機動戦艦 ナデシコ
〜二人の王子様〜
第二話『俺の選択、私の想い、僕の‥』
スモモの氷菓子
〜１〜
「ア〜キト、話って何？」
私は朝食を食べ終わって、アキトに話し掛ける。
アキトの仕事場である、ナデシコ食堂。そこの料理長ホウメイさんのお料理はとっても美味しく、食べ終わると朝から気持ち良い気分になる。少し前まで学んでいた大学の食事は美味しくなくて、「軍人が美食家だと良くない」との一般的意見から、そうしてたらしいけど（それを聞いて「平和ボケしている軍隊自体、問題だけどな」とリョウスケは皮肉を言ってた。）美味しい料理は人を幸せにして勉強も頑張れる事を、大学の経営者の人達も気付いて欲しいな。
それに食堂の雰囲気自体も良いし。『ナデシコ』のみんなが毎日ここで顔を会わせる事を考えて、プロスさんは食堂の人選には特に力を入れてたみたいで。どんな料理も和風・洋風・中華・エスニック・アフリカ、その他色々な国の料理に精通しているホウメイさんと、その助手兼ウェイトレスで今も明るい声で頑張ってる「ホウメイ・ガールズ」の５人の女の子達が『ナデシコ食堂』を盛り上げていて、アキトは食堂での唯一の男の子として力仕事を任されたり雑用をしたり、ホウメイさんの指導で料理、中華料理の特訓をしてる。
昨日の晩、約束通りアキトが私の為に愛情タップリ♪のラーメン定食を作ってくれて本当に嬉しかったけど、ホウメイさんの料理に比べると、今イチの味だった。それを素直に伝えるとその晩、アキトは一人で一生懸命、料理の修行をしてた。伝えた時、私は辛かったけど、やっぱりアキトはユリカの王子様だから、私の気持ちをキチンと受け取って頑張ってくれてるんだよね。
「私のサイズは９号だからね、アキト」
「はい？」
「婚約指輪のサイズだよ。アキトがくれるならユリカどんなのでも良いよ、だってアキトの気持ちが一杯詰まってるんだもん」
「だから、どうしてそんな話になるんだよ、ユリカ！」
もう、アキトたら照れ屋さんなんだから♪ユリカが、アキトの気持ちをしっかり受け止めてるの判ってるのに♪♪‥あれ、どうしてタメ息付いてるのアキト？
「タメ息付いてると幸せが逃げちゃうんだよ、アキト」
「お前のせいだ、ユリカ」
「もうタメ息付いちゃう位、幸せすぎるんだね♪」
「ハァ……俺がお前に聞きたいのは、俺の両親についての事だ」
アキトのお父さんとお母さん？お父様から聞いた話では、二人共アキトと一緒に亡くなってしまったと聞いてたけど、アキトは生きてたし。どうして私にそんな事聞くのかな。
「お父様からテンカワの家族はみんな事故で亡くなったと聞いて、それが信じられなくて私、必死にアキトと連絡取ろうとしたんだよ。でも、連絡全然取れなくて」
「何、白々しい事言ってんだよ」
「白々しくないもん！酷いよアキト！」
「じゃあ、教えてやる。俺の両親がどうして死んだか」
そう言った後、アキトが喋った事は。私がお父様の転勤で火星から地球へと旅立った直後に、クーデターが起きて、クーデター自体は直ぐに鎮圧されたけどその混乱の中、アキトの両親が殺されたと言う事だった。そして、アキトがクーデターの記事や噂から導き出した事は、宇宙軍が火星での影響力を増す為に行った茶番劇ではないかと言う考えで。
「もし、お前の父さんがそれに関わっていたのなら、俺は‥お前を殺す」
「コロス？‥‥♪」
…私は、ハードボイルドなアキトとお父様の間で二人の誤解を解こうとする健気な女性になっちゃうんだね。で私は、誤解が解けないまま遂に対決してしまう二人の間に入って命懸けで最後の説得をするの。勿論エンディングは、二人の誤解が解けてお父様やみんなの祝福を受けながら、私はアキトと結婚するの…ロマンチック〜♪♪♪
「ハードボイルドに決めるなら、飾り気が無いプラチナかシルバーの指輪だよね、アキト♪（ハ〜ト）……あれ？？」
「ハルミちゃん、この大皿は此処に置いたら良いんだね」
「はい、テンカワさん。やっぱり男の人が居ると助かります」
「まだ俺、料理下手だから、こんな事しか手伝えなくてゴメン」
‥アキトから話し掛けて、ユリカを無視するなんて酷ーい！ユリカ、怒ったんだから。プンプン！！
〜２〜
「‥で、アキト君の頭にコブが出来て、ホウメイさん達の邪魔をしたユリカは罰として食器洗いをさせられていたと言う事なんですか、ホウメイさん？道理でなかなかブリッジに出てこないと思えば‥自業自得です。僕も罰として、もう少し事務処理量増やしましょう」
「充分に反省していたから、もう良いよ副艦長。はい、注文の牛丼定食だよ。‥それにしても惚れ惚れする茶碗だね。まさか自分の茶碗と汁茶碗を持ってくる人間がいるとは思わなかったけど、その茶碗じゃ下手な料理を盛れないね。調理するこっちの気力を高める良い器だよ」
「父の遺産です。埃を被って飾るよりも、割れても良いから本来の目的の為に使った方が良いと思いまして」
「心配しなさんな、割らせないよ。ほら、『両手に花』で待たせちゃ悪いだろ」
ホウメイさんの言う通り、確かに僕は“ある意味”『両手に花』の状態で食堂に来ている。彼女達が座っているテーブルに近付く程、食堂内男性陣の視線が鋭くなって席に着くと共に怒りやら嫉妬の視線に僕は囲まれた様な気がする。でもその中、当の彼女達はと言うと。
「夕食に牛丼定食なんてリョウ君、男の子だねえ。ルリルリ、初めて食べるカレーライスはどう？」
「…おいしいです、ミナトさん」
「じゃあ、ワタシのパスタもちょっと食べてみる？」
「いえ、麺類苦手なんで」
ミナトさんとほっしーが和気藹々(わきあいあい)な雰囲気の中、喋りながら食事を楽しんでいる。僕はその会話の邪魔をしたくなかったから、黙々と食事に勤しんでいたのだが。
「リョウ君、美女と美少女の２人を誘った人が黙っているのは問題あるわねえ〜」
「視線が痛くなる発言をしないで下さい、ミナトさん」
「ふふ、だって事実だし、素直に諦めるコト。それにワタシの大事なトコロを見ちゃったんだから、ちゃ〜んと責任取るコト」
「ミナトさん。…人、からかって楽しいですか？」
「もっちろん♪」
笑顔で答えるミナトさんに、僕は溜息を付く。「当然の結果です、諦めて下さいオギさん」と言うほっしーの慰めに応じつつ、僕は前に座っている小悪魔のミナトさんと後ろから殺意に似た男性陣の視線を受け止めながら、何とか食事を進める。
事の始まりは今朝、僕がほっしーを見かけた事だった。
ほっしーが、ハンバーガーの自販機でチーズバーガーを買って食べていた処に僕が偶々通り掛かって、挨拶をしてから彼女と話しているうち。彼女が今までハンバーガー以外の食事をした事がないと言う事を知り、僕は何とかしたいと思った。『食』は人間の三大基本欲求の一つで貧相な食事環境は罪だと僕は考えているし、ほっしーにとっては傍迷惑かもしれないが、そんな食事環境に置かれた彼女に同情した処もある。それと麺類が苦手だとも言っていたけど‥延びたインスタントラーメンは誰でも不味いと思うぞ、ほっしー。
で僕は、ほっしーを食事に誘う事に成功したのだが、食事の会話で何を喋るべきか悩んだ。過去の事、研究所に居た当時の事を根掘り葉掘り聞くのは迷惑だと、僕がほっしーの立場なら絶対に嫌がる事だと思っているから、それに関しての会話はするべきではない。しかし、女の子に対する会話内容なんて直ぐさま思いつく物でもない。‥ユリカみたいな、脳天気女ならいざ知らず。そこで（まともな）元女の子のミナトさんと３人で食事をすれば会話も弾んで、ほっしーも食事の楽しさを感じるに違い無いと考えて、僕はミナトさんも食事に誘うべくコミュニケーターを繋げたのだが‥朝から女性の個室に、特に朝が弱い女性には連絡を入れる物ではないと思い知らされた。
ネグリジェの色っぽい寝間着姿で現れたミナトさんは寝惚け気味のまま、僕の要望を聞いてくれた。そして、そのまま制服に着替え始めた。勿論、コミュニケーターが繋がったままの状態で‥。僕も男だから見るべき処は見たと言うか、みとれてしまった。
見事なスタイルの裸。形が整っている乳白色の綺麗で豊満な胸、ピンク色の胸先までバッチリと。
ほっしーが声を出さなければ僕はずっと、みとれてしまったままに違い無い。でも、ほっしーの声でお互いの存在に気付いても、暫くお互い呆然と見つめ合ってしまい。不意に状況を把握すると２人同時に顔を真っ赤にして、ミナトさんは胸を隠しながら悲鳴を上げ、僕は謝りながら慌ててコミュニケーターを切断した。勿論、ミナトさんには顔を合わせた途端、「リョウ君のスケベ」と当然の事を言われ、現在もからかわれている最中だ。
「ミナトさんの姿が凄く綺麗で、ついついみとれてしまったんです。覗き見になったのは不本意な事で、本当ならもっと親しい間柄」
「たとえばぁ、恋人同士とか？でもそうなったら、見るだけじゃ済まないよねえ」
「返答に困る様な事を言わないで下さい。兎に角、本当にすいませんでした」
「じゃあ、リョウ君。責任取って本当に恋人同士になる？…困った顔、か〜わいい」
…いい加減にしてくれないか、この人。顔を合わしてから何度も謝っているのに、まだ僕をからかい足りないのか？不機嫌さを顔に出さない様にして、僕は遥さんの言葉に受け答える。確かに、遥さんの裸を見てしまった僕が悪いのは判っている。でも半ば、ほっしーの事より僕をからかって楽しんでいる彼女に、僕はどんどん腹が立ってきた。
「ほっしー、楽しく食事が出来たかな？」
「判りません。でも、食事は美味しかったです」
「そうか、食事が美味しかったなら、誘った甲斐があったかな。でも、誘った僕がロクに話し掛けられなくてゴメンな、ほっしー」
「いえ。まあ有難う御座います、オギさん」
「リョウ君、ワタシに謝ってばかりいたから、ルリルリの相手出来なかったよねえ。お姉さんもちょっと、つまらなかったかな」
「…いい加減にしてくれませんか、遥さん」
小さな子供と図に乗る人間は、下手に出ればドンドン付け上がるだけだ。本当に鬱陶しい。副艦長として、それなりの人付き合いをしなくてはならないと思っているが、もう限界だ。
「何度謝っても、人の弱気につけ込んで、貴女にからかい続けられた僕の方こそ、つまらなかったんですが。もう、いい加減にしていただけませんか？」
「‥そんな言い方酷いんじゃない、リョウ君」
「そうですね、お互いに不愉快な思いはしたく無い点で同意して下さって有難う御座います。では」
慇懃無礼を地で行く態度と台詞を吐いて、僕は席を立つ。呆気にとられている遥さんを後目に僕は食器を返却口に返しに行く。此方に注目していた男性陣とホウメイガール達は、慌てて視線を外し食事をしたり給仕の仕事を行う。チラッと僕に視線を向ける人も居たが、怒っている僕の顔を見て誰も口を開かず慌てて視線を元に戻す。そして、返却口に食器を返す。側に居たアキト君も僕の顔を見て口を噤み、何か言っている遥さんの声をミュージック代わりにして僕は食堂を出た。
全く鬱陶しい、自分の感覚を押し付けて人に話し掛けるんじゃない。後で何を言われようが、どうだって良い事だ。人から陰口を言われるのには慣れている、何時もの事だ。
さて、副艦長らしく職務に専念しよう。対人関係はユリカに任せて、僕は裏方で給料分の仕事をするか。
〜３〜
今日は平穏だよな。忙しい事には変わらないけど、昨日より気を遣わなくていいし。昨日は朝からユリカの妄想に付き合いつつ、俺は彼奴に両親の事を聞いたけど、やっぱり彼奴も両親が亡くなった原因は知らなくて、ただ俺の頭にコブが出来ただけだった。夕方は夕方で、リョウスケさんとミナトさんが喧嘩みたいになって、妙に食堂内が気まずい状態になったっけ。当のリョウスケさんは今朝、平然とした態度でルリちゃんと一緒に食事してブリッジに行ったから、ミナトさんとは仲直りしたのかもしれないけど、俺が関わる事でも無いし。さてと、朝食の時間帯も過ぎたから食器の片付けと昼食の下準備をしなきゃな。
『これから、重大発表があります。艦内のみなさん、全員コミュニケからの通信を聞いて下さい。』
メグミちゃんからだ。重大発表て何だ？クルー全員が聞かなきゃいけない事て、どんな事なんだろ。コミュニケの画面にプロスさんの姿が映し出される。じゃあ、プロスさんが発表するのか。普通、戦艦での重大発表する人って艦長だと思うけど…ユリカの姿を想像する事が、どうしても出来ないよな。
『今まで、ナデシコの目的地を明らかにしなかったのは、妨害者の眼を欺く必要があった為です。ネルガルが、わざわざ独自に機動戦艦を建造した理由は別にあります。以後、ナデシコはスキャパレリ・プロジェクトの一端を担い、軍とは別行動をとります。』
スキャパレリ・プロジェクト？何だ、それ？
『我々の目的地は火星だ！』
！！火星っ火星に帰れるのか！？フクベ提督の言葉に、俺はコミュニケの画面に注目し続けると共に喜びと言うか、それだけでは無い思いが頭を飛び交う。
火星のみんな大丈夫なのか？まだ生きてる人間居るのか？ユートピア・コロニーみたいな事が他のコロニーでも起きてたら？そして‥アイちゃん。無事にいて欲しい、俺みたいに奇跡が起きていてくれ！もし生きていてくれたら‥今度こそ、今度こそ絶対に助けてみせる、諦めるもんか！
『プロスペクターさん。何故この時期、地球すら侵略されているこの現状で火星に行かなくてはならないのですか？まず、地球の問題を解決する事がナデシコ、ネルガルのＰＲになると思いますが。』
『オギさんの意見も一理ありますが…多くの地球人が火星と月に植民していたと言うのに、連合軍はそれらを見捨て、地球にのみ防衛線を引きました。火星に残された人々と資源はどうなったんでしょう。』
『どうせ死んでんでしょ』
『それは判りません。ただ確かめる価値はあります。そして当社は』
「‥ンカワ、テンカワ！」
カァ〜〜ン
「うわぁ！！」
「こら、片付けまだ終わっちゃいないだろ」
「は、はい！」
ホウメイさんに怒られて俺は慌てて、中断していた食器の片付けを再開した。頭の上に乗っかっている中華鍋を元の棚に戻して。この鍋にお玉を叩かれて気を取り戻したんだ‥て、何時の間に鍋が頭に乗ってたんだ？？それから、この皿は向こうの棚に置いてと。
コミュニケからの会話を聴きながら、俺は仕事をこなす。そしてユリカが話をまとめる様な台詞を言って
『それでは、宇宙軍とも話が付いてるん』
『付いてる訳無いでしょうが。』
え？コミュニケの画面にムネタケ？タケノコ副提督だっけ？キノコ髪の人が銃を構えている姿が映ると共に
「動くな！」
「キャーーッ」
銃を持った人間が２・３人、食堂に乱入する。ホウメイガールズの悲鳴が聞こえると同時に、俺の方にも銃を向けられる。それを見た俺は慌てて両手を上げた。片付けていたお盆ごと上げてる姿は、傍目から見れば間抜けに見えるだろうなと思うけど仕方が無いよな。
〜４〜
ムネタケ副提督とその部下達が『ナデシコ』の各部署を制圧した直後、お父様が戦艦『トビウメ』に乗って来て、私とお話がしたいと言ってきた。
お父様は『トビウメ』だけでは無く護衛艦『クロッカス』・『パンジー』の２隻も引き連れて『ナデシコ』を半包囲してるけど、そんな事しなくても私はお父様、宇宙軍と争うつもりは今の処無いし、私もアキトの事について話をしたいから、お父様の望み通り『ナデシコ』のマスターキーを引き抜いて『ナデシコ』を停止させた。そして『トビウメ』へ、私とリョウスケ、プロスさんの３人がヘリで向かっている最中だ。
お父様は相も変わらず心配性で、３日前に別れたばかりなのに目を潤ませて「やつれたんじゃないか、ユリカ？」なんて言って。いつもの事なんだけど私、そんなお父様の方が心配だな。
「そう思わない、リョウスケ？」
「『目に入れても痛くない』程なんだから、いいじゃないかユリカ」
「あれ？『目に入れても痒くない』じゃなかったっけ？」
「『痛くない』だって」 「そうだっけ？」
「しかし、宇宙軍も落ちぶれた物だな。強盗行為、そのものじゃないか」
「まあ、オギさん。その辺りは、これからの交渉でどうとでもなる物ですから」
そんな会話の後、『トビウメ』に降り立った私達３人は艦内を誘導されて行く。私はアキトの事を聞きたいだけだから、『ナデシコ』の交渉はプロスさんとリョウスケに任せると２人に言って了解貰ったから気が楽なんだけど、リョウスケの顔を見てある事を思い出した。それは『ナデシコ』の交渉にも関わる大事な事だから、私はそれを彼に問い掛ける。
「リョウスケ、ミナトさんと喧嘩しちゃダメだよ」
「何だ急に？大体、僕は遥さんと喧嘩していないぞ」
「ほら、ハルカさんて言った。昨日までミナトさんって言ってたのに。ヤマダさんとは全然お話もしないし、ミナトさんとまで喧嘩して。『ナデシコ』のみんなとはこれからずっと協力しあっていくんだから、みんなと仲良くしなきゃダメ。特にリョウスケ、お友達作るの下手だからユリカ心配だよ」
「山田の奴は向こうから話し掛けないだけだよ。それに僕は馴れ合いが苦手だから、クルーとの対人関係はお前に任せて僕は裏方で頑張る方が良いと思うけどな」
「良くない。だってリョウスケに任せる『ナデシコ』の交渉も、お互いの主義主張を摺り合わせて話し合いをするんだから、お互いの事解り合う努力をしなきゃいけないんだよ。リョウスケみたいに『人は人、自分は自分』みたいな考え方じゃ合意なんか出来ないんだから、今回の事も含めちゃんと反省してみんなと仲良くする事。判った？リョウスケ副艦長」
そう言い含めたけど、やっぱり心配だな。途中でリョウスケとプロスさんの２人と別れた後、お父様の所に向かいつつ、私はリョウスケの事を考え続ける。
『クルーとの対人関係はお前に任せて…』か。
リョウスケは本当に人付き合いが下手で、小学生の頃から周りから一歩引いたお友達付き合いをしていた。それは、彼のお父さんが亡くなった１５才頃から酷くなって、一人で生きていく為に色々頑張ってた上に“あの事故”に巻き込まれた事が原因で、今のリョウスケは、私以外の人とは表面的な人付き合いしかしていない。‥あの時。リョウスケが居なかったらもっと酷い状況になってたのに、みんなリョウスケの事酷い目で見て…。本当は少しお茶目さんで、人の事を思いやれる優しさと強さを持ってる男の子なのに。どうしたらみんなに、リョウスケの本当の姿を見せる事が出来るかな。
そんな事を思い悩んでる内に、私はお父様が居る応接室に案内されて１人で部屋に入る。入った部屋の中に見えたものは、軍服を着て座ってるお父様の姿と、その前のテーブルに沢山ある何種類ものケーキだった。
「ユリカ、お腹すいたろ。ほらフタバヤのケーキだよ。色々一杯買ってきたから、た〜んと食べなさい」
「はい、お父様、有難う御座います。それじゃあ、このショートケーキを戴きますね‥美味しい」
久々に食べた、フタバヤのケーキはやっぱり美味しく、食べてたショートケーキはアッと言う間に無くなった。もう一皿は何にしようかな。‥そう言えば最近、リョウスケが作ってくれるケーキ、食べて無いよね。特に私が大好きで一番美味しいカボチャのケーキを食べたくなっちゃった。今度お願いして、アキトの料理と一緒に食べ・・・そうだ！！ミナトさんやメグちゃんの分まで、リョウスケのケーキをいっぱい作ってみんなに食べて貰えば、みんなリョウスケに良い印象持つよね。うんうん、これで行こう♪
じゃあ、後はアキトの事をお父様に聞くだけだね。
「お父様。テンカワ・アキト君憶えてます？」
〜５〜
『ナデシコ』が軍人達に占拠され、俺達は食堂に監禁されてる。２００人以上のクルーが乗っているから当然の事なんだけど、他にも何カ所か監禁場所があり、軍人達以外は自由行動が出来ない状況だ。俺が監禁されている食堂には俺の他にも、ブリッジに居たメグミちゃんやフクベ提督達と、整備班長のウリバタケさんにパイロットのガイ等の主要クルー達、そして食堂に居たホウメイさんとホウメイガールズのみんなが一緒だ。みんな何もする事が無くて意気消沈と言うか、雑談して暇潰している。
ユリカが『ナデシコ』のマスターキーを引き抜いたせいで、現在『ナデシコ』はエンジン停止状態のまま、海面を漂ってるだけだ。勿論、電気も最低限しか使えないからナデシコ食堂は開店休業、サンドイッチ等の軽食は出来るけど火を使う料理は、ほぼ出来なくなってる。ユリカの奴はプロスさんとリョウスケさんを引き連れて彼奴の父さん、ミスマル提督の所へ交渉に行ったとゴートさんから聞いたけど、どれ位時間が掛かるか全く判らないとも言ってたよな。昼食は今さっき、サンドイッチを作ってホウメイガールズのみんなが、他の監禁場所に配って帰って来た処だから要らないし、夕食の調理を準備するには早過ぎるし、俺も何もする事無いな。ユリカの帰りを待つだけか。
「アキト君、食事はムリだけど飲み物位は出来るよねえ。ワタシ、アイスコーヒーお願い。ルリルリは、何にする？」
「何でも、良いです」
「リョウ君みたいにつれない事言うんだ、お姉さん悲し〜い」
ミナトさんとルリちゃんが俺の前に座って飲み物を注文した。ルリちゃんはコーラを注文したので、二人の前にアイスコーヒーとコーラを置く。その時、ミナトさんが俺に話し掛けた。
「アキト君、君とリョウ君、仲良いよね」
「…仲が良いと言えば良いかもしれないけど、ミナトさん達と同じ位です。リョウスケさんと仲良いのはユリカですし」
「やっぱりそうなんだ〜。…はぁ、ワタシ、リョウ君に嫌われちゃったかな」
「ミナトさん、気にしすぎです。今朝、オギさんと一緒に食事しましたが、ミナトさんの事悪く言ってませんでしたし、ミナトさんが昨日の事謝った時、オギさんも謝ってます」
「『此方こそ、すいませんでした遥さん。』てね。『ミナトさん』から『遥さん』か‥ちょっと悔しいな〜」
そう言ってミナトさんは少し悲しい顔をするけど、俺もミナトさん気にしすぎだと思う。俺の目から見えるリョウスケさんは、誰に対しても丁重な言葉と態度で接して、ちゃらんぽらんなユリカのアシストをキッチリこなしている、頼りがいがある人だ。ユリカより信頼出来てしっかりしているリョウスケさんの方が、遙かに艦長に向いてると俺は思うけどな。何でプロスさん、リョウスケさんを副艦長に決めたんだろ？ユリカを副艦長にすれば…ますます俺の所へ、彼奴は来るな。やっぱりユリカが艦長だった方がいいか。
そんな事を考えてる俺の耳に、ガイの気合い入りまくってる大声が聞こえてきた。
「何だ何だ何だみんなぁ、元気だせよォ！！」
「自由への夢は１日にして儚く終わり、また電化製品を改造する何時もの日常に戻るか…」
「みんな、諦めるな！よ〜し、俺が取っておきの元気が出るビデオ、見せてやる！これ見て、希望を取り戻せッ！」
「何をするつもりだ、ヤマダ」
「ガイ！俺の名前はダイゴウジ・ガイだと言ってんだろうが、ゴートのおっさん！」
そんな会話の後、ガイが取り出したのはかなり古い、骨董店で売ってる様な旧式のビデオデッキと１０枚以上あるビデオディスクだった。ウリバタケさんが食堂のモニターにデッキを取り付け、ルリちゃんの「いつも持ち歩いてるの？」との疑問にガイは「俺の…命だからナ」と決め台詞を言ってカッコつけ、そんなガイをメグミちゃんやミナトさんが少し呆れて見ている。ガイの奴、一体何を見せるつもりなんだろ？かなり古いディスクだから、中のデータも相当古い奴だと思うけど。
「ほら、いいぞ〜」
「さ〜〜、見ておどろけ〜〜。ディ〜〜スク、インサ〜〜ト！スゥイッチィ ゥオン！！」
ガイの掛け声と共に映し出された物は、古いアニメ。みんながそれを見て唖然とする中、俺の中で何かが引っ掛かる…どこかで見た様な絵と音楽だよなっ？！
「ああッ！！？『ゲキガンガー３』！！」
「そうォ！幻の傑作『ゲキガンガー３』。いや〜〜全３９話、もえもえッス〜〜」
「あれ？でもオープニングが違うじゃん」
「オープニングは３話でホントの奴になるんだよナ〜。って、アキト。お前この傑作知ってんのか？」
「俺が子供の頃、良く観たんだよ。‥だからガイが『ナナコさん』やら言ってたのが、妙に耳に引っ掛かってたんだ」
「アキト〜〜、お前は偉いッ！！俺は蜥蜴にビビリながらでも戦おうとした、お前を気に入ってたが、これで益々気に入ったぜ！俺達は魂の友だッ！！さぁー友よ、もう一度ゲキガンガー見て、今度こそ俺と一緒に蜥蜴共と戦おうぜ！！」
そう言って差し出したガイの右手に俺はしっかり握手する。そして第一話のサブタイトルが見えると、俺達二人は画面に釘付けになった。
…‥今見返して観ると、ありがちな話だし絵も古いよな。でも、今でもゲキガンガーを観てると幼い時と同じ様にワクワクするのは同じだな。
『ロクロウさん、すまない！ゲキガンブレ〜ド！』
「くぅ〜、いつ見ても泣けるぜ」
ガイが感動しまくってるから、みょーに冷静と言うか白けた俺は、ふと後ろを振り返ると。みんな、見事に白けきって画面を観てる。他にやる事無いし音が喧しいから、ついつい観てしまう位な感じだな、みんな。
「しかし暑苦しいな、こいつら」
「武器の名前を叫ぶのは音声入力なのか？」
「艦長達、まだ帰ってきませんね。ヒマだな〜」
「ぬ〜〜〜、違う違ぁーーう！これが、熱血なんだよ！魂のほとばしりなんだよォーーッ！こら、アキト！後ろ向くな、真っ直ぐ観て素直に感動しろッ！」
隣でガイがみんなに向かって熱血すると共に無理矢理、俺の頭の向きを修正する。で俺はガイに言われた通り、ずっとゲキガンガーを見続ける。
素直に感動ねえ…俺がゲキガンガーを観たきっかけは、ユリカにまとわりつかれるのが余りにもイヤだったから家へ走って帰った時、たまたま点けたチャンネルに写ってたのがゲキガンガーだったんだ。観た途端、面白いなと思ってずぅーと観て１話目が終わった後、次回どうなるだろうかとワクワクしたよな。‥次の日、いつも以上にユリカにまとわりつかれて、必死に「ゲキガンガーだけは観せてくれ」て頼み込んだっけ。俺が押しに弱い性格になったのは、間違い無く彼奴のせいだ。直ぐに泣いて人を困らせた上、彼奴の我が儘でどれ程大変な思いをした事か。でも、俺が良い事すると素直に喜んでくれたし、いつも笑顔で話し掛けてくれてたのは、ちょっと嬉しかったよな。
『公害をまきちらすキョアック星人！ ヒロシくんの敵だ〜〜ッ』
そうだよな、今見ればどんなに、ありがちな話で絵も古い、そして暑苦しい演出とキャラでも。俺はゲキガンガーに憧れたし、いつかゲキガンガーみたいな正義の味方になろうと思っていて、そして‥今でもその思いは変わらなかったんだ。今、ゲキガンガーを改めて観て判った。
『地球の自然を！！』
そうだ、俺は
『緑の地球を！！』
俺のやりたい事は
『俺達が守るッ！！』
強くなって、みんなを守りたいんだ！！
「おい、アキト。いきなり立ち上がって何だ？トイレ位、気合いで我慢しろッ！」
「違う！俺はユリカを、艦長を迎えに行く」
「「「エエッ？？！」」」
俺の言葉に、みんな驚いて俺に視線を集中させた。俺は自分が感じた事を引き続き言葉にして、みんなに問い掛ける。
「俺は火星に行きたい。行って、生き残っている火星のみんなを助けたい。たとえ軍人達や他のみんなが蜥蜴と戦争するしかないと決め付けてても、他の手段がある筈なんだ。スキャパレリ・プロジュクトを聞いて俺はそう思ったんだ。みんなだって戦争より他にやりたい事があると思ってるからこそ『ナデシコ』に乗ったんじゃないのか」
「「「………」」」
俺の思うがままに喋った言葉を、みんな沈黙で応えた。俺の目に映るみんなの表情は、俺の言葉に対する反論や意見よりも、どちらかと言えば賛成してくれてる様に見えるよな。そんな中、ガイだけは感激してと思うけど、大声で俺に賛成してくれる。
「アキトッ〜〜魂の友よ、良く言った！！おっしゃ〜！このダイゴウジ・ガイ様に、まっかせなさい！しかし、その前に！！」
「何だ、ガイ！」
「この回を見終わってからな」 「おう」
「「「おいおい」」」 「バカ？」
〜６〜
ユリカに頼まれて僕はナデシコの交渉をプロスペクターさんと一緒に行っているのだが、ハッキリ言って芳しくない。と言うか、僕にとっては交渉どころか喧嘩を売られているとしか思えない対応に終始している。
プロスペクターさんと別々に別れて交渉し合うのは良いだろう。ネルガルの社員のプロスペクターさんと軍人の僕とは立場も考え方も多少違うから、ある意味納得出来る対応だ。しかし、僕に対する質問がエステバリス関連に限定されているのはどう言う訳だ？
「ではオギ少尉、ネルガルの新機動兵器『エステバリス』は、木星蜥蜴共に対して非常に有効だと言う事かね」
「はっ、少佐。但し、『ナデシコ』の重力波ビームを受け続けないと短時間で行動が取れなくなります。…少佐、『ナデシコ』の情報及び運用についての小官の意見は」
「『ナデシコ』は宇宙軍で運用する。民間企業に任せる訳にはいかん。『スキャパレリ・プロジェクト』などと言う物で無駄な事されては困るのだよ」
無駄な事だと。自分達の、極東地域の発言権を拡大する為に使用する事がそんなに大切な事ですか、少佐殿。‥軍に編入されれば、ユリカと僕以外はまず解雇された上、替わりに軍のエリート部隊（自称）でも乗り込んで軍のＰＲに使われるのがオチだ。欲しいオモチャを取り合う子供の喧嘩と五十歩百歩のレベルで行っているネルガルと軍の利権争いか、全く馬鹿馬鹿しい。
「しかし、少佐。何時の日か火星奪還を行わなくてはならないのも事実です。ネルガルがわざわざ自費で、彼らには彼らの目的があるとしても、現在の火星の状況を偵察してくれると考えれば、有り難い事だと思いますが。また、ミスマル提督のご息女、ミスマル・ユリカ艦長の活躍をＰＲする事にもなりますから軍にも悪い話では無い筈です」
「火星への軍事行動はネルガルにして貰わなくとも、時期が来れば我々が行う。それに民間人だけで運用すれば蜥蜴共に撃沈されるのが確実だ、オギ少尉。その程度の事すら判らないのかね君は」
「お言葉ですが、少佐。少佐の懸念は小官にもあります。ただ、三ヶ月から半年間程、月方面でナデシコを軍と共同運用すれば少佐が仰っている懸念を、実験艦であるナデシコの不具合解消とナデシコクルー達の経験不足解消をはか」
「少尉、私は君の専門分野での意見を聞いているだけだ。艦の運用やら人員運用については、君より精通している者で決定している。私は君に、それを聞くつもりも、尋ねるつもりも無い」
どう言う意味だ？っ！‥成る程、そう言う事か！！少佐殿。
僕は内心の怒りを押し隠して、少佐にそれを問い質す。
「少佐、確かに小官は一身上の都合により、ＩＦＳを所有しています。しかし、小官は士官学校出身であって、艦運用・人員運用の教育を主に受けています。経験不足は判っていますが、小官の意見を黙殺する事は納得しかねます」
「…黙殺している訳では無い、少尉。ただ、その点に関しては君よりムネタケ大佐殿がはるかに精通している。出しゃばりは止めたまえ。私の話は以上だ、オギ少尉。下がりたまえ」
「………判りました、少佐殿。失礼します！」
‥くそったれが！！ある程度覚悟していたが、此処まで露骨に排除されるとはな。追い出された僕は近くの通路の壁に持たれ掛かり、伸ばした腕の先にある拳に苛立ちを乗せて壁に叩き付ける。鈍い音がすると共に振動が壁に伝わってくる。
『お互いの主義主張を摺り合わせて話し合いをするんだから、お互いの事解り合う努力をしなきゃいけないんだよ。』
相手にその気が全く無い場合、どうすればいいのかなユリカ？喧嘩の基本は安く買い叩いて高く吹っ掛けて売り付ける事だが、どうやって売り付けてやろうか。
怒りと屈辱感で一杯になった僕の意識に、ふと右手が目に入る。右手の甲に張ってある医療テープが剥がれかかっているのを確認した僕は、いつも胸ポケットに入れてある予備のテープに張り替えようとして、粘着力が無くなった甲のテープを引き剥がす。引き剥がした跡にあるＩＦＳが見えると共に、僕の意識は怒りから過去の思い出に向かう。
「…‥改造人間か」
ふと口に出た言葉に、僕は苦笑する。
（そうだった。排除されるのはいつもの事で、僕の居場所なんて全く存在しないんだったな。久々にそれを認識させられた程度で、動揺してどうする。）
それを思い出した僕の意識は、先程までの怒りから冷静さへと取って代わり、今後の行動を落ち着いて考え始めた。
さて多少なりとも、まともな交渉事に持って行く為には、まず話を聞いてくれる上官を探し出して話すべきだろう。少佐の話及び今までの事象からすると、今回の事件は、ムネタケ副提督は使い走りで極東地域担当軍の意志が働いている事が確認出来た。軍全体が相手じゃ、僕どころかネルガルでも苦戦しそうだ。
ではどうすべきかって、考えるまでも無い。コネだろうが泣き付きだと蔑まされようがミスマル提督、コウイチロウおじさんと話すべきだろう。はっきり言っておじさん、提督だけが僕の話をまともに聴いてくれて、それなりの打開策を検討しあえる相手だ。…提督に頼るのは不本意極まりないが他に手段が無い。
兎に角、今のナデシコのクルー達がクビにならない様にするには、宇宙軍とネルガル、双方の落とし所を見付けなくてはならない。軍にとってネルガルの『スキャパレリプロジェクト』は現在の戦略上、何のメリットも無いが道理的、つまり『軍は民間人を守る存在である』と言う点で、プロスペクターさんが言っていた「火星に残された人々の救出」と言う屁理屈を押し通せる可能性がある。ただネルガルのメリット、何故この時期に火星に行かなくてはならないかが、全く見えない事に問題があるから軍は、その辺りを用心していると解釈しても良いだろう…どう見ても子供の喧嘩、メンツを保つだけの低レベルな争いをかなり良く解釈すればそうなる。で、この状況下での僕の最善な行動・役目はと。『猫の鈴』・『二重スパイ』みたいな役目が精々っ！？何！
『トビウメ』の艦内に警報が鳴り響く。反射的に走り出そうとして僕はハッと気付く。
‥『トビウメ』の内部構造なんて全く知らないぞ、適当に移動してたら迷子になるな確実に。案内看板など見て移動するしかない。ブリッジに移動すべきか、ヘリポートに移動するべきか…取り敢えず、状況確認の為ブリッジに移動しよう。
〜７〜
「リョウスケ遅いね、プロスさん」
「オギさんは、また別の担当の方と個別に交渉していますから、時間が掛かっているのでしょう」
「でも、ネルガル本社は「独自でナデシコを動かす」と決定したんですよね」
「しかし軍の許可を貰えれば此方としても有難い事ですから、見込みは薄いでしょうが、オギさんには頑張っていただきたい処ですなぁ」
私はお父様と話をし終わって、やっぱりお父様はアキトの両親の事件には何も関わりが無く、アキトが生きていた事すら知らなかった様だ。少なくとも私の目には嘘を付いている様に見えなかった。でも、私にショックを与えたくないと言う理由で事件を事故として嘘を伝えた事は、少し怒って注意した。余計な心配を掛けたくないからだったと言ってたけど、それこそ大きなお世話だと私は思う。その後、ヘリポートに帰ってリョウスケとプロスさんの２人を待ってたら、暫くしてプロスさんが１人で帰って来て、ネルガルの決定を私に話してくれた処だ。
で、プロスさんの言ってる通り、リョウスケ頑張ってると思うけど、ちょっとムリかもしれない。だって宇宙軍は『ナデシコ』の性能に目が眩んで、今回の強硬路線を選択した訳だし。もし前回の戦闘で『ナデシコ』が苦戦しながら蜥蜴さん達を撃退したのなら、ムネタケ副提督は獅子身中の回虫だっけ？そんな感じで宇宙軍の為に色々画策して『ナデシコ』を利用しようとしたと思う。
それに『ナデシコ』が宇宙軍に編入されたら、軍の人達が乗り込んでみんなを追い出すに決まってる。つまり、アキトも追い出されるから絶対、宇宙軍に編入されるのはダメ！！そんな事する副提督には『ナデシコ』から退艦して貰って、みんなと一緒に火星の人達を助けに行かなきゃね。そうと決まれば『ナデシコ』に帰りたいけど…リョウスケ、まだヘリポートに帰ってこないな〜。あんまり遅かったら置いて帰っちゃうよ、リョウスケ。
そんな事考えてると、急に『トビウメ』から警報が鳴り響いて艦内が戦闘状態へ変化すると共に、近くの海面が急に盛り上がって巨大な物体が海面を割って飛び上がった。
…あれがチューリップだよね。映像でしか観た事無いから、こんなに大きい物とは思わなかったな。『クロッカス』と『パンジー』がチューリップに向かい始めたのを見た私はナデシコ艦長としての責務を果たすべく、ヘリに乗り込む。コクピットには、もうプロスさんが座ってて、私が乗り込むと共にヘリを発進させた。そして私は、『ナデシコ』に通信を繋げる。通信に出たムネタケ副提督は状況の変化に対応出来ず呆然としている様に見えたけど、私の存在を確認すると気を取り直して高圧的な態度で私に応じる。
『アンタ早く帰って来て、アタシの『ナデシコ』を動かしなさいよ。』
「でも、みんなを放してくれないと『ナデシコ』、動かせませんよ副提督」
そんなに見栄張らなくても良いのに。副提督ってやっぱり、前線指揮より後方支援の方に才能あると思うけど、どうして『ナデシコ』に乗り込んでるんだろ。補給の運営や的確な人員配備も非常に大切な物なのに、軍の評価って低いのかな？
『五月蝿いわね。アンタ、殆ど素人のくせにアタシの指示にケチを付けるつもりなの！』
「あれ？？？‥後ろに居るゴートさん達」
ゴッズゥ
私が喋っている途中で、副提督の真後ろに忍び寄っていたゴートさんが副提督の後頭部を殴り付け、鈍い音と共に副提督を失神させた。状況を推測した私はその推測に沿ってゴートさん達、中華鍋を頭に乗せてヘルメット代わりにして照れているミナトさん等、他の人達に話し掛ける。
「『ナデシコ』奪還、ご苦労様です、みなさん。ゴートさん、どの程度制圧出来てるんですか？」
『全部署、制圧完了した艦長。今からヤマダとテンカワの二人が、其方の護衛に向かう。』
「‥アキト、私を心配してまた頑張ってくれてるんだね♪♪プロスさん、最短距離で帰投して、サッサとチューリップを粉砕しちゃいましょう」
もう、アキトったら、私の為にまた勇気を出して…二人の愛し合う気持ちは何時でも一緒なのね♪
私はアキトを応援すべくコミュニケを繋げようとしていると
『ユリカ〜！！危な』 「お父様、邪魔です」
興奮したお父様の通信が入り、私の邪魔をする。私は速攻でお父様からの通信を切断し、再びアキトに繋げようとするが直前で、またお父様からの通信が入る。
『邪魔だと？！…ユリカ〜、何時からそんな不良になってしまったんだぁ〜〜。父さんは悲しいぞ（ウルウル）。』
『ですから、提督。落ち着いて』
「あ〜、リョウスケ！そんな所に居ちゃダメじゃない。『ナデシコ』の副艦長さんなんだから」
何故か『トビウメ』の艦橋に居るリョウスケを見付けた私は、ちょっと怒って注意する。何で、ヘリポートに来ないでそんな所に居るの、リョウスケ。交渉が終わったなら真っ直ぐ私の所に帰って来なきゃダメじゃない。副艦長さんは、艦長の補佐が一番大切なんだぞ。大学の講義でも言ってたじゃない。
怒っている私の顔を見て何故かタメ息一つ吐いた後、リョウスケは喋り出した。
『艦内で迷って案内表示通りに移動していたら、ここに来ただけだよユリカ。』
「リョウスケて、方向音痴だったっけ？兎に角、ユリカずっと待ってたんだぞ。（プンプン）」
『あのな、僕はお前みたいに方向感覚と言うか空間把握が突出して優れている訳じゃ無いから。大体、迷路のど真ん中に放置されても、分単位で平然と帰ってこられるお前と僕とを一緒にするんじゃない。』
でもでも、迷ったリョウスケの方が絶対悪いんだから。…昔みたいに、手を繋いで迷路を抜け出した時と同じ様に、私が側に居た方が良かったのかな。でも、副艦長は艦長の代理として頑張って貰わなきゃいけないから、私の判断は間違って無いもんね。ところで、交渉自体はどうなったんだろ？
『ユリカ、危ないから後は父さんに任して『ナデシコ』を渡しなさい。』
「イヤです、お父様。私がお父様を訪ねたのは、アキトの事を聞きたかっただけです。仰有ってた通り、アキトの両親が殺された事に、火星のクーデターに宇宙軍もお父様も関わっていない事が判れば良いだけでしたから。それに」
『それに？何だね、ユリカ？』
「艦長たるもの、たとえどの様な時も艦を見捨てる様な事はいたしません！そう教えて下さったのはお父様です」
『ついでに。『ナデシコ』の交渉も門前払い食らって駄目だったから、やりたい様にやって良いぞ、ユリカ。』
「うん。任せて、リョウスケ」
プロスさんが言ってた通り、交渉が不調に終わった事を知った私は、予定通り副提督に退艦して貰って『ナデシコ』独自の行動を採る事にした。取り敢えず『クロッカス』・『パンジー』が苦戦しているチューリップをさっさと撃破して、ナデシコの戦闘能力をＰＲ（ハッタリかな？）する事で、お父様の追撃を断念させなきゃ。
そう決めた時、『クロッカス』と『パンジー』の２艦がチューリップに吸い込まれた。そうだね、蜥蜴さん達を吐き出すんだから回収もお手の物だよね。でも２艦共、戦闘しながらチューリップを『トビウメ』と『ナデシコ』から引き離してくれてたお陰で、私が乗ってるヘリの方が『ナデシコ』に余裕で着くからダイジョウ‥へ？
チューリップが、中央部から触手らしい紐状の物をワサワサと言う擬音が聞こえそうな動きで沢山伸ばして、此方に迫って来る。う〜、気持ち悪いし、趣味悪いよ。それに滑るような感じで、結構速く移動してるから私がナデシコを再始動させる前に、ナデシコがチューリップに吸い込まれるかもしれない。
「プロスさん！」
「これはこれは。少し間に合わないかもしれませんな、艦長」
『ユリカ！無事か。』
『ふふ、このダイゴウジ』 「アキト〜♪」
ナデシコからピンクとブルーのエステが発進されると共にアキトの姿がコミュニケに映る。ちょびっと緊張している様に見えるけど、私を心配してくれてるアキトの顔は凛々しくて格好良い。やっぱりアキトは私の王子様だから、私が危ない時には必ず駆け付けてくれるのね♪♪
「ゴメンね、アキト。アキトを応援しようと思ってコミュニケ繋げようとする度、お父様が邪魔したの。でもでも喋らなくても、アキトはユリカの気持ちを受け取ってくれてたからユリカ、すっごく嬉しい」
『何、訳分かんない事喋ってんだよ、お前？』
「もうアキトたら、照れなくても良いのに♪」
『いや、だから……ハァ‥俺とガイが惹き付けるから早くナデシコ、動かしてくれ。』
「は〜い。でも、チューリップ壊しちゃダメだよ。『クロッカス』と『パンジー』を救出するつもりだから、趣味悪い触手の所だけ切断して。ヤマダさんも宜しく」
『だから俺の名前は、ダイゴウジ・ガイだッ！！！』
通信の間にプロスさんがヘリをナデシコに着艦させたので、通信が終わると共に私はヘリから降りた。そして、周りに居たウリバタケさんを始めとする整備の人達に「皆さん、ご苦労様です。ミスマル・ユリカ、只今帰ってきました」と敬礼しながらお礼を言った後。走りながら最短ルートでブリッジに向かいつつ、私はチューリップ撃破の詰めを考える。
アキトにも言った通り、まずチューリップに回収された『クロッカス』と『パンジー』の救出が第一目的。その為には‥やっぱり、チューリップ内部に進入しなきゃダメだよね。ナデシコには、ディストーション・フィールドがあるからどんなに蜥蜴さん達が居ても暫く戦えると思うし、探し出すには吸い込まれた内部に潜入するのは当然の事。でも入り口閉じられちゃったら、助け出せたとしても脱出出来ない事も考えなきゃいけないし。なおざりになるけど、センサーで確認出来なければグラビティ・ブラストで内側からチューリップを撃破する事で決定だね。もし、『クロッカス』と『パンジー』が大破状態で存在している場合は、脱出艇がいたら最優先で確保、脱出艇がいなくてまだ艦内に生存者が居た場合は、強引だけどグラビティ・ブラストでチューリップを破壊して海の中に放り出すしかないね。それにお父様の『トビウメ』を巻き込まない為にも、チューリップが蜥蜴さん達を吐き出す前に決着付けなきゃいけないから、この手段で、けって〜い。
「お待たせしました〜」
「お帰りなさい、艦長、プロスさん」 「お帰り〜。……あらら？？」
ブリッジに帰ってきた私はみんなの挨拶を受けつつマスターキーを差し込み、ナデシコを再起動させる。オモイカネのシステムチェックも無事に済み相転移エンジンを始動させつつ、私は先程の作戦案をみんなに説明する。それを聞いたプロスさんは「大胆ですな」と言ったけど特に反対もしなくて、他のみんなの了解を貰った私はヤマダさんとアキトに通信を繋げる。
『いくぜ！テンカワっ！！』 『おう』
『『ゲキガン・カッター！！』』
繋げた映像の中で、アキトとヤマダさんは気合いを入れて、チューリップの触手を一緒にたたっ切ってた。‥ユリカだって、アキトと一緒に蜥蜴さん退治するんだから。ヤマダさんには負けないもん。
「アキト、ヤマダさん。今か」 『ガイだッ！！』
「チューリップ内部に進入して『クロッカス』と『パンジー』の救出と、チューリップを内側から破壊します。二人は、『トビウメ』の護衛宜しくね」
『ユリカ！お前まで吸い込まれたら話になんねーだろ。』
「大丈夫、大丈夫。グラビティ・ブラストで出口作るから」
アキトとヤマダさんに作戦を伝えた後、すぐさま私は行動に移る。グラビティ・ブラストのチャージを確認して、チューリップの入り口に艦を向ける。‥ちょっとドキドキするけど、艦長たる者ドッシリしてなきゃ。
「中に入るわよ〜、艦長。ドキドキするわねぇ」
「チューリップ内部に進入したら、メグちゃんは、『クロッカス』と『パンジー』に呼びかけて。ルリちゃんは、レーダー・ソナー全てのセンサーを使って２艦を探す事。見付けた場合はミナトさん、２艦の前方に出て下さい。では『ナデシコ』、チューリップに入ります！」
〜８〜
ユリカの無茶な作戦は上手い事いって、チューリップに吸い込まれた２つの艦は中には存在してなかったらしく、素早いグラビティ・ブラストの一撃でチューリップを破壊した『ナデシコ』は無事、軍からの追跡をかわした。
そして、無事『ナデシコ』に帰って来た俺は、エステの格納庫近くのベンチに座り込んでる。エステを所定の位置に格納させた俺は、コクピットから出ようとした時、何故か腰が上がらなくなってた。暫くして何とかコクピットから出たら、今度は足がもつれてその場でへたり込んで近くに居たウリバタケさん達に、この場所に運び込まれた。
ガイの奴は、「鍛え方がなってな〜〜い！ビシビシ鍛えてやっから暫く休んでろ」と言ってからブリッジに向かって、整備の人間はエステのメンテに取り掛かったままだから、今、俺の周りには誰も居ない。
落ち着いた俺は、ガイの奢りの缶コーヒーを飲もうと口元に持って…妙に飲み辛い、持ってる缶が上手く口元に固定しない。不審に思った俺が思わず缶を見ると。
缶を持ってる右手が、ブルブル震えてた。
「何で、何で、震えてんだよ」
思わず口から声が出て、俺は震える右腕を左手で押さえ付ける。もう終わってんだろ！エステに乗って、ガイと一緒に蜥蜴を叩きのめして、ゲキガンガーみたいに決めて終わってんのに、どうして震えてんだよ、俺の右腕！！
…‥まだ、まだ蜥蜴が怖いのかよ。あんなに気合い入れて頑張ったのに、火星と違って蜥蜴を圧倒して倒したのに何でだよ、どうしてだよ！？
「ア〜キト。どうしたの？？」
「！？なっ！何で此処に来てんだよ、ユリカ」
「ヤマダさんから、アキト疲れて此処にへたり込んでるって聞いて、私、アキトを労りたくて此処に来たんだよ。お疲れさま、アキト♪」
そう言ってユリカが、俺の手を取って俺の顔を笑顔で見るから、手の震えを知られたくない俺は、思わずユリカの手を振り払って右手を後ろに回す。そんな俺の態度は却ってユリカの気を引いて、執拗に俺の右腕を触りたがる。
「どうしたの、アキト？腕、怪我でもしたの」
「してねえよ。ただ、ちょっと痺れてるみたいだから、医務室に行こうと思ってんだ。ほら、お前も艦長だからブリッジに帰れよ」
「ヤダ。クルーの心配するのも艦長のお仕事だから、私もアキトと一緒に医務室に行くね」
「来なくていい！帰れ、ユリカ」
ユリカが鬱陶しいから、俺はベンチから立って歩こうとする。けど、長い事座ってた状態から急に立ち上がったせいで、立ち眩みみたいになって倒れそうになった俺は、右手を壁に付いて体を支えようとした。でも、右腕に力が無くてまたベンチに座り込んでしまう。
「アキト！！」
悲鳴に似た声で俺の名前を呼んだユリカが、慌てて俺の体を支える。そして右腕の震えをユリカに知られてしまった。そんな自分の無様さを自傷して俺が口を開く前に、ユリカが俺の目を真っ直ぐ見て喋る。
「いっぱい、いっぱい、勇気出して頑張ってくれたんだね、アキト」
俺を見るユリカの表情と声は感謝に溢れてて、いつもの押し付けがましい程、元気溌剌とした態度に慣れてる俺は戸惑ってしまう。そして、ユリカは俺を優しく支えたまま喋り続ける。
「ヤマダさんは、貧弱なんて言ってたけど、私は違うって言っておいたから。だって蜥蜴さんが凄く怖かったアキトが、私やみんなの為に一生懸命戦ってくれたんだもん。だから気が抜けて疲労困憊になってても、後で蜥蜴さんがまた怖くなっても、前にも言ったけど私は笑わないしバカにもしないよ。本当に有難う、アキト♪」
喋ってる途中からユリカは俺の右腕を優しく撫で始めた。そして喋り終わっても撫でてくれてる。結構恥ずかしい光景だなと、俺は思ったけど、ユリカが撫でてくれる感触が何となく心地良いのと、真剣な態度に口を開く気にはなれなくて。その内、腕の震えが止まってる事に俺は気付いた。その事伝えて礼を言って、ユリカを安心させた俺はもう一度立ち上がって軽く体を動かす。‥立ち眩みもないし、疲れも取れたみたいだな。そんな俺を心配そうに見てたユリカも、元気になった俺の姿にいつもの笑顔で答えてくれた。さて、ホウメイさん達にも迷惑掛けてるだろうから、急いで食堂に行かなきゃな。
そんな俺達に、メグミちゃんからのコミュニケが入る。
「艦長。お邪魔だったかもしれませんが」
「うん、邪魔だよ。艦長のお仕事も終わったし、私、これからアキトと一緒に居るんだから」
「おい、俺の仕事はこれからだから、邪魔すんな」
「大丈夫、邪魔にならない様に側に居るもん」
だから、側に居る事自体が邪魔になるんだって。また、コブ出来んの俺イヤだぞ。
俺の意志なんて全く無視する、いつものマイペース状態に戻ったユリカに、メグミちゃんはお茶目、イタズラが成功した時に浮かべる表情に似た笑みで報告する。
「オギさんより、電文です。
『迎エニ来ナケレバ、オシオキ決定。 ｂｙリョウスケ』
以上です」
それを聞いた途端、ユリカは笑みを浮かべたまま凍り付き、こめかみから汗を一筋流しつつ何か呟く。暫くして硬直から復活したユリカは、メグミちゃんに泣き付く様に喋り出す。
「う〜、ユリカが悪いんじゃないもん！迷子になったリョウスケが悪いのにどうして！？ミナトさん！！リョウスケを迎えに行きます。艦を反転させて」
「駄目ですな、艦長。わざわざ捕まりに行く様なものです。オギさんには、自力で『ナデシコ』に来て貰うしか手段がありません。大変でしょうが、彼なら何とかするでしょう」
「副提督と物々交換しないで、そのまま放って行かれたら誰だって怒るわよねえ。それにお仕置き受けるの艦長だけだし、どんなお仕置きかワタシ見てみたいし、ゴメンね艦長」
「諦めて下さい、艦長」
「ふえぇ〜〜ん！プロスさん、ミナトさん、ルリちゃん、みんな酷い。…お仕置きイヤ」
半分、本気で泣きかかってるユリカを見て、俺は慰めたい反面、お仕置きの内容にも興味が出てきた。…どんな事するんだろ、リョウスケさん。と言うか、このユリカ相手にそんな事が出来るなんて、羨ましいと言うかやっぱり尊敬出来ると言うべきか。
そんな気持ちが口に出て俺もみんなの言葉を肯定する台詞を言ったら、ユリカの奴、いきなり俺の方に視線を向けてとんでも無い事言いやがった。
「いいもん。アキトがリョウスケのお仕置きから私を守ってくれるから、大丈夫、大丈夫！！」
「こら、人の話を聞け！俺を巻き込むな！」 「立ち直り早いよねえ」
こうして立ち直ったユリカは俺を引っ張って食堂に向かい、「今日、アキト頑張ったから私の愛情タップリ♪手作り料理を食べさせてあげるね」と調理場で作り始めて…翌日、俺は元気になってた。
……‥あれは薬だ。ユリカが言ってた中華スープじゃ絶対無い。スープはカラフルな原色で彩ってる物じゃない。あらゆる味覚・嗅覚を刺激し続ける物をスープとは言わない。あれは、絶対料理じゃない！劇薬だ劇薬！！毒と薬の境界物質を俺は服用したんだ。きっとそうだ、そうに違い無い。‥そうだって！
そんな俺にユリカはいつもの通り、俺の迷惑考えず暇さえあれば俺の側にへばり付き……リョウスケさん、早く帰って来て此奴を止めてくれーー。
＜続く＞
※作者より
やっと書き上げました。いや、此処まで遅筆だと我ながら思いませんでしたけど仕方無いですね。5/1終了予定で書いていたのが、英雄妖精としてティル・ナ・ノーグ世界を救出していましたので遅くなりました（おいおい）。
へ？某ＭＸですか？攻略本及び資金MAX裏技で成金プレイして、敵兵器を紙の様に引き裂くのがいいんで（衝撃もそれで楽しんだし）まだ購入すらしてません（問題発言ですか？）。
１話目で指摘された問題点は、私なりに精一杯努力して解消すべく頑張りましたが、どうでしょうか？読者の皆様。
では、今回はこの辺で。スモモの氷菓子でした。
代理人の感想
うーむ。
問題点はまだまだ多いですが、随分読めるようになったと思います。
ベタだしぎこちないところもありますが、展開もそこそこ上手いこといっているかと。
リョウスケくんも「作者の操り人形」から「対人関係に問題のある根暗軍人」（ひでぇ）にまで堂々のレベルアップ！
・・・レベルアップです。多分。
後は誤字脱字と、「観らせてくれ」のような変な表現とか、かっことじの最後には句点をつけないとか、文章の問題ですか。
アキトがユリカを指して「彼奴」という表現が多数見られましたが、これは「あいつ」とも「きゃつ」「あやつ」などとも読みます。
「あいつ」なら別にどうということはないのですが、これが「きゃつ」になると親しい仲の人か、あるいは逆に嫌いな人間に対して使う代名詞になり、この作品のアキトがユリカを指して言う言葉としては不適切です。
私は「きゃつ」と読んでしまったので（「あいつ」なら普通漢字にはしませんし）、「あいつ」なんだろうと気づくまでは読んでてかなり違和感がありました。
ここは変な誤解を与えないためにも、無理に漢字にしないで「あいつ」と平仮名で表記するのがいいかと思われます。
それと気になったのが謎の「・」ですね。
ところどころ、不自然な場所に「・」がぽつんと一つだけはさまってましたが、なんだったんでしょうか。
取りあえず全部消しておきましたが。
＞獅子身中の回虫
爆笑。
やっぱライオンも回虫とかサナダムシとかに悩まされたりするんでしょうか（笑）。
あ、でもライオンって寄生虫がいるような部位は食べなかったかな？