20XX年 日本 某所

その日、彼女・・・ヤナセ・カナと友達(周りからは恋人と言われつづけている)であるニシダ・ユウと二人はあることについて話をしていた。


「このごろ、ネットで憑依もののネタって多いよね?」


彼女は、某大学の経済学部のトップという優れた才能がある才女であった。


「そういえば、そうだねぇ。」


対する彼、ユウは物理はソコソコの成績であるが、彼はむしろ軍事関係がだいぶ強かった。

この二人は、実は共通している趣味があった。

つまりは、SS、しかも軍事関係のものを書くのが趣味であったのだ。

尤も、カナは政治・経済関係を主として、ユウは戦闘関係を主としていたのだが・・・・・・


「ああ、青の軌○だろう?」


「そうそう。よく分かったわね?」


「いや、アクションは、大魔王は最高だぞ。」


「あんた、いっている事が判らないわね。」


今日も、二人は楽しく話していた。周りから見た彼らは『変な趣味を持つバカップル』であったのは、まず正しい事であっただろう。

そんな時を不意にテレビから流れた緊急ニュースによって終わるとは思わなかったであろう。


『ただいま、市ヶ谷の防衛庁より、緊急報告がありましたっ!』


ふと、それを見る二人。バカップルどころか、既に夫婦のようである。


『市ヶ谷、及び日本国政府によると2分前、北朝鮮より弾道ミサイルが発射されたそうですっ!』


『そして、この日本国にミサイルは直進しているという報告です。このままですと・・・日本○△地域に・・・』


「なあ、カナ・・・その地域ってここも入るよな?」


「そ、そりゃね・・・」


その発表に、二人とも我が目、我が耳を疑うほどであった。

日本国政府は、五年前にイージス艦に超長距離巡航ミサイルを搭載する事を決定し、これを抑止力に対北朝鮮問題に出ていた。

これは、米国が今年の年次改革要請書に反する行動ではあったため、米国の沖縄基地問題も合わせて関心を一時は高めていたが

日本人はバカなのかマヌケなのか、無関心なのか。

米国による要請で、結局、憲法改正したときに命名を変更した

『自衛軍』の空母と艦載機すべてを米国からの購入と言う妥協案にて何時の間にか済まされていた。

これは、もちろん、中国、そして北朝鮮に必要も無い警戒心を抱かせる結果となってしまったのだ。


『ただいま、ペトリオット(パトリオット)による迎撃も開始されましたが、効果は期待できないと言われています。

該当地域は人口密集地域なため、第1護衛隊群を含む艦艇の迎撃も開始されました。』


彼からの住む町『横須賀』に待機している第1護衛隊群も出港していたが、それは別の意味で・・・であった。


「迎撃を市街地ですれば、どうにか分かっている筈だ。第一護衛隊群も。」


「ニセ情報ってことね。自分が死ぬかもしれない逃げる・・・って

嫌だッッ!!死にたく無いっっ!!っていうか、なんでそう冷静でいられるのよっ!」


「軍関係を知ってるとそうなるんだよ。俺のオヤジ、統合幕僚長だし。」


「そんなこといったら、私の親が外務大臣なのも関係あるっていうのっ!!」


ここは、日本国政府上層部が多くいる町であった。この二人ほど、対称的な人間も少ないだろうが。

一方は、騒ぎまくり、一方は諦めろと言っている・・・ある種の笑いにも見えてくる。

こいつら、ついに現実の非現実の区別もできなくなったかなどと突っ込んではいけない。


『統合幕僚長より発表が市ヶ谷の防衛庁本部より入りました。ヤサケさんっ!』


『はい。こちら、市ヶ谷防衛庁本部のヤサケです。ただいま・・・発表が成されています。皆さんご覧ください。』

『現在、国家非常事態宣言が発令され、米国を含む国連により北朝鮮への攻撃が強制採決されました。』


「国家非常事態宣言だとすると・・・核か、生物兵器か化学兵器か・・・親父もかんばるな。」


「ちょっとっ!冷静に判断するのはやめなさいっ!でも、あるわね。強制採決だと核じゃないの・・・って、すぐに乗せるなッ!!」


「いや、俺は乗せていない。勝手にカナがやったんだろう。ああ、もうすぐ着弾だな。」


ヒュュ―――・・・・・・


そんなことをしている内に、近づいてくる悪魔のミサイル・・・核弾頭が搭載されている、それは横須賀へと落ち始めていた。


「私・・・死にたくないっ!!これからだって、色々したいのよっ!」


「まあ、俺もそうだ。まだ、結婚すらしていないんだぞっ!日本国政府のばっかやろうっ!」


なんとなく、二人とも的外れな事をいっているのだが、気づいているのだろうか?

だが、そんな彼らを無視して、北朝鮮が放った弾道ミサイルは命中し・・・


後日、世界各地の新聞は




『横須賀 北の放った核弾頭にて消滅っ!』

『日本国政府、米国、国連へ核ミサイルによる報復を要求し、了承される。平壌消滅っ!』

その文字が出ていた。




機動戦艦ナデシコ 銀河の輝きと星の海と…

第一話 始まりは衝撃的に


「いったい、どうなったの?」

ふと、起きた彼女・・・ヤナセ・カナはある部屋でふと目が覚めるとまずそう思った。

まずは、周りを見回す。

すると、明らかに自分の部屋などではなかった。もちろん、自分が知っている人のどの部屋でも無かった。


「ここ、どこ?」


そう思わずにはいられなかった。こんな部屋、まるで病院だが、そうでもない。

最低でも、自分の部屋では無いはずなのだが、彼女はどことなく自分の部屋という感じもしていた。


「とにかく、状況確認を・・・ええ?」


と、自分のからだの・・・を見て、呆然とした。


(あ、あそこが小さい・・・いや、からだも心なしか小さい気が・・・)


女性なら、やっぱり気にするところを見てその小ささにぼう然とした彼女は、頭に手をおいて・・・


(か、髪が・・・蒼銀?で・・・ツインテール・・・ちょっと待ちなさい・・・落ち着いてカナ。落ち着くのよ・・・)


必死に、これは見間違いと納得すると、備え付けであろう。その鏡を見る。すると・・・


「う、嘘・・・マ、マジで?」


蒼銀の髪、金色の瞳、奇跡とも言えるほどの美女でありながら、やっぱりあそこは小さい彼女が前には映っていた。

だが、いつもなら可愛いなどと言っているそれは『自分』であった。


「な、な、なんで・・・私がホシノ・ルリになっているわけ?!」


尋常ではない事態に、東京大学経済学部のエースの頭もオーバーロードしてしまう。


「ちょっと待ちなさい。これって、どっかのパターンに似ている気が・・・」


と、考えて導き出されたのは一つであった。


「ア、アズラエル理事?青の○跡と同じパターンじゃない。となると、私は核弾頭で死んだのかしら?

まあ、さすがにユウの悪戯にしては度が過ぎているし・・・あそこを小さくできるはず無いし。」


せっかく、ナイスバディだったのに・・・と、大学ではモテモテだった美女の体を思い出して泣きたくなる彼女。


「まあ、こんなことを考えていても先に進まないわ。まずは、状況確認は本家の方でもやっていることだし、確認を始めましょう。」

と、アホらしい自分のからだのことを考えるのをまずはやめて

近くのクローゼットに入っているはずのルリの私服を取り出す。さすがに子供柄のパジャマは

この歳(精神年齢21歳)では恥ずかしすぎるものであったためである。




その日の訓練というか実験は、ネルガル労働者の権利とやらを使って休みにしてもらった。

(さすがは、プロスさんだわ。被検体にすら休暇の義務があるとは予想外よね。)

尤も、彼女がそれを要請する事は始めてであり、保護者となっているホシノ研究員も驚いていたが。


ともかく、休みを取りIFSを利用して色々と入手して分かった事は

自分が、お約束なのか、あの本家のことなんかをはなしていたせいなのか、ホシノ・ルリに自分が憑依してしまっている事。

今が、ちょうど木連との戦争の五年前(2190年)であること。

もっと不思議なのは、この時点で自分が16歳であること(まあ、これには喜んでいたのだが。)

そして、お約束通り彼女の記憶や感情の一部も継承していると言う事であった。


「まずは、今は生きていけそうだけど・・・ちょっと待ちなさい。私は権力者じゃないでしょう?」


ホシノ・ルリが権力者であったなら、それも困っていただろうが、こんな状態でも十分に困り物であった。


「このままだと、あのナデシコに乗るのよね?」


と、あの何もかもが濃い人達を思い浮かべる。


「ぜったいに嫌よ。ミスマル・ユリカとかテンカワ・アキトなんて・・・熱血男と妄想娘といるなんて。」


酷い発言だが、彼女なりには的を得ている発言であると思っていた。

一方は、ゲキガンガー大好きな男に、もう一人は王子様なんていう妄想痔たっぷり女性。

危険すぎる・・・・・・カナの本能からそう言っていた。


「それ以上に、なぜホシノ・ルリなのかしら?エリナさんでもいい感じがするんだけど。

まあ、確かに逆行物だと爆装妄想娘筆頭はユリカさんじゃなくてルリよね。」


多数のネットに存在するSSのルリの性格を思い浮かべて・・・恐ろしく感じるカナ。

とにかく、アキトさん〜〜〜なんて、自分が言えるはずがない。


「それに、SSだと無茶な事をするのにも関わらず、成功するっていう不思議な少女だったりするし。

よくよく考えると、ルリのアキトさんの為なら草壁を殺すっていうのも間違いじゃないけど・・・

その後を考えない事と、自分側陣営にも危険因子がいることを忘れているわよね。」


主人公のアキトやルリやラピスがよく行う、対木連草壁派戦。個人で行うには少々無茶苦茶である。

木連は、国家である。アキト君は個人、いくらなんでも限界がある。

また、この世界では、種の世界(ブルコス視点で)のように遺伝子操作はタブーだ。

むしろ、木連のような国家では、遺伝子操作はタブーではないはずだ。

ゲキガンガーとしては、アカラ王子との友情のごとし、異星人でも仲が良い者と悪いものがいる。

それに比べて、遺伝子操作程度・・・のはずである。

優人部隊は、すべて遺伝子操作されているのだから、悪くも無い。

だが、本編の劇場版みたいに、草壁は叛乱を起こし、火星のA級ジャンパーを誘拐していた。

むしろ、地球連合側の方がタブーとして遺伝子操作を禁止しているのだから、ルリ個人では地球連合が敵である。

アキトにせよ、A級ジャンパーとして、連合政府と木星連合草壁派が狙っていたはずである。

草壁は、反抗したため敵とされ、連合政府は結果としてルリの味方のような形になっていただけだ。

そして一番に言える事としてTV・劇場版に言えることであったが、政治関係の人間が全くいない。

ネルガルは、それらしいが、あれはどこまで行っても企業である。

地球連合軍は、まあ予測できるがシビリアンコントロールされた行政機関であっても、権限というか

そうさせていたのは、地球連合政府のはずなので、軍というのも単なる駒でしかない。

もっといえば、彼女はナデシコに関してはあまり良いものだとは思っていなかった。

製作サイドの凄さは認められるし、アニメとしてはとても上位に値するであろう。

イコールで、内容も正しいとは言わないが。


(まったく、ナデシコが私らしくっていうけど、隔離された空間でそう言う連中たちがいれば、そりゃ私らしくいられるはずよね。

ようは、自分で立場を勝ち取らず、ナデシコという封鎖空間でのみその能力を発揮できるというのは、自分の実力じゃ無いでしょう。

実力っていうのは、どこでも出せなければ意味が無い。ナデシコという空間はそう言う意味で間違っているのよ。)


しかし、そんな文句を言っていても話にならないということを感じると、これからどうするか考え始める。


(まあ、とにかく仕方ないから、このままルリとして生活するしかないか。

ただ、地球連合という組織が変わらないと、戦後が怖いわね。)


カナ、いやルリは先ほど思っていた通り、マシンチャイルド・・・遺伝子改変者の敵は地球連合ということ を考えれば

逆行物の話のように、自分の暗殺計画が上がる可能性だって十分ありうる。

地球連合は、自分たちに対抗しようとするものを無理矢理押しつぶす性格のようだったからである。

月の自治区、木連、火星の後継者・・・連合軍は地球全てを自分の色に統一しただけでは足りず

月、火星、木星までも自分たちの陣営の色で染め、さらには反抗分子には徹底的に攻撃をしている。

マシンチャイルドのような、自分たちがタブーとしたものを残しておく筈がない。


(とすると、まず、私は地球連合への干渉が大切か。地球連合だって、別にそんな人達だけで構成されているわけじゃないはずだし。)


以外にも、地球連合政府はそんなことを考える人間は少ない。だが、現政権はそんな人間達で構成されていたのだ。

IFSで、コンピュータから出したデータだと地球連合というものも大きく分けられるようであった。


北米には、西大西洋連邦と呼ばれる連邦が。某種の国と似ている名前なのは気にしてはいけない。

次に新ヨーロッパ連邦と呼ばれる欧州圏を統一している連邦。

その次がユーラシア統一連邦。ロシアと中東の一部を抑えている連邦である。

そして、東アジア統合連邦と呼ばれる連邦。これは、東アジアを中心とした産業の中心地である。

最後には、オセアニア連邦と呼ばれ、オーストラリア等の大洋州に存在する連邦であった。

他にもいくつかの連邦が存在するが、連合で五大国と呼ばれる連邦はそれであった。

更に、今でも南北問題はあるのか、政権は北半球グループと呼ばれるグループと

南半球グループが争っているという連合としては些か、統一さに掛けるものであった。

現在、政権は南半球グループが持っていた。


(つまりは、反遺伝子操作を叫んでいるのは、この南半球グループ、軒並みオセアニア連邦ってわけか。

一番、遺伝子操作を部分的に解禁するべきだと言っているのは、欧州と北米ね。

まあ、かの国は、体面も重んじるけど、人命を何より重んじるものね。

逆にいえば、クリムゾンとしては遺伝子操作が進んでいないのもそのせいなのかしら?)


遺伝子操作の部分的解禁とは、別にマシンチャイルド作れというものではなく、遺伝子操作で先天的な病気を治すと言う意味である。

地球連合内部も、色々と意見が割れた結果が、反遺伝子操作だったのだろう・・・とルリは予測した。


「となると、私は地球連合現政府を落として、ちゃんとした論理感を持った人達のみで新政府を樹立させ

尚且つ、対木連戦をしっかりとできる人達を用意しないといけないわけだ。」


地球連合政府において大きな影響力とは、企業だとは一概に言えない。

むしろ、統合的に見て経済・政治的な力が大きい国であろうと考えられる。ちなみに、これに該当する国家がいくつかあるが

一番のものは、ルリの身近にあった。


「となると、ピースランド王国を利用しない手はないわね。私の居場所をピースランド王国に伝えればすぐに迎えがくるだろうし。」


史実でも、ずっとルリの行方を調べていた王国である。すぐに見つかることは明白であった。


「それにしても、なんで16歳なのかしら?此処ら辺、ピースランドの国王と女王が史実よりも急いでいた ってことになるのかしら。」


そう考えていると、IFS経由でそのデータが開かれ、ルリは納得する結果を得た。


(ピースランド王国の後継ぎは、あの二人の高齢からするとできない可能性があったのね。

女王はともかく、あの国王だもの。相当の高齢っぽいし。

しかも、史実にいたのか知らないけど王国には御三家が存在してその御三家には、子供が多くいたわけね。

なかでも、エレベッタ家は王家の血筋でも、経済界に関する天才が多く

彼らに次期王位を取られる可能性を 感じていた国王は、史実よりも早く作ろうとした。

だけど、史実通り、そこら辺は研究所がテロにあって・・・あら、これって、クリムゾンの破壊工作だわ。

どうやら、ここからネルガル技研に送る予定であった

マシンチャイルドへの遺伝子操作を終えた 受精卵を破壊するために行動していたのね。)


と、自分が16歳の理由を確かめると、再びピースランドを利用した戦略をたてていく。


「となると、ピースランド王国で王位継承権を得て力をつけ、更には対木連を考えて、自前の企業を持つと言うのもいいわね。

地球連合への干渉さえできれば、私の主導で連合を開戦させることもできる。

対木連戦は、始まってしまうでしょうね。あの草壁中将だと戦争容認の可能性が高いし。

すると、私は地球連合の反遺伝子操作派である南半球グループを抑えつつ、木連との戦争を勝たないと いけないわけか。

なんとなくだけど、凄く苦労しそうだわ。」


と、思いっきり・・・それこそ、普通に権力者でない時点で相当の苦労のため

嫌になるほど大変だろうなぁ・・・と思うルリだが、とにかくどうするかを考えないといけない。


「まあ、とにかくピースランド王国にはさっさと通報しておこうっと。」


何が通報なのかさっぱりだが、適当にルリは匿名でメールをピースランド王国に送っておく。

しっかりとあなたの娘・・・というのも入れておいて。




それから一週間経った日、ネルガル重工本社にある人物が来た。

ピースランド王国からの使者で、ここにいるホシノ・ルリはピースランド王国の姫だということで迎えにきたらしい。

そのせいで、ネルガルのスキャパレリプロジェクトが大きく後退することは明確であったが

個人を尊重する事を社内規定に入れていたネルガルとしては

大きく動くわけには行かない。

それから3日後にはルリはそのままピースランドに行く事になってしまった。

お陰で、やっと代わった新しい会長の秘書は怒り狂ったとか、重役は大きな路線変更を強いられた。

その後、彼女はその地位を利用した行動に出たのであった。



北欧 旧スウェーデン領 ピースランド王国


「お主、ルリと申したか」


と、ここに来てルリは少し間違えたかなと思ってしまったほどである。

(そういえば、強度の親バカ夫婦だったっけ。ピースランド王国の二人って)


「な、なんですか、父?」


とにかく、ルリとして返事をしないのはやばい。

どうやら、一週間ほど経ってわかった事だがルリの中には二つの人格があるようだった。

一つは、このもともとカナであった部分で、ここが大元である。

後は、カナの思い次第で元々いたルリの部分が出てくるのだ。尤も人格部分はカナなのでルリみたいには出来ないが


「おおっっ!!ルリよ、私が父だ!そして・・・」


「そちらが母なのでしょう?それぐらい分かりますから。それよりも、お話があります。」


いきなりの感動場面突入といった感じだったが、ルリとしては、そんなことは前置き、いやどうでもいい事なのかもしれない(爆)

だいたい、カナから見て二人は父でもなければ母でもないのだから当たり前といえば当たり前だが。


「なんの話かな、ルリ。たいした事でも無ければ答えるが。」


と、プレミア国王の態度を見てやはり、この人は国王であると再認識する。

(ここら辺は、さすが国王なのかも。さすが世界最大の銀行を持つ国の王だけはある。)

と、ルリも半分、国王の態度に納得するものを感じた。ただ、半分親ばかの素質があるのは認めていたので

サリーちゃんパパこと、ミスマル・コウイチロウとはいい勝負だとも思ったが。


「22世紀中ごろに国際連合が採択した宣言『地球人類宣言』に伴もなって国際連合は地球連合として再編成されています。」


22世紀中ごろ、国際連合もついに瓦解し、地球連合へと改変されたと言う資料をかつて、カナはネットで見ていた。

それだと、100年前の月の自治区の独立戦争に手を妬いていた連合は・・・がおかしいかもしれないが

それは『連合』としかない。つまり、あれは国際連合の起こした事件であったわけである。


(その事実を知ると、やるせないわね。それは大日本帝国が起こしたことを戦後の日本国に対して言っているようなものじゃないの。)


「その数十年前に、月の自治区の独立運動っていうのもありましたが・・・国際連合はここで内部工作をしましたね。」


その言葉に、聞いていた国王夫妻に顔色がかわる。親バカから、ピースランド王国の国王と言えうる顔に。


「ルリが、なぜ知っているかは知らないが事実だ。」


「この際、知っている事はどうでもいいことです。問題は、彼らの内独立派は、火星へ逃げ、さらに木星衛星圏へ。

そして、死に物狂いで逃げた木星で、彼らはオーパーテクノロジーを発見したんです。」


「オーバーテクノロジー?」


「ええ、母。火星にてネルガルが同様の物を見つけていますが・・・木星に逃げた彼らは、100年の時を越え

今、地球連合との講和を目指しています。」


その講和、少しおかしい・・・そのデータを見たときルリはこう思ったほど。


(謝罪ってね・・・既に歴史の表舞台から降りている国際連合が起こした事件をどうして、地球連合を背負えと?

国際連盟が起こした過ちを、国際連合が背負えって言っているものじゃない。まあ、完全には違うけど・・・

それでも、『謝罪を要求する』と言われても困るのよ。なかば、国際連合が第三次世界大戦を抑えられず不満の募った

現地球連合主流国が強引に連合総会で地球人類宣言を強制採決したため、国際連合が瓦解したんだから。

いうならば、現地球連合も国際連合の仕打ちを受けているんだからさぁ。国際情勢には疎いのかしら、木連って?

敵対連合の過ちを自ら被りたい連合政府がどこにいる?)


だが、そんな不満があったとしても彼らはやってくる。そう考えて話を続ける。


「ですが、それは地球連合が認める筈が無い・・・私はそう思っています。」


「地球連合にとっては、国際連合時代の問題だと言うことだ・・・そう言う事なのでだろう?ルリ。」


このピースランド王国の国王らしい態度と言葉に考えを改めなおす必要があるとルリは感じる。


(意外と優秀よね。この夫婦・・・まあ、そうでなきゃギャンブルのテーマパークを

国にした初代で潰れているはずよね。それなりの手腕があると。)


「それだけでなく、色々な政府、国家、企業の思惑の中で、講和は成り立たない。私がこれを知った理由であるネルガルも同じです。」


ルリは、自分がこれを知った理由をネルガルにかぶせると、とにかく説得を続けた。

その結果・・・・・・


「うむ。分かったルリ。つまり、ルリはこのことを伝えるためにネルガルのコンピュータにハッキングして自分の居場所を伝えたと。」


「その通りです。自分の遺伝子データは持っていましたので、すぐに遺伝子データバンクから、遺伝子解析プログラムにかけて

自分の両親を調べる事は可能でした。尤も、遺伝子操作されている自分だと怪しいところで中々調べられませんでしたが。」


少し落ち込むようにしていうルリだが、実際には・・・


(あ〜〜あ、人を騙すって言うのは外交の基本だって父さんは言っていたけど、いい気分じゃないわ。)


ヤナセ・カナの父親ヤナセ・ジュンイチは外交に至っては、日本人として珍しいほど巧みだと言う評判があった。

得てしてそう言う人材ほど、各国からは恨まれやすいが、それも彼のカリスマ的な外交テクニックのため

反論できる日本人もなく、時期総理大臣候補とまで言われていた。

その能力は子にも影響していた・・・というところだろうか?

あのプレミア国王ですら彼女の話を真に受けているほどである。


「そうだったのですね、ルリ。大変でしたでしょうに。」


「いいえ、殆ど一瞬でしたから。そんなこと。」


実際に、一週間程度しかカナは体験していないので嘘でもない。記憶としてあっても、実感をもたない曖昧な記憶でしかなかった。

これは、ルリの予測だったが、そこでの記憶などそんなものだったのだろうということになっていた。尤もそれであっているのだが。


「うん。ルリが言いたいことはつまり、木連が攻めて来る。

その場合、地球連合では不安であり、もっと言えば南半球グループということか。」


「ええ。南半球の連邦は反遺伝子操作が多いです。21世紀中ごろから中東にいたイスラム派などが南半球に移動したためですけど。

これのせいで、マシンチャイルドである自分が狙われる可能性も高いんです。私も死にたくはありませんから。

それなら、地球連合を変えないといけません。そして、私の実家・・・つまり、ここなら・・・と思って来たんです。

私の頼みを聞いてもらえますか?」


これは、一種の賭けであった。

これで、ダメならば、それこそピースランド銀行のデータを自分の力で抑えて、脅迫する方法に移るつもりであったのだ。

尤も、そのルリの心配は杞憂に終わる事となる。


「このまま、戦争になると永世中立国として国がなりたたなくなる。私としても大事な娘の頼みごとだ。全面的にバックアップしよう。」


「あら、単に私は娘はいないから、それでデレデレになって許可したと思いましたけど?」


そう女王に言われ、ガクッとする国王であったが、これは自分の歴史改変への第一歩だと感じた。


(まずは第一歩か。とにかく、まずは企業ね。どうにかして、連合に関わりをもつためにも。)


どの時代にもあることだが、結局は民主主義(資本主義)はお金さえあれば、なんでもできてしまう世界なのだ。

民主主義の堕落とは、正にそれにある。

過半数を取らなければすべての政策が通らないというものは

国民の意思よりも、お金による議員を誘惑したりする、それに重点が置かれるからだ。

しかもである、大統領制では無い国では、その議会しだいで、総理大臣を決める事ができてしまうのだ。

これが民主主義の欠点といえる。国の政治は、お金で決まってしまう。その体制をルリはすぐに直す気は無く、逆に利用するつもりだったが。


「では、私のお願いですけど・・・国営企業を作ってもらえませんか?この世界において、凄い力を得るには国を産業と言う側面

で抑えてしまう事が一番ラクです。現在の北半球グループの盟主国である新ヨーロッパ連邦を抑えられれば・・・・・・・・・

それは、北半球全体を抑えると同義です。私に考えがあります。これでマシンチャイルドですからできないことはありません。」


「だが、その歳で・・・具体的にどうするつもりだい、ルリ?」


そう問う国王に、ルリは爆弾発言をした。それこそ、凄い規模の。


「ネルガルの全データの入っているディスクと思兼を私はネルガルから無断でもらっているので、それで作ったコンピュータを

利用すれば、第二のブラック・マンデーを起こしてさしあげますよ?」


さすがに、その発言に国王と女王は目玉が飛び出すほど驚く。

ブラック・マンデーとは1987年10月19日 月曜日。ニューヨーク証券取引場の株価が

代表とされているダウ工業株30主平均で見て一挙に下落率22.6%、下落幅508.3ドルと暴落した事である。

この下落率は1929年10月29日の大下落12.8%を大幅に上回ったものであった為世界中に大きな衝撃を与えて

『ブラック・マンデー(暗黒の月曜日)』と呼ばれたのだ。

ちなみに、その前までの記録であった下落率12.8%は、『ブラック・サーズデー(別名世界恐慌)』と呼ばれている。

これをルリが引き起こすといったのだ。それは銀行にとっては恐ろしいものであったから、彼らも驚いたのだ。


「ちょっと待てくれるか、ルリ。そんなことをすればピースランド銀行が各国に貸しているお金が・・・」


ピースランド王国は、銀行として各国の政府に多額のお金を貸している。それが経済的にはピースランドが大国である所以なのだ。

もし、これによって全世界の経済が大打撃を受ければ、それは各国がピースランドに溜めている借金を返せ無くなる事に他ならない。


「ご安心ください。下落より一週間で反発させて、一気に下落前よりも上昇させますので。

そこで問題なのは株価の下落で、各国の企業もそうなんですが、欧州の大型企業が軒並み大打撃を受けてしまうんです。」


自分がやると言ったのに、何を言っているのだ?という眼差しで見る国王夫婦だが

すぐにその意図が読めると、彼女の経済能力をすごさに敬服する。


「つまり、ルリはそれをすべてをピースランドが保持しているお金で全て買ってほしい・・・・・・と?」


この時代のピースランド王国財産は、極東の某国の如し、膨大であるが使われる量は少ないため、凄い額のお金が集まっていたのだ。


「あっ、先物銘柄は下落が激しいですね。それこそ、株価が0になりそうですよ?」


だが、そんなことを言っているルリは疲れていた。それこそ思いっきり。


(私も、これって好きにならないけど・・・顔も知らない企業経営者に義理は無いし。思兼級AIはこっそりとネットワークに移動させた

から、今ごろデータが消えていてネルガルの連中は叫んでいるでしょうね。あそこも大打撃か。大変ねぇ。)


「まあ、そうやって暴落させますので。回収し、それらと中心企業を持って欧州圏最大の企業を設立したいんです。

同時に、現連合政権における最大のスポンサーたる欧州圏の企業もすべて吸収してね。」


これによることは、ピースランドでも利益の方が損害よりも大きかった。なぜなら、確実に株価が下がった企業の株は安い。

それを買い占めた後、すぐに盛りなおすのだ。完全に安全な行動で、企業の買い占めができる。

しかも、それを立案したものが経済をコントロールできるという優遇つきだ。これにかぶりつかない国、銀行はない。


また、現政権の崩壊は、今の先のみえない連合政権よりもよっぽどマシであった。


そして、ピースランドもまた、国であり銀行であった。


そして・・・・・・




ルリの要望は通り、若干16歳の女性を会長とした一大国営企業『琴音グループ』の設立となった。

会長はルリの王族での名前『ルリ・オブ・ピースランド』だったが、自分は『ホシノ・ルリ』ですということで、それらは巧みに誤魔化された。

設立した一週間後の月曜日、西大西洋連邦を始めとする、南北問わずの全世界で株価の暴落が起きた。

代表とされている連合主要企業株10主平均で見て一挙に下落率62.9%という、今までに例のない大暴落の始まりであった。

最初は、日本国のネルガル重工を中心としたネルガルグループの株が59.7%の下落がおき

それに流される形で東アジアのアスカインダストリーも下落率61.4%も落とされてしまった。

本来、それで主要三大企業のうち残っているクリムゾンにお金が流れ込む筈だったが、逆にその影響を受け下落率68.8%という

予想だにしなかった下落を迎え、この三大企業という柱が崩れた地球連合各国の企業も次々と倒産していった。

だが、この混乱に乗じて、ある国とその国営企業は倒産した元大型企業を次々と買収していった。

その事実は、株の大暴落が嘘のように一週間と二日後、株が一気に暴落以前よりも上がり始めたことにより明らかになっていった。

欧州における世界三大企業の保持していた会社は、一つとして残っていなかったのだ。

そこにある会社は、ただ1つ・・・

ピースランド王国国営企業であり、大量の企業吸収と共に国営企業から自立していた『琴音グループ』だけであったのだ。

これによって、ネルガル・アスカ・クリムゾンの三企業の三極独裁はわずか一週間の間に崩れてしまったのだ。

琴音グループ会長 ルリ・オブ・ピースランド(16)によって、地球圏の経済はわずか一週間で・・・

これの影響は、全世界に再び三大企業の株暴落となって現れるが、それは全ての企業で約17.4%の暴落というものであった。

結果として、地球連合における経済圏は一週間で変わり、同時に地球連合現政権においての最大のスポンサーがいなくなり

お金でコントロールできていた地球連合も含めて、地球全体は22世紀最大の不況となっていった。

唯一の例外、琴音グループを除いて。




新設された琴音グループの会長室・・・実は、二週間前には欧州でもそれなりに名のあるグループの本社であったものだが

倒産によって、この琴音グループの本社となっていた。

そこの会長室で、ルリは座り心地の良い椅子に座って、ウインドウに現在の経済圏をだしていた。


「ピースランドの王宮で思兼をディスクのデータから作り直して、なんとか間に合ったわね。これで欧州圏は 私のもの・・・か。

まあ、時間がないから手段は選んでいられないんだけど。」


ルリの工作で、欧州は彼女の物となっていた。また、第二次ブラック・マンデー時の回収企業の株の持ち直しと

他の企業が再度の三大企業における株の暴落で関係企業であったもの以外でも大ダメージを受けていた。

琴音グループ関係によって、三大企業は欧州で大きな痛手を受けていると投資家たちが判断した為である。


「さてと・・・地球連合の新しい政府が決まるときに、才女の登場か。上手い具合にできているわよね、世界って。」


地球連合の政権はこれによって、責任をとって総辞職。

新しい政府が設立されるというときに、ルリはある人物との会談を持つ事になっていた。


「欧州圏の才女とも名高く、旧政権を激しく非難していた新しい北半球グループの総帥とも言うべき人。彼女に掛けるか。

新ヨーロッパ連邦 代表 『ラズリ・イズナール』代表に・・・」

地球連合の盟主国と呼ばれる新ヨーロッパ連邦の代表、ラズリ・イズナール代表との会談こそが、彼女の新の狙いであった。

そして、その歴史を大きく変える会談が行われようとしていたのだった。







後書き

新改訂版です。大きく話が詰まってしまった前回と違い、今回は大きく変えました。そのために自分の机には経済についての本や

参考として亡国のイージスの本やら、ナデシコの科学技術を解くための化学系の本まで・・・

選り取りみどりです。大幅な改訂と共に、主人公はルリことカナのままですが、副役にユウを入れるつもりです。

ちなみに、最初のあれは『日本のIF』です。今、弾道ミサイルが撃たれれば、ペトリオットやイージス艦ではどうにもなりません。

本家の憑依もので知った『米国の年次改革要請書』についても、本当に実在します。

実際に、郵政民営化とかもその年次改革要請書にあったこととか。

ちなみに、私はこの二人とは何にも関係ありません。

というか、統合幕僚長や、外務大臣の娘、息子の知り合いっていないと思いますし。

ちなみに、自分は世界恐慌について中学生(しかも、受験生っ!?)ですから、ブラック・サーズデーなんて

いうとは思いませんでしたけど、一応、詳細な説め・・・いえいえ、解説も入れておきました。

あと、地球連合設立が22世紀半ばというのは、ほとんど独自設定ですが、ナデシコの小説に追放したのは

『地球側』と言っていて、地球連合とは言っていませんでした。

また、木連も『反地球共同連合体』ですし、核攻撃をしたのも『連合宇宙軍』で、地球連合という言葉はどこにもなかったため

勝手に解釈しました。TV版や公式設定が違いますけど(ムネタケが月の内戦の“地球連合”は無関係と言っている他)

今後変えるつもりもありませんけどね。

こっちの方が楽しそうだし(爆)

また、地球人類宣言も同様の事ですので、別に気にしないでください。

遺伝子操作云々も、木連の方が規制はゆるいと思うのは私だけでしょうか?地球連合は不許可でしたが。

さて、ユウは誰に憑依させようかな・・・大魔王のこと喋っていたし大魔王、いやここは代魔王も・・・



電波です、気にしないでください(笑)

まあ、ゆっくりと受験生ですから書いていく予定です。よろしくお願いします。

 

 

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代理人の感想

んー。

勉強した後は認められますが、それを咀嚼・消化するレベルにはちょっと足りなかったかなと。

正確に言えばデータを並べ立ててそれっぽく見せる技術がまだ不足していますね。

ここらへんは勉強次第と思うので頑張ってください。本業に差し支えない程度に(笑)。