ガンダムプロジェクト。
 1年戦争時にすさまじい戦功を残した地球連邦軍モビルスーツ、RX-78・ガンダムをベースに、次世代の機動兵器を開発する計画である。
 この計画には複数の開発者が携わり、トライアルの形式で様々な機体が計画立案されている。
 そして、その機体のいくつかは、実際にガンダムに乗っていた元エースパイロット、現在は北米のシャイアン基地所属のアムロ・レイの元へ届けられ、運動試験データを採取される。
 その能力の特異さから、直接モビルスーツに搭乗することを禁じられているアムロの代わりに、今は数名のパイロットが配属されている。当初はクリスチーナ・マッケンジーだけだったが、そこにカミーユ・ビダンが加わり、実働試験の件数も増え始めていた。
 そして、今日もまた、新たなパイロットが着任の挨拶をアムロと交わしていた。

「特務小隊に所属しておりました、カクリコン・カクーラー」
「同じく、ジェリド・メサ、本日よりこちら、シャイアン基地に配属となりました。歴戦の英雄であるアムロ大尉と同じ部隊に所属になるとは、光栄の極みです。よろしくお願いします」

 クセのあるブラウンの髪の青年と、金髪をリーゼントにまとめた優男がそろって敬礼する。
 それを見て、困ったようであるいは皮肉げとも取れる笑みを浮かべながらアムロが答礼を返す。

「アムロ・レイです。よろしく」

 そっけなく一言だけつぶやき頭を下げると、アムロは傍らにあるカクリコンとジェリドの経歴書に目を通す。

「1年戦争後の志願兵で連邦軍の北米方面軍に配属、MSパイロットになってから異星人襲来時に戦果を挙げ、推薦されてシャイアンに転属、か」
「新型機に乗れるということと、ベーシックモーションデータに自分のデータが採用されるのは名誉だと考えております」

 カクリコンがかしこまってそう返答するが、アムロは表情も変えずに言葉を継ぐ。

「兵器開発に携わることが名誉かどうかは疑問だな」
「地球人類を守るための兵器であり、モビルスーツであると自分は考えます」
「そうだな、そうであってほしいな」

 アムロの独白の意味を取りかねて眉をひそめるカクリコンの脇で、ジェリドが後ろを振り返っていた。

「どうしたジェリド?」
「いや、誰か来たようだ」

 見ると1台のエレカが建物の入口に派手なブレーキ音と共に止まるところだった。

「アムロさん! なんなんですかあの機体!? あんなピーキーでセンシティブなチューニングじゃ、高速機動なんて取れるわけがない!」
「ちょっと、カミーユ! 待ちなさい!!」

 語気も荒々しく乱入してきたのは、シャイアン基地でテストパイロットをやっている少年、カミーユだった。後ろからは同じくテストパイロットの妙齢の女性、クリスが追いかけてきている。

「カミーユ! 新任のパイロットが挨拶に来てるのよ! 後にしなさい」
「そうも行かないでしょクリスさん。同型機をテスラ研に渡してるじゃないですか。あんな機体じゃ誰にも扱えませんよ」

 かんしゃく交じりのカミーユの言葉にそれまでけだるそうな顔をしていたアムロが苦笑じみた表情を浮かべた。

「テスラ研の要望はそういう調整だったんだよ。あれは、今の僕にだって扱えない」
「ならどうして!?」
「一年戦争のピーク時の僕の反応速度、そこから余裕を持たせてほしいと言っていたな。一体どんなパイロットが使うんだろう」

 熱意の感じられないアムロの言葉にカミーユは頭をかきむしっている。すると、

「……ん?」
「なんですか、あなたは?」

 ジェリドはカミーユが伏せた顔を覗き込んでいた。

「ん〜? カミーユ?」

 自分に向けられた好奇の視線に気づき、カミーユがにらみつける。
 ジェリドは口の端をにぃっと持ち上げて、

「なんだ、男か」

 とぽつりとつぶやいた。
 次の瞬間、ジェリドの体が1メートル吹っ飛んでいた。

「……なんなんだお前! カミーユが男の名前で悪いのかよ! 俺は男だよ!!」
「手ん前ぇ……何しやがるこの野郎!?」

 口の中を切ったのか、血の混じったつばを吐き出しながら、ジェリドがカミーユに殴りかかる。
 あっという間に取っ組み合いのケンカになった2人を見て、クリスはおろおろしている。

「止めますか?」
「いいよ、疲れたらやめると思うし」

 カクリコンが肩越しに尋ねるが、アムロは取り合うつもりもないようだ。

「量産を前提としたGMのフレームを改良し、アレックス以上の大出力と過敏なまでのセンサー類を搭載……僕が乗っていたガンダム以上のガンダムか。どんなデータが返ってくるのかな……」

 ……15分後、それまでの経緯をまったく聞いていなかったカミーユとジェリドが、

「で、この人は何者ですか?」
「そーいうこのガキは何者なんですかね?」

 と言い募り、もう一度殴りあいに発展するのは、やはりアムロのあずかり知らない話であった。

( End of Appendix )

 

 

 

代理人の感想

うわすげーやる気ねー(笑)。>アムロ

これが19歳の若者かと思うと、お兄さん情けなくて涙がちょちょぎれてくらぁっ!

まーやる気を失うだけの状況があるのも確かなんですが。

 

それにしてもテスラ研でんな化け物じみたMSを欲しがると言う事は・・・オーガスタとかムラサメならまだ分かるんですけどね?