アキトのパラレルワールドストーリー



EPISODE 6












−ひとしの家 リビング

 アキト(ひとし)が高速道路を迂回して何とか家にたどり着いた頃には午前6時を回っていた。

 残り6時間だ。

 リビングに入ったアキトだが、誰もいない・・・・・・

ひとし「あっ 皆、地下だっけ」

 この家のマザーコンピュータ『スパルタカス−5568』は巨大なために地下室に置かれている。

ひとし「えっと確かここらへんに・・・・・・」

 キッチンの床の取っ手を引っ張り階段への入口を開ける。

 中からヒヤッと感じるぐらいの冷気がアキトを襲うが直ぐに慣れた。










−ひとしの家 地下室

 アキトが地下室にに入ると中央では大きなコンピュータが騒音を起こしながら機動している。

ビリー「ん? ああ、やっと帰ってきたのか」

ひとし「あ、ああ。 ところで皆は?」

 部屋にいたのはビリー・Gだけだった。

ビリー「サーティ達AIはこの中だ。 まぁフィフスのプログラム・コアを移動させるのに苦労したけどね」

ひとし「・・・・・・他人―――人の家のコンピュータにコアを移動させていいのか?」

ビリー「ははははは。 いいじゃないか、一時期だけだし・・・・この件が終わったら直ぐに戻すよ」

ひとし「(ま、いっか。 どうせ俺には関係無い事だ)」

 こいつもこいつで酷い。

ひとし「んで、弥生は?」

ビリー「思ってのほか作業が早く進んでいるんでね、今は仮眠を取ってもらっているよ」

ひとし「って、事は2階か・・・・・・」

ビリー「しかし、PCのパーツを買いに行ったにしては遅かったんじゃないか? それに買ってきたように見えないが?」

 ビリーの指摘どおりアキトは何も持っていなかった。

 アキトは無言でポケットから例のDVD−ROMを取り出しPCに取り込んだ。

 ビリーは何かと思いながらアキトの行動を黙って見ている。

ひとし「『大野 太』という人物を知っているか?」

ビリー「大野? はて・・・・・・聞き覚えがあるような」

ひとし「お前のPCにハッキングを仕掛けた犯人だよ」

ビリー「な―――っ!!」

 ビリーがアキトの発言に驚くがアキトは無視して続ける。

ひとし「正しく言えば今回の『ゼロ』を造った犯人だがな」

ビリー「・・・・・・どこでその情報を?」

ひとし「裏情報だ。 但し信用性は十分高い」

 ビリーは深いため息をして落ち着きを取り戻しアキトに続きを要求した。

ひとし「今、俺は奴の住処に行ってきた。 そこでこいつを見つけたんだ」

ビリー「大野は居なかったのか?」

ひとし「・・・・・・ああ」

 それだけの返事だった。

 アキトは大野が死んだ事を言おうかと思ったが死因が死因だ。 変に勘ぐられる。

 それを回避するために『大野は逃げた後で仕方ないから押収した』という事にした訳だ。

ビリー「ところで中身はなんだい?」

ひとし「・・・・・・見れば分かる」

 ビリーがマジマジっと見るが出てきたのは何かの構図だった。

ビリー「これは?」

ひとし「今回の『ゼロ』の構図だ」

 アキトが自信満々に言うがビリーは信じていなかった。

ビリー「馬鹿を言うな。 僕がプログラム構図を見間違う訳がない。 これはどう見ても生命体の構図じゃないか!!

 そう・・・・・・画面には生命の構図――説明は難しいがそんな物――が映しだされていた。

ひとし「そうさ・・・・・・『ゼロ』はプログラムじゃない。 一種のエネルギー生命体だったんだ

ビリー「馬鹿な!! そんな事が・・・・・・」

ひとし「大野は2年間だけだがバイオテクノロジー研究所に勤めていた事が分かった。 そして神戸博士―――父さんの研究チームにもいたんだ」

ビリー「そうか! 聞き覚えがあると思ったら神戸博士の研究チームリストに載ってたなぁ・・・・・・」

ひとし「とにかく、奴の正体は分かった。 これで弱点が分かるはずだ」

 これで希望の光が見えたかと思ったが・・・・・・

ビリー「それはどうだろうか・・・・・・」

ひとし「何・・・・・・?」

ビリー「奴がプログラムではなくエネルギー生命体だとして今の奴にサーティ達が適うかどうか・・・・・・」

ひとし「それもそうだな・・・・・・」

ビリー「オプションプログラムの能力上昇も彼女達の限界ギリギリまで伸ばした。 弱点を見つけるにしても時間がない」

 『時間がない』という言葉にアキトは眉が傾いた。

ひとし「どういう意味だ」

ビリー「これを見てくれ・・・・・・」

 PCを操作するビリー。 出てきたウィンドウに書かれたのはニュース記事だった。

 でかいフォントで『世界が停電!? 無くなる電力!!』と書かれていた。

ビリー「ゼロの仕業だ・・・・・・」

ひとし「(ここまでとは・・・・・・)」

 早く何とかしなければと思うアキト。 だが対抗手段が無い。

ビリー「日本はまだ無事だがアメリカから始まってヨーロッパ、アフリカ・・・・・・次々と発電所等から電気が奪われている」

 日本を後回しにしたのはアキトの存在を恐れているのか、ただ単に挑発しているのかは分からなかった。

ビリー「とにかく早くしなければ!!」

 焦り始めるビリー。 確かに状況はかなりヤバイ。

 しかし、アキトにはまだ方法があった。 そう、ジンの存在である。

 彼が何とか技術を見つけてくれば問題はないのだ。

 その時だった。

 ――バタバタバタバタバタ バターン!!

 勢い良くドアが開く。 そこには息切れしている弥生の姿があった。

弥生「はぁはぁはぁ・・・・・・大変よ、大変!! ―――って、お兄ちゃん!?」

ひとし「ただいま」

 にこやかに朝の挨拶を交わす2人。

ビリー「さわやかな挨拶をしている所を悪いが、どうしたんだい?」

弥生「あっ、そうだった!! TV、TV!!」

 置かれいるリモコンを操作してTVを付ける。 すると・・・・・・

アナウンサー『緊急ニュースです。 昨日より世界的に起きている原因不明の停電がとうとう東南アジアに被害が出てきました』

ひとし「時間は・・・・・・7時」

ビリー「世界の電気が無くなるまで推定で5時間ってとこか・・・・・・」

アナ『このままだと日本に被害がでるのも時間の問題で日本政府は・・・・・・』

 ――プツン

 アキトはさっさと電源を切ってしまった。

弥生「何するの!?」

 突然の兄の行為に腹を立てる弥生。

ひとし「時間が無い。 さっそくで悪いがサーティの最終改造をやるぞ」

 『改造』という言葉が引っ掛かるがPCを操作するアキト。

弥生「お兄ちゃん!?」

ビリー「後、5時間しかないんだぞ!!」

ひとし「まだ5時間もある!!」

弥生・ビリー「「―――!!」」

ひとし「最後のギリギリまで踏ん張ってみようじゃないか」

 そんなアキト(ひとし)を見た2人は顔を見合わせ頷き、それぞれ席に着く。

ビリー「役割はどうする?」

ひとし「俺は弱点と攻撃方法を考える。 ビリーはプログラムの追加を、弥生は奴の進行を確認しつつビリーのフォローを!!」

弥生・ビリー「「分かった(よ)」」

 こうしてアキト達の挑戦が始まった!!










 そして、3時間経過・・・・・・

 ――ビービービービー

ひとし「どうした!?」

弥生「奴が都心まで進行してきたの!!」

ビリー「意外に早かったか!!」

 ドンっと机を叩くビリー。

 彼にしては熱くなるっている模様だ。

ひとし「焦っても仕方がない。 次に奴が目標とする場所を検索してくれ」

 とりあえず冷静に命令するアキト。

弥生「もうできてるよ」

ひとし「仕事が速いな・・・・・・」

弥生「それがモットーですから♪」

 何のモットーですか?

ビリー「それで、何処なんですか?」

弥生「うん。 日本中央原子力発電所だよ」

 実際にありません。(当たり前だ)

ひとし「何故そこだと?」

 アキトが「?マーク」を頭に浮かばせながら質問する。

弥生「だって・・・・・・残ってる発電所はそこだけだもん

ひとし「・・・・・・そーですか」

 意外と呆気ない答えに呆れ気味のアキト。

ビリー「何はともあれ、今回がラストチャンスって訳だな」

弥生「ニュースでは警備を厳重にしているって」

ビリー「時間稼ぎにもならないな」

 かなり甘く見られている日本の警備。

 まぁ実際にそうなんだけど・・・・・・ハッカーに個人情報が漏れている時代だし。

ひとし「警備はどうあれサーティ達を至急に向かわせるぞ」

弥生「分かった!!」

 PCを操作するアキト。

 画面にはサーティ達が映しだされる。

ひとし「―――という訳だ。 後は頼むぞ」

まーくん『しかし、奴が生命体とは・・・・・・』

 画面に映る長髪メガネの男。 電脳世界でのまーくんである。

ひとし「確かに奴にオプションプログラムが効果あるかどうか・・・・・・」

サーティ『それでも私達がやらなきゃならないんです!!』

テゥエニー『いくら無理でも「ハイそうですか」って殺られる訳にはいかないのよ』

フォーテイ『そーだよ!!ひとし兄さん!! 僕達は負けてばかりじゃいけないんだ!!』

 次々と画面に映っていくサーティ、トゥエニー、男モードのフォーティ。

ビリー「フィフス?」

フィフス『問題ありませんマスター』

 無表情のフィフス。 だがビリーは気付いてなかった、彼女の口の両端が0.3mm上がっていた事に。

 ・・・・・・確認できないと思うが・・・・・・

 とりあえずフィフスにとってはサーティ達との接触は良い刺激になったのだろう。

ビリー「(相変わらず無愛想だな・・・・・・)」

 彼は何も知らない・・・・・・

ひとし「とにかく・・・・・・中央原子力発電所のメインコンピュータ内に侵入して奴を待ち伏せしてくれ!!」

AI達『『『『『了解!!』』』』』

 それぞれ画面から消えていくAI達。

弥生「大丈夫かな・・・・・・」

ひとし「(大丈夫じゃないな。 だが打倒策が無い)」

 さっきからジンの連絡を待っているアキト。

 いくら相手がエネルギー生命体だとしてもアキト相手なら何とかする自信はあった。

 だが相手は電脳世界。 アキトが手を出せるはずがない。

ひとし「今は彼女達に任せるしかないのか・・・・・・」

 そのアキトの呟きを残りの2人は聞き取れなかった。










−中央原子力発電所 電脳世界

 サーティ達が到着すると、そこではゼロことC−1がメインコンピュータ内で警備AIと戦っていた。

 ゼロの姿はMITのコンピュータ内の時より3倍に大きくなっており、6本足に鋭い爪や牙や角、立派な尻尾まであった。

ゼロ「ガァァァァァァァ」

 野獣と化しているゼロは次々と警備AIを噛み砕いていく。

テゥエニー「ひえーあんなのと戦うの?」

 その様子を遠くで見ているテゥエニーが弱気になる。

フォーティ「何? 怖いの姉さん」

まーくん「怖いのなら帰っていいんだぞ」

 何時も強気のテゥエニーの弱気発言で息づく2人。

テゥエニー「な、何よー!! あんな奴、私がけちょんけちょんにしてやるわ!!」

 めちゃくちゃに言われたテゥエニーが逆ギレする。

フィフス「なら、前衛はテゥエニーですね」

テゥエニー「え・・・・・・(   J J J)」

 メンバー一冷静なフィフスが冷静なツッコミを入れる。

フィフス「で、テゥエニーを囮にして左からまーくんが右からフォーティが時間差で私とサーティが正面から行きます。 いいですね」

 黙々と指示を出すフィフス。

トゥエニー「ち、ちょっとー。 私が囮ですってー!? 冗談じゃないわよ!!」

フィフス「・・・・・・分かりました」

 ふーっとため息をつくフィフス。

フィフス「なら、かませ犬ですね」

 ――ぷち

 その時に何かが切れた。

トゥエニー「かませ犬って何よ!! 分かったわよ!! 殺ってやろうじゃないの!!

 腕をグルグル回して気合を入れまくるトゥエニー。

 すでにキレている状態である。

まーくん「なら我々は・・・・・・」

フォーティ「トゥエニー姉さんの後に攻撃だな」

まーくん「タイミングを外すなよ」

 ジャキと自分の武器(攻撃プログラム:銃)を構える。

フォーティ「誰にいっているの?」

 左手のひらに右手の拳をぶつけて気合を入れる。

サーティ「最後は私達ですか・・・・・・ やはりパワーの大きいフォーティが最後の方がいいのでは?」

 フィフスの役割分担に疑問を持つサーティ。

 それもその筈、基本能力の差で言えば後継機のフォーティの方が上なのである。

 彼(彼女)ならサーティの使えないハイパーオプションプログラムも難無く使えるのだ。

フィフス「・・・・・・彼では私との攻撃のシンクロ率が低いからです」

サーティ「攻撃のシンクロ率?」

 サーティの頭の上には『?マーク』が3つも浮かんでいる。

フィフス「確かに彼の方がパワーは上かもしれませんが私の攻撃プログラムとの相性は48.36%。
     それに比べてあなたとの相性は94.75%、この中では最高の割合です」

サーティ「? そーなんですか?」

フィフス「そーなんです」

 相変わらず無表情のフィフスであった。

テゥエニー「さっさと片付けるわよ!!」

 有無も言わさず、さっさと特攻していくテゥエニー。

まーくん「テゥエニーが行ってしまったぞ。 どうする?」

フィフス「私達も仕掛けます。 手筈通りに・・・・・・」

フォーティ「OK!!」

 フォーティが右に、まーくんが左に弧を描くようにゼロに突っ込む。

フィフス「彼らが目標に接触する直前で私達も行きます」

サーティ「分かりました」

 ギュと両手を握り締めて気合を入れなおすサーティ。

 フィフスの方も心無しか何処かに緊張のオーラが見える。

 そうしている間にテゥエニーがゼロと接触していた。

テゥエニー「こんな奴、私1人で十分よ!!」

 右手に凝縮された全エネルギーをゼロにジャンプして叩き込む。

 ――バチバチバチバチバチ

 ゼロは警備システムのAIに気をとられていたせいか、テゥエニーの接近に気付いてテゥエニーの方を振り向いた時には攻撃を受けていた。

テゥエニー「今頃、気付いても遅いわよ!! オプションプログラム全開ぃぃぃぃぃ!!

 叩き込んでいる部分から発している火花が一層と激しくなる。

ゼロ「グルルルルルル。 ガァァァァァァァァァッ!!

 ――どっかぁぁぁぁぁぁぁぁ

 ゼロの雄叫びと共に2人を巻き込んで爆発が生じた。

 辺り一面に黒煙が舞ってテゥエニーとゼロの姿が完全に黒煙に巻き込まれた。

 第2陣攻撃隊のまーくんとフォーティは黒煙に飲み込まれる前に進行をストップして状況を見ていた。

フォーティ「殺ったのか?」

まーくん「まだ、分からん。 警戒は怠るなよ」

フォーティ「分かっているって―――ん?」

 黒煙が早いペースで晴れていく。

 次第に中の状態も見えてくる。

 そこには・・・・・・ボロボロになって倒れているテゥエニーと無傷のゼロの姿があった。

 そして、ゼロが鋭い爪でテゥエニーにトドメを刺すために右足の1本を上げる。

まーくん「マズイ!! フォーティ!!」

フォーティ「分かってるよ!!」

 ――ドンドンドンドンドン

 まーくんは銃を連射し・・・・・・

 ――バシュバシュバシュバシュ

 フォーティは両手からエネルギー弾を連射すし攻撃する。

ゼロ「グガァァァァ」

 予定通りに同時に2方向から攻撃を仕掛ける2人の攻撃に上げていた右足のバランスが崩れてテゥエニーから少し離れてしまったゼロ。

まーくん「よし、このまま押すぞ!!」

 ――ドンドンドンドンドン

 ――バシュバシュバシュバシュ

 さらに接近しながら攻撃を止めない2人。

ゼロ「ガァァァァ」

 反撃も許されぬまま押され始めるゼロ。

フォーティ「やったぁ♪ 効いてるぞ!!」

まーくん「馬鹿!! まだ、集中していろ!!」

 その時、油断したフォーティの攻撃に微妙なズレが起こったのをゼロは見逃さず・・・・・・

ゼロ「ウォォォォォォォォォォ!!」

 雄叫びの衝撃波で2人が発射した攻撃が強制的に消去された。

まーくん「何!!」

 驚くのも束の間、ゼロが追撃と言わんばかりに口から無数のエネルギー弾を発射した。

 ――バシュ バシュ バシュ バシュ バシュ

 ――チュドドドドドドドドッ

フォーティ・まーくん「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 直撃を含め幾つもの攻撃が2人に雨のように降り注ぐ。

 攻撃が止むと、そこには爆煙の中にテゥエニー以上にボロボロの2人の姿が現れた。

 煙はゼロまでも包み込みゼロの視界も奪った。

 その時―――

ゼロ「―――っ!!」

 何かに気付いたゼロが不意に尻尾を振るう。

――ヒュン バシィィィィィッ

フィフス「―――くっ!!」

 煙に紛れて見事にゼロの後ろを取って襲い掛かったフィフスの右のわき腹を尻尾が襲い、そのまま身体が吹っ飛ぶ。

 フィフスの身体は宙に舞い、着地寸前に手を床に着いて勢いを殺し見事に着地する。

 だが、わき腹へのダメージが激しいのか無意識に右のわき腹を左手で押さえてしまう。

 ゼロも2人から奇襲者の方に興味が移ったのかフィフスの方に身体を向ける。

ゼロ「グルルルルルルル」

フィフス「・・・・・・・・・・」

 威嚇しながら獲物を狙うゼロ、怪我しつつも引けを取らず無表情で睨むフィフス。

 こういう場合、視線を先に逸らした方の負けである。

 両者、動かずにタダ睨みあうだけで時間が進んでいく。

 ゼロの周りには未だに煙が舞っているが、それも無視である。

 バチバチバチと右手にエネルギーを集中し始めるフィフス。

 無論、視線は依然にゼロに向けたままである。

 一方、ゼロの方も角に変化が現れた。

 フィフス同様にエネルギーを集めているのかバチバチという効果音とプラズマが走っている。

 次の瞬間、同時に両者とも相手目掛けて前方に駆け出す。

 ―――はずだったが、2人の間を舞っていた黒煙から更なる奇襲者が左側面から現れた。

サーティ「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 彼女の初めから右手にチャージしていたエネルギーをゼロに一気に叩き込んだ。

 ――バチバチバチバチバチバチバチ

 今までの攻撃とは格の違う攻撃力にゼロも翻弄される。

ゼロ「グガガガガガガガガガッ」

 首を勢い良く左右に振りながら唸るゼロ。

 既にフィフスへの突進は止まっており角のプラズマ現象も消えていた。

 ――バチバチバチバチバチバチバチ

 未だに衰えない音が空間に響く。

ゼロ「グゥゥゥゥグゥゥゥゥゥ」

 ゼロも少しだが疲れを見せ始める―――そこに更なる不幸が襲い掛かる。

フィフス「ハァァァァァァァァ!!」

 特攻を止めてなかった彼女は右周りに駆け寄りサーティの攻撃している所を更に攻撃する。

 ――バチバチバチバチバチバチバチバチ

 更に空間に響く音が大きくなる。

ゼロ「ガァァァァァァァァァァァッ」

サーティ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

フィフス「ハァァァァァァァァァァァッ」

 2人+1匹の叫び声も響く。

 ――バチバチバチバチバチバチバチバチ

 依然に両者とも引けを取らない。

 ―――って、別に手抜きしているんじゃないんですよ。

 と、作者が言い訳をしているその時だった。

ゼロ「がぁぁぁぁぁぁぁっ ハァッ!!

 ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉん

 ゼロの目が突然に見開いて突然にゼロの身体から爆発が起きた。

 爆発の勢いで接近していた2人も当然のように吹っ飛ぶ。

サーティ・フィフス「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 ――ズザザザザザザザザザッ

 今度は受け身を取る体勢を取る余力が無かったのか、すり減らすように吹っ飛ばされた。

 距離的にも元居た場所―――ゼロから約10mぐらいは離れていた。

 ゼロがいた場所は爆発で起こった黒煙で何も見えなかった。

 その様子を意識を朦朧と倒れながらも見ている2人。

 その内、サーティは「煙が起こるの多いなぁ」と心の何処かで呟いていた。

 そんな事よりも、しばらく静観している2人。

 ―――と言っても、身体が動かないので何も出来ないだけである。

 黒煙も次第に中の人影が確認出来るぐらいに薄くなってきた。

サーティ・フィフス「「―――――っ!!」」

 次第に薄れていく煙の中、大きな人影だけが遠くからでも確認できた。

 影はどう見ても2本足で立っているが立派な尻尾がある事も確認できた。

 その点から影がゼロである事は直ぐに2人は分かった。

 そして、煙が晴れたその時に現れたのは・・・・・・

 予測通り2本足で立っているゼロであった。

 だが、違う点が有るとしたら、まずわき腹に生えていた足が無くなっていた。

 そして、前足が腕に成ったのか立派な爪は一回り大きくなり、腕の太さも更に膨らんでいた。

 その腕で殴られたら間違えなく粉砕してしまうだろうと見ただけで分かった。

 そして、腹の部分には血よりも紅い色の大きなクリスタルが埋め込まれていた。

 更に変化はそりまでではなかった。

 少し離れているから分かりづらいがフィフスはその変化に気付いた。

フィフス「・・・・・・大きくなっている」

サーティ「え?」

 フィフスの言葉にサーティも確認すると・・・・・・

サーティ「本当だ・・・・・・大きくなっている」

 2人の指摘通りゼロは大きくなっていた。

 ただ大きくなっただけでは驚かないが、ゼロは現在進行形で大きくなっているのだ。

 つまり、こうしている間も次第に身体が大きくなっている訳である。

 そして、どのぐらいまで大きくなるのか分からないのである。

フィフス「目視から1秒に体積が6.45cm^3の速さで巨大化していると過程して・・・・・・」

サーティ「1分で387cm^3。 現在が爆発から約6分経過しているから・・・・・・」

サーティ・フィフス「「2322cm^3巨大化している」」

 ―――と、言っても簡単に言えば最初の5倍以上大きくなったという事である。

サーティ「どうしましょう」

 身体は動かないが首を動かしてフィフスの方を見るサーティ。

フィフス「打つ手無しですね。 あちらさんは止めを刺す気満々ですけど・・・・・・」

サーティ「へ?」

 フィフスの言葉にサーティがゼロの方を見るとゼロは両腕を前方に構えて両手の間に大きなエネルギー弾が発生していた。

サーティ「・・・・・・元気玉ですかね?」

フィフス「ビックバンアタックの方が私は好きですけど・・・・・・」

 どういう会話だろうか・・・・・・

フィフス「なんて事を言っている場合じゃないです」

サーティ「あわわわわわ。 そうでした、どうしましょう」

フィフス「・・・・・・私達に残された道はただ1つです」

サーティ「その道とは!!」

 期待に満ちた目でフィフスを見る。

フィフス「祈りましょう。 天国にちゃんと逝けるように」

サーティ「ちょっと、ちょっと、ちょっと」

 フィフスの突然の提案に焦りまくるサーティ。

サーティ「他には無いんですかー!!」

フィフス「無いです。 それに・・・・・・手遅れです」

サーティ「へ?」

フィフス「ほら」

 フィフスの言葉ど同時に・・・・・・

ゼロ「ガァァァァァァァァァァッ」

 ゼロが叫んでエネルギー弾を投げる。

 投げられた巨大なエネルギー弾は慣性の法則に反さず見事にサーティ達の元に向かっている。

 その速さは彼女の目から見たらスローモーションのように遅かった。

サーティ(ああ。 死ぬ時って時を遅く感じるって話は本当だったんですね)

 既にフィフスは目を瞑って何かに祈っていた―――って言うか気絶しているように見える。

 倒れて動けない彼女達に残された行動は・・・・・・










サーティ「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ (ToT)

 ただ、泣きながら叫ぶだけ。

 ―――顔文字に緊張が見えないけど・・・・・・




















 ――ザシュ

 ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉん










 直ぐ近くで聞こえる爆発音。

 その時、彼女は正直、死んだと思っていた。

 ―――が、

サーティ「・・・・・・あ・・・れ・・・・・・」

 恐る恐る目を開けると自分の身体と手足が見えた。

サーティ「・・・・・・生き・・・・て・・・・・・る・・・・・・」

 彼女が言葉を口にする。

 生きている証拠か身体中に軽い痛みが走り出す。

 そして、彼女は気付いた。

 自分達の前に誰かが立っている事を。

サーティ「だ、誰ですか・・・・・・」

 見上げる感じで人影に話しかける。

???「・・・・・・・・・・」

 話しかけられた相手は何も言わなかった。

 サーティは身長や体格から人影が男だと分かった。

 それに格好も印象的だった。

 何故なら上から下まで黒一色でマントまでしているのだ。

 さらにバイザーまでしている。 いかにも怪しい人である。

 そして、男の右手には光る剣みたいなのが握られていた。

???「大丈夫か」

 男が話しかける。

サーティ「は、はい・・・・・・」

 やっと聞けた男の声に翻弄しながら返事する。

 印象的には若い―――しかも少年をイメージする声だった。

???「よく頑張ったな。 後は俺にまかせろ」

 男が首だけ振り返りサーティの方を見て微笑む。

 バイザーで目元は見えないが口元は優しい感じであったと彼女は思った。

 そして、その微笑みと言葉に安心したのかサーティは意識を失ったのであった。










ディア『あらら。 気絶しちゃったね』

アキト「当然だろ。 これだけ戦って意識を保っていただけでも立派なものだよ」

 軽くため息をつきながら視線をサーティからゼロに変える。

 と、その間にディア達がサーティ達を元の現実世界に戻す。

ジン『しかし、成功するもんだな』

ブロス『まったくだね。 まさか精神体のアキト兄をそのまま電脳世界にぶち込むなんてね〜』

 説明しよう。

 元々より『神戸ひとし』の身体を精神体のアキトが器として使っていたのだ。

 そこで、元より実体の無い精神体のアキトを電脳世界にぶち込む事にしたのだ。

 成功する確率は5割弱だったらしく、失敗すれば最悪の場合、アキトは消滅。

 しかし、ジンはアキトに説明する時に「100%成功する」と断言して実験したのだった。

 この事はアキトだけが知らないのだ・・・・・・

 ちなみにヒントになったのは『コムネット』とか言ってたがアキトはあえて突っ込まなかった。

ジン『あの腹のクリスタルがカオスクリスタルだ』

アキト「あれか・・・・・・」

 ゼロの腹に光っている紅いクリスタルを確認するアキト。

ジン『アキト、いけるか?』

アキト「俺を誰だと思っているんだ?」

ブロス『アキト兄。 後、居られる時間は1分弱だよ』

 さらにブロスが確認する。

 流石に精神を電脳世界にぶち込むとなるとアキトの精神にも影響が出てしまう。

 そのため、電脳世界に居られる時間が設定されているのだ。

アキト「了解した」

 ニヤリと怪しい笑みをしながらゼロの方へと歩き出す。

 ――コツコツコツコツコツコツ

 空間にはゼロとアキトしかおらずアキトの足音だけが響いて聞こえていた。

ゼロ「グルルルルルルル ガァァァァァァァァァッ

 先ほどの攻撃を見事に斬られた事に少しヒビリ気味のゼロだったが、負けじと威嚇する。

 ピリピリと空気がかるく揺れるがアキトは屁ともしないで歩くのを止めない。

 それよりも殺気をかなり放出して、ゼロが反対に翻弄されている。

ゼロ「ガァァァァァァァァァァァッ」

 ――ドスドスドスドスドス

 アキトの殺気に当てられたのか巨体がアキト目掛けて走り出す。

 ――ヒュン

 それと同時にアキトも目にも見えないダッシュでゼロの前から消えた。

ゼロ「・・・・・・・・・・?」

 アキトが消えたのが不審に思ったのかゼロが突進を止めて立ち止まる。

 アキトを探すゼロだが、そんな事もできなかった。

 なぜなら・・・・・・・

アキト「テンカワ流剣技『疾黒斬』 見えたか・・・・・・?」

 ――ドシィィィィン

 アキトはゼロの後ろに立っており、ゼロは絶命していたのだ。

アキト「意外と雑魚だな」

 物足りなそうにゼロの死骸を見るアキト。

 そんなアキトをジンは・・・・・・

ジン(あんな化け物を雑魚呼ばわりかよ。 こりゃあ、俺の人選に狂いは無かったな)

 自分が選んだ相手がとてつもない化け物だと再確認していた。

ディア『アキト兄、そろそろ時間だよ』

アキト「ああ」

 アキトの言葉を合図にアキトの身体が足から少しずつ薄れていく。

 それと同時にゼロの死骸も消滅していく。

 アキトはゼロの消滅していく姿を見ながら意識が無くなっていた。










−???

アキト「・・・・・・う、う・・・ん・・・・・・」

 アキトは目を覚まし目を開けた。

 そこは見慣れない部屋だった。

 ひとしの家の地下でもなかった。

 さらにアキトは自分が何かの機械に寝ている事が分かった。

アキト「ここは何処だ?」

 当然の言葉を呟やいて起き上がろうとすると、透明なカバーが勝手に開いた。

 アキトはそのまま起き上がり周囲を見渡す。

 やはり、記憶に無い部屋だ。

 そこはやけにサッパリした部屋で、アキトが寝ていた中心のカプセルの他には多数の機械が置かれているだけだ。

 後は扉が1つ。 すると、その扉が開いて誰かが入ってきた。

 アキトの知っている人達だ。

ジン「どうだ? 気分は」

アキト「最悪」

ジン「そりゃ〜何よりだ」

 アキトの軽い冗談を簡単に受け流すジン。

アキト「それより、ココは何処なんだ? 見た所、ひとし君の世界じゃない事は確かだが」

ジン「察しの通りだ。 ココは言うならば『意識転送室』だ」

アキト「『意識転送室』?」

 聞きなれない単語に疑問のアキト。

ジン「お前のように別世界に精神を飛ばすための機械だ」

アキト「最初の時はそんなの使わなかったような・・・・・・・」

ジン「作者の後からの思いつきだ」

アキト「おい」

 かなりの暴露だ。 (   J J J

アキト「しかし、ココがジンの居る世界だとして・・・・・・ひとし君達の世界はどうなったの?」

ジン「ああ。 一時的に世界で停電は起こっているが何の問題も無い。
   『空間の裂け目』も未完成で消滅したし、ディア達が復旧のバックアップをしている」

アキト「つまり、ジンは後始末をディア達に押し付けてココに来たのか?」

ジン「う・・・・・・」

 図星のようだ。

ジン「と、とりあえず、あっちの世界にはCCの反応は無かったから直接、こっちに戻した訳だ」

アキト「ふ〜ん。 しかし、こんな機械があるなら誰でも良かったんじゃないか?」

 カプセルをバンバンと軽く叩く。

ジン「いや、 そのカプセルはお前専用に設定されている。
   他人が使う事は出来ない。 それに行き先の設定も出来ない」

アキト「ちょっと待て。 行き先の設定が出来ないってどういう事だ?」

 暫く無言だったジンだが少しずつ語りだした。

ジン「時の神『クロノス』を知っているか?」

アキト「名前だけは・・・・・・」

ジン「このカプセルは『クロノス』が造った『クロノスの書』を元に作られた物だ」

アキト「それで? 何なんだ?」

ジン「だから、精神を転送する仕組みも俺達には分からないし、何処に転送され誰に転移するのかも分からない」

アキト「つまり・・・・・・神のみぞ知るって事?」

 アキトの言葉にジンが大きく頷く。

ジン「だから、転送された先でカオスクリスタルが有るのか無いのかは、行かないと分からないのだよ」

 ジンの説明にアキトはやれやれと頭をかいていた。

アキト「まぁ、いいさ。 ・・・・・・面白そうじゃないか?」

ジン「へ?」

アキト「神様が俺達に何をさせて、何を見せてくれるのか・・・・・・だよ」

 アキトの答えにジンは軽く笑った。

アキト「さぁ〜って。 さっさと次の世界に行きますか?」

ジン「そうだな」

 更にヤル気のアキトであった・・・・・・










 アキトが入手した能力:コンピュータに関する詳しい知識










to be continued







この作品はフィクションです。実在の原作・人物・団体・事件なとには、一切関係ありません。







−後書きコーナー

 拝啓

 やっとの事でパラレルの6話が終わりました。

 そして、見事(?)に『AI止ま編』が終了。

 長かったような、短かったような・・・・・・(長いです)

 この調子で続々と書かないとな〜。

 それじゃ、アデュ〜です〜





 なんか、短いな・・・・・・・





−次回予告−

 ジンの言葉に俄然とヤル気の出たアキト。

 そんなアキトが向かった世界とは!?

 時の神『クロノス』は彼に何をさせて、何を見せるのか。

 それは神のみぞ知る事・・・・・

 次回、アキトのパラレルワールドストーリー EPISODE 7。

 次回もアキトと一緒にレリーーーーース!!

2004年05月03日



 敬具




















管理人の感想

TAKUMAさんからの投稿です。

話の区切りがついたみたいですね、お疲れ様です!!

しかし、美味しいところは独り占めだな、アキト!!

で、凄く疑問に思う事が一つあるのですが?

 

 

・・・・・・・・・・・・・ひとしはこの後、どうなったんでしょう?(汗)

 

戦いの記憶が残ってれば、まだ幸いでしょうけれどねぇ

もしかして、立つ鳥、後を濁しまくりなのか、アキトよ?(大汗)