時を見た者 
第二話

空を見上げる一人の青年がいる、そんな青年に近くの店から出てきた女性が声をかける。

「そろそろお店が開く時間ですよ。」
「わかりました、すぐいきます。」

そう言ってもその目は空の向こう、故郷の星の在る方向を見つめていた。その隣に先ほど声をかけた女性が歩いてきた。

「火星、どうなってしまったでしょうね。」
「わからない、あのあとの情報は少なくとも民間レベルには流れてこない。生きている人間はいないというのが今の世間での認識だけど。」
「そう思いますか?あなたも。」
「いいえ、人は意外としぶとい。きっと生きていますよ。」
「…あの子もですか?」
「気休めは言えません。けど、あなたが生きていることがあの子の生きている可能性につながります。」
「…そうですね。そう信じます。」

そんな会話をする二人に対して女性が出てきた店から男性の怒鳴り声が聞こえてきた。

「こらー!なにさぼってやがる。働かねえと給料へらすぞ。」
「「すいません。今いきます。」」

そう声をそろえて返事をした後二人は笑いながら店へと入っていった。

「今は仕事をがんばりましょうかミアさん。」
「そうですねアキトさん。」

青年の名はテンカワアキト。女性の名はミア・コーリアスという。
二人はこの雪谷食堂で住み込みで働いている。ある理由により無一文だった二人をここの亭主、ユキタニ・サイゾウがひろったのだ。
ミアは黒髪をショートッカットにし顔は文句なしの美形、男性客の心をたちまちつかんだ。アキトも優しさをあふれさせた笑顔で女性客の心をつかんだ。今ではこの雪谷食堂の二枚看板である。
夜も遅くそろそろ店じまいをしようとしていた時二人の男性が入ってきた。一人はちょび髭にメガネ、顔に笑顔を浮かべている。もう一人はたくましい体を窮屈そうにスーツでつつんだ男性だった。
ちょび髭の男性が店を見渡しながら言った。

「すみませんがミア・コーリアスさんはいますか?」
「私ですがなにか?」

ミアがそう言うと男性は名刺をだしながら

「私はネルガル重工のプロスペクターと申します。じつは貴女をスカウトしにやってまいりました。少しお時間をいただけますかな?」

と言いミアに名刺を渡し頭を下げた。後ろの男もプロスペクターに習い頭を下げる。
二人を奥の居間に通して改めて話を聞くことにした。

「私をスカウトしにいらしたと言いましたがなぜ私を?それにどこで私のことを知ったんですか?」
「貴女を知ったのはこの雑誌ですよ。」

そう言いプロスは一つの雑誌を机に置いた。

「この雑誌のこのコーナー“私の看板娘”に貴女のことが載っていました。」
「はあ。」

ずいぶんとマニアックな雑誌である、思わずミアたちはプロスを凝視してしまった。
その様子にプロスはあわてながら付け足した。

「これは私のではありませんよ。上司のものです。」

いやな上司である。ちなみになぜプロスがこれを読んだのかは突っ込んではいけない。
プロスは小声で、
「こんなものを上司権限で読ませられたとは言えませんね。」
とつぶやいた。 

それが聞こえたアキトは思わず親友だった極楽トンボを思い浮かべて汗をながした。
そしてプロスが雰囲気を変えるように明るい声で話しはじめた。

「スカウトの内容はわが社の新プロジェクトの成功のために貴女の医師としての腕をお借りしたい。」
「新プロジェクトとは?」
「それは残念ながら言えません。なんせ極秘のプロジェクトですから。」
「そんなプロジェクトに部外者の私がいていいんですか?」
「貴女の腕を見込んでいるのですよ。それにあなたはネルガルに在籍していたこともある。信用が置けると以前貴女と一緒に仕事をしたことのある人から聞いております。」
「だが、プロジェクトとやらの中身を教えねえとなるとてめえらなんぞ危ないことをすんじゃねえだろうな。」

二人の会話を聞いていたサイゾウがプロスにきつく言い放つ。

「そんなことはありませんよ。ただとても大きなプロジェクトなので契約をしていただくまでお教えすることを会社から止められてまして。」
「そんなふざけたことで人んとこの大事な従業員をひきぬこうとすんじゃねー!」

サイゾウが怒鳴る中今まで会話を聞いていたアキトが発言をした。

「せめて少しは情報をくれないとミアさんもOKしませんよ。幸いここには他に誰もいないのだし。」

しずかに言うアキトだったがプロスはアキト目を見た時背筋にかすかに電流がながれたような感覚を覚えた。自分のすべてを見透かさんばかりの目で見られているような、自分を懐かしい人にあったような目で見られて。

「(彼はたしかテンカワ博士たちの)貴方はたしかテンカワさんでしたな。しかしそう申されましても…解りましたこのことはナイショですよ。」
「ミスター。」
「かまわないでしょう。どうせあってないような命令ですよ。多少の情報で優秀な人材を得られるのならばメリットのほうが大きいですよ。」
「しかし。」
「責任は私がとります。」
「…ミスターがそこまで言うのならば。」
「おほん、実は私どもネルガルが開発した新型戦艦に乗ってもらいたいのです。」
「戦艦だと、戦場に行けっていうのかい、ふざけんじゃねえ。」
「ふざけてなどいません。それにこの戦艦はわが社の最新技術をフルに使っております。へたな場所より安全ですよ。」
「その戦艦はどこに派遣されるんですか?」
「ミア、受ける気か。」

サイゾウは驚いた。ミアが戦場に行くような人間ではないことを良く知っていたからだ。

「それは言えません。しかしここからはるかに遠い場所ではあります。」
「そうですか…条件があります。」
「何か?」

ミアは決意をこめた瞳でプロス見ながら条件を言う。

「生き別れてしまった娘を…アイ・コーリアスを探してもらいたいんです。」
「娘さんを、解りました会社に探すように伝えましょう。他には?」
「ありません。」
「おいミア!」
「いいじゃないですかサイゾウさん。」
「アキト、こいつを戦場に行かせる気か。」
「でも俺らがなにを言ってもミアさんはとまりませんよ。」

そう言われるとサイゾウは黙ってしまった。ミアの娘を思う気持ちは一緒に生活をしていた日々で知っていたからだ。ネルガルならばミアの望みをかなえられる力がある。ネルガルの情報ネットワークのすごさは関心のないサイゾウでもよく知っていた、確かにミアの望みを叶える可能性のある方法である。だからこそミアがプロスに条件を言った気持ちがサイゾウにはわかっていた。

「たしかに心配ですけど俺もついていきますから大丈夫ですよ。」
「な!」
「ふざけるな!われわれは彼女をスカウトしにきたのだ、お前を乗せる理由はない。」

アキトの発言にミアは驚きもう一人の男性、ゴート・ホーリーが声を上げた。
しかしプロスはしばらく考えた後サイゾウに尋ねた。

「彼の料理の腕前は?」
「あ、そんじょそこらの店よりうめえよ。俺が保障する。」
「解りました。テンカワさんコックとして貴方を雇います。」
「いいのかミスター、予定にはないぞ。」
「かまいません、もともとホウメイさんだけでは少々大変ですからね。テンカワさん、何かご要望はありますか?」
「いえ、今のところはないです。」
「では明日迎えをよこします。」

そう言ってネルガルの二人は去っていった。
二人が帰った後ミアはアキトに大声でつめよっていた。

「アキトさん何を考えてるんです、戦艦ですよ、戦争するんですよ。」
「だいじょうぶですよ。俺がなにやっていたか忘れたんですか。」
「そ、それは。」
「いいじゃねいか、ミアこいつが行くんなら俺も安心できるからな。」
「でも、アキトさんいいんですか私のために戦艦に乗るなんて。」
「いいんですよ、それに俺にも目的がありますからね。」
「目的とは?」
「それは。」
「それは。」
「ナ・イ・ショ。」
ドター  

ミアとサイゾウがおもわずこけたのをアキトは笑いながら見ていた。
その晩アキトに懐かしい声が聞こえてきた

[アキトどうなっているの、私体が縮んじゃった。それに昔の研究所にいる。]
[落ち着いてラピス。ここは過去の世界だ、ナデシコのとぶ前日だ。]

ラピスのリンクを通しての声であった。アキトは久しぶりに聞くラピスの声に思わず笑顔を浮かべていた。

[過去の世界?]
[そうだよ俺も体が若返った。]
[じゃあ五感も治ったの?私はアキトの力になれないの。アキトは私が要らなくなったの。]
[まさか、ラピスは俺の家族だよ。要らなくなんてならないよ。]
[ほんと。]
[本当だよ、ラピスにはいろいろと助けられた、今度は俺が助けるよ。少し待っててくれ準備ができたら迎えにいく、ラピスには今度こそ普通の人生を生きてほしいから。]
[アキトもいっしょに?]
[いや、俺にはやらなきゃならないことがあるから一緒には暮らせない。でも大丈夫だよ会いたいときはすぐ会える。それにラピスのことを頼もうと思う人はとてもいい人だからきっとラピスも気に入るよ。]

アキトはラピスに普通の生活をさせることが一番良いと考えて言う。しかしラピスはそのアキトの言ったことを拒否をし自分の望むことを言った。
[ううん、私はアキトを手伝う。]
[ラ、ラピスなにを言うんだ。]
[私はアキトを助けたい、私の能力はアキトの助けにきっとなる。]

この発言にアキトは大いに困った。なんとか思い止まらせようと考えるがラピスは普段は自分の望みを言わないが、望みを言ったら決して引かないことを思い出してあきらめた。

[は〜、わかったよ、俺を助けてくれ。まったく頑固というかお人よしというのか。]
[アカツキが言ってた私はアキトにそっくりだって。]
[そうか、そういえばイネスたちも同じようなことを言っていたな]
[でも私はうれしい。それで私はなにをすればいいの?]
[それじゃ………これらのことをたのんだよ。)
[わかった。アキトはいつからこんなことかんがえていたの?]
[ラピスより早く過去に戻ったんだ。考える時間はたくさんあったよ。]
[わかった今度くわしく話してね。]
[そうだね。今度会う時に話すよ。お休みラピス。]
[うん、おやすみなさい。]

(そう考える時間はたくさんあったよ。)

そうアキトは思いながら目を閉じた。まるで何かを思い出すように。

次の日ネルガルの車に乗るときサイゾウからマネーカードを渡された。返そうと思った二人だが。

「今度、返しに来い。」

と言ったサイゾウの気持ちを知り、絶対返しにくることを約束し受け取った。

そして着いたのはサセボのネルガルドックそしてそこで見たのはミアにとっては今まで見たことのない姿をした、アキトにとっては懐かしい姿の船。
二人をここまで案内したプロスが胸を張って説明をした。

「これこそがわが社が開発した最新型の船“ナデシコ”です。」

二人の感想は?

「楽しい形の船ですね。」
「航空力学無視してるな〜。」

であった。
それを聞いたプロスは苦笑しながらこう言った。

「ディストーションフィールドのおかげですよ。そのおかげで空気抵抗に関して言えば問題はなくなりました。デザインはフィールドを発生させるのに一番適したものになったんですよ。」
「「なるほど〜。」」

そんな会話をしている三人に近づく一人の少女がいる。銀髪に金の瞳としたきれいな子だった。
アキトはその少女を見て笑顔を浮かべた。
少女もそんなアキトの気持ちに気づいたのか笑いながら

「やっと会えましたね。アキトさん。」

そう言った。

あとがき
今回、初のオリキャラであるミア・コーリアスを出しました。ミアは一回目のアキトのある役目を背負っています。今後は彼女とアキトの関わりを楽しく書いていければと思っています。ところでアイちゃんのファミリーネームは公式では決まってないですよね?

 

 

 

 

代理人の感想

「間」が足りません。

矢継ぎ早にセリフだけ喋られても感情が伝わってこないし、読者の感情を刺激することもできません。

 

[じゃあ五感も治ったの?私はアキトの力になれないの。アキトは私が要らなくなったの。]

例えばここの部分。ラピスはアキトに捨てられると言う恐怖に怯えているはずです。

それをただ切れ目も無く続けて書いただけでは、セリフを棒読みしてるだけの演技と同じで感情が伝わってきません。

ついでに、なんか文脈も微妙に繋がってませんし。

「じゃあアキトの五感も治ったの? だったら・・・・だったら私はアキトに必要じゃない・・・・アキト・・・・今のアキトには私は要らないの!?」

とか。