第3話      過去との訣別 

 

 辺り一面に星が煌く世界を今日も進むナデシコ。
 最初の頃こそ感動していたが、何時までも代わり映えしないと飽きてくる。




 そういえば俺がガイの部屋にいる間にジュンとユリカは過去と同じやり取りをして
いたらしい。
 廊下でジュンと擦れ違ったとき、あいつが燃え尽きていたので直ぐに解った。
 それにしても、何故ユリカにはジュンの気持ちが解らないのだろうか?
 普通好意を寄せられてくれば、直ぐに解るだろうに。
 ニブイにもほどがある。

 そんなことを思いつつ、サツキミドリ二号をどうやって助けるか考えていた。


「ルリちゃん、サツキミドリ二号にハッキングすることは出来るかな?
 エマージェンシーコールを鳴らしてもらいたいんだけど。」

「ちょっと難しいですね…
 ナデシコAだとよっぽど近付かないと無理ですね。」

「…う〜ん……
 じゃあ、ある時が来るとエマジェンシーコールを鳴らすウィルスを送り込む、というのは?」


「それ位なら、簡単です。
 直ぐにでもサツキミドリに仕掛けておきます。
 ………それにしましても、もう過去を変えることに全然躊躇しないんですね、アキトさん。」


「前にも言ったけど、あの未来とはもう違う未来になったはずだけどね。
 じゃあ、どれくらい違う未来へ続いているのか、というのは解らないからね。
 実は殆ど変わっていませんでした、とかいってあの未来を繰り返すなんていうのは嫌だからね、
 あの未来になり様がないくらい徹底的に変えていくよ。」


「………では、ユリカさんのことは?」   

「ん?何か言った、ルリちゃん?」

「いえ!!なんでもないです!!
 それで、アキトさんは、これから何をされるのですか?」


「トレーニングルームでちょっと鍛えなおしてくるよ。
 イメージと身体の動きにまだズレがあるからね、早くあの時のレベルまで上げないとね。」


 俺はそう言って、ブリッジを出てトレーニングルームで久しぶりに汗をかいた。
 身体の感覚は結構戻ってきているのだが、
 先の戦闘でミサイルを何発か後ろに逸らすなど、あの時には有り得なかったミスをしたからな。
 今のうちに戻しておかないとこれからがつらくなる。


 拳打、掌底、蹴り、流れるような体捌き、一瞬たりとも同じ場所にはいない。
 閃光が弾け、火花が散る、まさにそんな形容が当てはまる動きだった。

 最後にアキトは瞑想をして、修練を終わりにした。

 

 

 

 

 トレーニングも終わり、自販機で喉を潤しているとエマージェンシーコールにより、
 緊急避難をするサツキミドリ二号の人達と擦れ違った。

 後日、このエマージェンシーコールは木星蜥蜴の奇襲によるものと判断された。



「……確信犯。」


 最近のルリちゃんはますます俺のことを苛めるようになってきたような気がする。

 誰がこんな子に育ててしまったんだろう、俺は悲しいよ。

 

 

 

 

「ど〜も〜!!新人パイロットのアマノ ヒカルで〜〜す!!
 18歳で独身!!好きな物は、ピザのはしの硬くなった所とぉ〜湿気ったお煎餅で
〜〜す!!」


「うおおおおおおおお!!!」 


「つ、ついに……ついに格納庫に女の子がぁぁぁ!!しかもメガネっ娘だぁぁぁぁぁ!!!」
(某ウリバタケ氏)

「これで《ナデシコ一むさ苦しい職場》とか《華のない職場》から、オサラバだぁぁ!!」
(整備班所属某氏)

 ………よっぽど女の子がいなかったのが、嫌だったらしい。
 そんな喧騒をよそに、パイロットの自己紹介は続く。

「オレの名前はスバル リョーコ、同じく18だ。
 特技は居合い抜きと射撃、好きな物はオニギリ、嫌いな物は鶏の皮、以上だ。」


「うおおおおおおおお!!!」 


 整備班は五月蝿い限りである。
 しかし、次の人間によって静かになるだろうと期待することにしよう。


「…どうも、新人パイロットの、マキ イズミです…
 ふふふふふ………ナデシコ……                 。」

 

 

 

 ……イズミさんが喋り始めた後の記憶がないのだが………
 …駄目だ、思い出すことを生存本能が拒否している。…
 人類最強兵器って実はイズミさんなのではないか、そう思ってしまう俺であった。



 結局全員があっちの世界から帰ってくるまでに一時間を必要とした。

 

 

 

 

 その後…俺達主要メンバーはブリッジに集まった。
 今後のことを話し合う作戦会議のはずだが…

「ねえねえ!!この船に乗ってる二人のパイロットってぇ、誰なんですかぁ〜?」

 ヒカルちゃんが軍隊では絶対に許されない話し方でユリカに質問している。

「え〜と、一人は名誉の負傷の為入院中です。
 もう一人は…」


 …しかし、名誉の負傷…
 確かにナデシコを取り返す際の負傷だが、怪我を負わせたのは、味方のはずのクルーだぞ。
 しかも何故か皆して踏んづけていたような気が…


「ナデシコの誇るエースパイロットのテンカワ アキトです!!
 そして私の王『モガッ!!』」

「ごめんなさいね、艦長。
 でもあなたのアキト君ってわけでもないし。
 しかも、艦長とアキト君って子供の頃一緒だっただけみたいですし。」

 ミナトさん、ほんと〜に変わりましたね。
 それも良い方向に。(ニヤッ)

「ぶ〜〜、アキトは私のお『艦長!』」

 いつもは温厚なプロスさんも話が進まず切れ気味だ。
 プロスさんだけは、何があっても敵に回してはいけない人なのに…

「艦長、今はそんな事を言っている場合ではないでしょう?
 サツキミドリに残された、エステの回収の話を先決させて頂かなくは。」

 セリフを途中で遮られ、しかも叱られるユリカ。
 …お前、本当に艦長なんだよな?(汗)

「…で、結局は回収に向かうんだろ?」

「はいはい、それは是非ともお願いしますよ。
 エステ一台造るのにも、大変お金が掛かっていまして。」

 結局プロスさんとリョーコちゃんが相談して、
 パイロットの連携や、それぞれのお手並みを拝見するとの目的も含めて全員で行く事になった。

 それにしても、ユリカの存在意義って……何?。



 そしてサツキミドリに向かう俺達…
 ガイは怪我人ということで、ナデシコ内で待機ということになった。


 ナデシコから少し離れた頃、リョーコちゃんから通信が入った。


 ピッ!!


『お前、テンカワって言う名前だっけ?』

「ああ、そうだよリョーコちゃん。」

『けっ!!なれなれしい奴だな。
 会って二時間も経たずにもうちゃん付けかよ。』

 う〜ん、相変わらず、気性が荒いな。
 一度気を許すと、尽くすタイプなのに。

「気に障ったんなら謝るよ。
 じゃあ、スバルさんってこれから呼ぶよ。」

『……リョーコでいい。
 一応パイロット同士で命を預けあうんだし、他人行儀は苦手だしな。』

「了解。」



 ピッ!!




『じゃあぁ、私もヒカル、でいいからねアキト君!!』

 突然ヒカルちゃんも通信に割り込んできた。

『…リョーコ、テンカワ君に何が言いたかったの?』

 ……何時通信ウィンドウを開けたんだ?音はしなかったぞ、イズミさん。

『そうそう、テンカワ、お前本当に凄腕のパイロットだな!!
 地球圏脱出時の戦闘記録見せてもらったぜ!!』

『そうだよね〜、とても人間業とは思えない腕前よね。』

『……同感。』

「…褒めても何も出てこないよ。
 あ、サツキミドリが見えてきたな。」

 俺はその話題を避けるため、任務に三人の意識を戻した。



 四機のエステバリスは遮蔽物のせいでナデシコからの重力波エネルギービームが届
かなくなり、
 内部バッテリーでの活動となった。

『素潜り開始ーー♪』

 何故かはしゃいでいるヒカリちゃん。
 しかし言いえて妙である。




『デビルエステバリスだーー!!』

 見たまんまだが、これもまた上手いネーミングだな。
 ヒカリちゃんは先程の「素潜り」にしてもそうだがネーミングセンスにいいものをもっている。
 俺ももっともっと精進しなければな。




 ヒュン!!ヒュン!!



 中々の素早さでデビルエステバリスがコロニー内を飛び回る。

『くそっ!!何て速さで動くんだよ!!』

『見かけは重そうなくせに!!』


 そういえば、サツキミドリの中も、デビルエステバリスも始めてみるな。
 過去の俺はこの時何してたっけ…
 ………ふむ、良く覚えていないな…

 しかし、何時までも遊んでいる訳にはいかないな。
 取り敢えずこいつを黙らせて、

「そこかっ!!」




 ドンッ!! 


 バッタをデビルエステバリスの頭部ごと打ち抜く。
 ちょっとしたガンマン気分だな。
 ライフルの先をエステバリスの顔のところまで持ってきて、ポーズを決めてみた。


「ミッション終了。」

『…うそ?』

『一発で…終わりかよ。』

『信じられない腕前ね。』

 三者三様の褒め言葉をくれても、ポーズについては何も言ってくれなかった。(涙)



 ナデシコに戻るとルリちゃんがウィンドウごしに話しかけてくる。

『お疲れ様です、アキトさん。
 それにしましても随分楽しそうでしたね、両手に花どころか三人もいて。』

 何か誤解しているらしい。
 これはきちんと誤解を解いておかなければいけないだろう。

「ルリちゃん、それはミッションの必要性からそうなっただけだよ。
 それにパイロット同士仲良くするのは当然だろ?」

『そうなんですか。
 私はてっきり、リョーコさん達にご自分の実力をアピールされているのかとおもいましたが。』

 どこをどうしたらそうなるのかな??

「……もしかしてルリちゃん、戦闘前の会話も聞いてた?(汗)」

『はい、艦長と一緒に。』

「…ああ、それでか。(失敗したな)」

 俺はエステバリスの格納庫に向かって、走ってくるユリカの姿を確認した。

 ………ああ、過去ではメグミちゃんが……

 今、俺は過去と違う行動を取った事を激しく後悔していた。


『アキトさん、後でお話がありますからね。』

「??俺は別に悪い事は、何もしてないじゃんか。
 あれは別にナンパしてたわけじゃないく、コミュニケーションをとっていただけだよ?」


『そんな事を言っているから、過去と同じ状況になるんです!! 

 もう!!知りませんからね!!アキトさんの馬鹿!!』  



 ピッ!!

 ちょっとルリちゃんをからかい過ぎたか。
 ルリちゃんの反応って可愛らしくて面白いんだもんな。

 ワザと過去と同じ様にしていると知ったら、ルリちゃんは怒るんだろ〜な〜。
 でもやっぱり男はコンプリートを目指さなきゃな♪。

 

 

 

代理人の「ちょっと待ていアキト!」のコーナー

 

か、軽い!

アキトが果てしなく軽いっ(笑)!

 

アキトよ、そんなおまえに誰がした。

・・・・・やっぱり草壁や北辰やヤマサキ達なんかな〜(笑)。

 

 

それはともかく今回のこのコーナーはやはり彼の軽さと薄さを余すところなく表現した、

 

 

 でもやっぱり男はコンプリートを目指さなきゃな♪。

 

 

の一言で決まりでしょう(笑)!

 

 

いや、ここのアキト君にはこのまま軽い性格でいて欲しいですねぇ(爆)