第五話 説得







 アキトが八雲達を案内して中に入っていく。



「ここです、どうぞ。」



 アキトが入った其の建物内部は、一寸先さえ見えないほどの暗い闇に覆われている為外から中の様子を窺い知る事は出来ない。
 そのため八雲も舞歌も慎重に建物の中へと向かっていく。

 二人が建物の中に入りきると、ルリが後ろで扉を閉めた。
 それにより入り口から漏れていた光さえも無くなってしまい何も見えなくなってしまう。
 そんな状態に置かれ、舞歌が声を出そうとした時に、アキトが傍の電気を点けた。
 急に明るくなった為、二人は一瞬何も見えなくなったが、徐々に目が慣れてきた。
 そして、其の目に映ったのは………………





 建物中央にユーチャリスが繋がれていた。






 また、電気が点くと同時にユーチャリスの入り口が開き、内部へ入れるようになった。
 色々と芸が細かい事である。
 それを見て、アキトが八雲達に声をかける。



「どうぞ、中に入ってください。」



 しかし八雲も舞歌も返答しない。
 流石の八雲もこれを見て直ぐには言葉がでないようだった。
 舞歌に至っては、固まってしまっている。
 アキトの再度の促しによってやっと二人ともユーチャリス内部へと足を進める事ができたのであった。

 ユーチャリスは外見からして、木連のものとは全く違うものであるという事を思いっ切りアピールしているからな。
 証拠を見せて貰いに来たと言っても、流石にここまでのものを見させられるとは二人とも思っていなかったらしい。
 地に足が着いていない状態であるという事が直ぐに解る足取りで歩いていた。









「さて、まず最初にご紹介します。
 私の義妹になります、テンカワ・ラピスです。
 一応まさかの時の為に、ユーチャリス内部でスタンバイしてもらってました。」



 アキトがそう言ってラピスを紹介した。
 それに合わしてちょこんとお辞儀をして挨拶をするラピス。



「テンカワ・ラピス。」



 初めての挨拶の時にはアキトの後ろに隠れてしまっていたのに、今では前を向いて挨拶が出来る様にまでなったラピス。
 名前しか言わず、にこりともしない様子は以前と変わらないものであるが確実に進歩していうるのは間違いない。
 近いうちにきちんとした挨拶も出来るようになる事であろう。
 それもこれもアキトやルリ、そしてユキナの教育の賜物というものかな?

 ラピスが一言で挨拶を終えると、アキトが早速本題を切り出す。



「この戦艦の名前はユーチャリスです。
 地球のネルガルという企業によって造られたものです。
 ああ、先程紹介し忘れてしまいました、このユーチャリスのATのダッシュの事を。」



 アキトが紹介という言葉を使ったので、自分達の周りを見回す八雲と舞歌。
 しかし誰も傍にはいないし、誰かいるような気配も感じられない。
 不審に思って舞歌がアキトに尋ねる。



「アキト君、紹介してくれるって言うダッシュさんってどこにいるの?」



 舞歌のその台詞を待っていたかのようにアキトがにこやかに笑いながら声を出す。



「ダッシュ、ご挨拶して」



《はい、アキト。
 はじめまして、東・八雲さんに、舞歌さん。
 私はユーチャリスノAIである、”ダッシュ”です、宜しくお願いします。》



 アキトの言葉と共に二人の目の前にいきなりウィンドウが開き、ダッシュが挨拶をする。
 それに対して二人とも声を上げる事すら出来ないでいる。
 アキトはそんな二人を見て、悪戯が成功したのを喜ぶような顔を一瞬見せたが直ぐに真面目な顔に戻って、尤もらしく言葉を紡ぐ。



「これが、俺達が地球から来たという事の証拠です。
 最早一目瞭然だと思うのですが………」



 アキトのそんな台詞に、今迄呆然としていた八雲が我に返った。



「あ、ああ。
 確かに、これは、木連のものでない事は、直ぐに解る。
 証拠として、これ以上のものは、ないだろうな……」



 まだ声が上擦り、変な所で言葉が途切れてしまっているのは仕方がない事であろう。
 一方舞歌は、ラピスの挨拶後には興味津々の目つきで色々な箇所やラピスの様子を物珍しそうに見ている。
 立ち直るのが早いのか、はたまたそんな事はどうでもいいと思っているのか、どちらなのかは舞歌の顔からは察する事が出来ない。



「では、力をお貸し頂けますね。」



「アキト君は此方の出した約束を果たしたんだからな。
 こっちが破る訳にはいかないだろう。」



 そんなことを言いながら、落ち着きを取り戻してきている八雲。







 アキト達五人はユーチャリス内部でお茶を飲んでいる。



「そう言えば、アキト君達は何でまた私達をターゲットにしたんだい?」



 八雲が会話が途切れた際に何気なく問いかけた。



「それは、俺達も色々調査しましたから。
 その結果、八雲さん達に白羽の矢を立てたのであって。」



「調査って言うと?」



 今度は舞歌が尋ねた。



「ええっと、まず木連の政界と軍人の要人達の中から実力者と呼ばれる人達を選び出しまして、
 その人達の思想や人望、まさかの際の力等を調べ上げましたね。
 考え方が地球絶対悪の人の所に行くわけには勿論いきませんし、、
 説得工作を手伝ってもらう以上、『この人なら』と思わせる人でなければ意味がないだけでなく、
 あいつがそう言うなら俺は敢えて反対の立場を取る、なんて言われたら邪魔になりますからね。
 それと、なるべく実力行使はしたくないですが、万が一の場合の為に力を持っている人が好ましいと思いました。
 それに当て嵌まったのが八雲さん達だったと。」



「軍の要人と言うと、草壁閣下や西沢殿、南雲殿に北辰殿等も調べたという訳か…
 何故草壁閣下の元へ行ってみなかったのかな?
 草壁閣下が木連の軍の全権を握っていると言っても言い過ぎではないのに。」



 八雲の口から北辰の名前が出た時、一瞬だけだがアキトがピクリと反応を示したが、一人を除いて他の人間には分からなかったらしい。
 アキトも八雲の質問になんともなかったかのように答えている。



「正直言って草壁が何を考えているのか判らなかったんですよね。
 地球に対して強攻策なのか、和平路線なのかそれすらも。
 従って草壁が木連の第一人者であることは直ぐに分かったんですが、近付くのは危険であろうと思いまして。」



 アキト達にしてみれば草壁が手も足も出ないところまで世論を味方につけてしまえば、
 草壁の本心がどんなものであっても大丈夫であると考えたのであったっけ。



「ふむ、そうすると南雲殿は論外で、北辰殿も影響力はないからな。
 残りが西沢殿と私になって、優人・優華部隊を持っている私が最適であったという訳か。」



 またもや出てきた北辰の名前に、やはり反応してしまうアキトであった。



「ええ、和平路線でありながら軍内部で力も持っている。
 またお二人共に影響力があるという、信じられないぐらいの優良物件でしたよ。」



 アキトが少し茶化しながら結論を言った。
 その物言いに舞歌もつられる様に笑い、雰囲気は一層和やかなものになった。
 八雲も今迄の話で納得がいったらしい、次の話題に移った。

 先程と同じ様にちょっと思い付いた、そんな感じで言葉を発する八雲。



「それでアキト君。
 君は北辰殿に何か怨みでもあるのかい?」





 シ―――――――ン






 先程までの雰囲気は音をたてて崩れ去り、文字通り凍て付いた雰囲気となっってしまった。
 アキトはその台詞を言われた瞬間は、その言葉の意味が理解できなかったようである。
 しかし一瞬の後に理解した後は、物凄い殺気をだしながら八雲を睨みつけた。

 ルリは慌ててアキトの様子を窺い見た後冷や汗をかいて下を向いてしまい、ラピスはアキトにぎゅっとしがみ付いている。
 舞歌でさえアキトの殺気とルリとラピスの様子に引き気味である。
 そんな中で唯一八雲一人が悠然とお茶を飲んだ後、もう一度問いかけた。



「聞こえなかったようだね。
 北辰殿に対して何か怨みでも持っているのかい?」



 その台詞を途中で遮るようにアキトが叫ぶ。



「怨み?
 ああ、持っているさ、それも半端じゃない怨みを!!



 叩き付けるかのように、そして吐き捨てるかのようにアキトが言う。



「あいつはな、俺から全てを奪い去っていったんだ!
 突然目の前に現れたと思ったら、俺の大切な家族も夢も希望すらも!!
 俺の夢はコックになる事だった。
 それなのにあいつに体中を引っ掻き回されて、今じゃ味を見分ける事も出来ない。
 五感全てを奪われたと言ってもいい程俺は何も出来なくなった、全てあいつの所為で!!



 アキトの口から出てくる言葉は、言霊が宿っていたならば北辰を呪い殺していただろうというほど禍々しいものだった。
 八雲はそんなアキトの様子を静かに見た後、話を続ける。



「アキト君、君と北辰殿の間に何があったのかなんて私は知らないし、また知りたいとも思わない。
 ただ、若しもアキト君の言う通り北辰殿が本当にその様な卑劣な行為をしたのであったなら、罰せられなくてはならない。
 私だって、舞歌がその様な目にあったのならば、憎んでしまうかもしれないし復讐したいと思うかもしれない。
 しかし、だからと言ってアキト君が自分勝手に復讐して良いという訳にはならない。
 何故なら、自力救済は認められていないのだから。
 恨みを晴らす為になら何をしても良いというものではないのだ。
 それは唯一裁判によって決せられなくてはならない。」



「八雲さん。
 八雲さんのお話はよ〜〜く解ります。
 でも、裁判を起こしても立証できない犯罪というものはいくらでもあります。
 それに北辰は俺が証拠を集めようとした際に、証拠隠滅の為だけにコロニー…とっ、とっ、とっ、え〜〜と、
 北辰に関わりのあった人だけでなく、無関係の一般人を巻き添えにした集団殺戮をして俺の手に証拠が入らないようにしたんです。
 そんな人間に、そんな生温い手は通用しません。」



 コロニーを落としたと言いそうになって、慌てて表現を変えたアキト。
 コロニーが落とされたのは未来でだからな、どこのコロニーか聞かれても答えられる筈がないから誤魔化したのだろう。

 幸い八雲はそこについて突っ込んで聞くつもりはないようだ。



「アキト君、それじゃあ駄目なんだよ。
 自分の手による復讐という事を思い続けている限り、復讐は復讐を呼ぶだけ……何時まで経っても憎しみが消えることはない。
 罪は罪として贖ってもらったうえで、人は許し合わなければいけない。
 そうしない限り負の連鎖を断ち切る事が出来なくなってしまうのだから。
 それにアキト君。
 君は地球と木連を和平に導こうとしているのだっただろう。
 木連に、百年前の恨みを捨てさせて、地球と共存させようと。
 その計画の中心者自身が自分の怨みを捨て去る事が出来なくて、一体どうやって木連の人々の間にある恨みを捨て去る事が出来ようか。
 人を説得する為には、自分で率先して成し遂げられなければいけないのはわかってるよね?」



 八雲の静かに言い聞かせるような台詞に耳を傾けるアキト。
 アキト自身にも理解は出来ているのだろう、復讐を求めていけば矛盾が出てきてしまうという事は。
 だが、頭で理解できるのと感情は全くの別問題だからな……

 黙ってしまったアキトを心配そうな目で見るラピス。
 手をギュッと握り締めて、何も言う事が出来ず見守る事しか出来ないルリ。
 二人の心は同じであろう。





 突然アキトが顔を上げて、苦しそうなそれでも吹っ切れたような顔を見せた。



「正直言って、北辰を許せる時が来るとは思えません。
 でも地球と木連の間に平和が訪れるまではそれを優先させ、自分勝手なことをしないと約束します。
 今の俺に言えるのは、これが精一杯です。」



 アキトの様子を見れば、これ以上の譲歩が引き出せないのは八雲でなくても一目見れば解る。
 それでも八雲は確認するのだった。



「アキト君。
 それは地球と木連の平和の為ならば、北辰殿と手を握る事も厭わないという事なんだね。
 実際に命の危機には協力して助け合うような事も。」



「はい、平和が訪れるのであれば、北辰の股だって潜りましょう。
 しかし、未来において北辰が一般人等を無差別虐殺や非人道的行為を行った際には、手を汚し北辰を殺す事も辞しません。」



 そのアキトの表情を見て、八雲は何か思ったらしい。
 手を

 パンッ!!!

 と叩いて、部屋に立ち込めていた重苦しい雰囲気を振り払った。
 そして笑顔を見せながら言葉を続けた。



「さっ、暗いお話しはこれぐらいにして、これからの事を話し合おうか。」











「それじゃあ、アキト君は最初に誰に声をかけるべきだと思う?」



 八雲が先生のような口調で尋ねている。



「う〜ん、やっぱりここは白鳥さんじゃないかと…」



 優人部隊の中で誰を一番最初に説得するかという事らしい。



「それじゃあ、舞歌は?」



「そうね〜、私だったら元一朗君かしら。」



 見事に意見が分かれてしまった。
 ルリとラピスは論外だから真っ二つに分かれたと言っても良いだろう(笑)
 そこで、先生役の八雲の意見は、



「うん、二人の意見は良く分かった。
 簡単に纏めてしまえば、攻め易い所からいくのか、難しそうな所からいくのかという事だね。
 で、この場合は私達の立場が大事になってくる。」



「立場?」



「そ、立場。
 普通に考えるのならば、攻め易い所からって言うアキト君の考えは正しい。
 戦略の基本中の基本と言っても過言ではないだろう。
 でも私達は彼らの上の立場にいる。
 従ってこの場合は入れ替わって、難攻不落が予想される元一朗君から説得するのが一番いい。
 それで、彼から九十九君なんかを説得させれば完璧だね。」



 八雲の考えに深く感じ入っているアキト達。
 舞歌はそれぐらいの事は簡単に読めていたのであろう、何と言っても舞歌なのだから。

















 ピ〜〜ンポ〜〜〜ン

 東家のチャイムが鳴らされた。



「月臣ですが、今回は一人で来いとの事だったのですが…」



『ああ、元一朗君。
 もう、待ちくたびれてしまったわよ、さっさと上がってきて。
 あっ、玄関の鍵は開いてるわよ。』



 緊張している月臣の声とは対照的に軽やかな声がインターフォン越しに聞こえてきた。
 それでは、っと家に上がるもののどの部屋に行けばいいのか解らず、玄関で立ち往生してしまう。

 そんな状況を見かねたのか、お手伝いさんの様な服を着た美少女が奥から出てきた。
 その美少女の髪は桃色で、瞳の色は金色をしていた。


 勿論ラピスだ。



「月臣さんですね。
 八雲さんがお待ちになられています、こちらへどうぞ。」



 言い終わるとお辞儀をして、上げた顔にはにこりとした笑いがくっ付いていた。
 それに対して、月臣は柄にもなく照れてしまっているようだ。



「あっ、んっ、ゴホンッ!
 宜しくお願いします。」



 堅苦しい挨拶をした後は、ただ黙ってラピスの後をついている。


 そのラピスが月臣を離れに案内して来た。



「こちらで八雲さんはお待ちになられております。
 どうぞ、お入り下さい。」



 そう言って頭を下げるラピス。
 見事に訓練されている動きであり、一連の動きに美しさがあった。
 何回も練習を重ねたんだろうな……

 月臣は会釈を返しながらも、頭の中は既に何故呼ばれたかの方に移っていた。



「失礼します。」



 若干の躊躇の後に襖を勢い良く開けた月臣。
 部屋の中央で待っているのは八雲と舞歌の二人だった。



「ああ、やっと来たわね。
 もっと早くに来てくれなきゃ。」



「いや〜、もう少し遅かったら舞歌に殺されてしまう所だったよ。
 首が繋がっているうちに来てくれて嬉しいよ。」



 月臣が部屋に入るやいなや聞こえてきたのは、そんな二人の声だった。
 東兄妹の間では意味が通じているようだが、第三者にはさっぱり解らない。
 特に入ってきたばかりの人間には。



「あの、お話の筋が理解できないのですが……」



 月臣の困惑した様子に今更ながら、置いてきぼりにしてしまった事に気付いたらしい。



「ああ、舞歌が早くお昼を食べたいってね。
 元一朗君が来るのを今や遅しと待っていたという訳なんだよ。
 だから後三十分も遅かったら、舞歌に殺されていたかもってね。」



「は、はあ〜…。」



「まあ良いね、そんな事は。
 取り合えずお昼にしようか、食べてきてないだろう?」



「えっ、ええ。
 わざわざご連絡を頂きましたから。」



 その様子に満足して、八雲が舞歌に頷く。



「じゃあ、彼に伝えてくれ。」



「うん。」







「失礼します。」



 そう言って入ってきたのは髪の毛の色素の薄い、これまた金色の瞳をした美少女。
 いかにも『お手伝いさん』というような着物を着ている。

 そう、ルリである。


 白い肌と透き通るような髪に良く似合っている。

 そんな格好のルリはお盆を持って入ってくると、一品ずつ丁寧に並べていく。
 その量は結構あり、二、三度部屋を出たり入ったりを繰り返さなければならないほどであった。
 全てを並べ終わるとルリは部屋の隅に退いて、頭を下げて一言挨拶をしてから出て行った。



「ごゆっくりどうぞ。」



 こちらもラピスに負けず劣らず美しい動作であった。
 やはり色々失敗を繰り返したのだろう。



「じゃあ、冷めないうちにどんどん食べて。
 話は食べ終わった後でも充分だから。」



 八雲の声で食事が始まった。















「どう、美味しかった?」



 食後のお茶を飲みながら舞歌が月臣に聞く。



「はい、とても。
 今迄食べた事もないような美味しい料理ばかりで、 有り難うございました。」



 その返答に気を良くしたらしい舞歌が、ふと思い付いた、と言うように言葉を重ねる。



「うん、それじゃあ折角そこまで褒めてくれたんだから料理人にも直接言葉をかけてよね。
 今呼んで来るから。」



 そう言うやいなや、舞歌の姿は既に消えていた。
 月臣が止める間もなく。

 慌てた様子で八雲に助けを求める月臣。



「八雲様、何と声をかけたらいいんでしょう。
 こんな事一度も経験がなくて。」



「そんなに堅苦しく考えなくていいよ。
 さっきと同じ様に自分の素直な気持ちを言えば良いんだから。」






「失礼します。」



 そう言って入ってきたのは当然ながらアキトであった。
 アキト自身も今呼ばれるとは思っていなかった為、内心どきどきしながら部屋に入ったのであった。
 それに過去では自分を鍛えてくれた月臣がなかにいるのである、緊張するのも無理はないだろう。
 そんなアキトの様子以上に月臣の方が固くなっていた為に、挙動不審だとは思われずにすんだが。



「あっ、とても美味しかったです。
 今迄の人生で食べた事も見た事もないような料理ばかりで。
 また、是非食べたいです。」



 自分で一生懸命考えながらの台詞はアキトの胸に沁みこんだ。



「有り難うございます。」



 アキトはその一言しか言えず、逃げるように部屋を出たのであった。










「元一朗君。
 君は地球についてどう思っている?」



 直球で攻める気らしい八雲。



「地球、ですか…」



 八雲が一体何の為にこの様な事を言い出すのか理解できない為に、少し警戒しつつも結局思っていた通りを言う事にしたらしい。



「百年前に卑怯卑劣な手段で我々のご先祖様をこの地へ追い払った憎むべき敵。
 端的に表現しますと、倒すべき敵ですね。」



「それは、地球人全員を?
 それとも政府のみ?」



「あの時の政府を支持していたのは彼らです。
 そして今の政府を支持しているのも彼ら自身です。
 その事に責任を取るべきでしょう。」



 真っ直ぐ前を向いて一言の元に言い切る月臣。
 そんな月臣の様子に一つ息を吐きながら舞歌に合図を送る。
 それに応えて、舞歌が隣との襖を開けるとそこにはアキト達三人が座っていた。

 それに驚いている月臣に対して八雲が更に爆弾を投下する準備にかかる。



「彼らについては先程会っているね。
 どう思った?」



 話しがあっちこっちに飛び回るので、ついていくのが精一杯になっている月臣。
 質問の内容を深く考える事もなく、頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してしまう。



「どうって………
 可愛らしく守るべき人だとか、それに美味しい料理を作ってくれて有り難いとかですが……」



 それを聞いて舞歌がにやりと笑いながら八雲が用意していた爆弾を奪って投下してしまう。



「彼ら――――アキト君、ルリちゃん、ラピスちゃんって言うんだけど、彼らは全員地球人よ♪」



 月臣は脳の回線が切れてしまったかのようにボーゼンとしている。
 暫く経ってからようやく再起動に成功すると、今度は腰に手を持っていこうとするがそこにお目当てのものは既になかった。



「あっ、腰にあった危ないものはさっき外させてもらったわよ♪」



 舞歌のその台詞に更に血が上りかけたが、それでも落ち着きを取り戻したらしい。
 八雲に食って掛かる。



「八雲様、何故ここに地球人がいるのですか!!
 八雲様は裏切り者なんですか!!」




 ここが離れでなかったなら家中に響き渡っていただろう。
 それすらも予想して離れにしておいたとしたら、さすがとしかかけるべき言葉が思いつかない。



「落ち着きなさい、元一朗君。
 私は裏切ってなぞいない。
 これからゆっくり説明してあげるから先ずは座りなさい。」



 八雲に大人の対応をされ渋々ながらももう一度席に戻る事にはしたらしい。
 アキト達とは反対側に移動しているが。



「さて、細かい事を言ってもしょうがないので簡単に言ってしまえば、アキト君達は地球と木連との戦争を回避しようとやってきた。
 その為に木連の中にも地球と協調していこうとする人間がいないかと探していたのに私が引っ掛かったという訳だ。
 だからアキト君達と知り合って未だ一月どころか二週間も経っていない。
 ここまではいいかな?」



「どうやってこの木連に潜り込んだのか等疑問がありますが、先ずは。」



「うむ、で私も話を持ち掛けられて最初は戸惑ったのだが、最近の好戦ムードには危機感を抱いていたし、
 私自身和平派であることからも力になる事を約束した。
 それで最初に君を説得しようと思ったのだが。」



「八雲様。
 失礼ながら地球人どもに誑かされたのではないのでしょうか?
 地球人の言う事など信用できません。
 核を撃ち込んだ者の子孫ですぞ。」



「元一朗君、何時まで怨みを抱き続ければ気が済むのかい?
 今度我々木連が地球に対して侵攻したりしたら、地球人も我々に対して怨みを抱きそれは凄惨な殺し合いにしかならない。
 それに核を撃ち込んだと先程から言っているが、一般人はその事件も知らなければ、我々が生き延びている事すら知らないという。
 全て政府の上の方で情報が閉ざされてしまっているそうだが。
 アキト君達はそれを偶然知ってしまったが為に、命を狙われぎりぎりのところで逃げてきたという。
 それでも一般人の責任を問うのか、問えるのか、彼らだって同じ人類なのに。」



 言葉を続ける八雲。



「先程君はルリ君やラピス君に対して可愛い、守ってやりたい等と言ったが彼女達が地球人であるというだけで、
 その言葉は撤回されてしまうようなものなのか?
 アキト君に美味しかった、また食べたいと言ったのは嘘だったのかい?
 地球の料理だというだけで美味しくなってしまうものなのかい?
 そんなに君の言葉は軽いのか?
 違うだろう、今とさっきと何が変わった?
 何も変わってはいない、ただアキト君達が地球人であったというだ事と、それに対して君が反感を抱いた事以外は何も。
 実際に接してみれば同じ人類であり、我々木連の故郷も元々は地球であるのは間違いない。
 君だってアキト君達と会って我々との違いが感じられたかい?」



 一度そこで言葉を区切り、お茶を飲んでから更に続ける。



「確かに百年前の事は決して許されない事である。
 だからと言って、その責任を何も知らない地球の一般人にまで求めるのは間違いだと思う。
 戦争になればその皺寄せはどうしたって底辺にいる人間の肩にかかってしまうのだから。
 そろそろ地球と新しい関係を模索してみるいい時期だと思うが?」



 八雲の長い話が終わった。
 その場にいる人間の視線が一箇所に集まる。
 その視線を受けた人間は一言だけ言葉にする事が出来た。



「八雲様のお話しは良く解りました。
 ただ、少しだけ、もう少しだけお時間を頂けないでしょうか。
 ゆっくり考えたいのですが。」



 その口から出てきた言葉は期待通りとはいかなかったが、前向きな返答である事には変わりはない。



「元一朗君。」



 八雲が声をかけ、月臣の目を覗き込む。
 それに対して月臣の方も真っ直ぐ目を見返してきた。
 それを受けて八雲が笑いながら話しかける。



「解っているとは思うけど、この話は誰にも内緒だからね。
 親兄弟はもとより、友人―――君の場合は九十九君や源八郎君達に漏らしてしまいそうだが、それは許されないからね。
 それさえ解っていてくれたなら、今日の所は帰ってくれて構わないよ。
 でも出来るだけ早く返事を出してくれると嬉しいかな。」



 月臣は一礼して東家を辞去していった。












後書き
 八雲ファンの方、鋼の城様、申し訳ありません(平伏)
 私の力では、八雲を書こうとしてもこの程度になってしまいました。


 説得工作って難しいですね。
 あまり説得力がないのは私の力がないだけです(爆)
 従って、そこには突っ込まないで頂けると幸いです(核爆)

 それにしても、八雲がいるとと舞歌の存在感を出すのが…………悪戯にしか見出せない(笑)
 アキトも影薄いし………


 

 

 

代理人の感想

う〜〜〜〜〜む・・・・・

やっぱり死ななきゃならないキャラ

だったのかな、八雲って(汗)。

余りにぱーへくとすぎる設定で使いにくいったらありゃしない(滝汗)。

舞歌が参謀かにぎやかしにしかならんし(爆汗)。

 

 

 

 

・・・・そこ、「清音と美星みたいだ」なんていわないように(爆)。