機動戦艦ナデシコSS 二人のテンカワ

 

第七話  (A・S) ネルガル

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、プロスさん、一つ良いですか。」

 

『何ですか、テンカワさん。』

 

「あの〜、一度、ネルガルの会長に会わせてもらえませんか。」

 

『会長にですか?』

 

「はい、一度、会って見たいんですよ。」

 

『……テンカワさん、もしかして……。』

 

「大丈夫ですよ、プロスさん、今の会長は、関係無いって、知ってますから。」

 

『……そうですか。では、どうして、会長に会いたいんですか?』

 

「それは、今、設計している、エステと、戦艦の事を、話したいんです。」

 

『は〜、そうですか、ですが、会長もその事は、知っているんですが。』

 

「ええ、知っています。だけど、それだけじゃないんです。」

 

『他にも、何か?』

 

「ま〜、少しね。」

 

『そうですか、……分りました、会長にアポを、取ってみましょう。』

 

「すいません、プロスさん。」

 

『いえいえ、構いませんよ、このぐらいは。』

 

 

 

今の話しから十分後、アキトの為に、用意された部屋では……。

 

 

「へ〜、こんなに広い部屋を、用意してくれたんだ。」

 

アキトの為に、用意された部屋は、ネルガルの研究所では無く、

とある、高級ホテルの一室だった。

 

「こんな高級ホテルを、用意して、恐らく監視の意味もあるんだろうな。」

 

アキトの予想道理、部屋の外には、ネルガルシークレットサービスが、アキトの事を監視していた。

 

「……ま〜しょうがないか、これでも、一応、要注意人物だからな。……ん?」

 

コンコン。

 

その時、ドアを叩く音がした。

 

「は〜い、開いてますよ。」

 

ガチャ。

 

アキトの返事の後、ドアを叩いた人物が、部屋に入ってきた。

 

『ど〜も、テンカワさん。』

 

「なんだ、プロスさんですか。」

 

『いえ、私だけじゃ有りませんよ。』

 

確かに、アキトは、ドアを叩かれる前に、NSS以外に、

気配が二つ有る事を、気が付いていた、もちろん、プロスとアカツキである事も。

 

〔や〜、君がテンカワアキトくんかい?〕

 

「ええ、初めまして、ネルガルの会長さん。」

 

『ほ〜。』

 

〔へ〜、気が付いてたんだ、さすがだね、そう僕が、ネルガル会長、

 

アカツキナガレだ、よろしく。〕

 

「こちらこそ、よろしく。」

 

〔……で、何だい話って?〕

 

「ああその事。」

 

『私も、お聞きしても、よろしいでしょうか?』

 

「ええ、構いませんよ、その代わり……。」

 

『はい、判っています、口外はしません。』

 

「そうですか、それじゃ。」

 

〔その前に、一つ良いかいテンカワくん?〕

 

「何ですか?アカツキさん。」

 

〔……ああ、その、君の両親の事だが……。〕

 

「……その事ですか、前は恨んでましたが、今は、恨んでいませんよ、それに、

 両親に対してやったのは、前会長であって、あなたじゃない。」

 

〔……そうかい?だが、君は……。〕

 

「アカツキさん、昔の事です、忘れましょう、お互いに。」

 

〔…………。〕

 

『ま〜、会長もテンカワさんも、その話しは、そのぐらいに致しましょう。』

 

「そうですね。」

 

〔ああ、そうだな。〕

 

『では、テンカワさん。』

 

「はい、それじゃ……、アカツキさん、木連について、どこまで、知っていますか?」

 

〔テンカワくん!!何処でその事を!!〕

 

『……やはりその、お話してでしたか。』

 

〔……僕が知っているのは、100年前、月を追放された地球人、

 その人達の子孫が、復讐を目的に、戦争を仕掛けてきた、それぐらいかな?〕

『…………。』

 

「……そうですか、そこまでですか……、と言うことは、月を追放された人が、

 火星に逃げ延びて、その時、連合宇宙軍が、核攻撃をしたと言うのは、知らないんですね。」

 

〔そこまで!!知っているのか!!〕

 

「……ええ、今、アカツキさんが、嘘を付かなければ、言うつもりは、ありませんでした。」

 

〔………そうか、……僕が、知っているのは、本当にそこまでで終わりだ。〕

 

「………今度は、本当の様ですね。」

 

『…………。』

 

〔それを聞いて、どうするんだ?〕

 

「ええ、その話しは、聞いてみたかっただけです。」

 

〔聞いてみたかっただけ?〕

 

「はいそうです。」

 

『…………。』

 

〔…………。〕

 

「ま〜、冗談はこれぐらいにして。」

 

〔冗談?どこからだい?〕

 

『…………。』

 

「聞いてみたかったと、言うところからです。」

 

〔……で、本当の所は?〕

 

『…………。』

 

「木連については、今の所は、何も出来ません。

 ですが、この先、もしかしたら、何か出来るかもしれない。」

 

〔何か?なんだいそれは?〕

 

『……カイトさんの失踪と関係が有るようですな。』

 

「……さすが、プロスさんです、その通です。」

 

〔カイトくん?ああ、君のお兄さんの事か、それがどう関係しているんだい?〕

 

「………この事は、本当に何処にも話さないで下さい。」

 

この時、アキトは、殺気を込めて、二人を睨んだ。

 

〔……ああ、判った、約束する。(汗)〕

 

『……ハイ、約束します。(汗)』

 

「兄貴は今…………、木連に潜入しています。」

 

〔『木連に!!』〕

 

「ええ、そうです。」

 

〔どうやって、行ったんだい?〕

 

『………ボソン……ジャンプ、ですか?』

 

〔なんだって!!出来るのか、君達は!!〕

 

「……僕達じゃありません。今は、僕だけです。」

 

『やはりそうでしたか、アキトさん、あなたは火星から、地球へ飛んだんですね?』

 

〔…………。〕

 

「はい、兄貴に頼んで、木星に行ってもらい、その後、僕は火星が襲われた時に、

 それに乗じて、僕達が設計していた奴のデータと伴に、地球に飛びました。」

 

〔…………今は、君だけが、ボソンジャンプが、出来るって言ったよね?〕

 

「はい、言いました。」

 

〔それなら、誰でもボソンジャンプが、出来る様になるのかい?〕

 

『…………。』

 

「……残念ながら、それは無理です。ある一定の条件を満たしていないと、

 ボソンジャンプは、出来ません。」

 

〔その条件って、何だい?〕

 

『…………。』

 

「……今は、まだ言えません、最低でもこの戦争が、終わった後じゃないと。」

 

〔…………そうか、……今、ボソンジャンプを、手に出来れば、クリムゾンにも、

 圧倒的な差を、付けられるのにな。〕

 

『…………。』

 

「………もし、仮にボソンジャンプを、手に出来ても、いずれは、敵も手に入れますよ。」

 

〔だから、今、手に入れられれば、敵より戦力を、付けられるじゃないか。〕

 

『…………。』

 

「この戦争に、勝者はいませんよ。残るのは、虚しさだけです。」

 

〔………勝者がいない?……確かに、そうかもしれないな、この戦争は……。〕

 

『……アキトさん、一つ良いですか?』

 

「はい、何ですか?プロスさん。」

 

『はい、アキトさんの事は、判りました。

 

ですが、木星に居る、カイトさんの事は、どうゆう理由ですか?』

 

「…………すいません。それは、まだ言えません。」

 

『…………そうですか。』

 

「だけど、いずれ判ります。その時まで、待ってください。」

 

『…………判りました。その時まで、お待ちしています。』

 

「……ありがとうございます。」

 

〔今までの、話しからして、何が言いたいんだい?君は。〕

 

『…………。』

 

「……実は、まだ、本題に入って無いんですよ。アカツキさん。」

 

〔なに〜!!〕

 

『…………。』

 

「………それじゃあ、本題に入りますね。

 これは、お願いですから、よ〜く聞いてください。

 まず一つ、今まで、僕や兄貴達がやってきた、開発の事ですが、

 後、もう少しで、戦艦、エステ、両方とも、設計図が出来あがります。

 これが、出来あがり次第、製作に掛かって頂きたい。

 ま〜、それでも、完成までに、最低、二年半から三年掛かるでしょうけど。」

 

〔完成までに、三年も掛かるのか?〕

 

『ほ〜。』

 

「これは、あくまでも、予想ですからね。本当に、急ピッチで、

 製作すれば、もしかしたら、二年で、出来あがるかもしれません。」

 

〔それでも、二年も掛かるのかい。〕

 

『…………。』

 

「それと、後もう一つが、僕を、ナデシコに乗せてください。」

 

〔ナデシコに?何故だい?〕

 

『ほほ〜』

 

「………ナデシコは、火星に行くんですよね。」

 

〔……なるほど、その事も、知っていた訳だ。〕

 

『…………。』

 

「それを、踏まえた上で、僕を、パイロット兼、研究者として、乗せてもらえませんか?」

 

〔どうして、ナデシコに、乗いんだい?〕

 

『…………。』

 

「火星に行くなら、探したい人達が居ます。」

 

〔……イネス博士かい?〕

 

『…………。』

 

「イネスさんもそうですが、兄貴と約束しましたから。」

 

〔……約束?〕

 

『……マリ・イザキさん、の事ですかな?』

 

「さすが、プロスさん、その通です。」

 

〔誰だい、その人は?〕

 

『マリ・イザキ、アキトさん、カイトさん、イネスさんと、伴に、

 エステと、戦艦の開発をしていた人です。』

 

「イネスさん、マリ先輩と、後、残された人達の為ですね。」

 

『会長、アキトさんを、ナデシコに乗せても良いでは、有りませんか。』

 

〔そうだな、……良いだろう。〕

 

「本当ですか!」

 

『良かったですね、テンカワさん、では、この書類に、目を通して下さい。』

 

その言葉を待っていたかの様に、懐から、契約書を取り出して、アキトに差し出すプロス。

 

「……早いですね。プロスさん(汗)」

 

〔……(汗)〕

 

『ええ、契約は、早い内にが、私のモットーでして、ハイ。

 それと、お給料の方は、え〜と、これぐらいで、いかがでしょうか?』

 

何時の間にか、また、懐から、ソロバン形電卓を、出していた。

 

「ははは、そうですか。」

 

この時アキトは、プロスが、かなりやる事を、再認識した。

 

〔…………。〕

 

『ハイではココに、ハンコウを押して下さい。ハンコウが無い様でしたら、

 拇印でも、結構ですよ、アキトさん。』

 

「………はい、押しました。」

 

『はい、ありがとうございます。』

 

〔……ま〜これで、テンカワくんは、ナデシコに乗る訳だ。〕

 

『ええ、そうですな〜。』

 

「ま〜ナデシコに乗り込む前までに、設計図の方を、完成させなければ、いけませんけど。」

 

〔ウチの製作部を、侮ってはいけないよ、テンカワくん。〕

 

『そうですな〜。』

 

「期待してますよ。」

 

 

 

 

 

 

第七話 K・Sにつづく

 

あとがきは、K・Sの方で、書きます。