歴史はまた繰り返す…しかし、本当に繰り返しているわけではない。

人々が同じでない以上、少し違った歴史…願ったとしても、それは既に『違う歴史』なのだから……

 

 

 

時の流れは残酷で……

 

第一話『そして、永遠は崩れた』

 

 

―1―

Forever Full up My love(永久に満ちた私の愛)

 

地球上で、有史以来、いや人類の誕生以来、人類が縛られ続けていたことが唯一あるとすれば、この『love(愛)』と言える。

遺伝子に縛られ、人の子孫への願いというもの、自分の欲求というもの、それはそれを作り出している。

それは、20世紀には既に遺伝情報、ヒトゲノムからも分かった『事実』であった。


その後、開発されたマシンチャイルドにせよ、この遺伝子の呪縛から逃れることなどは出来ない。

例え、それが自ら感情を持たないことを決め、他人の関心を持たない人間だったとしても

それもまた、人類が他人を欲するのと同じく、世界の中でそれを求めることが人類の基本的な欲望であるそれに、打ち勝つことなどできはしない。


ホシノ・ルリ……かつて、自ら他人への関心を拒否し、傍観者を決め込んでいたマシンチャイルドにせよ、それは言えることであった。

彼女は、その結果ナデシコCとユーチャリスごとランダムジャンプを行い、テンカワ・アキト以下のクルーを過去の世界へと飛ばした。

その中に『多数の犠牲者』がいることも呑気に忘れて…………

 

だが、遺伝子レベルでの改変技術が可能にしたことが唯一あった。

人間から、その他人を求める心を消すことは出来ない。だが、その方向性をコントロールするだけなら……

人類が行った、一つの汚業が歴史に影響を与えるのは、直ぐ目の前へ近づいていたのであった。

 

 

 


 

ふと、ボクはときどき思うことがある。


もし世界が『遅延波(未来の向かう波動)』と『先進波(過去へ向かう波動)』の重なり合いだとして

この世界はいったいどんな世界かということだ。ボクたちの歴史は未来からの先進波の影響を受けていることになるなら

決まっている歴史となってしまう。なら、歴史が一つしか許されないとして、この世界は何なんだろう。

一度、ナデシコCのランダムジャンプによって戻された歴史であるこの歴史は。

 

だからボクはこう予言する『ここは、その歴史の続き』と。

未来の人が行うことが歴史に作用するなら、既に歴史改変などできはしない。残った方法は世界が幾つもあることだが

そんなことがありうるはずもない。

経路積分法にもとづけば、可能性としての多数の歴史があることは確かかもしれない。

だけど、それはボクたちのいる世界と同じ世界になりえる。つまりは、すべて歴史改変がされた世界だ。

それはありえないはず。だって、歴史改変のもととなる世界は存在し得ないことになるから。

だからボクはそう予言したんだ『ここは、その歴史の続き』と。


だからこそ、ボクはあえて言う。『人を消すことは人を殺すことよりも重罪だ』と。

歴史を一度戻してしまった、彼、テンカワ・アキトも、また重罪なのだと。

著者 地球連合科学技術局局長       

連合政府大統領 2204年 この記録を永久開封禁止とする


 

 

2196年10月

佐世保 ネルガル重工ドック(連合宇宙軍基地)

 


大空を飛ぶ大型の戦艦、バッタやジョロの攻撃を紙一重で交わすエステバリス…

そして、ナデシコのグラビティ・ブラストで幕を閉じた戦闘…

 

「歴史と変わっている、か。もっとも、この世界の歴史はこの先も出来ているわけじゃないけどね。」


「そうですね。あなたに教えてもらっていた歴史とは著しく、特にエステバリスが違います。」


佐世保市外の丘で、多くの人が見学している中、少しはなれたところで見ていた二人がそう言った。

一人は、16歳程度のブロンド色のツインテールをした女性。もう一人はそれよりも少し小さいが蒼銀の髪をした少女であった。


「歴史なんてそんなものだよ。ボクもそう思うもん。人の気持ち次第だよ。

もっとも。そのために死んだ…いや、消えた人たちが浮かばれるとは思えないけど。」


「実際に、自我が消えることなんてあるんですか?そのボソンジャンプで。」


「自我か消えないなら、なんでランダムジャンプで他人の体に入ったまま過ごせるかを考えられないんだよ。ボクでも。

やっぱり、一番の可能性は自我の喪失っていうことで片付けられると思うからね。」


周りから少し怪しい目で見られている(日本人とは得てして外国人を見るときこういうものだ)話していることもそれわ関与しているが

二人は気にしないで戦いが終わった、その戦艦と機動兵器を見て続けた。


「それとも、きみも自我を喪失してみたい?他人に自分の体を勝手に動かされるのはあまりボクも嫌だと思うけど?」


と、横の少女はその問いに答えた。


「よくわかりません、私、少女ですから。ただ、確かにそうだと思います。」


その、横にいた彼女、本当ならば、ナデシコメインオペレーターであるはずのホシノ・ルリと。

 

 

 

 

時間は少しさかのぼり、2196年9月初めまでさかのぼる。

 

国際的な複合企業体『ネルガルグループ』の中心企業であるネルガル重工。

その傘元の企業である人間開発センターでの出来事である。

 

朝、今日も今日もで、スキャパレリ・プロジェクトにおける機動戦艦ナデシコの専属オペレーターに選出された

彼女、ホシノ・ルリは最終点検と言う名の実験をこなされていた。受け身であるのはされていたほうだからである。


もともと、ヒューマン・インターフェイス・プロジェクトのAAAランク被検体である彼女は2190年にナデシコ建造計画が

たって以来、 更にスキャパレリプロジェクトにも対応した訓練を日課に入っていた。

もっとも、彼女が研究所に来たときに、既に彼女にスキャパレリプロジェクトの被検体決定もあったため両方同時だったわけだが。


ただ、その被検体であった彼女からすればどうでもよいことではあったか。


「ホシノ主任。お久しぶりだね。」


その研究所に、朝早々から一人の女性が現れた。

ネルガル重工本社 中央技術開発局 局長 ナナセ・サンゴ(16)と言う戸籍を持つ彼女が朝から突然、傘元でしかない

このセンターに来たのであった。もちろん、ホシノ主任は驚き、迷惑そうな顔をしていたが。


「なんのようでしょうか。まだ、ルリの受け渡しの時期には少し早いですが…」


「ボクもそう思ったけど、ちょっとした急用でね。中枢コンピュータ『オモイカネ』の改良の件で使用するルリちゃんにボクも会いたいと思ったわけ。」


本来ならば、拒否するところだが、相手は研究員にとってはネルガル本社重役に次ぐ権限を持つ人であった。

彼女が、書類に一つサインすれば、明日から首にされ、更には機密漏洩のため、ネルガルSSに消されるのは分かっていた。

たとえ、彼が彼女を個人的に気に入ってなくとも、選択はなく、そのため、彼にはもともと他の道は存在しなかったといえる。


「私をどうするつもりだ。ナナセ・サンゴ局長。」


「うん。そうだねぇ……新造戦艦ナデシコ科学班への配属って言うのは?ミッション成功率1%の旅っていうのもボクは楽しそうだと思うよ?」


もちろん、謹んでホシノ主任は辞退したらしい。

誰しも、自分の命は欲しいものなのだ。

 


 

皆さん、お久しぶり。ホシノ・ルリです。

えっ?なにがお久しぶりだ、お前はまだ一度も話していないだろう?

まあ、そうなんですが、作者が『繰り返した過去も未来という名の過去の続き』とか分けの分からない設定を

立てていますので、そういうことらしいです。



その日、私はいつもの日課である研究所のメインコンピュータのハッキングをしながら、今日の訓練内容を調べていました。

まあ、こうすれば直ぐに訓練が終わるしね。

と、調べていると、いきなり玄関の監視カメラが来客を示し、そのままホシノ主任研究員、私の戸籍上の親の所に向かっていきました。

話の内容は、私のことで、私のところにその人が来るようです。

 

「始めまして、ボクはネルガル重工本社 中央技術開発局 局長 ナナセ・サンゴって言うの。よろしくね。

ああ、ホシノ主任とはちょっとした知り合い。いい関係じゃないから知り合い程度ってわけなんだ。」


女性で、ブロンドの髪をツインテールにしている割には『ボク』だなんて、なんとも男の子みたいな喋り方をしていますが

女の子です。

えっ、女性じゃないのか?

ちょっと小さすぎます。そうですね、私がそのまま五年間成長したら、これぐいらに成長するといった感じの身長です。


「はあ……」


「ネルガル重工本社 中央技術開発局長として、ホシノ・ルリちゃんにボクから一つ提案があるんだ。」


元気にそう言って、なんとも体も使ったボディーランゲージっていうのでしょうか、それで表しているサンゴさん。

いったい、なに考えているのやら。


「……あるところに、妖精さんがいました。彼女はまったく感情を知らない妖精さん。でも、その妖精さんは

優しい王子様とお姫様によって少しずつではありましたが、感情を知り始めました。そう少しずつではありましたが。」

提案といいつつも、言っていることは昔話のようです。

でも、こんな話し、昔話ライブラリーには無かったと思うけど…


「でも、突然王子様とお姫様は事故で死んでしまいました。まあ、新婚旅行中の事故だったんだよねぇ〜〜」


…なんとなく、言っていることが昔話っぽくないですね。

とすると、これはノンフィクションの物語でしょうか?


「で、危険なのは感情を中途半端に知った妖精さん。なんて言っても、自称中級者って言うのは一番危ないものだからね。

少し知っているから、逆に困ることが多い。核兵器の使用方法を知らない人と、使用方法は知っている人と、作り方も知っている人だと

作り方を知っている人はその危険性も知っているし、また使用方法を知らない人は勿論使えない。だけど、使用方法だけ知っている人は

とっても危険なのと同じなんだ、と思ってくれていいよ〜〜」


「それ、なんなんですか?」


「まあまあ、話しは最後まで聞いてよ。そして、死んでいたと思っていた王子様とお姫様は生きていた。

ただ、王子様は世界の闇に染まって黒くなっていたけどね。その黒い王子様を妖精さんは追いかけた。それこそ感情のままに。

結果が、地球を含むインフレーション銀河一つの崩壊っていうのが、ボクの言いたい内容の前段階。」


この宇宙が、インフレーションと呼ばれる大膨張で始まったというのは知っていますが…

いわゆるSFというものでしょうか?

でも、言いたい内容の前段階…まさか、これがすべて事実…宇宙が崩壊……

 

そんなわけないか。私もバカかも…


「これ。嘘だと思ったでしょう?ひどいなぁ、ボクは嘘つかないのに〜〜

それじゃあ、少し具体的な話をしようか。現在、ネルガル重工はスキャパレリプロジェクトを始動している。それは新造戦艦ナデシコ級による

火星奪還が建前で、実際には火星にあるオーバーテクノロジーの研究成果を回収しようっていう計画&ナデシコ級のデモンストレーション

なわけ。グラビティ・ブラストとディストーションフィールドを持った画期的戦艦のね。」


ネルガルは、そんな戦艦の建造をしていたんですね。

まあ、そのオペレーターになることが決まっていたそうですから、少しは知っていましたが。


「そして、ネルガルが回収したいのが火星のボソンジャンプテクノロジー。」


「ボソンジャンプ・・・・・ですか?」


聞いたことの無い名前です。ボソンというのはボース粒子のことでしょうか?

力の粒子、ボース粒子がジャンプするというのは、無いと思うんだけどな。

 

……私としたことが、変なこと言ってしまいました(ペコリ)


「そう、ボソンジャンプ。20世紀末、物質は物質そのものを司る『フェルミオン』と

それを繋ぐ力を司る『ボソン』の二つで構成されていることが分かっているんだけどね。

フェルミオンは、質量を持つけど、ボソンは質量を持たない。それは、情報として伝達され、時間や空間を自在に転移させることが可能。

これを利用して、瞬間移動や時間移動を行うのがボソンジャンプの基本原理。

ボソン・フェルミオン変換とフェルミオン・ボソン変換を行い、物質粒子を非物質粒子とし、更には所定のポイントで元の物質粒子化させるもの…

まあ、それをボソンジャンプって言うんだよ。」


そんな技術が、この時代に存在していたんですね。

まあ、私が知らないのも企業の思惑、とかいうものかもしれませんが。

で、なんでわたしにそんな話をするのか思ったら、そのナナセさんが少し怪しげな笑みを浮かべました。


それって、まさか……


「もし、これが未来におけるある人物の一生を出していたとすれば?

ボクが、そのボソンジャンプで未来を知ることが出来たとすれば、どう思う?」


「まさか……それは、私の一生ですか?」


私も、バカだと思います。

宇宙一つ崩壊させるだけのエネルギーは、ビックバンかブラックホールですが、人類がそんなエネルギーを生み出したなんて知りません。

そして、確かに私は他人への興味は薄いですが、心を持たない妖精だとも思っていません。

そして、なにより、私は感情を暴走させるようなことは……しないと思います。未来のことなんて分かりませんから。


「残念だけど、正解。ボソンジャンプは歴史そのものを知ることすら出来る。

そして、そんな世界を作り出すわけにはいかないし、もっと言えばその世界は既に過去のこと。」


「過去?それは未来の話じゃないんですか?」


「そうだよ。ボクが言ったとおり、未来の話。だけど、過去の話。この世界軸は過去にそう言った歴史を持つ時間軸なんだ。

一度、歴史は崩壊し、宇宙は崩壊して、その後に新たな世界が誕生して数百億年後の世界がこれなんだ。」


歴史は繰り返す、そう未来でもあり過去でもある私が言っていた、とナナセさんが続けて言うので

私は、いよいよ頭の中がパンクしてきました。

頭の回転は速いほうだと思っていたのですが、目の前にいる人より数段遅いようです。


「それ、事実なんですか?」


「信じてくれない?ボクも確かにそういわれたら信じられないよね…

でも、早くしないとシナリオは待ってはくれないからね。適当に話は進めさせてもらうよ。

その妖精さん。つまりは過去でもあり何も干渉しなければ進むはずの未来の君は、ランダムジャンプでここに向かっている。

そして、体を伴わない精神ボソンジャンプは、君の体を依り代として入り、君自身の自我を消滅させる。」


……自我を消滅させる……

私が、私で無くなる……


そういうこと……ですよね?

ちょっと、変な人と思っていたナナセさんはまるで私を試しているかのようなそぶりを見せていました。

そう、まるで……

 

私に選択肢を与えているかのように。


「自我は消滅した後、ジャンプしてきた人物の自我が入り込み、そのまま生活が再開される。

もっとも、その時、君という存在がもし『一つの独立した考えを持つ者』と仮定するなら、既に君じゃないんだけどね。

分かりやすい考えだと、自我が無くなり、無意識体のうちに体が乗っ取られる感覚だよ〜〜」


「私は……死ぬんですか?」


「死ぬんじゃないよ。消えるんだよ。その自我が。それは死よりもあるいは恐ろしいこと。死はまがいなりにも人々に感知される。

たけど、消えることは確実に感知されない。既に消えるものは人としてその存在が確立されないと同義なんだ。」


ある日、突然、知り合いの性格が大きく変わったら、君はどう思う?

 

続けて言われた言葉、はっきり言って私は困ってしまいました。

すべてが嘘なのかもしれません。この人の言うことは。突飛も無いことです。嘘と普通なら私も考えていたと思います。

ですが、あの人には嘘をつく理由もありません。

それ以前に、彼女は本当のことを言っていたとしたら…私はもう直ぐ『消える』ことになる。

 

イヤです。はっきり言います。イヤです。

私は、よく『感情の無い子だ』とか『冷酷な少女』とか言われますが、これで笑うときもあれば泣くときもあります。

感情表現が苦手なだけなんです。自分で言うのもなんですけど。



「ついでに、イルカの可愛いぬいぐるみが無いと眠れないと。」



「そうです。私は、横にお気に入りのイルカの………な、何を言わせるんですか…(真っ赤)」


くうっっ…ホシノ・ルリ、一生の不覚です。

私がひそかに可愛い物好きということがばれてしまいました。まさか、いわゆる前の宇宙の私も可愛い物好きだったのでしょうか?



「ボクの知る限り、それは無いよ。」


「…あなたは、心の中が分かるんですか…」


「まあね。ボクって特別だから。地球連合政府危機管理情報局って言うところにも所属しているしね。

色々とボクも多忙だから、話は早くしたいわけだよ。さて、消えるか残るか、どちらかボクは君にあげることが出来る。

君が生に執着心が無いなら、このまま消えればいいし、執着心が多少なりともあるのならば、助けてあげる。

ただ、ボクもタダでってことはないよ。ちょっと、ボクの劇団に入ってもらえればなぁ、なんて思っているから。」


私に選択の余地はあった。

だけど、私は死ぬ、消えるなんて先ほども言いましたがイヤです。

私は、確かに今は自分の存在理由なんて、難しいことを考える必要も無く、ネルガルの『備品』扱いなのかもしれません。

ただ、この前にいる人にはそうでない自分を提供してくれそうな…そんな不思議な雰囲気がありました。


「どんな劇を?」


「興味ある?そうだねぇ〜〜〜〜出演者は全人類、劇名は『人類の愚かな生き方に終焉を』主演は一週間後

機動戦艦ナデシコに集結するクルーたちと、ボクが集める人たち。内容は残酷な戦争という世界の中で

ただ、生きて、戦争をしない世界を望むものたち。っていうのはどう?」


「平和じゃないんですね。」


「そんな生易しい言葉を使う必要はボクは無いと思うんだ。戦争と裏で渦巻く陰謀の世界でそんな言葉は意味ないよ。

時には、多額の金で人を釣ることもあるだろうし、時にはその強大な軍事力を持って反抗の意志をつぶすことだってある。

だけど、その先に待つ『戦争の無い、生きることの出来る世界』

それがボクの目指すものなんだぁ。そのためには、不平等な人は無くさなきゃ。だから、君に当たったわけ。

戦後、そう言った反乱勢力を無くすためにも、また君の持つ、その力のためにも…だよ♪」


 

ホシノ・ルリとして、私は消える、そう言われて、目の前に私が私でいられる世界を提供する構えがある…

卑怯です。はっきり言って卑怯にもほどがあります。

人間のもっとも基本的な欲求の一つ『生への執着心』…人であるが故、私もそれを超えることは出来ないことを知っている。

それを超えるには、強い感情がないといけない、そう、ナナセさんが言っていた未来の私のように。


そして、私にはそれがまだ無い。なら、選ぶ結果は一つしかないじゃないですか。


「分かりました。私が私でいられ続ける場所、本当にそんなところがあるなら、私は存在があり続けたいです。」


「そうだよね。そう言うとボクも薄々感じていたんだ。この時の君なら。それじゃあ、色々と用意することもあるんだ。

だいたい、明日ぐらいにもう一度迎えに来るよ。君は別に出かけるために荷作りなんてしなくていいから。

それと、このラピス・ラズリの鉱石を君に。この鉱石には特殊な技術が施してあって、君の体内ナノマシンを活性化させるてくれるんだ。

分かりやすく言うと、君本来の力を存分に発揮できるはずだよ。」


その後に『それじゃあ、明日期待して待っていてよぉ〜〜』といって、ナナセさんは出ていきました。

 

その日から、私の新しい人生が始まった。

戻れない、戻りたくない、過去という未来の私が選ばなかったその道が……

 

ただ、最後に私は聞きそびれていました。あの言葉を……


『ふふ、これから始まるんだよ。テンカワ・アキト。ボクと君の歴史の流れが……』


 

その日の午後、ネルガルグループ会長室で一組の男女が話していた。

一人は、地球圏で片手で数える程度しかない超大型複合企業体『ネルガルグループ』

及びその中心企業のネルガル重工会長アカツキ・ナガレ。

もう一人は、ネルガル重工本社 中央技術開発局 局長付き秘書アリア・フィートレス。


「なるほどねぇ……あの人がわざわざ、僕に忠告かい?」


「その通りです。会長。『せっかちなマネでナデシコを利用するな』と仰せつかっております。」


ショートで抑えた髪は、少し茶色の感じのある黒であり、その美貌はネルガルでも数少ないランクのものであるのは

間違えない。秘書課では会長秘書のエリナとアリアの二人が二大秘書とまで呼ばれる。

ただ、それで会長秘書、そうでなくとも副会長や社長秘書確実のアリアが、中央技術開発局という少し外れたところの

秘書をしているかは一種の謎のままである。


「ネルガル首脳陣としても、この戦争の長期化は望まないことと考えますが……」


「その通りだよ。国家総力戦だなんて、第二次大戦後初めてだよ?その場合、民間需要は落ちる一方だ。

このままだと、戦後、ネルガルが落ち目になる可能性すらある。」


ネルガルは、ネルガル重工と呼ばれるだけあって、民間軍需産業企業と言われる大企業だが、別にネルガルグループはネルガル重工一社だけではない。

ネルガルグループは、それこそ

『ゆりかごから墓石まで』と称される世界三大企業連合体の一つだ。

そして、もちろんその多数のグループ内企業には民間企業ゆえに民間へ回す製品の製造工場などが軍需産業よりも多くある。

だが、トカゲ戦争より一年余り。事態は悪化の一途をたどり、このままではボソンジャンプ云々以前に、企業が倒産する可能性すら出てきた。

戦争時では、民間の需要は極端下がる。それは、同時に軍需産業に流れが軍需産業に傾くことも意味するが

それとて、永遠ではない。


国だって、一つの家と見れば、限界はあるのだ。戦時国債と限度がある。

つまり、地球連合がこの戦いで得られるものは少ない。戦争に勝利しても、残ったのは荒れ果てた台地と

人類すべてを賄うには余りにもダメージを受けすぎた社会、そんなでは企業以前に自分の今後すら危ぶまれる。


つまり、ネルガルとしては、戦争の長期化は望まない、そうであった。


「スキャパレリプロジェクトに関して、ナデシコ級のデモンストレーションなのは分かりますが連合軍を敵にするのは

余りにも危険な賭けです。あの人…サンゴ様は、その辺は、適当に連合安全保障会議で抑えるといっていますが、険悪ムードでは困ります。」


「僕もそう考える。連合軍には出来る限り、最低でも地球本土の木星トカゲの殲滅をしてもらわないといけない。

エステバリスに関しては、ナデシコに乗せるものをベースに大量生産ラインに乗せるとして、戦艦は……例のところに頼まないといけないのかな?」


「とは言っても、北米に本社があるからといえ、またクリムゾンの影響力はたいぶ減ったとはいえ、そんな一ヶ月でバンバン戦線に投入できるとは思えませんが。

イオン・インダストリーも、ネルガルと同じく戦争早期終結を願ってはいますが…」

 

アカツキとアリアの間で話されていた会社。

イオン・ヴァーサタイル・インダストリー社(通常は略してイオン・インダストリー社という)は、数年前に北米に影響力を強め

当時、北米を支配下にしていたクリムゾンをその支配からほぼ完全に一掃した新興企業連合体であった。

クリムゾンはこれにより、多大な被害を被っており、戦争には積極的ではない(一部、一発逆転の賭けに出ようとしているという噂も)

アスカ・インダストリーとは争っているものの、ネルガルグループとは比較的良好な関係を維持しており

もし、イオンインダストリーがネルガルと共同路線を取れば、他の二社が協力しない限り

世界の経済はネルガルとイオン・インダストリーのものとなるとされている。


「イオンの会長さんにはそう伝えてくれればよいよ。ネルガルと業務提携を結ばないかってね。分け前は6:4ってところかな。

相転移エンジン関連技術は僕たちから出すし、たとえ製造はそちらに任せてもね。」


「私から、そう話しておきます。それとマシンチャイルドの開発コード名『HI−082』の行方は分かりましたか?」


「秘匿名称『ラピス・ラズリ』だったね。ああ、ネルガル遺伝子技術研究所だよ。場所は日本の静岡県浜松市だよ。

連合空軍の浜松基地があったはずだから、軍用機で飛べばすぐと思うけど?」


民間人が軍用機に、そういわれればそうなのだがあいにく、彼女は軍への派遣社員でもあった。

軍においては、連合宇宙軍第十四独立艦隊所属の大佐であり、十分にその権限を持っていた。

が、そんなことはどうでもいいのですよ、とでも言いたげな顔をすると、再びフライ・ウインドウシステムを起動しとある情報を出す。


「サンゴさまより、近々ナデシコ内でボース粒子反応が感知される可能性がある、との報告です。

後一週間から二週間後とのことですが、詳細は不明です。」


「それはうれしいね。僕としても、ボソンジャンプ技術はとっても美味しい技術だからね。

でも、なんだサンゴ君はそんなこと分かるんだろうね?」


アカツキは、そのことにとても興味があった。

今より1年ほど前からずっと、アカツキがいう女性……

ナナセ・サンゴ中央技術開発局長はネルガルに有益な情報を多く渡していた。


そんななぞめいた女性に、少なからず興味を抱いていたアカツキは、その側近というアリアに尋ねてみたくなったのであった。

すると、以外にも返事は直ぐに返ってきた。


「サンゴさまに言わせると『ほら、ボクって遺跡好きだから♪』、ということです…(汗)」


「ははは……」


政治家としても、一流だといわれるほどの冷酷の才女『アリア・フィートレス』がサンゴのまねをして

『ほら、ボクって遺跡好きだから♪』なんていうことが想像できなかったアカツキは急所にヒットした。


(な、なんとあの才女にも…ふふ、後でネルガルの非公開サイトに流してやろうか?)


たぶん、警備用の監視カメラに映像が入っているだろう、とアカツキは予測していたがしっかりと冷酷の才女はそのデータも後で消していたそうである。

にしても、アカツキはその言葉の真価を考えてみる。


遺跡好き、それとボソンジャンプ技術は古代火星人との関係性か?

直ぐにそれは分かるが、何かが引っかかっていた。


「とにかく、サンゴさまは、イオン・インダストリー社で少しすることがある、ということです。」


「そうかい。まあ、僕たちにも有益なことだし、イオン側とも協調体制を取り続けることにしたよ。

まあ、これからもよろしく。あ、それと今日、僕と食事行かない?(キラッ!)」


歯を光らせるアカツキ

はっきり言って、とてもネルガルグループ会長とは思えないだろう(爆)


「丁重にお断りします。会長。エリナの苦労も分かりますね。」


「うっ、エリナ君のことは言わないでくれ…先日、少しイオンとの共同研究の書類をなくして叱られたばかりだし…」


とても、天下のネルガル会長とは思えないアカツキは、机に『へのへのもへじ』を書き始める始末である。

確かに、エリナの苦労が分かるというものである。


「後で、科学技術の主任に言って、新しいのを作らせましょう。」


「助かったよ。エリナ君に今日中に探せっていわれていてねぇ…」


だったら、私を食事に誘う余裕無いのでは…とアリアは思ったが、あえて無視する。この男にとってエリナに折られることよりも

美人との食事なのだろう、と。

自覚する程度に、アリアも自分の美貌には気づいている。もっとも大半の人は『鈍感』というが。


「それにしても、ネルガルとイオンを繋ぐ君がいないと色々大変だったよ。君のお陰だ。」


「いえ。後は、ナデシコ次第です。歴史は動きますよ。」


 

そう、その日、歴史は大きく動き出す。

説得力のあるアリアの言葉に、歴史の意外性をアカツキが気づいたのはこれより半年後であった。

 

 


 

後書き

……この話、実は本当の意味での私の処女作です。

二年ほど前、時ナデを読んで思ったことを文章化して、一度作品化したのがこれでした。

もっとも、公開などしないことにしたのですが……


先日、といっても3ヶ月以上前ですが、パソコンが壊れて、先に公開してあった憑依ものの作品のデータが消失しました。

一度、プロットを立ててから作品を作る私には少しきつく、色々とCDのデータを探していたら、この作品に命中っ!


ってことで、大幅改編でこちらがでてきてしまいました(てへぇ♪)


今は、ハーリー君至上主義という、少しやばいような気もしないでもない私も当時はルリ様至上主義(TV版の)

その時書いたものですが、内容としては『時ナデ世界に本来いたはずのホシノ・ルリ』はどうなったのか、ということです。

その問題解決のためだけに、色々と作品中にわけの分からない人も出てきてしまっている当時は混乱した作品でした。


それを見つけた私は、それを掘り返してその前よりはある程度読みなおせるようにしたものがこれです。

私がそもそも、こう言ったものは苦手なのですが、がんばってみました。

 

もっとも、元のバージョンとの一番の違いが『サンゴちゃんの性格』という一番大切なところなんじゃ…と思いますが。

これを書いていて、どことなく黒サブレさんの作品に出ているガーネットに似ているような気もしてきて(特に喋り方とか、ボクって言っているし)

…こちらには元ネタがいますが(あっちにも同じ元ネタの可能性が…ああ、どうしよう?)

としても、サンゴは別に元ネタあっても、ほぼオリキャラとして使うつもりですからどうでもいいのですけど。


とにもかくにも、既にここに出ているということはどうしようもないので、はっきり言いましょう。

この作品、続くか分かりません。一応、がんばってみるつもりなのでよろしくお願いしますね。

メールとかもらえると元気がでます。よろしくお願いしますね。

 

ああ、サクラちゃん最高だっ!!むさすがは、天下のサーカスですっ!

私は20歳未満なのでパソコン版は知らないが、さすがはダ・カーポは妹関係の話で、ありつつもこの・・・(以下検問)

 

 

 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

なんだかなぁ。(爆)

いや、サンゴとやらがあまりにもあからさまな最強逆行万能全知キャラというか、

額縁に入れて飾っておきたいほどにベタベタなのが何よりもまずいかなと。

ネタ自体も今となっては結構苦しいシロモノですしねぇ・・・・。

後誤字脱字をどーにかしてください(爆)。