深夜、ちょっとしたパーティーが開けそうなほど広い部屋の一角にあるバーカウンター。

カウンターに備え付けの背の高い椅子に腰を乗せ、優雅にグラスを傾ける一人の女性。

この部屋の主であり、この部屋が収まっている高級マンションを保有している大企業、クリムゾン・インダストリーの若き重役。

シャロン・ウィードリン。

彼女はウイスキーをグラスに注ぎつつ、カウンターの片隅に投影しているテレビに見入っていた。

『…では、次のニュースです。木連地方裁判所は本日、連続レイプ犯、時雨 依伊朗被告に最高刑である終身刑を宣告いたしました。時雨被告は3人もの木連女性に性的暴行を加えた凶悪犯であり、木連に対する最大級の敵対行為であると裁判官はコメントしています。時雨被告はスクラップ再処理施設にて生涯を送る予定になっています。…続きまして…。』

ウイスキーを飲み干しながら、木連から提供されたボゾン通信機経由のニュースに驚いたり納得したりしている。

と、そこに一人の男が現れた。

彼はシャロンの側に近寄るとおもむろに尋ねた。

「…我に何の用だ。わざわざ、貴様の自室に呼び出されるほどの用は無かろう。」

「ふふふっ、木連って不思議な国ね。容赦無く火星の住人を皆殺しにしたのに、国内じゃレイプで最高刑が宣告されるなんて。」

ダークスーツを着こなした男、北辰の問い掛けを無視して、シャロンが疑問を口にする。

「ふん…。木連の人口不足は深刻だ。かつてよりよほど増えたが、社会基盤を回転させる人の数は今だ足りぬ。故に次世代を生み、育てる『女』は最優先の保護対象となっておる。」

「ふ〜ん、下手すれば女性蔑視にもなりそうな国ね。『女は子供を生む機械だー。』なんて言い出しそうな人が出てこない辺り、まだマシなのかもしれないけれど。」

「そんな事はどうでも良い。…何の用だ。」

用件を言い出さないシャロンに業を煮やした北辰が再度、問う。

「ま、ちょっとした疑問なのだけれど……飲む?」

シャロンは北辰の為に新しいグラスを用意してウィスキーを注ぐ。

「…否。一度酒精が入れば、元通りの機能に体が戻るまで時が掛かる。遠慮する。」

「そ、残念ね。…で、質問なんだけど。……どうしてラピスとハリの二人に武術を教える気になったの?貴方は無償で動くような人種じゃないはずよ。」

「…どうしても答えなければならんのか?」

普段表情を表に出さない北辰が珍しく、嫌そうな顔をして言う。

シャロンは『あら、珍しい』と内心思いつつ、

「嫌なら仕方ないわね。でも───、貴方を信頼出来なくなるかも。」

と含み笑いと共に言った。

「……ちっ。」

シャロンの表情に、からかいの色と本気の意思を確認した北辰が舌打ちをする。シャロンのいう信頼とは、すなわちクリムゾンと木連の協力体制を再考すると言う事。木連との交渉はシャロンが取り仕切っているが故の台詞である。

諦めたようにシャロンの隣の椅子へ腰を下ろし、ウイスキーを一気に飲み干す。

コッ。

小気味良い音を立てて、グラスがカウンターに戻る。

「あら?酒は飲まないのではなかったの?」

「ふん、酒も入らずに内心を語れるほど、我は殊勝な男では無い。」

そして「さっさとそのウイスキーを注げ」と目で強要しながら、おもむろに語り始めた。
己の過去を──。

 

 

 

機動戦艦 ナデシコ OUT・SIDE

機械仕掛けの妖精

外伝(第十八話) 「北極星」の示す先

 

 

 

 それは、今から十数年前の話。

木連のコロニーの一つ、初期市民艦であり今は軍事コロニーでもある『れいげつ』。

その内部にある軍人向け歓楽街の一角にある飲み屋。

和風の佇まいの店内のあちこちで様々な客が酒を酌み交わしている。

『…夢がっ明日を呼んで〜いる〜。命のっ叫びさ、レッツゴー、パッション!!──、第一世代の私物から発掘された伝説のアニメが今、貴方の手元に!ゲキガンガーV、堂々発売中!!』

テレビが、木連唯一のアニメ番組のCMを流している。

それを横目に四人掛けの席にそれぞれ座る男達が溜息を漏らした。

「…下らん。栄光の木連将兵ですら、ゲキガンガーに熱中しているそうだな。」

「右を見ても、左を見てもゲキガン尽くしだ。良い年した大人としては恥ずかしいね。」

「かといっても、今も昔も一番の話題だからな。…なんで良いのかよく判らんが。」

「まぁまぁ、仕様が無いさ。なにせ木連における娯楽は寂しいの一言に尽きる。精々、将棋や碁、各種賭け事に歴史書や軍事書が有るくらいだ。盛り上がっても仕方ないさ。」

彼等はそれぞれ、木連の士官服を着込んだエリート達。ゲキガンガーは木連における聖典ともいえる存在だが、どうしても水が合わない人間もいる。

色々、文句を言いながらもテレビに注意を向けているのはCMの後の番組に用があったからだ。

と、オープニングの曲が流れ、お目当ての番組が始まった。

 

 「皆さん、こんばんわ。『明日の木連を担う』のお時間です。…さて、今回のゲストは木連軍のエリート、試作兵器運用試験連隊から北条 久士(ひさし)少佐に来て頂いております。…初めまして北条少佐。」

テレビ向かって右側のソファーに座る男が左側のソファーに座る男に挨拶する。

「はっ!北条です。本日はお招き戴き有難う御座います。」

敬礼する北条少佐。少々冷酷に過ぎる顔立ちだが、若さと熱意が好意的な雰囲気を醸し出している。先の飲み屋でゲキガンガーを「下らん」と切り捨てた男でもある。

「さて、北条少佐の部隊は来月開かれる木連軍大演習の主演目、新兵器運用試験競技会に参加するそうですね。」

「ええ、木連全域の注目を浴びる一大行事ですからね。部隊一丸となって、奮起しております。」

「北条少佐はその競技会の主役たる新兵器のテストパイロットだと言う話ですが?」

「はい。試作有人兵器『オロチ』のパイロットを務めています。」

「では、ここで話に出た試作兵器『オロチ』のVTRを。」


 ─木連、試作有人兵器『オロチ』。

─太古の神話における八つの頭を持つ龍の名である。

─名の示すように八つものバッタの主機を組み込み、その出力は驚異的な力を発揮する。

─更に反重力推進機構を用いた縦横無尽な機動は敵の弾を寄せ付けない。

─主兵装は八つの電磁加速砲。

─猛烈な弾雨は迫り来る全てを破壊する。

─しかし、最大の特徴は無数のバッタを指揮する指揮官機であるという事。

─群れを率い、単独で敵を壊乱させる。

─その驚異の機体を我が身と操るのは木連が誇るエース、北条少佐。

─前回の大演習にて、戦闘機単機で驚くべき大戦果を上げた時の人。

─彼に操られる『オロチ』は必ずや憎き地球連合に正義の鉄槌を下すだろう。


VTRに映るオロチは無骨で角張った翼の無い戦闘機のような形。

翼の代わりに両脇から飛び出しているのは4対8基の電磁加速砲。

8基それぞれが大きな自由度を持つ支持架に支えられ、4基一組で纏まってマウントされている。

その姿はナデシコのディストーション・ブレードを彷彿とさせる。

「大したものですね!八つもの発動機を組み込んで制御の方は大変じゃないんですか?」

「ええ、かなり気難しい機体になってしまっていますね。しかし、12mの機体で、あれだけの出力が出せるのは強みです。技術陣が正式配備までには使い勝手の良い機体にしてくれますよ。」

北条が司会者の言葉に微笑みながら答えた。

「北条少佐は技術担当者達と仲が良いのですか?」

「さて…どう答えたものでしょうか。試験が終わる度にお互い一歩も引かない怒鳴りあいになってしまっていますがね。…まぁ、その分彼等の技術には信用が置けます。信頼してると言ってもいいかもしれない。」

「ははぁ、技術の最前線と言った雰囲気ですねぇ。…さて、お話は変わって競技会のもう一方の主役である『スサノオ』に関してですが。」

と司会者が言うと軽くVTRが流れる。


 ─試作有人兵器『スサノオ』

─太古の神話における荒ぶる神。

─無人艦用相転移炉を組み込み、恐るべき出力を発揮する人型兵器。

─重力波砲を装備し、その戦闘力は最新鋭戦艦『しんげつ』級を凌駕する。

─その姿はゲキガンガーVそのもの。

─木連科学の粋を集結した30mの巨体は立ち塞がる全てを蹂躙するだろう。


VTRに映った人型、スサノオ。

その正体はプロトタイプ・ジン。

頭部の突起物などの装飾を省いたテツジンのようなフォルム。両手は爪ではなく、輪っか型のマジックハンドである。その所為でか、古いブリキの玩具のような雰囲気を持っている。

ちなみに『しんげつ級』とは白鳥九十九が艦長を務めていた『ゆめみづき級』の前に作られた艦である。武装も弱めの重力波砲が一門だけで、ジン・タイプを運用する事を考えられていなかった為に次世代艦のパーツ取りに供されてしまう運命である。

「スサノオとオロチと言えば日本の神話を思い出しますが、スサノオに打ち倒されたオロチを操る者としてはどういう心境でしょう?」

「所詮は只の名前にすぎません。…それに、貴方はご存知だろうか?スサノオはオロチを討伐する際、策略でもって臨みました。荒ぶる者と恐れられた男が、です。戦士として有能である証左と言えますが、同時にオロチがそれだけ強大であった証拠とも言えます。」

「つまり、正面から戦う以上、オロチに敗北は無いと仰る訳ですね?」

「ええ、バッタの指揮機能こそ封印されますが、欠点ばかりの使えない人型兵器などに負けはしませんよ。オロチに敗北は有り得ません。」

「これはこれは…随分と強気な発言を戴きました。…おっと、そろそろお別れのお時間です。北条少佐、最後に一言お願いします。」

「大演習を楽しみにしていてください。」

「では、『明日の木連を担う』今日はこの辺で。次週はスサノオ開発計画責任者、草壁准将にお越し戴く予定です。」

 

 「くっくっく、『オロチに敗北は有り得ない』か。大きく出たな。」

飲み屋でテレビを見ていた四人の内の一人が肩を震わせながら笑う。

「しかし、随分と我々を買ってくれたものだ。オロチも海千山千の試作段階兵器にすぎんのだがな。」

「とっておきのバッタ指揮機能も故障続きで、まともに機能しないしな。封印?…まさか。単純に使えんだけだ。」

北条以外の三人が次々に口を開く。

「…ふん、それでもスサノオとやらよりは、よほど使えるだろうよ。スペックを見ただろう?無人駆逐艦に手足を付けただけの代物だ。鈍重極まりない。操縦席にいたっては的に等しい頭部だしな。」

北条が御猪口を傾けながら自身の見解を述べる。

ちなみに北条以外の三人はオロチの技術士官と同僚のテスト・パイロットである。

「ま、お前さんほどにオロチを使える操縦士は居ないだろうがな。」

北条の同僚が未だに納まらぬ笑いを堪えながら言う。

「まったく、羨ましさすら霞んでしまうな。『北条孤児院』出身者が栄光の 試 試 連 (試作兵器運用試験連隊)に所属して、名家のお嬢様と婚約目前。将来は約束されたようなもんじゃないか!」

「この間見たけど、凄い別嬪さんだったなぁ。いやはや、まったく上手い事やったもんだぜ。」

技術士官の二人が羨ましさ半分、妬ましさ半分で北条を見つめる。

北条久士少佐は先の技術士官の台詞の通り『北条孤児院』出身者である。両親は彼がとても幼い頃に新設コロニーの事故で失ったとされている。北条孤児院はそういった子供達を集め養う政府機関のひとつであり、そこで暮らした子供達は木連軍に兵士として優先的に配属される。

彼は持ち前の運動神経と執念深くすらある忍耐力で二等兵から少佐までの道のりを一気に駆け抜けたのであった。いくら人材不足の木連軍とはいえ、彼の様に最下層から佐官にまで出世するというのは珍しい。それだけの能力を持っていると木連上層部に認められ、将来の将官となるべく木連黎明期から君臨している名家の令嬢をあてがわれたのだった。

ついでに言えば、木連の名家というのは中世の貴族、もしくは日本の大名に相当する地位にある。将官クラスはみな名家が占めている。過去の大きな実績から木連の将来に直接関わるほどの立場にあるのだ。木連は血筋がモノを言う古いタイプの社会でもあるのだ。そして、名家は己の地位を固めるべく有力な若者を養子にしたり娘婿にする事に躊躇わない。

「ま、それも今回の競技会の結果次第だよな。」

話を纏めるように同僚が言う。

「…ふ、まぁ見ていろ。ゲキガンガーとやらに傾倒した愚か者が作った物など蹴散らしてくれる。」

瞳に強い意志を浮かべた北条が薄く笑う。

彼の左目は肉眼だった。

 

 無駄を極限まで省いたような狭いコクピット。

正面の大きなモニターと左右の小さな特殊副層構造の観測窓に挟まれて一人の男が座っている。

彼は木連軍正式装備の軟式宇宙行動服に身を包み、背筋を伸ばし腕を組んで目を閉じていた。

袖を破り取った某アニメのコスプレの様な改造はしていない。ちゃんと気密兜(ヘルメット)も装備して万が一、宇宙空間に放り出されても生存出来るよう備えて有る。ゲキガンガーの影響で安全対策を取らない事が男らしさ、と認識されている木連の軍人としては珍しい。

正面モニターの下には無数の計器が並んでいる。その計器は全てアナログ表示となっていた。一部、何を示しているのか見当も付かない計器も混じっている。

液晶画面であっても、アナログ式の針と目盛りが表示されるようになっている。

どうやら、この操縦機構を設計した人間は特殊なコダワリがあったようだ。某宇宙戦艦や某銀河鉄道やら某宇宙海賊に搭載されていそうなコダワリが。

「慣れれば、電子式複合表示機構よりも判りやすい。」

そんな主張が通ったのか、木連人の心の琴線に触れる物があったのか…このアナログ表示形態は木連にて一大ブームを巻き起こしているのであった。

と、そんな漢のロマン溢れる計器の一部が点滅し、通信機から声が流れてきた。

「そろそろ出番だ。準備はいいか、北条?」

「…無論。出来てない訳が無いだろう?」

「良い返事だ。その調子でゲキガン野郎をぶっ飛ばしてくれ。」

「任せろ。」

正面のモニターの電源を入れながらコクピットの男、北条が力強く答える。

今は木連における一大イベント、木連軍大演習の最中であり、もうすぐ彼の参加する新兵器運用試験競技会が始まる頃である。

起動したモニターの映す風景は、骨組み主体の乾式ドック。骨組みのパイプ越しに漆黒の宇宙と、正面に巨大な木星が見える。

「現在の宙域天気予想だ。イオの火山活動が活発になってる。その影響で木星の磁場が大きく乱れてるから木星に近づきすぎるなよ?下手すりゃ電装が飛ぶからな。」

「そもそも競技会の指定宙域で戦う限り、木星に近づく事は無かろうが?」

「まぁ、そうだけどな。オロチはまだ不安定だ。注意するに越した事は無いさ。」

「む、そういう意味ならば了解だ。」

と、大演習が行なわれている宙域に花火代わりの可視光線レーザーが幾つも放たれる。

次の演目が始まる合図だ。

『新兵器運用試験競技会を始めます。両陣営作業員は各機から離れて下さい。両機、前へ。』

オロチを乾式ドックに固定しているアームが外され、オロチはゆっくりと前進する。

視界を邪魔していたパイプの群れが後方へ消えさった頃、右側の小さな観測窓に大きな人影が現れた。

「ふん、動きは…思っていたほど鈍くないか。しかし、格闘戦に何処まで耐えられるかな。」

人影ことスサノオはゆっくりと、しかし機敏な動きで開始位置まで移動する。その機体は青白赤のトリコロールカラーに塗られていた。

北条は試合相手であるスサノオに冷笑を浴びせた後、自分の機体を一気に加速させて、あっと言う間に開始位置に着いた。彼の機体は鮮明な赤一色だった。

『では、双方準備宜しいか?………それでは競技会の開始を宣言する。競技、開始ッ!!』

アナウンスの言葉に弾かれたようにオロチがスサノオ目掛けて猛烈な疾駆を開始する。

そのまま、スサノオの眼前を飛び過ぎて後方へ機体を潜り込ませる北条。

スサノオはオロチの動きに対応できず、開始位置で浮かんだままである。

『おっと!開始早々からオロチ絶好の攻撃位置に着いた!これは競技会開催以来初めての秒殺、成るか!?』

オロチの基本にして最大の兵装である8基の電磁加速砲が火を噴く。

凄まじい勢いで徹甲弾が4基一組の砲身から放たれる。目指すはスサノオの背中。

未だに身動き一つしないスサノオの背中に砲弾の雨が降りかかろうとしたその時。

弾雨は見えない壁に反らされて明後日の方向に飛び去っていった。

『お〜〜っと!スサノオ、オロチの攻撃にビクともしない!これは時空歪曲場です。時空歪曲場で電磁加速砲の攻撃を全て逸らしてしまっています!』

スサノオがゆっくりと後方を振り返り、オロチと正面から相対し直す。

その様はまるで「お前の攻撃は効かない」と言っているようだった。

「くっ、図に乗るのはまだ早い!」

北条はスサノオと正対したまま、機体を横滑りさせる。反重力推進の真骨頂を見せ付けつつ次なる手を取る。

北条の手が操作盤のスイッチを弾く。即座に機械が反応を返す。

4基一組で纏まっていた電磁加速砲が8基バラバラに分かれる。

その様は足を広げた蜘蛛に似ていた。

電磁加速砲の足が開くと同時にオロチがスサノオに飛び掛る。

8基の砲身がスサノオを捕らえ続けている事を確認した後、北条は引鉄を引き絞った。

スサノオの頭上を飛び越えるオロチ。

その間も猛烈な弾雨はやむ事が無い。

スサノオに背を向けながらもオロチの砲身はスサノオを指向し、持てる限りの能力で砲弾を吐き出し続ける。

反重力推進器の設置位置の関係から不可思議な螺旋機動を描きつつ、その速度からは信じられないほど小さな弧を描いて再び、スサノオに飛び掛る。

と、スサノオの両目から光線が放たれた。

だが、二条の光線もオロチの空間歪曲場に捻じ曲げられて明後日の方向に消え去った。電磁加速砲の展開時には砲口が歪曲場の外に出る為、歪曲場による防御を続けたまま攻撃可能なのだった。スサノオは局所的に歪曲場を開く事により攻撃をしている。

『壮絶な砲撃戦!しかし、双方の攻撃は時空歪曲場に遮られ届きません。これは予想外な展開!!大きなスサノオと約三分の一の小さなオロチが対等に渡り合っております!』

と、スサノオの胸部に装備された重力波砲が展開される。

両手を腰に当てて、胸を反らした体勢で必殺の重力波砲が放たれる。

が、オロチは絶妙なタイミングで見えない光線を避け、掠り傷一つ無い。

8基の砲身を固定位置に戻した北条は三度、スサノオに飛び掛った。

しかし、今回は今までと明らかに違う軌道。

『お〜っと!オロチ、砲撃が効かないと悟ったのか、今までの怒涛の砲撃を中止してスサノオに捨て身の特攻か〜っ!?』

そして、オロチとスサノオの時空歪曲場が接触し、閃光が辺りを染める。

ジリジリと二機の間隔が狭まる中、オロチが再び電磁加速砲に雄叫びを上げさせる。

ほんの少し進んで、推進力を失い弾き飛ばされてゆく砲弾。

少しずつではあるがスサノオの時空歪曲場を侵食してゆく。

それを脅威に感じたかスサノオがおもむろに右手を繰り出した。

鈍重で乱暴なハンマーパンチ。

だがしかし、オロチの胴体に匹敵するような太い腕による一撃。掠っただけでも悲惨な事になる…時空歪曲場を潜り抜けられれば。

オロチがスサノオの歪曲場を抜けられないように、スサノオもオロチの歪曲場を抜く事は出来まい。そう、北条が考えるのも無理が無いことであった。

が、北条のその考えは歪曲場をあっさりと抜いた右手の一撃によって粉々に砕け散った。

「ぬっ!?」

咄嗟に避わしたものの、左舷、電磁加速砲を2基もぎ取られてしまったオロチ。

即座に両腕の攻撃範囲内から飛び去り慎重にスサノオの動きを窺う。

『競技会開始後、最初の有効打はスサノオだ〜っ!時空歪曲場をいとも簡単に貫いた一撃でオロチの電磁加速砲を2基抉り取ったっ!!…今入った情報によりますと、スサノオの両腕には対時空歪曲場発生装置が搭載されているようです。この対歪曲場装置は歪曲場に穴を空けて中に攻撃を通す機構だそうです。』

「…ふん、どれだけ強力な矛を持っていようとも鈍重ではな。先の一撃で仕留められなかった事を悔やむがいい。」

今度は比較的ゆっくりとスサノオに飛び掛ったオロチ。

スサノオは牽制に目から光線を放つがオロチは身じろぎ一つせず、歪曲場で弾く。

そのまま飛び込んでくるオロチに左腕を振り落とし、激突したその時。

オロチがその場で滞空し、振り下ろされる左手に合わせて張り付いた。

正確には左腕の動きにあわせて飛んでいるのだが、あまりにも同期された動きに張り付いているように見えるのだった。

『おおっ!?なんとオロチがスサノオに張り付いた!?見事です!スサノオの対時空歪曲場発生装置を逆手に取って、双方の歪曲場が無効化される一瞬にスサノオの歪曲場内へ侵入しました!これは凄い!!』

そのままスサノオの胴体へ向けて加速するオロチ。

しかし、スサノオも黙ってそれを見ているだけではない。

左腕の肘から先。対歪曲場発生装置搭載誘導式対艦噴出弾(アンチ・ディストーション・フィールド・対艦ミサイル)に一列に並んでいる小型噴出弾(ミサイル)発射管が一斉に開く。オロチからは見えない位置に付いていたので北条はスサノオの新しい動きにまだ、気付かない。

その先の出来事は息つく間もない混乱の連続だった。

至近距離から電磁加速砲による一撃を加えようと歪曲場を解除したオロチ。

その瞬間、スサノオの左腕がクルリと回転し、小型噴出弾の発射口がオロチを向いた。

北条は歪曲場を再起動する事も出来ず、噴出弾の一斉攻撃を浴びた。

超至近距離ゆえに噴出弾の信管は作動しない。

オロチに一直線にブチ当たった噴出弾はその勢いのまま、砕ける。

しかし、小型とはいえ大量の噴出弾を喰らったオロチも只では済まない。

オロチの腹、噴出弾の一斉攻撃を喰らった部分は装甲がガタガタに拉げ、噴出弾の運動エネルギーを余す事無く喰らったオロチは、今までの軌道を外れ、フラフラと漂ってしまう。

オロチが漂っていった先は、スサノオの眼前。

北条が咄嗟に電磁加速砲の引鉄を引いたのと、スサノオ操縦士が両目に搭載された二連光学砲の引鉄を引いたのは同時だった。

交差する双方の攻撃がスサノオの頭部とオロチの胴体に直撃した。

時空歪曲場という反則じみた防御手段を持っているが故に、木連の兵器は防御に力を入れていない。

スサノオの頭部は即座に穴だらけになり、光学砲を搭載した両目が破損し操縦席にすら被害が及ぶ。

対するオロチは胴体に巨大な穴を二つ空けられたものの、操縦席は無事。戦闘は困難ではあるが可能だ。

しかし、元々気難しい8基の主機の内、1基が消し飛び同調が崩れてしまった。

オロチは攻撃半ばで行動停止。大宇宙を駆け抜ける戦闘機から、宙を漂うだけの人工物に成り下がってしまった。

ここで模擬戦終了の合図が下る。スサノオの勝利が宣言されたのだった。


しかし、戦闘は終わらない。原因はスサノオの無線機が破損した為、操縦士にこの情報が届かなかった事。届けば、この後の惨事は起きなかっただろう。だが、それは既に起こってしまった事。ただ事態の推移を見守る事しか出来ない。


 模擬戦終了の宣言を聞いて、主機の再同調作業をゆっくりと進める北条。そんな行動不能のオロチに対し、スサノオはまだ、辛うじて稼動状態を保っていた。

生きてはいるが先の攻撃で放置できない傷を負ったスサノオ操縦士。

受けた傷が熱を発し、意識が混濁しつつも彼は与えられた任務を忠実以上にこなそうとした。

すなわち『オロチを倒せ。』

彼は朦朧とした意識の中、右手の操縦桿を引き、操縦桿の安全覆いを親指で跳ね上げ、中の釦を押し込む。

それは対歪曲場発生装置搭載誘導式対艦噴出弾、通称ゲキガンパンチの引鉄。

スサノオの右手がオロチを指向し、腕の肘から先が発射される。

身動きの出来ないオロチはそのまま、ゲキガンパンチのマジックハンドに掴まれ競技宙域の外へ向け、押し出される。

更に追い討ちをかけるべく、重力波砲が展開されようとしていた。

その様を見て北条は焦った。

今回の敗北で名家令嬢との婚約は取りやめになるかもしれない。だが、巻き返しは出来るはずだ。そもそも、戦艦対戦闘機の戦いなのだ。敗北したとて評価は貰えるかも知れない。こんな所で死にたくは無かった。栄光の座はまだ遙か上に輝いている。まだ何も掴んでいないではないか!

咄嗟に途中まで進めていた再同調作業を神速とも呼べる速度で終わらせる。

再び息を吹き返したオロチ。その牙、電磁加速砲をスサノオに向ける。ゲキガンパンチはオロチを何処とも知れぬ場所へと押し出しているが、今は脅威を排除する事が最優先だ。

「死ねっ!俺の野望の為に!!」

演習と言う事で攻撃目標に加えていなかったスサノオの相転移炉目掛けて全力射撃を敢行。

重力波砲の準備を整えたはいいが、刻一刻と遠ざかるオロチに朦朧とした意識では照準を合わせる事が出来ず、発射姿勢のまま歪曲場を閉じていた事がスサノオのアダとなった。

六門の電磁加速砲から放たれた弾雨はオロチの側からしても刻一刻と遠ざかるスサノオの全身に突き刺さり、その内の数発が相転移炉に直撃。

重力波砲発射に備えて蓄えられていた重力子と全力回転していた相転移炉がスサノオを跡形も無く吹き飛ばす。

爆発を確認し、悠々と電磁加速砲を腕のように振るってゲキガンパンチの戒めから逃れる北条。

が、そこで再びオロチの主機の同調が乱れ、足が止まる。

ゲキガンパンチに搭載された中枢制御装置代わりのヤドカリは、オロチが自身の戒めを脱した事を感知。本体であるスサノオからの指示が途絶えたが為に本来なら送られるはずの作動停止信号は届かず、ヤドカリ自身の判断で対艦噴出弾、最大の攻撃を選択した。

すなわち───、自爆。

至近距離で爆発した破片が傷ついたオロチを更に破壊する。残った電磁加速砲にも容赦無く破片は突き刺さり、主機にも被害が広がる。

さらに左の観測窓が割られ、機内の空気が一気に無くなった。

「…やはり、安全対策は必要だったな。」

見栄なんかより生き残る事を選んで正解だったと、自分を真空の宇宙から保護する気密服を撫でながら一人頷く北条。

「…ザッ………北…、聞……るか?…やく、機体……て直して、……しろ!…繰り替え…!早…、機体…移動…せ…っ!…木星…異常磁場帯…突っ込……!!」

その時、壊れかけつつも辛うじて稼動していた無線機が、この間一緒に酒を飲んだ技術士官の声を途切れ途切れで吐き出した。

なんとか言葉の意味を理解した北条がまだ綺麗な右側の観測窓に張り付いた。

目の前には普段よりも大きく見える木星の衛星、イオの姿。

競技開始前に聞いていた『天気予報』の内容を思い出し、青ざめる北条。なにかと信頼性が低い木連製ではあるが、十分な電磁波対策が取られた電子機器が『飛ぶ』ほどの磁力場、人間が中に入れば電子レンジよりも酷い事になる。

同胞たるスサノオ操縦士を殺してでも死にたくなかったと言うのにこんな事で死んでたまるか!と、直ちに再々同調作業に移る。

出力の安定しない主機は見捨てて使える物だけを選択。使えない物は全部捨てて身軽になりたい所だが、下手に投棄(パージ)しようとして変形した胴体に引っかかりでもしたら後が怖い。

幸い4基の主機が生き残っていた。

コレだけの数だったら立ち上げるのにそんな苦労は要らないと両手を忙しく動かしながらもホッと一息つく北条。

再び主機が同調態勢に入り、主要機器に電力が供給される。

直ちに移動しようと航路計算を始めた北条の顔が歪んだのはその後、直ぐだった。

想像以上に木星に近づいてしまったオロチは木星引力圏に捕らわれてしまったのだ。出力が半分になってしまった今のオロチでは安易に抜け出せない。下手に機動すれば空中分解する恐れすらあった。

唯一、木星の異常磁場帯に直撃しないで済む方法は異常磁場の原因、オロチの比較的側にあるイオの重力圏を利用した重力カタパルト航法のみであった。

しかしそれもイオと木星の間に異常磁場帯が存在する以上、紙一重な選択でしかない。

如何するべきか、逡巡した北条であったが決断は早かった。

少しでも生き残る確率を増やす為に死力を尽くす。

直ちに軌道計算を行い、何時バラバラになるか判らない乗機を騙し騙し駆けさせた。


異常磁場帯が観測した範囲よりも大きく肥大していた為に途中、死にそうになったが北条は無事生還した。しかしその後、彼を待っていた現実は彼を粉々に打ちのめしたのであった。

 

 軍事コロニー『れいげつ』の歓楽街、その場末の飲み屋。

客の少ない店内で一人の男が酔い潰れていた。

彼の左目に眼帯が巻かれているが、その男の名は北条といった。一月前の新兵器運用試験競技会にて命からがら生き延びた男である。

左目は木星重力圏突破の際に破損した左舷観測窓から飛び込んできた異常磁場帯の電磁波の影響で失明してしまっている。電磁波の影響は左目だけではなく他の部位も損傷させてしまっている。

しかし、彼が酔い潰れている原因は失明などではない。

木連の社会は仕事中に負った傷に関して寛容である。寧ろ、賞賛するといっても過言ではない。その傷が凄まじければ凄まじいほど「男である」と評価されるのであった。ゲキガンガーの弊害は多々あるが、これは数少ない美徳…なのかもしれない。

酔い潰れつつも杯を重ねる北条。酔って死ねたらこれほど幸せな事は無い。とでも言いそうな雰囲気であった。

そんな彼の席の対面に一人の男が座った。

ゆったりと顔を上げた北条であったが、彼の姿を目にした瞬間、北条の顔は憎しみと羨望と形容出来ない様々な感情が混ぜ合わされた凄まじい形相になった。

男の名は、草壁春樹准将。北条の酔い潰れる原因の一因となった男である。

「その表情だと、私が誰かわかる様だな。それだけ酔い潰れても未だに判断力は失われていないのか。…うむ、やはり素晴らしい。」

草壁が口を開くと、北条も渋々と返事を返した。

「…落ちぶれた俺に何の用だ。わざわざ嘲笑いに来たのか?…今の俺は民間人だからな。敬礼も尊敬語も使わんぞ。」

「ああ、構わんよ。北条「元」少佐。いや、なに…私の全力を傾けて建造した新兵器スサノオを破壊してくれた男にぜひとも一度、会ってみたくてな。」

「…復讐か。」

「む?…いや、復讐は既に終わっているとも。君は栄光の試試連から追い出され、貴重なパイロットを殺害したとして軍籍を剥奪され、名家のご令嬢との婚約も無かった事にされたそうじゃないか。これ以上、何のしようがあるかね?」

「アレはスサノオの操縦士が…先に引鉄を引いた。俺は生き残るのに最適な手段を選んだだけだ。」

「ああ、そうとも。軍事法廷で君の主張は聞かせてもらった。君の主張が正しいとも思ったし、競技会の交戦規定も見直す必要が有るとも思ったよ。今まで人死が出なかったからと、実弾装備で戦うのは遣り過ぎだったとな。」

「…ならば、何故。……何故、俺は落ちぶれたのだ。」

全てを失った事を再認識し、自失呆然となった北条が机に視線を落として問う。

「ふむ、簡単な事だ。政治。全ては政治が問題なのだよ。簡略に言ってしまえば、死人が出るような競技会を運営していた責任を北条君、君に取らせたのだ。幸いにして君は成り上がり者。まだ、名家の養子や入り婿になっていない以上、如何なる処罰を降した所で誰の名も傷つかない。…文字通りの『生贄の山羊』という奴だな。」

「…お、俺は生贄になる為に生き延びたのではないっ!!」

「しかし、残念ながら木連の社会はそうやって運営されているのだよ。仮に君が死亡してしまっていても、コレ幸いと君とスサノオの操縦士に全ての責任を擦り付けていただろうな。」

「…くっ、所詮、孤児は使い捨てと言う事か。」

「いやいや、孤児だからでは無い。その者が真に優秀であるのなら殺人の一件や二件、名家がもみ消してしまうとも。その者を名家に取り込めば次世代に期待が持てるからな。だが、子を成す事が出来なくなった男に至っては…。」

言葉を濁した草壁に北条は歯軋りで答えた。

そう、強力な電磁波は彼から子種を奪ってしまったのだった。木連において子を成せないというのは犯罪に等しい。

「……どうかね?君はこのまま、ここで燻ぶってゆくつもりかね?…たとえ後ろ指を差されようとも、たとえ同胞の血を無数に浴びる事になろうとも、成したい事が有ると言うのなら…。私の元に来い!」

「…何をさせる気だ。」

「ふ、…木連を変える。かろうじて准将には成れたが、ここから先は無能な名家共が少ない座席を明け渡さないのでな。そろそろ地球圏に侵攻出来得る戦力が構築されたと言うのに連中は『時期尚早だ』と及び腰なのだよ。下手をすれば、地球連合と和平交渉をしかねん。まともな外交能力を持たない木連がそんな事をすれば、木連という社会は消滅するしかないだろうよ。…そして私はそのような事態を黙ってみているつもりは無い。」

「何をさせようと言うのだ。」

「…今はまだ、話せん。私の言葉から想像する事だな。ただ、私が確約出来るのは、命の危険があろうとも充足した日々。君を使い捨てた名家への復讐だ。…ただし、私の元に来るなら名は捨ててもらう。」

草壁は椅子から腰を上げ、入り口に向かって歩き出した。

「私は君に期待している。君は人の法で縛られるような人種では無い。…そう、競技終了の合図の後の君の行動こそを私は評価しているのだ。」

草壁の言葉に跳ね上がるように立ち上がった北条が問う。

「…名を捨てろといったな。…なんと名乗らせるつもりだ。」

「ふむ…条、すなわち道筋から解き放たれた者。唯一人、北の天に輝く者。故に───、北辰。」

顔だけ振り返った草壁が魔王の形相で微笑んだ。

 

 「………。で、草壁の部下になった訳?」

シャロンの自室のバーで北辰の話を聞いていたシャロンが問いかける。

「然り。」

北辰は一言、そう答えた。

「…ふ〜ん、草壁も名家の一人じゃなかったかしら。アイツには復讐しないの?」

「閣下が言っていた理想の木連を作り上げられなければ。その時、我は草壁をも殺してあの時の復讐を完遂しよう。」

「貴方、狂犬ね。よくもまぁ、ここまでマトモに狂えるもんだわ。」

「…褒め言葉と受け取っておこう。」

そこでシャロンが再度、問う。

「で?…なんでラピスとハリに武術を教えたの?肝心のソレを聞かない事には終わらないんだけど。」

「我が子種を失った事は聞いたな?」

「ええ、異常電磁帯の影響だったわね。…よくもまあ、生き残れたもんだわ。」

「つまりだな。我に子がいれば…丁度、機械仕掛けの妖精くらいの年齢なのだ。」

「へ…それって…アリスの事?」

「そう、我は機械仕掛けの妖精と遣り合っている時、ふと思ってしまったのだ。『我の業を受け継いだ子が欲しい』と。」

「それが何で、ラピスとハリに?貴方が気に入ったのはアリスでしょう?」

「ふ、はじめは機械仕掛けの妖精の当て馬になるかと思ってな。…しかし、あ奴等も修羅の資格は十分に保持していたようだ。突き抜ければ、機械仕掛けの妖精すら凌駕するかもしれぬ。」

「…あの子達にそう言ってあげなさいよ。喜ぶわよ?」

「ふん。」

シャロンの言葉を無視して、立ち上がる北辰。

「…あら、帰るの?」

「婦女子の部屋に何時までも居るものではない。」

そう言って北辰はシャロンの部屋の出入り口へ向かう。

「ねぇ…、草壁の下を抜けて私の下に来ない?優遇するわよ。」

ドアを潜り抜けようとした北辰の背中にシャロンの言葉が届く。

顔だけ振り返った北辰は

「草壁が、我が忠に値しない男に成り下がればな。…今はまだ…。」

狂犬の笑み。もしくは、獲物を前にした大蛇の笑みを残して北辰は歩み去った。

「…やれやれ、変な所で古風なんだから。…まぁいいわ、木連の敗北は既に明確。北辰はいずれ私の駒になるって寸法ね。」

カウンターに一人座ったシャロンがそう呟き、グラスに残った液体を飲み干したのであった。








外伝(第18話) 完










あとがき

 え〜、またもや投稿が遅れに遅れました。拙作を期待してくださる皆様方、お待たせして御免なさい。

今回は電波の導きにより「自分が想像する北辰の過去」を描いてみたつもりです。

名前付きキャラは北辰の過去と草壁、シャロンのみという手抜き具合。本当なら本編と合わせて投稿する予定でしたが…。

ゴールデンウィーク中にもう一話くらいは投稿できたらいいなぁ。


本日のネタ

>某宇宙戦艦や某銀河鉄道や某宇宙海賊に搭載されていたようなコダワリ。

ぶっちゃけ、あの作品群が描かれた当時はアナログメーターが主流でHAD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)や多目的情報モニターといった概念がまだ出てきてなかったから仕方ないのかもしれませんが。ちなみに松本零士氏の作品群は好きです。あれは古臭いのがイイ。

そういえば、最新鋭の戦闘機ではヘルメットのシールドにHADを投影させる様になってきたようです。気付かない所でSFちっくな世の中になってきていますねぇ。


と、言う訳で。早ければ5月5日までにもう一作投稿出来る…かもしれません。



>いやー、アリスだなぁ(笑)。

アリスらしさを出せてホッと一安心です。いやはや、作者ながらアリスの性格は今ひとつ掴みきれないんですよねぇ。主人公は男にするべきだったかなぁ。


>で、やっぱバクシーはこうなるのね(爆)。
はい、跡形も無く。席が空きましたので第二期エリ8キャラを出してもいいかな〜と思ったりも。

問題はどれだけ主要キャラを生き残らせるか?なんですよねぇ。エリ8では殆んどのキャラがお亡くなりになりましたし。

次の話でも…名前付きキャラが一人死ぬかもしれないです。殺してもいいし、殺さなくてもいい。でも、生かすと死にキャラになる可能性が…(汗。


 

感想代理人プロフィール

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代理人の感想

おー、いいですねぇ。

さりげなく兵器開発史と混ぜてあるのがナイス。

にしてもジンの基本設計って10年も前にできてたのか・・・の割にはあんまり完成度が高くなったようには思えないなぁ(爆)。

木連の開発能力はその辺が限界だということなのでしょうが。