第二章


第一話     西欧での出逢い

 

 

 今日もまた、
 一人の勇者の命が、戦場に散った……

 その勇者には美しい妻と生まれたての子供がいた。
 守るべき人を持つ人間が次々に死んでいく…

 戦場に立つ誰もが思っていること、
 この戦いは何時まで続くのだろう・・・

 その問いに答えられる人間はいない。
 そう、軍隊の上層部でさえも・・・
 そして今日もまた、勇者達の命が散る戦場の幕が上がる。





 西欧戦線の一角であり、最も激戦区の一つ、
 人はその地を、生き地獄と呼ぶ…

 その戦場に一人の古参者がいた。
 生き延びることが他人より上手い奴、
 しかし、生き延びられたことは、一流の証である。
 特に敵との最前線においては・・・



 その最前線を支える部隊の隊長、
 戦場の主、男の名前は、オオサキ・シュンと言った。

 

 

 

 その歴戦の勇者、シュンの元に突然連絡が来た。


「今更、新人が一人だけ送られて来てもな…」


 シュンの苛立ちも当然だろう。

 いきなり最前線に新人を置いても一回目の戦闘で死んでしまうだろう。
 新人が、生き残れる確率はとても低い。
 特に、こんな激戦区では。

 従って、シュンの苛立ちは正当なものであり、
 その苛立ちは、一人来る新人に対してよりも、そんな人間を寄越した上に対してであった。

 そしてその意見は、最前線にいる勇者全員の一致した意見でもあった。




 しかし、この西欧戦線を動かしたのは、その新人であった。

 勇者達に生き延びる可能性を与えたのも、その新人であった。

 また、歴戦の勇者達の心に恐怖と畏怖を刻み込み、生きた伝説になったのもその新人であった。





 漆黒のエステバリスを自在に操る戦鬼、テンカワ・アキト。
 後に西欧戦線にいた勇者達から、彼と同時代に生きられたことを「奇蹟」とまで呼ばれた少年が、その新人であった。

 

 

 

◇       ◇

 

 

 俺がその基地に着いた時の雰囲気の悪さと言ったら、
 出来れば、そのまま回れ右をして他の基地に回してくれと言いたいぐらいだったな。

 確かに、日々死と隣り合わせという同情すべき場所に彼らはいた。
 しかし、だからしょうがない、そう言えるほど俺は大人じゃなかったし、
 ナデシコだって戦場を渡り歩いていたのだから・・・

 俺とその部隊の隊長、シュンさんとの出会いは、最悪であろう。
 どんな感じであったかと言うと…



「よお…お前が新入りのエステバリスライダーか?
 しかし、漆黒のエステバリスとはね〜
 あの、ナデシコにいるという嘘っぽい英雄の真似か?」


 シュンさんはそう話しかけて来た。
 しかし、俺にとっては軍隊の一員が話しかけてきただけだし、
 ナデシコから・・・正直に言おう、彼女達から・・・離されて機嫌が良くなかった。


「…あれは餞別で貰ったものだ。
 それにな、
 ナデシコの英雄は実在するぞ!!
 貴様らの目の前に!!」


 俺はそう怒鳴ると、そのままシュンさんを無視した。
 そんな俺の様子に、シュンさんも頭にきたようだった。

 また、俺がその英雄だとは信じられなかったのだろう。
 ま、当然の事なのだが…
 シュンさんの後ろにいた副官のカズシさんに合図しながら俺に話しかけてきた、


「じゃあ、その英雄の力を見せてくれよ。」


 そうシュンさんが言うと、カズシさんが殴りかかってきた。


 ピタッ!!


 俺にとってカズシさんの攻撃など児戯に等しい。
 その攻撃を見えないようなスピードでかわしながら、シュンさんの方へ向かう


「今回は殴らないでおいてやる。
 次はないぞ。」


 俺はシュンさんの顔面スレスレの所まで伸ばしていた拳を引っ込めながら言った。

 そのまま続けて言う、


「一応自己紹介してやる。
 さっきも言ったが、ナデシコに乗っていた、テンカワ・アキトだ。
 俺は軍人じゃない、ネルガルからの出向社員だ。
 従って、俺に命令したければ、ネルガルか軍の人事部に許可を得てからにしろ。」



 これだけ実力差を見せ付けておけば、
 俺が此処でも計画を発動させても、変な事をする奴はいないだろう。
 そう思いながら立ち去ろうとして、一言言い忘れたことに気づいた。


「あ〜、一言忠告。
 生き残る心算があるんだったら、TVぐらい見といた方が良いですよ。
 そうすれば、俺の顔も直ぐに判っただろうに。」


 そう言い残して、ボーゼンとしている人達の傍らを通り過ぎて、
 俺のエステバリスの元へ歩いていった。

 その間、俺の後ろでは、物音一つしなかった。

 

 

 

 

 そして…
 俺達のいる基地の近くの街に木星蜥蜴の襲撃が起こった。

 俺の今いる基地の上層部は無視を決め込んだ。
 その街には、重要施設もなく、
 民間人がただ、普通の暮らしをしているだけの街だったからだ。
 俺の中で、軍人に対する反感が膨らんだのは言うまでもない。

 しかし、今回の部隊には面白い人がいた。

 

◆       ◆

 

「本気ですか!?
 街の住民を見殺しにしろと、言うのですか!!」


 シュンが、上層部に食って掛かっていた。


「フン!!仕方が無いだろうが!
 今はこの戦線の維持だけで精一杯だろうが?
 それに、もしこれが木星蜥蜴の陽動作戦だった場合、誰が責任を取るんだね?」


 これが一般的な軍人の考え方なんだろうな。


「では、自分達だけでも出撃許可を、
 民間人の救助をさせて下さい。」


「許可できんな。
 今は戦力の分散を許す事は出来ん。」


 こんな事を言い合っている間にも、無力な住民は死んでいっている。
 所詮、これが『国民』を守るという軍隊の実態だろう。


「しかしっ!!」


 ピッ!!


 突然、司令部の通信ウィンドウが開いた。
 ウィンドウには通信兵が、事態の悪化を知らせてくる。


『敵チューリップ四つが移動を開始…
 このままでは、進路上の街が完全に破壊されてしまいます。』


「…どう、なさるのですか?」

 まだシュンは諦めていない様だな。


「敵が来るのだからな。
 今以上戦線を退く事は許されん…我が部隊の総力を挙げてここで食い止める。」


 …それは良いとしても、街の人達はどうするつもりなのだ?
 今現在も絶望感に苛まされながらも、軍を待っているだろうに。

 ま、この部隊がチューリップを破壊出来た事はないみたいだしな。
 結局、あの街の命運は尽きていたのかも知れんな。
 民間人を守ろうともしなかったという事実は残るだろうが…


「…何処に行くのかね?」


 シュンが司令部から出ようとしているところだった。


「自分の部隊が先行偵察をしてきます。」


 いくらなんでもバレバレだぞ、シュン。


「その合間に救助活動かね?
 止めておきたまえ、君達が無駄死にするだけだ。」


 やはり流石にこいつの頭でも理解できたようだな。
 しかし、こいつもそれ以上止めようとはしないのだな。
 助けられるものなら助けたいと、こいつも思ってはいるのだろう。

 行動は絶対に起こさないタイプだが…

 

◇       ◇

 

「全員整列!!」


 俺の目の前でカズシさんが大声で部下に号令をかけている。
 シュンさんは、厳しい表情をしながらも、時々俺の方を見ている。

 俺は三日前にこの基地に着任してから未だこの基地の軍人と会話をしていない。
 向うからも話しかけて来ないのだから、別にいいだろう。
 俺が通りかかると、赤い顔をしている女性スタッフを見かけることはあるが。

 部隊全員が整列し終わったとみえ、
 シュンさんが今回の作戦内容を伝え始めていた。


「今回の作戦を伝える!
 まずは、進撃中のチューリップの偵察。
 それと並行して、チューリップの進路上にある街の住民の避難及び救助。
 なお、この作戦は大変な危険を伴う。
 従って、この作戦に従事するかどうかは、志願制とする!
 志願しなかった者は、直接司令部の指示に従え。
 では、時間は一刻を争うので出発は三十分後とする!
 以上、解散!!」


 シュンさんの命令を理解した部下達に戸惑いの表情が浮かんでいる…
 当たり前であろう。
 今回の作戦は、作戦と呼べないしろものと言っても良いだろう。
 普通に考えれば、殆どの人間が死亡してしまうものは、作戦ではなく、特攻というものだろう。


 しかし、俺も戸惑っていた。
 シュンさんは、実はいい人なのか?


「俺も付いて行きますよ、隊長。」


「ああ、お前は既に決定済みだ。」


「…せめて一言、俺の意見を聞いて欲しかったですね。」


 そんな俺の前で、シュンさんとカズシさんが冗談のようなやり取りをしている。
 これから死地へ向かうのに、笑いながらできる人間は中々いない。

 結局参加者は、シュンさんの部隊の三分の二、
 約六十人が参加することになったようだ。
 勿論俺は、


「民間人を救助するつもりなら、俺も手伝おう。」

 

 

 

 

 シュンさんの部隊構成はエステバリスが五機。
 それにエステバリスのエネルギーフィールド発生装置を積んだトラックが三台。
 司令部を兼ねた指揮用の装甲車が一台。
 戦車が二十台と、空のトラック(避難民用)が十五台。

 普通考えればチューリップ四つを相手にするには無謀なものだな。
 そんなことを考えながら部隊の最後尾に付いていたら、
 シュンさんから通信が入った。


 ピッ!!


「何のようだ?」


『アキト、お前はどうしてこの作戦に参加したんだ?
 俺が言うのも何だがこの作戦の死亡率は高いぜ。』


 シュンさんがおどけながらそう言ってくる。
 しかし、まだ俺を扱ったTVを見ていないらしいな…


「死亡率?
 ふっ、誰も死ぬ事はないさ。」


 俺の言葉の意味が解らないでいるシュンさんをそのままにして、
 俺はウィンドウを閉じた。

 

 

 そして街に到着した。

 木星蜥蜴の先行部隊も今は撤退している。
 シュンさん達は急いで負傷者や行方不明者の救助にあたっている。

 俺も街の中央通りを歩いている。
 その道々で聞こえてくる怨嗟の声…


「もっと早く来てくれれば!
 もうちょっとでも、早く来てくれれば・・・」


「返してよ!!
 お父さんを返してよ!!」


「何が連合軍だ!
 肝心な時に、助けてくれないくせに!!」


「私の家を、家族を返せ!!」


 これが戦場の実態なんだな。
 弱い者はこうして何もかも奪われていってしまう…



 俺がそんな感傷を抱きながら歩いていると、
 目の前の瓦礫と化した家から人の気配がする。
 その家に入っていくと…


 見目麗しい美女が足を瓦礫に挟まれて、身動きが取れなくなっていた。
 すらりとした姿態、長い金髪、澄んだ碧眼…


「合格。」


 その声で気づいたという訳でもないだろうが、身じろぎをしている。
 手っ取り早く助けるとしよう。




「大丈夫だった?」


 俺がニッコリ笑いながら話しかけても彼女は返事もしない。
 仕方が無いので、先に彼女の足の具合を見ようと屈む。


「…触らないで!!」


 そんな言葉を無視して、彼女の怪我を確かめる。


「…骨は折れていないが内出血をおこしている。
 一応医療班に見てもらった方がいい。」


 バシッ!


「触らないでって言ったでしょう!」


 俺の手を叩き落としながら、彼女は尚も言い募ってくる。


「何よ、今更!
 もう…もう、お母さんもお父さんも死んじゃったんだから!!
 私もここで死にたかったのに!!」


 パンッ!


 俺はつい、彼女の頬を叩いた。
 別にテンカワ・スマイルが通用しなかったからではないぞ。
 このような場合には、簡単に通用するとは俺だって考えない。

 俺が怒った理由は、ただ一つ。
 こんな美女が死んでしまうだなんて、世の中にとって大きな痛手だ。
 いや、回復不能な程の損失である。
 それだけの理由だ。


「簡単に死ぬなんて言うな!!」


「俺だって理不尽な理由で家族を奪われた。
 だからと言って、世を儚んだりはしなかったぞ。
 …確かに、今は悲しいだろう、辛いだろう。
 でも、少し落ち着いて考えてみて・・・
 御両親が生きていたら、君に何を願うかを、
 友人・知人が御両親だけでなく、君まで死んでしまったと知らされた時の事を。」



 俺はそう彼女に告げると、
 目を真っ直ぐ見て、再度笑いかける。

 彼女は俺の言葉を噛み締め、
 俺の言わんとする所を理解すると、静かに俺の胸にしがみ付きながら泣いた。
 勿論俺は、優しく髪の毛を撫でながら、もっと抱き寄せてやる。

 取り合えず、西欧で記念すべき最初の人だ。
 少し丁寧に落としてもいいだろう。

 そう思った俺は、他の救助作業はシュンさん達に任せて、
 彼女の心のケアをすることを決めた。


「大丈夫、もう二度と貴女をこんな目にあわせはしない。
 俺が約束する。」


 彼女の目に溜まった涙を拭き取ってあげながら、
 目の奥を見据えて、話しかける。


「俺の名前はテンカワ・アキト。
 貴女の御名前を教えてもらいたいな。」


 少し急ぎすぎの感もしないではないが、こういうのは初めが肝心。
 まだ頭が働き始めていない今の内に、俺という存在を刷り込ませなくてはならない。


「あ…
 わ、私の名前はサラ、サラ・ファー・ハーテッド。」


 ボーゼンとしながらも俺の聞くことには応えてくれる。


「そっか、サラ・ファー・ハーテッドさんか、いい名前だね。
 じゃあ、これからはサラちゃんって呼ばせてもらうね。」


「えっ?」


「いいよね、サラちゃん(ニコッ)」


 ここはきちんとしておかないといけないからな、
 サラちゃんに承諾を得ておかないといけない。


「は、はい。」


「ありがと、サラちゃん(ニコッ)
 それじゃあ、俺のことは『アキト』って呼んでくれる?」


「わ、わかったわよ、………ア、アキト」


 これでサラちゃんも、もう大丈夫だろう。
 他にも俺を待っている美女(美少女でも可)が居るかも知れない


「サラちゃん、もう大丈夫だね。
 それじゃあ、俺はまだ建物の下敷きになっている人を助けなくてはいけない。
 一度ここでお別れだ。
 また後で会おう。」


 ふむ、俺には真面目な台詞が良く似合う。
 サラちゃんが熱い目で俺を見ているのが解る。


「アキト、街の皆を助けてあげてね。」


 サラちゃんの俺に対する好意は、もはや揺るがない程まで高まっているようだ。
 サラちゃんは広場に残していっても、問題ないだろう。
 さて、俺は待っていてくれている人のもとへと行かなくては……





 俺が美女を助ける為街を動き回ってどれ位が経つのだろう。
 取り合えず、助けるべき人達を助けたので、一度広場に戻ってみる。

 サラちゃんに一言声をかけようと近づいた時に、その声が聞こえた。


「隊長!!前方にチューリップ四つ確認!!
 無人兵器はその数八百以上!!
 現在も増加中とのこと!
 指示をお願いします!!」

 

 シ〜〜〜ン…

 

 広場には、助けられた住民や救助している隊員が大勢いたが、その声が響いてから
音が消えた。

 それも当然だろう。
 今救助した住民達は、逃げればギリギリだが助かるだろう。
 だが、瓦礫の下に残された人達は…
 そう考えているに違いない。

 しかし、俺がいる限り誰一人として殺されないで済むがな。
 俺はシュンさんの許へ近付き、その旨伝えようとしたが、その前に…


「救助した民間人を乗せたトラックを退避させろ!!
 それと歩ける人達を誘導して、この街から少しでも逃げるんだ!!」


 シュンさんが広場中に聞こえる声で命令を発していた。


「隊長はどうされるんですか?」


 カズシさんがシュンさんに聞いている。


「俺はギリギリまで救助活動の指揮を執る!!
 逃げたい奴は民間人を先導しながらなら許可をだすぞ!!」


 ふーむ、命令自体に文句はないのだが、その言葉は余りいただけないな。


「そんな事を言われると誰も逃げれませんよ。」


 カズシさんが苦笑しながら言っているのが聞こえる。
 そう、シュンさんの言葉だと、逃げたいと思っている人を逃げれなくさせてしまう。
 もうちょっと言葉を選んで欲しかったな。
 ま、逃げる必要はないのだが…

 それを伝える為にシュンさんに更に近付くが、またもシュンさんに先に言葉をかけられてしまう。


「アキト!お前は自分のエステバリスで早く逃げろ!
 その女の子を連れて駆け落ちしてもいいぞ!!」


 その女の子?
 何時の間にかサラちゃんが俺の傍に佇んでいた。
 …全然気が付かなかったぞ(汗)

 そのサラちゃんは、シュンさんの言葉で真っ赤になってしまっている。
 これは間違いなく、良い方向に進んでいると言って良いだろう。


「何を言っているのやら。
 俺は貴方の命令に従う理由は無い。」


 静かに反論する俺。


「貴方はどうするんですか、隊長さん?」


 俺の肩に掴まりながらサラちゃんが質問をする。


「俺か?俺は最後の部下がここを撤退するまで指示を出すのさ。
 なんせ俺はこの隊の指揮官だからな。」


 何故か胸を張り、偉そうに言ってくるシュンさん。
 それに対する俺達の反応は揃っていた。


「「軍人の割りには馬鹿なんですね。」」


 シュンさんの眉毛がピクピク動いているのは、多分気のせいだろう。
 何てったって俺達は褒めているのだから。

 シュンさんは笑っているカズシさんの後頭部を叩いて黙らせると、
 もう一度俺達に向かって言ってきた。


「本来なら上官侮辱罪を適用するぞ、アキトにお嬢さん。」


 そんな事を言われても俺達は怖くないぞ、何故なら、


「「俺(私)は軍人じゃないですから。」」


 もはや爆笑に移ってしまったカズシさんを黙らせることもせず、
 シュンさんは苦虫を噛み潰したような表情になってしまった。


「取り敢えず逃げるんだアキト!!
 お前も民間人なんだろうが!!」


 シュンさんの言葉にサラちゃんが驚いている。
 俺を軍人だと思って、憎まれ口を叩いた事を思い出しているのだろう。

 俺だってこの現場では軍人ではない、と言った方が受け容れられ易いのは解っていた。
 にも拘らず何故黙っていたかと言うと、今のサラちゃんの様な反応を期待していたからである。


「そのお嬢さんの安全の為にも早く逃げるんだアキト!!
 これは一人の人間としての頼みだ!」


 俺の目を真っ直ぐ見てシュンさんはそう言った。
 そこには純粋に俺達を心配する瞳があった。

 その瞳を見た時に、俺はシュンさんが信用できる人だと確信した。


「なら…俺は俺に出来る事をするまでです。
 サラちゃん、避難するんだったら他の人としてね。」


「そんな…アキトはどうするの?」


「おい、アキト何を考えているんだ?」


 二人は、俺が何をするつもりか解らず、心配そうに聞いてくる。

 そんな二人を尻目に俺のエステバリスの方向へ歩きながら言う。


「先程も言ったでしょう。
 誰も死にはしないと。
 それにシュンさん、貴方は軍人の中でも上位に位置するまともな人物のようだ。
 ここで死ぬべき人ではない。
 俺が全てを排除してくる。」

 

 

◆       ◆

 

 

 そしてアキトは漆黒のエステバリスで飛び立った。
 一人でチューリップを撃墜する為に。


「おい!エステバリス部隊!!
 アキトがそっちに向かった!!何としても止めるんだ!!」


 カズシが通信で上空からチューリップを監視していたエステバリスに命令を出している。


「だ、駄目です!!追い付けません!!」


「何てスピードだ!!」


「テンカワ機、無人兵器と交戦可能空域に入ります!!」


「何だあの武器は?」


「そ、そんな、馬鹿な!!」


 シ〜〜〜ン…


 そんな言葉を最後にパイロット達からの通信は途絶えた。
 別に彼らのエステバリスが撃墜された訳でもないのに…

 通信の向うが静かになってしまったのでアキトが撃墜されたのかと思い、
 シュンとカズシの顔が青くなっている。

 その時!



 ドゴォォォォォォォォォンンンンンン!!


 信じられない音量の爆発音がシュン達を襲う!


「な、何だ!!」


「キャアァァァァ!!」


「くっ!!」


 シュン達が指揮車から外へ飛び出すとそこには…


 真っ二つにされるチューリップ、
 花火が咲き誇っているかのような無人兵器の爆発光。

 西欧では落とすことが不可能と言われていたチューリップが、
 たった一機の機動兵器によって簡単に撃墜されていく。


「テ、テンカワ機、チューリップ二つ目を撃沈!!
 現在、約百機の無人兵器を掃討しつつ第三のチューリップへ向かっています!!」



「ほ、本当だったんだ!!
 本当にあいつがナデシコにいた英雄なんだ!!」


「すげ〜!!本当にチューリップを切り裂きやがった!!」


 指揮車の通信機器からは興奮したパイロット達の声が聞こえてくる。
 その声を聞き、我に返ったシュンがマイクに怒鳴りつける。


「一体何がおきている?
 こっちに映像を寄越せ!!」


「了解、隊長!!
 これがナデシコの、いや俺達の、英雄の戦いです!!」


 その声と共に送られてきた映像には…

 白い刃を片手にチューリップに突撃しているアキトが映っていた。
 その突撃の直線上にいる無人兵器など、まるで眼中にないかのように、
 敵の攻撃を全て最小限の動きで避け、進路上の無人兵器のみを打ち落としている。



「す、凄い…」


「馬鹿な…」


 シュンとカズシはその映像を見て、固まってしまっていた。

 それというのもチューリップ四つの戦力は、彼らがいる基地の総力を挙げても、
 退けることしかできない程のものである。
 それを一機のエステバリスが退けるどころか、撃沈させてしまっている。
 これをそのまま信じられないのも無理はない。


「凄い…アキトの戦いって綺麗…」


 サラはアキトの操るエステバリスの華麗な動きに、目を奪われている。

 そんな者達の心の動きを知ってか知らずか、
 アキトの動きは益々冴え渡っている。



 アキトが出撃してからものの十五分足らずで、
 チューリップは四つ共撃沈されていた…

 この日、アキトは西欧に到着してから、初めての戦果を挙げた。

 

 

 

 

 

注:◆以下では、第三者(作者)視点で
  ◇以下では、アキトの視点で書いています。

 

 

後書き
 こんにちは
 第二章を書いてみました。
 少し書き方を変えたつもりなのですが、どうでしょうか?
 読み易くなっていれば幸いです。

 第二章を私が書けるか心配もありますが、書ける所まで書いてみたいと思っています。

                                   皇

 

 

 

代理人の「待てやコラアキト」のコーナー(笑)

 

第二章も始まり、このコーナーも記念すべきリニューアル第1回(笑)ですが

・・・・今回もツッコミどころが多すぎる(爆)!

と、言うわけで片っ端から挙げてみましょう(笑)。

 

 

 ナデシコから・・・正直に言おう、彼女達から・・・離されて機嫌が良くなかった。

正直なのはいいことだ・・・・ただし、ここのアキト君が正直なのは自分の欲望に対してだが(爆)。

 

 

 俺が此処でも計画を発動させても、変な事をする奴はいないだろう。

・・・・・つまり、実力を見せ付けるのも、TV出演したのも、民間人を助けるのも、

全ては計画(女狩り)の為だったんだな!?

いや、ここまで欲望に忠実だといっそ清清しい・・・わけない(笑)。

 

 

「合格。」

実に端的に彼の人間性を表現しております(笑)。

 

 

 俺が怒った理由は、ただ一つ。 こんな美女が死んでしまうだなんて、世の中にとって大きな痛手だ。

逆を言えば、美人でなかったら痛手ではないということだ(笑)

 

 

 

 ふむ、俺には真面目な台詞が良く似合う。

どのツラ下げてそんなセリフをぬかすかな、この男は(笑)

 

 

 取り合えず、助けるべき人達を助けたので、一度広場に戻ってみる。

助けるべき人たち=美女、美少女とその親族 

そうでない人たちは当然ほったらかしと推測・・・・・・・・鬼や。

 

 

 にも拘らず何故黙っていたかと言うと、今のサラちゃんの様な反応を期待していたからである。

一見不器用なように見せて実は全て計算づく・・・・・流石だ(笑)。

 

 

 

いや、突っ込んでも突っ込んでも切りがない(爆笑)

そしてこの話のタイトル「西欧での出逢い」・・・・・もちろん「女性との出逢い」以外の何者でもありますまい!

シュン? アキト主観からすると完全にアウトオブ眼中でしょう(笑)。