストーションフィールドを張っている。大気中にある今、グラビティブラストが有効に敵に効くか、怪しいところでもあった。
 正体不明艦のグラビティブラストが有効に作用したのは、統合軍の軍艦のディストーションフィールドの強度の問題と、正体不明艦のグラビティーブラストの威力にもあったが、それ以上に密集した状態から加えられた強い衝撃によって、数隻の爆発に巻き込まれる形での遊爆や艦同士の衝突によるところが大きい。
 つまるところ、正体不明艦には下手に手を出せなかった。
 かといって、機動兵器は、正体不明のプログラムによって出撃自体が怪しくなっている。
 打つ手なしであった。

「討伐艦隊に異変! システムに何者かの進入を受けているようです!」

 ハーリーの報告にブリッジは再び騒然となる。

「システムが制圧されたの?」

「いえ、まだ侵入されただけのようですけど……時間の問題です。かなり手際が良いですから」

 ルリの問いにそう答えるとハーリーは、艦長であるユリカを見た。
 見られたユリカとしては、指示を出さないわけにはいかない。

「……ハーリー君、侵入と制圧を何とか食い止めてくれる? その間に対処を考えるから」

「……了解です」

 正直、ハーリーに食い止められる自信はなかった。
 それほどまでに侵入者の手際は見事であり、まるでルリの手際を見ているようであった。

「まって……!」

 早速動き出そうとしたところで、ラピスが声を上げた。

「ど、どうしたの?」

 ユリカが、ラピスに訊ねる。ラピスの顔が、珍しく緊迫したものになっていた。

「オモイカネに進入された……! 防壁を突破されて、システム中枢に向かってる!」

「なんだと!?」

 流石のシュンも慌てる。オモイカネに進入など、考えたこともなかった。
 それだけに、改めて、アマヤマ・マモルという人物を敵に回したことへの後悔がシュンの中に駆け巡る。

「機動兵器のウィルスは後回しにします! ラピス、敵の侵入を食い止めます、手伝って! ハーリー君は、艦隊のシステムに侵入している者の対処を!」

「「了解!」」

 マシンチャイルド三人が全力になって対処を始めた。
 それは、この戦いにおいて、どれほど追い込まれているのかを、端的に示していた。



 カグツチのマモルは、始まった抵抗に面白そうにしていた。
 こうでなくては、戦っても面白くない。そう思っているのが表情にさえ見て取れた。

「オモイカネへの侵入路は開いた……システム制圧は、手動入力といきますか……システム切り替え、胸部コネクタを対マシンチャイルドに限定、オモイカネ制圧を右側キーボードに移行」

『了解』

『胸部コネクタ切り替え』

『右側キーボードアナログ入力開始』

「さ〜て……オモイカネ、アンタ何分対抗できる?」

 面白そうに言うと、マモルは、右手を目にも留まらないような速さで動かし始めた。
 正確に、迅速に、キーボードが叩かれる。
 それは見るものが見れば分かっただろう。オモイカネのシステムを制圧するためのプログラムを打ち込んでいるということが。

「オモイカネもルリちゃん達も想定内、問題は……あっちよね」

 マモルは、チラリとモニターに映るタケミカヅチとダリアの戦いを見た。
 明らかにタケミカヅチが押されている。流石に、タケミカヅチでダリアの相手は辛かったようだ。
 北斗との戦いでは、PTBもES−03弾頭も使えない。
 使い方にもよるだろうが、単純な範囲兵器など北斗には通用しまい。
 だからこそ、現段階でアキトはまだPTBを使用していない。
 だが、それでは、タケミカヅチの戦力は半減する。
 良くも悪くもタケミカヅチは戦術級兵器なのであった。

「仕方ないなぁ……嫌がるかもしれないけど、手伝ってあげるか……」

 そう言って肩を竦めつつもマモルは楽しそうだった。
 まだまだ余裕はある。
 マモルは一つ、舌なめずりをした。



 ダリアとタケミカヅチの戦いは、タケミカヅチが防戦を強いられる展開になっていた。
 乗りなれていない機体、北斗との戦いには不向きな兵装は、アキトは予想以上の苦戦を強いられていた。
 真剣な戦いであることに変わりはないが、やはり、いつもとは勝手が違った。
 何度目の打ち合いか分からないが、互いに近接して動きが一瞬と待った時、ダリアが有線通信用のケーブルをタケミカヅチに繋げた。
 タケミカヅチは外部からの通信に対して制限を加え、カグツチとソメイヨシノからの通信しか繋がらないようになっている。
 これは、万が一にもアキトがここにいることがばれないようにするための措置であるが、この措置には、有線通信は除かれる。
 高機動運動中の機動兵器に有線通信を行えると思う者がいなかったためである。
 結果的にそれが、アキトと北斗の通信を可能にしてしまった。

『戦い方から予測していたが……やはり貴様だったか、アキト』

「北斗……」

『随分探して、ようやく再会できたわけだが……どうした、随分動きが悪いではないか?』

「生憎、こいつは、お前との戦いには不向きな機体なんだよ……」

 言い訳でしかないが、事実でもあった。
 アキトと北斗、二人が戦った時に生じる破壊度は、戦略兵器にも匹敵しかねないが、実際には一対一の戦いに他ならない。
 良くも悪くも、タケミカヅチの兵装は、戦術級攻撃に重きを置いて作られている。
 そもそもが、格闘戦などになることを想定していないのである。

『その機体が不向きというのなら、ブローディアに乗り換えて来い。その機体に乗る貴様に勝ったところで、うれしくも何ともない』

「それができるなら、とっくにやってるよ」

『できなくともやれ!』

「無茶言うな!」

『だったら、もう少し楽しいことしましょうか?』

 タケミカヅチとダリアの通信にマモルが割り込んできた。

『む? 貴様は?』

『あなた、自分が戦っている相手のことも知らないの? 私が、アマヤマ・マモルよ』

『そうか、貴様が……姿なき死神か』

『随分古い二つ名を知ってるものねぇ。まだ私が前線にいた頃のじゃない』

『オオサキに聞いた。アキトが出てくるまでは、連合軍最強だったと』

『シュン君ったら、大げさなんだから』

 マモルは苦笑した。どうやら知り合いであるらしい。

『まぁ、そこまで大したものではないけれど、あなたが、もう少し楽しめるようにしてあげようかと思って、提案させてもらうのだけれど』

『なんだ?』

『私とアキト二人掛りで掛かっていくっていうのはどう? 二人掛りで丁度良いと思うのだけど』

『ふむ……まぁ、確かに今のアキトを倒したところで自慢にはならんな……いいだろう、二人掛りで掛かってくるがいい』

「いいのか?」

 流石に、アキトが驚いて聞き返す。

『一人で満足させられないのだ、仕方あるまい?』

『決まりね。じゃあ……』

 タケミカヅチとダリアのすぐ近くに漆黒の機体が現れる。それは、紛れも無くスサノオだった。

『このスサノオで相手をしてあげる』

「マモル、スサノオは、未完成だったんじゃ……」

『勿論、100%の力は発揮できないしDFSは使えないけれど、動かすぐらいなら出来るわ……遠隔操作でね』

 マモルは、微笑んだ。
 まるで、アキトの感じた不安を払拭させるように。

『さぁ、荒ぶる神の力をみよっ! 羅刹よ!』

 スサノオは、ダリアへと向かっていく。
 まともにぶつかれば勝ち目の無い相手へと淀むことなく掛かっていく。
 勝つために。



 シャクヤクの内部では、システム異常が発生していて、その対処に追われていた。
 当初、北斗を出撃させたのはよかったが、その後、搭載している機動兵器に次々と異常が発生し、誰も出撃できなくなってしまった。
 その異常を皮切りに、シャクヤク全体ではシステム異常が起き、戦いどころではなくなっていた。
 シャクヤクを預けられている千沙としては、気が気ではなかった。

「システムの復旧状況はどうか!?」

「駄目です、更に悪化して、システムの九割が、言うことを聞きません!」

「機動兵器は!?」

「復旧と再起動を急いでいますが、まだ原因も突き止められていません!」

「くぅっ……いったい何がどうなっている……」

 千沙が呟く様に言ったその時、艦橋にアラームが鳴り響き、艦橋中に髑髏と大きな鎌のイラストと共に『GAME OVER』の文字が表示される。

「これは……死神……?」

 場違いなことに千沙は、そんなことを呟いた。



 カグツチのマモルは、口の端を持ち上げて笑っていた。

「シャクヤクとった……っ!」

 マモルは、左右二つのキーボードで別々のプログラムを組んでいた。
 首から延びるコード、胸から伸びるコード、更に背部のリアクトシステム、両手のグローブ型IFS端末、それら全てで別々の作業を行っていた。
 カグツチの操縦、敵機動兵器へのクラッキング、マシンチャイルド達の制圧、オモイカネへの侵入制圧、スサノオの操縦、そして今、また一つその中に作業を加えていた。

「カグツチ! スサノオの応急OS構築率とタケミカヅチ、ダリア、カグツチ、スサノオの動作記憶状況は?」

『OS構築率57・67%』

『動作記憶状況正常』

『記憶動作状況対応プログラム構築率92・99%』

「順調ね……いい感じだわ」

 マモルは唇を舐めた。
 マモルは、現在スサノオのOSとそれに対応したプログラムを構築していた。
 マモルが直接スサノオに乗る場合、OSもプログラムも必要とはしない。マモル自身がその役割を果たす。
 かといって、他の人間が乗る場合、それでは不十分であり、ブロスとディアクラスのAIが必要になる。
 流石のマモルでも、専用のAIをこの戦いまでに作り上げることは時間的に不可能であった。
 そうなると、アキトがどれ程優れていようとも、スサノオをアキトが操縦することはできない。
 そこでマモルは、いざという時は、自分が乗ることを想定してプログラムを組んでいた。
 その範疇には、マモルによる遠隔操作も含まれていた。
 だからこそ、すぐにスサノオが出撃できたのである。
 だが、遠隔操作にも限界がある。実戦に即した動きをさせるためには、それに適応するOSとプログラムが必要となる。
 特に、実際の戦闘に対応するためには、実戦による敵味方の機動兵器の動きを記憶し、対応できるようにしなければならない。
 スサノオ自身に、より実戦に適した動きをさせるためにも、それは必要なことであった。
 だからこそ、無茶を承知で応急OSの構築と動作記憶及び記憶した動作を基にした状況対応プログラムを構築しているのである。
 もっとも、複数の作業を同時並行して行えるマモルの能力があればこその、荒業だったが。
 スサノオは、タケミカヅチと連携してダリアと対等に近い状態で戦えていた。
 北斗が本気を出していないだけかもしれないが、時間を稼げるだけでもありがたいことであった。

「さて、あっちは、これでいいとして……」

 マモルは、そう呟きつつ、ソメイヨシノに通信を繋げた。
 すぐにマリがウィンドウに表示される。

「マリ、状況はどう?」

『ごめんなさい……ナデシコのマシンチャイルドの『うざったい』妨害を受けてて、まだ65%くらい……』

「謝ることじゃないわよ」

 マモルは苦笑を浮かべた。

「でも、まだマリの方に人を割く余裕があるんだ……ふぅん……」

 マモルは、冷たく笑い、どう動くかを即座に決める。
 そして、マリには、優しい笑みを向けた。

「マリ、ナデシコのマシンチャイルドは、私がどうにかしてあげるから、艦隊の制圧を急いで頂戴。それで全部決着がつくから」

『わかった。頑張る……』

「いい子ね、マリ」

 マリに向ける笑顔だけは、本当に優しく、慈愛に満ちたものだった。
 何人をも魅了せずにはいられない程の、優しく美しい、女神のような笑顔であった。

「それから、エヴァ、そこにいるわね?」

『はっ』

 マリのウィンドウの横にエヴァのウィンドウが映る。

「ジャンプユニットを着けておいて。艦隊の制圧が終わったら、飛んでもらうわよ」

『了解しました』

 それは、止めの一手の用意であった。
 マモルは容赦しない。勝利が確定するまで、相手の息の根を止めるまで、一切の手加減をしない。
 手緩い事をしてしっぺ返しにあったのは、一度や二度ではない。
 だから、容赦するつもりはなかった。勝利を確定させるまで。



 ナデシコの艦橋では、マリンチャイルド三人組が苦戦を強いられていた。
 現段階でナデシコで戦っているのは、この三人だけである。ここまでくると、他のクルーが、まるで役には立たない。
 機動兵器も、シャクヤクと同じ状況になってしまっており、まったく動かせず、ブリッジクルーの他の面々は、この状況では、戦いようがなかった。
 一言で言って、追い詰められていた。

「くっ!ルリさん!正体不明艦への妨害がはじかれました! 外の艦隊のサポートは限界です!」

 悲鳴を上げるようにハーリーが言うと、ルリは小さく舌打ちした。

「肝心なところで役に立ちませんね……わかりました、こちらのサポートに回って。正直、私とラピスの二人だけじゃ、これ以上オモイカネへの侵食を止められない……」

「ルリ!侵食率が八割を超えた!」


「サポート開始します! オモイカネへの侵入経路への妨害プログラムを注入!」

 もはや、防ぐことに終始するしか、ルリ達にはできていなかった。
 あまりにも侵食スピードが速すぎて、ルリ達だけでは対処できなくなってしまっていたのである。
 ルリは、今までに体験したことのないことを体験しようとしていた。



 ソメイヨシノの中で、マリは手を止めていた。
 正確には、手を動かしているわけではないから、手を止めるという表現はおかしいだろうが、作業を止めていた。
 これ以上、作業をする必要がなかったからである。
 マリの目の前のウィンドウには『制圧完了』の文字が浮かんでいる。
 マリは、自分の仕事をこなしきったのである。

「お母さん、私勝ったよ? 私、お母さんに必要だよね……? ずっと一緒にいていいよね……? お母さん……」

 マリは、誰に言うでもなく呟いていた。
 マリにとってマモルは全て。マモルのために生きる自分こそが、今の自分なのだ。
 だから役に立ちたい。マモルのそばに、ずっといられるように……。



 トビウメの艦橋は、『お休み』と表示されたウィンドウで埋め尽くされていた。
 ブリッジクルーは呆然として、もはや何もできなかった。
 システムを乗っ取られてしまった以上、できることなど何一つない。
 そこに、ボソンの光が輝き、エヴァがトビウメの艦橋に出現する。
 手にした銃を真っ直ぐコウイチロウに向ける。

「アマヤマの持つ技術は、そこまで達していたか……」

 コウイチロウは、エヴァを見て、半ば諦めた表情を浮かべた。

「ミスマル・コウイチロウ提督、貴方を拘束します」

 エヴァが、淡々と告げると、コウイチロウは、大人しく手を上げた。

「部下の命は、保障してもらいたい」

「お約束しましょう」

 こうして、艦隊としての戦闘は、全艦のシステム制圧と提督の拘束という形で幕を閉じた。



 タケミカヅチ、スサノオ、ダリアの三機による戦いは、対等な状態のまま続いていた。

『面白い、面白いぞ! お前達の連携は、まるで一人の人間を二人に分けたかのようだ!』

「そりゃどうも!」

 タケミカヅチとダリアがぶつかり合う。
 基本的に、ぶつかり合うのはタケミカヅチとダリアで、スサノオは、サポートに回っていた。
 実際問題として、遠隔操作では、それが限界であった。

『楽しんでいるところ悪いんだけど、そろそろ決着をつけさせてもらうわよ。もう終わりそうだからね』

『ほう……やれるものなら、やってみるがいい!』

『そうさせてもらうわ……』

 マモルは、その瞬間にダリアにハッキングを仕掛ける。
 機能が停止するほどのものではなかったが、ダリアの動きが、眼に見えて鈍くなる。
 そもそも、最初から他の機動兵器と同様にシステムに異常を起こさせることは、簡単であった。
 しかし、気配を察して戦うようなアキトや北斗では、それがどれほどの効果を持たないであろうと、マモルは考えていた。
 ならば、最初からシステムに異常を起こさせるよりも、ここぞという時に必要な異常を起こさせたほうが、より効果的であると判断したのである。

『っ! 反応速度が鈍ったっ……!?』

『アキト!』

「おうっ!」

 タケミカヅチとスサノオがダリアに掛かっていく。
 スサノオの繰り出す蹴りをダリアが避け、そこにタケミカヅチの拳が入る。
 ダリアは辛うじてそれを受け止めた。
 しかし、そこで一瞬ダリアの動きが止まった。
 そこにスサノオが飛び掛り、ダリアを背後から固め技で押さえつける。

『こんな固め技……!』

『悪いけど、私の固め技は、そうそう解けないわよ』

 そう言いつつ、マモルは、スサノオの胸部の一部を開き、そこからケーブルを飛ばして、ダリアに接触させる。
 その次の瞬間には、ダリアの殆どのシステムが停止した。
 複数の作業を行っている今、ダリアを直接機能停止させるには、有線で大量のプログラムを一気に送り込むしかなかった。
 マモルは、スサノオを出した時点で、この時を狙っていたのである。

『貴女とまともにやりあう気は更々無いの。妖怪大戦争みたいな戦いは、今度アキトと二人の時にやって頂戴』

 これでダリアの制圧も完了した。
 これによって、戦いの趨勢は決していた。

「終わったか?」

『あと少し残ってるわ……』

 マモルがスサノオの頭部でナデシコを示して見せる。

「ナデシコか……手ごわいか?」

『そうでもないわ。思ったよりも、ぜんぜん弱い……本当に、弱いわ』

 マモルが、眉を顰めた。
 それは、どういう意味があったのか、アキトには分からなかったが、何か厳しい理由があったのかもしれない。



 結果としてナデシコは、最後の砦となった。
 しかし、状況は芳しくなかった。
 他の戦艦などよりも長く防いでいるだけで、実際には、状況はそれほど変わらなかった。
 ルリは実感する。今まで同様の分野において自分に勝てるものなどいないと増長していたと。
 これほどまでの能力を持つものが他にいたのだと、改めて実感した。
 三人は必死に防いでいた。防いでいたが、もはや限界だった。

「オモイカネへの侵食率100%……制圧されました」

 ルリが、重い口調で報告した。
 三人がかりでも、防ぎきることはできなかった。こんなことがありえるのか、未だに信じられなかった。
 ブリッジ中に『お休み』の文字が無数に躍る。
 チチブにおける戦闘は、これをもって終結した。
 統合軍側の完全なる敗北という形で……。



 カグツチの中でマモルは座席に身を預けていた。
 コード類ははずし、服も着直している。目の色も、元の黒い色に戻っている。

「ミッションコンプリート……なーんてね」

 自嘲するように笑いながら、マモルは呟いた。

「100%を出さないで勝ててよかったわ……あとは……」

 ここで終わりではない。この後が待っている。
 今はまだ、戦闘が終了しただけなのだから。
 マモルは、気合を入れなおして通信を入れる。

「元連合軍中将アマヤマ・マモルより達する、宛て統合軍艦隊司令部……」

 どのような形であれ、勝利したものが、この場を収めねば、ここでの戦いが終わったことにはならない。
 軍において中将まで上り詰めたマモルは、そのことをよく知っている。

「降伏されたし。全軍艦のシステムは全て我が掌中にあり、提督であるミスマル・コウイチロウも拘束した。これ以上の抗戦は無意味である。それでも、尚も戦おうという者があるならば、我々には相転移砲を使用する用意がある。これは脅しではない」

 そう告げると、カグツチのコックピットに通信が入る。
 エヴァによって拘束されている、コウイチロウからだった。

『統合軍アマヤマ・マモル討伐艦隊提督ミスマル・コウイチロウである……降伏勧告を受託する。繰り返す、降伏勧告を受託する。加えて、全軍に武装解除を命ずる』

 システムが乗っ取られている以上、そもそも抗戦もできなければ、武装も役には立たないが、各艦の武装関連の電源が次々に落とされていく。
 それは、戦艦における武装解除がなされたということと同意義であった。

「各艦の武装解除を確認した。討伐艦隊の降伏を受け入れる……ではまず、ミスマル、ナデシコに移って。ミスマルが、ナデシコに移ったら、ナデシコを除く全ての艦は、ヨコスカベイまで撤退すること。行動不能艦は、この場に放棄し、動ける艦に移乗すること。以上を勝利者として厳命する」

 戦いはこれをもって完全な終着を見た。
 この後話し合いはもたれるものの、戦闘としては、これをもって決着したといっていい。
 七十二隻に及ぶ戦艦が終結し、たった一人の元軍人の命を狙ったが、結果は、惨敗であった。
 この戦いは、統合軍の記録として正式に残されることはないが、この戦いに参加したものの心に、記憶に深く刻み込まれた。
 姿無き死神の本当の恐ろしさを。 
 マモルは、一旦通信を切ると、暗い表情で溜息を吐いた。

「力……能力、武力、才能、組織力……まったく嫌になる……」

 吐き捨てるように言うと、マモルは、今度はアキトと通信を繋げた。

「アキトさん」

『どうかしたのか、マモル?』

「私は、これから、マリとエヴァと合流して、ナデシコに乗り込むけれど……アキトさんはどうする?」

『俺は……どうしよう……?』

「……私個人としては、この辺で一度ナデシコの面々と話し合ってみてはどうかと思うけれど……いつまでも、逃げ回っているわけにもいかないのだし……いつかは帰るつもりなのでしょう?」

『それは……』

 アキトは即答することができなかった。
 つまり、それが、アキト自身の答えでもある。
 今の生活は幸福であるし、マモル達と一緒にいたいとも思っている。
 マモルのことを愛しているし、いつまでだって一緒にいたい。
 それでも、ナデシコの面々に対する責任が、自分にはあった。
 マモルにも、それはよく分かった。マモルだからこそ、分かった。

「どういう結論を出そうと、私はアキトさんのそばにいるわ。貴方が望む限り、貴方にとって私がマイナスとならない限り……」

『……わかった……俺もナデシコにいく』

「そう……」

 アキトの決意に、マモルはその一言だけで応じた。
 それ以上の言葉は不要であった。
 アキトがナデシコを抜け出して一ヶ月、長いようで短かった闘争の日々に、一旦の終止符が打たれることとなった。
 しかしそれは、次の争いの準備に過ぎなかったことは、この時、周囲はもちろん、本人すら気づいていなかった。
 ただ一人、マモルを除いて……。
 


   序章第五話に続く



   〜あとがき〜

 こんにちは、こんばんわ、おはようございます、はじめまして、お久しぶり。神帝院示現です。
 統合軍とマモル達との戦闘をお送りしました今回、いかがだったでしょうか。
 アキトが思った以上に活躍してなかったかもしれませんが、アキトには、今後活躍してもらおうと思っているので、今回はこんな感じで。
 ブローディアに乗ってませんしねぇ。
 今回は、どちらかというとマモルの能力に焦点を当てることになったかと。
 作中に出てきたマモルの利用した装置を纏めると、以下の感じになります。

・首部コネクタ
・胸部(及び鎖骨)コネクタ
・両手グローブ型IFS端末(スサノオ操縦)
・背部リアクトシステム(カグツチ操縦)
・左右キーボードアナログ入力

 ここに更に、口頭での指示が加わります。
 如何せん無茶かなとは思いはしたものの、『漆黒の戦神』を本作中で惚れさせるような女性ならば、これくらいできなければ対等ではないかと。
 なんせ、あの『漆黒の戦神』が相手ですからねぇ……。
 それに、統合軍が個人を恐れて討伐しようとするくらいならば、というところもありました。
 『漆黒の戦神』とは別の意味での『化け物』『怪物』。それがアマヤマ・マモルという人物です。


 さて、序章はいよいよ佳境に入り、本章に突入します。
 想定では、あと三話か四話で序章が終了します。
 そこからが本章となります。どうぞお楽しみに!

 次回は、ここまで殆どその人物を語られていないオリジナルキャラクター、エヴァ・グデーリアンの秘密にちょこっとだけ迫る……予定です。
 エヴァ・グデーリアンとは一体どのような人物なのか?
 そこも含めて、お楽しみに!


 では、また次回〜。 








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代理人の感想
なんかこう・・・懐かしいノリだなぁw
確かに昔のアクションにはこんな作品が沢山あった。

ちゅーか、普通にチートだろこれ(爆)


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