「お体の方はどうですか?」

 

『君のところのナノマシーンのおかげでかなり良くなってきたよ。
 相変わらずいい仕事をしている。』

 

「お褒めに預かり恐悦至極」

 

『ところで、私のあの事故は……本当にクリムゾングループの手引きによるものなのか?』

 

「私が信用できませんか?」

 

『まさか!!
 君のところの医療器械には随分助けられている!!
 それに個人的に君を信用している……しかし、それでも信じられんよ』

 

「お気持ちお察しします。
 ですが、現実にそちらにお渡しした資料のとおり……」

 

『うむ……ロバートとは長い付き合いだったんだが……』

 

「彼らはいまだにばれた事に気が付いていませんから、
 ですから、このまま普通に接すれば安全だと思いますよ。
 警戒すると余計に危険です。」

 

『……わかった、君の言葉を信じよう』

 

「ところで、例の件ですが」

 

『ああ、ナデシコの支援の事かい?』

 

「そうです」

 

『ほかならぬ君の頼みだ。
 彼らの実力も君のおかげで分かったし。
 喜んで支援させてもらうよ』

 

「ありがとうございます。
 では、今度新しい医療器械と一般生活用品をこっそり支給しますね』

 

『ありがたい』

 

「ところで……」

 

『何かね?』

 

「会議に出てきた……パール少将でしたか…」

 

『ああ、彼の事か。
 それならもう手を打っている。
 数日もすれば軍から追放されるだろうな。
 今まで隠してきた犯罪も明るみに出たから……』

 

「彼のせいで、ピースランドは危機にさらされました。
 軍人の風上にも置けない男ですね。」

 

『すまない。
 あの馬鹿はすぐにでも追放したかったが、下手に事を起こせない
 から中々尻尾を見せなかったのだよ……
 今度のあの馬鹿の派遣も、私が意識がないうちに決定されて、
 気が付けば当人は既にいなくなっていたのだから。
 私も迂闊だった。
 わびる言葉もないよ……』

 

「いいですよ…今こうして無事ですから」

 

『本当にすまない……………
 今度機会があったら、いっしょに酒でも飲まないかね?
 いい酒が入ったんだ』

 

「いいですね……またそのときは連絡します」

 

『わかった……それじゃあ失礼するよ……』

 

「では……」

 

 

 艦長席の前に浮かぶモノリスの表面の文字が消える。
 さて、これでアフリカ方面のナデシコへのバックアップは完璧……
 総司令のスタット中将とは、長い酒飲み仲間だ。
 彼の所に、内緒でうちの機材を提供している。
 あのパールと言う男の命の軽軽しく扱う態度……あんな男を
 軍隊に置いておくわけにはいかない。
 下手をすれば私の友人まで危険にさらしかねない。
 人の命を軽んじる人間は、私にはチリと同程度としか感じられない。
 …スタットは軍人でも中々の人格者なのだが、部下がいかんせん
 利益優先主義のしかも悪知恵の働くたわけが多いのがたまに傷。
 本人も頭を痛めていたな。

 

 ……本当にご愁傷様。

 

 

 

 赤黒の女神  ガルツォーネ 艦長室にて

 

 作:天砂

 

 

 あの後……
 ナデシコの戦闘力を見終わった私は、ガルツォーネに帰っていた。 
 無論、彼らを追うために……
 そして、念のためアフリカ軍総司令スタット中将に連絡を入れたのだ。
 ……今度の酒はどんなだろうか?
 彼の手に入れる酒はどれもかなりのものだ。
 家でも作るのだが、やはり人の作ったお酒も飲みたい。
 ……一息ついたらいってみようか。
 さて、これでアフリカ方面はよし……
 他は、私は知っている人間が少ないのでパス。
 まあある程度調整はしておくけど………
 残るは………あ、そうだ。
 ちょっと操作を行うと、幾つかのモニターが表示される。
 表示されたのは、世界中の株価情勢……
 特に変わった様子はないか………
 クロノスグループの株主達は、みな私の作った架空の人間達ばかりである。
 他にもセンチネルやチルドレンたちも株主になってもらっている。
 この方が制御しやすいからだ。
 ……ちなみに私は世界中の株と言う株を、その気になれば全て自分の名義にできる。
 クリムゾングループ、ネルガルグループも例に漏れない。
 経済界など、文字通りのマネーゲームに過ぎない。
 初めから勝負はついているのだから。
 こういうのをなんていったかな?
 ああ……手のひらの孫悟空…だったか?
 …そういえば、ネルガルを初めとした幾つかの株に、
 ナデシコのホシノルリ達のの手が加えられていたな……
 まあほっておこうか……手などいつでも打てる。
 さて………

 

「バーミリオン」

 

 私の呼び声に答えるように、新しいモノリスが現れる。

 

「なんだ、あんたか……なんのようだ?」

 

 モノリスから男の声が響く。

 

「相変わらずのため口ね……」

 

「ほっといてくれ。
 俺はこの口調が気に入ってるんだ。
 ……で、今回はなんのようだよ?」

 

「テンカワアキト。
 この人物に関する情報を見せて」

 

「お安い御用だ。
 えっと………あったこれだ。
 クリムゾン最高機密文章詰め合わせ……まとめて送るぜ」

 

「いつもありがとうね」

 

「気にするなって。
 最近退屈でしょうがねえ
 この前、散々働かされて……
 あ、そうだ。
 あんただろう。
 俺のところのライフライン切ったの」

 

「そうよ」

 

「やっぱり!!
 あのあと復旧が大変だったんだぞ!!」

 

「必要だったからね。
 それに、あなたなら何の問題もないと思ったからよ」

 

「信用してくれてありがとさん。
 で、他には何かあるかい?」

 

「そうね、あとクリムゾンで何かアクションがあったら教えて」

 

「わかった」

 

「じゃ、また」

 

「せっかちだなぁ……ああ、またな」

 

 モノリスがまた消える。
 私は席を立って、後ろにある扉をくぐる。
 千間の中にあるにしては、少し広いホールになっており、
 中心には、巨大なパイプオルガンがある。
 私は音楽全般に精通するが、パイプオルガンは特に思い入れのある楽器。
 これを奏でる時が私の憩いの時だ。
 パイプオルガンの椅子に座ると、鍵盤を操り旋律を紡ぐ。

 

 ホルストの『惑星』第四楽章 ─木星─  快楽主義者

 

 私のお気に入りだ。 
 舞台は整いつつある……次の楽章に移る時か……
 さあ……次はどう出る?
 彼女も心配しているわよ……
 テンカワアキト………

 

 

 

 私は、鍵盤の旋律に身をゆだねながら呟いた……
 そして数分後、ガルツォーネはピースランドを離れた………

 

 

 

   ≪続く≫

 

 

 

 後書き

 

 九月に入りましたね。
 どうも、天砂です。
 この作品は結構短時間に出来たものですので、至らないところが多いかと思いますが、
 どうかご容赦のほどを……ところで、
 もものきさんの異聞異聞……すごい……北斗がとんでもない事になっている……
 私にはこういう類は書けない……でも、その内書いてみたいな……
 それでは、今回はこれで……

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

 

天砂さんからの投稿第七弾です!!

・・・なんだか、作者の関与しないところでサイドストーリーが決まってますね〜(苦笑)

まあ、面白いからいいですけどね(笑)

しかし、イヨさん所構わず活躍されてますね〜

アキト以上の暗躍度だ(笑)

う〜ん、この調子だとミスマル提督とかも交友関係がありそうだな。

 

では、天砂さん投稿有り難うございました!!

次の投稿を楽しみに待ってますね!!

 

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