「ほら、遅いわよ〜!
 ここ、ここ」

 少し上のほうから、女性の――声と見た目は、少女といっても通用するが――声が聞こえてくる。
 青年は、その声のした方へと、ゆっくりと歩を進めていた。


 風が、頬をなぶってゆく。
 暖かな南風だ。

 春は、もうすぐ盛りになる。


 天は晴れ渡っていた。
 蒼穹に、白い雲がゆっくりと流れる。

 草を、緩やかな風が、さぁっ…と撫でていった。



時は穏やかに流れ







「いい天気だ………」

 空を見上げながら、歩く。
 さく、さくと、草を分ける音が、耳に心地よい。

「まったくもう………遅いわよ?」

 青年より先に、この丘の上まで来ていた女性が、少し拗ねたように言った。
 だが、その目は笑っている。

 本当に拗ねているのは、彼女の横に……
 シートを敷いて座り込んでいる少女だと言うことを知っているからだ。

「ははは、ごめん。
 あんまり天気がいいから……
 つい、ゆっくりになっちゃったんだよ」

「……ふん」

 そっぽを向く。
 その仕草が、いつもは触れれば斬れるような雰囲気を持つ彼女に、可愛らしさを与えているのだと、本人は気づいているだろうか?
 僅かに赤みのさした頬も、また。

「ふふ、そうね…………。
 のんびりとして…いつもの街とは、別世界」

 風に流れる黒髪を抑えて、女性が言った。

「いやぁ、一夜漬けはしんどかったですからね。
 気分が一新されますよ」

「このコも、毎回そうよねぇ。
 素直に私に訊けばいいのに」

 からかうような口調で、女性は言った。

 だが、その瞳は、優しい母のようだった。
 暖かく見守る……慈愛の。



「あら?
 ………寝ちゃったの?」

 ふと、気づいたように、女性は少女に顔を近づけた。
 少女は、いつ寝付いたのやら…すやすやと穏やかな寝息を立てている。
 あどけない寝顔は、普段の彼女しか知らない人間には、考えることも出来ないほど穏やかなものだった。

 目が覚めたときには、もう一人の愛すべき少女の、元気な笑顔が見られるのだろう。


 青年は、その少女の横に腰を下ろすと、その長い髪を梳いた。
 その目には、女性と同じ……優しい色をたたえて。


 春の陽気。


「春近し……かな?」

「あら、もう立派に春よ?
 ほら……あんな所に」

「あ、桃の花…………?」

 青年の傍らに座り込んだ女性が指した方を見ると、桃色の花をつけた木が、何本か立ち並んでいた。

「そろそろ…三月も半ばですからね」

「そうね……………。
 時の流れが、緩やかに感じられる季節…………」

 そう言いながら、女性は、青年の頭に手を回す。

「ほぉらっ」

「え?」

「このコに付き合って徹夜したんでしょ?
 あったかいし……一眠りしなさい」

「いや、あの………」

「ん?
 どーしたのかなぁ?」

 だが、青年は何故か顔を紅くすると、女性はそれが可愛くて仕方が無いとでもいった風な口調と笑顔で訊き返す。

「だ、だから、何でそっちに引っ張るんですか」

「そりゃあ………こうするために、決まってるでしょ」

 ぐいと、力をこめた。
 少し傾いていた青年の体は、あっさりとバランスを崩し、女性の方へと倒れていく。

「うわっ」

  どさっ

「ふふっ」

 青年の体が倒れたところは………

「こうしたら、よく眠れるでしょ?」

 女性の膝の上。

 青年は、さっきより顔を紅くしていたが、あきらめたように目を閉じた。

「………はい。
 じゃ、ご厚意に甘えさせてもらいます」

「あらら………」

 さっきのような反応を期待していた女性は、少し拍子抜けしたような表情になる。
 開き直った青年に、一本取られたようであった。


 少しすると、ゆっくりとした寝息が聞こえてくる。
 青年にも、睡魔は襲来していたようだった。

 女性は、青年の穏やかな寝顔を見て、微笑むと、ゆっくりとその髪を梳った。
 さらさらとした感触が心地よい。

 微かに吹いてくる春風に身を任せ、女性もまた、その瞳を閉じる。




 穏やかな時が、流れていた。












あとがき

 ……何が書きたいんでしょう、私は?(爆)
 最近、頭がおかしいんじゃないかと思える今日この頃。

 劇中の人物たちについて、全く殆ど描写してありませんが、一目瞭然でしょう(笑)。
 イメージで、雰囲気を感じ取ってもらえれば、拙いモクロミも成功…なんですけどね。
 何がしたかったのかは、敢えてヒミツということで(←何も考えてないことのイイワケともいふ)。

 タイトル、及び全体のイメージは、あるゲームの同名のBGMからです(知ってる人、いますかね?)。
 その名の通り、穏やかに流れる時を感じてもらえれば、嬉しいんですが。
 あぁ、北海道に行きたい(笑)。

 設定については………訊かないでください(汗)。
 どこかに、こんな平行世界もあるかもしれない……そんな感じです。

 それでは。

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

昴さんから投稿第九弾です!!

実に微妙ですね〜

当てはまりそうで、当てはまらない人物ばかりだ(苦笑)

月日が経てば、話し方も変わる人がいますからね〜

・・・一体、誰と誰を基準に考えられたんでしょうか?

だって、ナオとミリアもありえますしね(ニヤニヤ)

もしそうだったら・・・変わったなナオ(核爆)

 

それでは、昴さん投稿有難うございました!!

 

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