スイス

地球圏統一記念公園

百年以上前、地球に在る国家間の総意として地球連合が成立した記念に作られた公園。
早朝この公園はジョギングや体操などをする人がちらほらと見える、そんな中おそらく長距離のジョギングをして来たとおぼしき男が公園内で最も見晴らしの良いベンチに座り、汗を拭きながら周囲を眺めていた。

暫らくするとベンチに座っている男の前に一人の青年がやって来た。

「隣り、いいですか?」

二十代中頃の青年はそう問いかけた。

「かまわんよ」

ベンチに座った壮年の男は、やはりジョギングをして来たらしい青年に答えた。

「いい天気ですね」

「ああ、今日も良い一日になりそうだ」

「そうですね」

二人は大して意味のない会話を続ける、だが優れた洞察力、話術を持つ者なら二人が巧みにタイミングを計っている事に気が付いただろう。

「さて、そろそろ本題に入るか?」

会話の均衡を破ったのは壮年の男だった。

「ええ、そうするとしましょう」

「ネルガルのエージェントだな」

「あらためまして、ユング議長。ネルガル重工所属 新造戦艦ナデシコ副提督、テンカワ・アキトです。」

地球連合政府最高評議会議長 カール・グスタフ・ユング、それが壮年の男の呼び名だった。

「ナデシコか。・・・・・・・ネルガルは本気の様だな」

「ええ、無謀かもしれませんがナデシコには其れだけの力が有ります」

「それでネルガルは、いや君は何をしようとしている?」

「私はネルガルの一社員ですよ」

「アカツキ君から全て君に任すと聞いているが」

「そうですか・・・・・・・・・・」

アキトは一瞬口を噤むが直ぐに思い切った様に本題を口にした。

「ユング議長、貴方は木連と和平を結ぶ気はありますか?」

サイは投げられた。 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・君は何処まで知っている?」

ユングの口から搾り出す様に言葉が漏れた。

「全てを。 およそ百年前に月独立派に対して地球が行った仕打ち、そしてこの戦争の真実を」

「・・・・・・・・・・・・そうか」

「戦争が長引けばいずれ真実は明るみになります、そうなってからでは遅い」

「君の考えは解った、だが如何する。 下手に真実を明かせば政財界のみならず社会全体が混乱し、場合によっては連合そのものが崩壊しかねん」

「ええ、まずは双方の軍事バランスを拮抗させる必要があります」

「そのためのナデシコか」

ユングの返答にアキトは軽く肯く。

「ナデシコは火星から帰還した後軍に編入されます」

「其処で軍事バランスを取り戻すか、だが其れでは」

「ええ、軍は増長して木連を潰しにかかるでしょう。 だから其れまでに軍と政界の意見を統一する必要があります」

「なるほど、だがまだ弱いな」

ユングは肯くがアキトの考えに決め手がない事を指摘する。

「ええ、ですから・・・・・・・・」

アキトはそう言うとユングの耳元で何事かを囁く。

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「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

アキトの考えを聞いたユングは黙り何かを考えている。

「ユング議長、私を信じてくれますか?」

「・・・・・・・・・・・・・・カールだ」

「は?」

「親しいものはそう呼ぶ。 これから共犯者になる君にはそう呼んでもらいたい」

「共犯者ですか?」

「そうだろう。 人類社会の未来を賭けて大博打をしようというんだ、これを共犯と言わ無いでなんという」

ユング、いやカールの協力を得られた事を知るとアキトはゆっくりと微笑んだ。

「過去の負債を未来の子供達に負わせる訳にもいくまい」

そういうとカールもまた微笑んだ。

そして

 

 

 

 

 

 

 

艦橋内にエマージェンシーコールが鳴り響く。

「きましたね」

オペレート席に座ったルリは小さく呟く。

今ブリッジでは艦長のミスマル・ユリカがマスターキーを使いエンジンを始動させたところだ。

艦長の横ではムネタケ副提督が囮を出せと騒いでいる。

「パイロットの山田さんは足を折って出られません」

ルリの報告にムネタケはいっそう喚き散らす。

そのとき

「3時の方角より接近するものがあります、形状から見てエステバリスの様です」

通信士 メグミ・レイナードの声が響く。

「識別コード確認、ネルガル重工所属次世代エステバリス試作機 パイロットはテンカワ・アキト」

ルリは報告をすると胸の中でこう付け加える“さあユリカさん、貴方は如何しますか?” と

「通信開きます」

メグミがそう言うとスクリーンにコクピットに座る男が映し出される。

「ネルガル重工所属機動戦艦ナデシコ副提督、テンカワ・アキトだ指示を求める」

その声で「テンカワ、テンカワ」と呟きつづけていたユリカは慌てて指示を出す。

「て、敵を引き付けつつ海底ゲート直上まで移動してください」

「了解した」

そう言うとアキトは通信を切る。

 

 

 

 

 

その闘いは見事と言う他表し様が無かった。

陸戦でも空戦でも0G戦でもない漆黒の機体は流れる様に動きバッタを落として行く。

ライフルでナックルで雨の様に迫り来るミサイルをよけ確実に敵の数を減らして行く。

鋭く激しいかと思えば実に流麗・・・・・・・それはもう“戦い”という名の芸術。

 

 

 

 

アキトの操るエステによりその数を2/5ほどに減らしたバッタはナデシコのグラビティブラストで殲滅された。

そしてアキトはナデシコの頭上でその光を見ながら呟いた

「帰ってきた。 ナデシコよ俺は帰ってきた、繰り返さない、必ずあの忌わしい未来を変えてみせる、其の為にナデシコよ!俺は帰ってきた!!」

 

 

 

其れは獅子の咆哮

伝説が始る

 

 

 

あとがき

どもtohooです。
いや〜何書いてんのか良くわかんなくなりました。
霜月さんの作品と題名が重なってしまったので今代わりの題名を考えています。
幾つか候補がありまして迷っています。

追伸 イネス後援委員会に入れてもらおうかと思っている今日この頃です。

 

 

代理人の感想

 

いや〜、言われるまで気が付きませんでした(気付けよ)。

とはいえいきなりタイトルを変えるのもなんなのでかぶっている「時の帰還者」を消して

シンプルに「追憶」にするのはどうでしょうか?

 

提案でした。

 

でもBenさんの所もそうなんですが、逆行物のルリってユリカに対して尊大な態度を取ったりと

必ず性格が悪くなってるような気がするのは気のせいでしょうか(苦笑)?