ナデナロク

プロローグ<運命>

 

―――1―――

連合軍により、火星の後継者の反乱が鎮圧。

そして、その反乱首謀者、草壁春樹は処刑された。

A級犯罪者、テンカワ・アキトは、行方をくらまし逃亡中。

以上が、今回の反乱の報告書だ。

 

この事件により、世界に一時の平和が戻った。

しかし、皮肉な事に、世界は平和を求めようとはしなかった。

木星トカゲや、反乱者といった、共通の敵が居なくなった事による、

国同士の誤解、 衝突が重なり、いよいよ戦争に火種が拡大していった。

戦乱の拡大による、歴戦の英雄の死亡が相次ぎ、食糧難等、国は疲弊していった。

そこへ、突然の魔物の襲来。

 

この戦争の裏では魔物、魔族の暗躍があった。

人々は成す術もなく虐殺され、気が付いたときには数多の国々も、

残り日本、アメリカ、ヨーロッパだけとなる。

日本では、奪取した遺跡を調査する事により様々な事が判明する。

魔物達は、火星に放棄されたチューリップから送られてきている。

また、その遺跡を作り上げた古代文明もまた、この魔物達により絶滅の危機に立たされ、

「ラグナロク」、「イグリスの武具」を開発、魔物達との全面戦争へ突入。

人々は、魔物を駆逐していったが、魔物の中の王、

金色なりし魔物には誰も敵わず、人類は疲弊していく。

 

そんな中、一人の英雄が現れる。

人類存亡の為、その英雄一人を残して、火星の古代文明は、地球へ移民していった。

それが地球人、我々だ。

また、最後に一人残り、金色の魔王を封印した者の名は―――

(テンカワ・アキト)といった。

 

 

 

 

 

これが3000年前の歴史上の事実であった。

我々も、遺跡の解析により、唯一アメリカでラグナロクが作られた。

しかし、成功したのはたった一本だけだ。

ヨーロッパでは、人の精神と反応する物質による武器、イグリスの遺産が作られた。

これにより、人々は戦う力を手に入れ、またしても、金色の魔王達との全面戦争へと突入する。

 

―――2―――

ここは漆黒の宇宙。

あれから、3ヶ月ユーチャリスに乗り、火星の後継者の残党を探し、殲滅する日々。

そんな中、アキトは感じていた。

自らに迫り来る死期を。

そして、それが自らの愛しき人にも迫っている事を。

何故だか判らない。

ただ、何となくそう感じただけだ。

だが、一目逢いたくなった。俺の大切な人に・・・。

そして一言つぶやく。

「ジャンプ」と・・・。

 

目の前は白い病室の扉だった。

表札には、テンカワ・ユリカと掲げられている。

俺は一瞬躊躇ったが、逢いたい欲求には勝てず扉を開ける。

普通の木の扉が、分厚い鉄のように感じられる。

今更後悔している自分に自嘲する。

向こうも何かを嗅ぎつけたのであろう。

目の前には愛しい人がこちらを見ていた。

そしてこちらの顔も見えないはずなのに、

「おかえり、アキト。」

「あぁ・・・。」

愛しき人は俺の帰りを待っていてくれた。

それが俺にはただ無性に、嬉しかった。

「いつまでも一緒だよ?」

「あぁ・・・。」

それしか言えなくなってしまった自分が情けない。

だが、一言だけ紡ぐ事が出来た。

「例え1000年経っても、俺はお前を・・・。」

目の前の女性は、月の光を浴びて、微笑んだと思うと言葉なくベッドに倒れる。

とても満足そうな表情だ。

俺はユリカを抱えると、またも一言、しかし今度は力強くつぶやく。

「ジャンプ」

 

見渡す限り砂漠が続いていた。

ここにあるのは、砂と廃墟。

そして俺達の始まりの場所でもあった、ユートピアコロニー。

これでやっと眠れる。

そして、永遠に眠りに着く・・・

 

 

直前何者かに呼び止められる。

と、同時に目の前の視界が揺らぐ。

それは金色を纏い錫杖を持つ北辰と、

一人の一振りの剣を持つ見知った男―――プロスペクターだ。

「困りましたね、まだ眠りについてもらっては。

どうやら、本来の魂の契約者である、テンカワさんでないと

この剣の全能力が使えないんですよ。」

「久しぶりだな、アキト。

消息が掴めなかったが、急に地球に現れたな。

しかし、3000年の眠り長いものであった。

貴様への憎しみ、一片たりとも変わっておらぬ!」

金色の魔気を纏いながら近づいてくる。

様々な思いが駆け巡る! 俺の後ろに居る女性を誘拐し、こんな事にした犯人!

それがまだ生きている事に対する憤りが俺を支配する。

俺はこいつを殺すまで死ねない。

「北辰!!!」

叫ぶと同時に俺は飛び上がり、北辰めがけて駆け巡る。

その瞬間、右手に何か懐かしいものが感じられる。

俺はそれを掴み、剣と認識すると両手で斬りかかるが、

甲高い音と共に、錫杖によりあっさり弾き返される。

一端間合いを取る。

 

プロスペクターの手からは剣が無くなっており、代わりに俺の手の中に先程の剣が現れている。

その刀身は精神を集中すると、淡い青色に発光する。

周りの気が刀身に集まってくるのが判る。

青い光は、刀身から柄へ、そしてアキトを包み込むように全身へ行き渡る。

懐かしい。

不快な感じはしない・・・むしろ力がみなぎってくる!

「そうこなくては。

それでこそ恨みの晴らしがいがあると言うものだ!」

北辰は、それを確認すると突進してくる!

アキトは身を半分かがめ、力負けしないように突進に対処する。

そして、目をつぶり更に精神を集中する。

時間の流れがとても緩慢に感じられ、誰かの声が聞こえた気がした。

 

「マーズコンタクト開始・・・最終コード入力。

マーズシール―――最終コード確認。

プロジェクトマーズシール作動。魔族は全て滅する」

 

目を見開くと同時に、目の前にいる北辰に向かって斬りかかる。

またも錫杖と剣が重なるが、先程と違い爆音となり目の前を光の閃光が荒れ狂う。

火星全土が揺れ共振が、起こり荒れ狂う大地に咆哮がほとばしる。

火星の殆どを吹き飛ばす程の衝撃を残し、俺の記憶は途絶えた。

 

〜あとがき〜

お話はラグナロクXナデシコです。

本編よりEXの方が絶対面白いと思うのは私だけでしょうか・・・。

(ラグナロクオンラインとは、全く無関係なので、ご注意を・・・。)