-堕天使と妖精の物語-

TOM-X           

ACT1:堕天使と妖精の出会い


 

〜ルリ・サイド(AC196/1〜AC196/3)〜

 

初めまして、ホシノ・ルリといいます。

私達の戦艦《ナデシコ》は火星での遺跡争奪戦で、艦長であるユリカさんの判断により

遺跡ごとボソンジャンプさせてしまいなくなってしまいました。

結局、私達の当初の目的である《木星連合との和平》は失敗したのですが、

争いの元凶である遺跡がなくなったため両者の争いはしばらくもすれば無くなると予想していました。

ただ、私達は連合に逆らっての行動だったため、よくて抑留、

わるければ命がないと覚悟はしていたんですが……。

まさか、こんな結果になろうとは夢にも思っていませんでした。

まあ、私達ナデシコクルーについてはかなりよい結果だったんですけど。

二回目の火星出撃から帰還するまでの三ヶ月の間に地球ではかなり大きな出来事が起こっていました。

私達が帰還したときは、すでに連合が崩壊していて臨時政府に代わっていました。

あ、今私達は《L4コロニー》の《カトル・ラバーバ・ウィナー》さんの所有しているコロニーにいます。

ここにいる理由は、たんに食料が地球まで持たなかったからなんですけど。

このコロニー着いたとき見知らぬ兵隊さんに囲まれました。

ま、捕らえられる理由はありすぎたんですけど……。

実際に捕らえられたのは、ネルガル会長の《アカツキ》さんと秘書の《エリナ》さんだけでした。

「なんで、僕らだけ捕らえられなきゃいけないんだぁー!軍のお偉いさん達を呼んでくれぇー!!」

とか、アカツキさんは叫んでましたが。

兵隊さんの話によると私達は木連との和平を申し込みに行った英雄で、

彼らはそれを妨害した悪党と世間に認識がされているということでした。

結果は失敗しているんですけどね。

その兵隊さんたちは、秘密組織《プリベンター》の一員だと話してくれました。

プリベンター……現臨時政府情報部が正式部署名だそうです。

通称は火消しともいっておりました。

彼らの目的は、あくまで平和維持そして戦闘兵器の廃絶を目的にしているということです。

話を聞いて、アカツキさんたちがなぜ連れて行かれたか理由がわかりました。

ネルガル重工の会長だからですね。

その後、私達はこのコロニー滞在しています。

というのも、先の戦争で民間シャトルの数が激減しているわけでして、早い話キャンセル待ち状態なんですよね。

クルーの多くは、地球に帰還されましたが、おもだったクルー、アキトさん、ユリカさん、ミナトさん、メグミさん、

プロスさん、ホウメイさん、リョウコさん、ヒカルさん、イズミさん、ホウメイガールズの皆さん、ユキナさん、イネスさん、

ウリバタケさん、ゴートさん、アオイさん、フクベ提督、その他クルーの一部の人達はまだ滞在しております。

それで、今はカトルさんの所有のホテルを借りています。

他の一般客の人達はいません。

そのためか皆さん毎日ドンチャン騒ぎをしています。

プロスさんの話によるとホテルごと借りたそうです。

「いやー、賠償金とかお見舞金なんかを払わなくてすみますからな。

これくらいの経費は問題ありませんよ。」

とかいって笑い飛ばしていました。

たしかに、払い先である連合は今はもう無いのですから。

もし、払うとしたら相当の額になるはず……。

細かいことは気にしないでおきましょう。

アキトさんは、ホウメイさんと料理の修行をしています。

アキトさんは「ここの設備はナデシコの調理場以上だ!」とかいってました。

ホウメイさんも「調味料、香辛料もナデシコにいた時と同じだよ。」とかいって喜んでました。

実際に、私達の食事を作っているのは彼らなんですよね。

ユリカさんは、「アキトー、あそぼー」とかいってアキトさんに迷惑をかけています。

アキトさん自身、あの戦いの最中でユリカさんに告白したため、まんざらでもないようです。

ミナトさんは、再就職先を探しているようです。

メグミさんは、声優に復帰して近くのラジオ局でパーソナリティーを勤めています。

ホウメイガールズの皆さんは、芸能界デビューのため特訓をしています。

ユキナさんは、アオイさんを鴨にしてゲームを楽しんでいます。

リョーコさんはシミュレータで訓練してます。

ヒカルさんは漫画を書いています。

どうやら、投稿したのが採用されたらしくて締め切り前で忙しいようです。

イズミさんは……考えるのはやめときましょう。

ウリバタケさんは、アキトさんに頼まれたラーメン屋の屋台を設計しています。

今までの給料でそれなりの店は出せると思って、アキトさんになぜ屋台なんですかと聞いたら、

「俺はまだ店を持つにはまだまだ未熟だよ、ルリちゃん。」

と答えが返ってきました。

ゴートさんは、お絵かきロジックをしています。

外見に似合わず細かいことが好きですねゴートさんは。

プロスさんはで今後のシャトルの予定やその他のことで交渉しにカトルさんのところ行っています。

イネスさんは、近くの病院で手伝いをしています。

先の戦争で怪我人が多く人手が足りないからだそうです。

このことに関しては、プロスさんとカトルさんとの契約のためでもあるとイネスさんはいってました。

その他の人々も昼間は自由にしています。

夜は、相変わらずドンチャン騒ぎで《ばかばっかのナデシコ》です。

そんなこんなで、私は暇を持て余していましたので、その間に何が起きたのか調べてみました。

どうやら、私達が火星で戦っているとき、地球ではコロニーとの間で大きな争いがあり、

地球側の代表《トレーズ・クシュリナーダ》さんは戦死、

コロニー革命派ホワイトファング代表《ミリアルド・ピースクラフト》さんは行方不明になっており、

勝利者のいない決着だったそうです。

一応地球側が敗北宣言を出したため、コロニー側の代表さんたちは敗北宣言を出しているにもかかわらず

戦いを続けているホワイトワング見捨ててあっさりと講和条約を締結したそうです。

その後、戦争を終結に持っていたのは、五体の《ガンダム》とそのパイロット達でした。

その人達はどちらの陣営につくことなく、自分達の意思で戦っていたそうです。

その戦いの中でホワイトハングの旗艦『リーブラ』の一区画が地球大気圏に突入、

それを破壊するために天使のような姿のガンダムが前方に立ちふさがりかなり破壊力のある銃を放ちました。

私はそのパイロットに興味が沸きました。

私が他人に興味を持つなんてことは自分でいうのもなんですけど珍しいことです。

このパイロットはあの灼熱地獄から見事脱出しました。

この時、あのパイロットは何を思ったのでしょうか。

映像はここできれていました。

その後、五体のガンダムは戦争を終結に導いた英雄として民衆にたたえられています。

でも、パイロット達はそんなことを望んだのでしょうか。

たぶん、違うと思います。

なんとなくですけど……。

なんだかんんだで一ヶ月がぐらいたった三月のある日プロスさんは、カトルさんをつれてホテルに帰ってきました。

ホテルといっても……もはや家ですね。

カトルさんの話によると木連で内乱が起きたこと、クーデター側が実権を握ったこと、

そしてたった今休戦条約が締結されたことを話してくれました。

うれしかったです。

自分達がやったことは無駄にはならなかったことが。

皆さんも喜んでいます。

一部暴走してますが……。

うれしいことは重なることです。

地球に向かうシャトルが確保されたことも聞きました。

でも、私は地球に帰ったらどこに行くんだろう……。

(研究所はいや)とか考えてたら……。

「ルリちゃんは、艦長の私が引き取ります。」

「いーえルリルリは私が引き取ります。」

「ここは、私がスカウトした手前責任を持って引き取らさせていただきます。」

などと、私を無視して勝手に話しています。

でも、私の心配は杞憂で終わりそうです。

別の意味で心配の種がありますが……。

私は個人的な意見をプロスさんに話した後、荷物を整理しに自分の部屋に行きました。

もっとも、整理する荷物は少ないんですけどね。

結局、ユリカさんが私を引き取ることになりました。

まあ、妥当なせんかななどと思っています。

さすがに、ウリバタケさんやイネスさん、イズミさんと暮らしたくないですが……。

もっともその三人は外すように頼んでたんですけどね。

あ、そうそうアカツキさんとエリナさんはネルガルに復帰しています。

もっともかなり絞られたみたいですけど……いい気味です。

ユリカさん、アオイさんは宇宙軍に復帰することになりました。

リョウコさんは統合軍でパイロットの教官を務めるそうです。

実際いつまで勤められるかは、まだわからない状態なんですが。

なんでも、かなりの軍縮を行っているようですから。

ここでの生活はかなり楽しめました。

私が興味を持ったパイロットの名前は《ヒイロ・ユイ》ということがわかりました。

ヒイロ・ユイ……かつてコロニーの平和的指導者と同じ名前を持つ人。

年齢は十五歳……私と二歳しか違わない。

わかったのはそれだけです。

そのとき、私は彼とあんな形で出会うことになるとは思いもよりませんでした。

シャトルの出入り口で、カトルさんとアキトさん、プロスさんの三人で話をしています。

アキトさんはカトルさんと友人になっていました。

だからでしょう、時間がくるまで談笑してます。

プロスさんは今までの交渉の最終調整ですかね。

なんだかんだで、出発の時間がきてシャトルは地球に向かって発進しました。

 

 

〜ヒイロ・サイド(AC195/12/25〜AC196/2)〜

 

俺はあの戦いの後、あいつらと別れて地球に向かった。

別に目的があったわけではない、感情のままに行動していた。

しばらくして、俺は極東地区のかつて日本と呼ばれた国の一地域《オオイソシティ》の学校に入学していた。

別に学校に行く必要性はまったく無かったが、この年齢だとさすがに問題があったからな。

ウイングゼロはある場所に隠してある。

見つかることはまず無いだろ。

こんな平和な生活を享受できるとは1年前には思いもよらなかったことだ。

だが、こんな生活も悪くはないと思えるのは、リリーナに出会ったことがきっかけではないのだろうか。

もう、あいつとは出会うことは無いだろう。

俺とあいつでは住む世界が違うからな。

なんだかんだで、こんな生活が続いていたある日、俺はネットで情報をながめていたらある一文に目が止まった。

《木星連合に和平を結びにい出航したナデシコクルーがL4コロニーに帰還。》

ネルガル重工が建造した宇宙戦艦《ナデシコ》……

対木連兵器の切り札、ターゲット目標で破壊できなかったもの。

今思えば、破壊できなくてよかったと安堵している。

彼らは、いや彼女達のほうが正しいのか?

それはともかくナデシコはコロニーには牙を向けなかった。

攻撃対象としたのは無人兵器・通称《木星蜥蜴》、後になって現れた木連起動兵器のみだった。

ナデシコのクルーがほとんど民間人だったのが幸いしたのだろう。

十月の終わり、俺はゼクスとの決闘の後、あいつが乗っていたウイングゼロと俺の乗っていたエピオンを交換した。

そして、あても無くさまよいながら情報を集めていたら、

『この船は……ナデシコは、私達の船です。』

と、少女の声を傍受した。

おそらく他人・それも大多数に話をしていたのだろ。

つまり、この近くにナデシコがあることはわかった。

だが、俺は破壊することができなかった。

見つけたときは、ナデシコはOZロームフェラ軍とネルガル私設軍と戦っていた。

俺は、この時OZにターゲットを絞っていた。

結局戦いが終った後は、ナデシコはすでに大気圏を超えていた。

つまり、破壊しに来たはずが、助太刀をしてしまったようだ。

まあ、後悔はしていないが。

それに、宇宙にはあいつらがいるから心配もしていなかった。

だが、単独で木連に和平を結びに行くとは思いもよらなかった。

結果は失敗したらしいが、戦争の元凶である遺跡を遥か彼方にとばしたことにより状況は膠着していた。

そして、もう一つの目的である連合への復讐も連合自体が消滅しているためもはや戦う理由など木連にはなかった。

そして、彼女らが帰還する前後に木連ではクーデターが勃発していた。

結果的に彼女達がやったことは無駄ではなったことだ。

今になって、彼女達のことを思うようになっているのが俺自身不思議でならなかった。

特に、通信を傍受したときの声の持ち主のことが……。

俺は、あの時は特に気に留めてはいなかった乗員データを再び調べてみた。

すぐに、該当する声の持ち主の名前がわかった。

少女の名前は、《ホシノ・ルリ》。AC193年時点で、十一歳……今の俺と二歳ちがいか。

十一歳までネルガルの人間開発センターにいたところまでわかった。

俺と似ていると思った。

俺は、ルリに興味を持ち始めていた。

リリーナではなくてルリに。

しかし、会うことはまず無いだろう。

世界は広いからな……この時点では、そう思っていた。

まさか、出会うことになろうとは夢にも思っていなかった。

それも、あんな形で。

それはともかく、この平和の一時を俺は満足している。

二度と、あんな戦いがこないことを願って……。

 

 

〜ルリ・サイド(AC196/4〜AC196/7)〜

 

私は、今ミナトさんの家に居候しています。

地球に帰還した後、いろんなことがいっぺんに起こりました。

最初は、ユリカさんの家に居候していましたが、親子喧嘩に巻き込まれてアキトさんの家に居候していました。

親子喧嘩の原因は、ユリカさんの父であるコウイチロウさんがアキトさんとユリカさんの結婚に反対したためです。

傍聴していた私はあきれていましたが。

話かみ合っていなんですよ……。

アキトさんの家は、狭かったです。

四畳半の1部屋だけ……ユニットバスはついてましたが。

アキトさんもそれなりの給料をもらっているはず……ナデシコクルーはかなりの高給取でしたから。

そう思って聞いてみました。

アキトさんは、

「別に俺一人だと問題無いし、少しでも店の開店資金を貯めときたいからね。」

と、理由を話してくれました。

「まさか、ユリカが家出するなんてな。

それも、ルリちゃんも巻き込んで……たしかに、3人だと狭いな……どうしよう。」

とか、独り言をぶつぶつと話していました。

なんだかんだで、一緒に暮らしていたのですが……

どこからこの情報を仕入れてきたかわからないのですが(多分、ウリバタケさんですね)、

ナデシコクルーが毎日おしかけてきて毎晩ドンチャン騒ぎをおこしてました。

その後、アキトさんはコウイチロウさんに結婚の許可をもらうため、《ラーメン勝負》をしました。

結果は、アキトさんの勝ちで二人の結婚を認めました。

実際、コウイチロウさんはアキトさんのことは認めていたそうです。

ただ、ユリカさんをとられたくないと思いもあったそうです……親馬鹿ですね。

早い話、コウイチロウさんはきっかけがほしかったようです。

お手伝いの人はそう言ってました。

勝負の後は、結婚準備で忙しかったです。

そして、6月10日アキトさんとユリカさんは結婚をしました。

その時のユリカさんはとてもきれいでした。

この時私は、この幸せがずっと続くだろうと思っていました。

しかし、現実は残酷でした。

6月19日、アキトさんユリカさんは新婚旅行に出発しました。

アキトさん達を乗せたシャトルは、大気圏脱出直前で爆発しました。

6月21日、アキトさん達の葬式が執り行われました。

でも、私は認めたくありません。

きっとどこかで生きているはずです、きっと……。

しばらくして、私はミナトさんに引き取られました。

プロスさんは、ミナトさんかユキナさんなら私の心の傷を癒せると思ったみたいです。

ミナトさんは、あの戦いで最愛の人を失っていまして、ユキナさんは、

唯一の肉親をうしなっています。

あ、そうそう。

ミナトさんとユキナさんが失った人は同一人物で、名前を《白鳥九十九》といいます。

だからでしょうか、ミナトさんはあっさりOKをだしました。

ですが、私の気持ちは晴れませんでした。

彼と出会うまでは……。

 

 

〜ヒイロ・サイド(AC196/6〜AC196/7)〜

 

俺は、最近裏の情報を調べている。

表立っては活動してないが、平和を壊そうとしている連中がかなりいる。

バートン財団・クリムゾングループ・木星連合草壁派、大きいところだけで三つ。

小さな組織を含むとその数はかなり多くなる。

ネルガル重工は今現在それほど問題は無いようだ。

プリベンターや宇宙軍の依頼で輸送船の名目で戦艦なんかを作ってはいるが……。

プリベンターや宇宙軍はそれなりの信頼の置ける人物が指揮を取っているため問題はないが、

統合軍は政府と犬猿の仲でたびたび問題を起こしている。

だが、表向きはおおむね平和だ。

ある日、俺は喫茶店で昼食をとっていたとき、シャトル事故のニュースがテレビで流れていた。

今現在で、シャトルが脱出する直前では事故の確率はかなり低い。

シャトル事故がもっとも多いのは、大気圏に突入するときの角度ミスである。

そして、その事故を起こしたシャトルはカトルが所有する企業が作ったものだ。

俺は、この事件の裏に何かあると思い調べてみた。

シャトルの飛び立った空港から情報をハッキングして乗客名簿を手に入れた。

乗客名簿のほとんどは、というより草壁派の数人以外は全員《A級ジャンパー》だった。

A級ジャンパー……《チューリップ・クリスタル(略してCC)》を身につければボソンジャンプが可能な人間。

俺は、疑問に思った。

なぜ、数少ないA級ジャンパーがこんなに固まっているのか。

偶然にしてはできすぎている。

だが、そんな疑問もすぐに解決した。

あの空港自体、クリムゾングループの一部だった。

先の戦争でも、クリムゾンは木連とつながっていた。

それも、上層部つまり草壁と……。

A級ジャンパーが固まったのは偶然ではなく、操作されていたということ。

つまり、草壁派によるA級ジャンパーの誘拐……どうやら、この事件の真相である。

プリベンターもこの情報は手に入れていたが遅すぎたようだ。

俺は、カトルに連絡した。

『やあ、ヒイロ久しぶり。』

「ああ、久しぶりだな。ところで、シャトル事故についてはどこまでわかったか?」

『うん、整備不良、点検ミスのどちらでもないことぐらいですか。

実際、今資料の整理をしてもらってますので。』

「そうか、忙しそうだな。」

『ええ、とっても。でも、ヒイロから連絡をくれるということは、何かわかったのですか。』

「ああ、この事件は仕組まれていた。」

『え、仕組まれていたとはどういうことです。』

俺は、かいつまんで俺が手に入れた情報と、俺の予想をカトルに話した。

『そうですか。その線はかたいですね。ところで、ヒイロはこれからどうされるのです。』

「何もしない、というより何もできないといったところだな。

しばらくは、地球で平和を満喫しているさ。」

『そうですね。じゃ、また何かあったら連絡をください。』

「ああ、またな。」

そして、俺は通信を切った。

あきらかに、大きなことが動き出している。

だが、今の俺達では動くことは出来なかった。

あまりにも、情報が不足していた。

俺は、遠くない未来でまた兵士に戻る時がくることを実感していた。

だから、俺は今この平和を満喫していたいと思っている。

そして、俺は彼女と出会う。

 

 

〜AC196/8 極東地区:オオイソシティー〜

ホシノ・ルリは一人で海岸を歩いていた。

その瞳に悲しみを秘めたまま……。

初めて家族というものを手に入れた少女は、数ヶ月足らずで失ってしまったことに心に傷を負ってしまった。

何か目的があるわけでもなく、海岸をさまよっていた。

彼女は、遺伝子操作によって生まれた存在であり

《ヒューマン・インターフェース・プロジェクトAAA被験者》である。

実際、彼女はいろいろな組織から狙われていた。

そう、実験体(モルモット)として……。

今まで、彼女が無事なのはネルガルのシークレット・サービスや

元木連軍人《高杉三郎太》が護衛をしていたからである。

もっとも、ルリは気づいてはいたが……。

そんな中、ルリは見知らぬ黒ずくめの連中に囲まれてた。

「ホシノ・ルリだな。我々と一緒にきてもらおう。素直に聞けばそれでよし。

聞かなければ痛い目に……。」

いかにも、悪党らしい台詞をはいている途中で三郎太は動いた。

「ルリちゃん、こっちだ。早く。」

三郎太の掛け声でルリは走り出す。

黒ずくめの連中は銃を取り出してルリを狙おうとしていた。

だが、それはネルガルのSS達に阻止された。

いつもなら、これだけで終わっていた。

が、この日だけは違っていた。

そう、ルリをさらおうとした連中は彼らだけはなかった。

今ルリは、SSの一人と一緒に逃げている。

本来は、その役目は三郎太がしているのだが……今、彼らは苦戦している。

そして、人影がなくなったところで走るのをやめた。

「大丈夫か。」

「はい、なんとか。」

とか、会話をしていたが……。

いつのまにか、別のグループに囲まれていた。

「探したぞ、ホシノ・ルリ。金色の瞳を持つものよ。さあ我々と一緒にきてもらおう。

我々の主デキム様のもとに。」

「お断りします。」

SSは、銃を発砲し二、三人を倒す。

「外野は引っ込んでいな。」

と言う台詞が言い終わらないうちに、SSに向かって発砲した。

たおれるSS。

かけよるルリ。

「早く逃げろ。」

といいながら立ち上がるSS。

それでも、ルリに傷一つつけさせないのはさすがである。

そして、傷ついた体で十人ほどたおしている。

だが、明らかに敵の数は多かった。

黒ずくめの連中はルリ近寄ってきた。

そのとき、一台の車が猛スピードで走ってきた。

そのドライバーは、運転しながら銃を発砲し黒ずくめの連中をたおしていく。

結局、生き残った連中は一目散に逃げていく。

その後、ルリ達の前で車を止めドライバーが降りてくる。

「ありがとうございます。」

ルリは、素直に礼を言った。

「気にするな、個人的にも因縁がある連中だからな。」

と彼は、ぶっきらぼうに言った。

彼自身は気づいていないだろうが、頬がうす赤くそまっている。

ルリは、命がけで守ってくれたSSのそばに行く。

だが、SSはすでに生き絶えていた。

ルリは涙を流していた。

「なぜ、私のために……。私なんて生きている価値なんて無いのに……。」

その言葉を聞いた彼は、一年前の自分を思い出していた。

(昔の俺と同じ境遇か。生きる希望を無くし死を求めていたあのときの俺に。)

彼は、ルリ肩に手を乗せ声をかけた。

「悲しむのは個人の自由だが、そいつの意思を無駄にはするな。」

「え、はい。」

「車に乗れ、家まで送ろう。ぐずぐずしているとさっきの仲間がくる可能性がある。」

ルリは、彼の言葉に従った。

初めて会った人なのに、ルリはなぜか不信感をいだかなかった。

車に乗った二人はそのまま海岸沿いを走っていく。

しばらくして、ルリは彼に尋ねた。

「私はホシノ・ルリと言います。あなたは、名前はなんというんです。」

まさか、この時ルリは思っても見なかっただろう。

彼が自分自身が興味を持った人物だとは。

彼は、いった。

「ヒイロ・ユイ」

 

 

 

堕天使と妖精の物語はここから始まる。

 

 


 

〈後書〉

TOM-X    :「どうも、ご無沙汰しております。TOM−Xです。」

ルリ      :「ホシノ・ルリです。」

ヒイロ     :「ヒイロ・ユイだ。」

ルリ      :「今回って回想が中心でしたね。」

ヒイロ     :「ああ、そのとうりだな。まあ、前回と違ってかなり活躍してたな俺達。」

ルリ      :「そうですね。それも独壇場でしたね。」

TOM-X    :「満足してくれたか。」

ルリ      :「今回はですよ、今回は。」

ヒイロ     :「ああ、ただでさえ無口な俺達だからな。」

TOM-X    :「出来るだけ、善処するよ。」

ルリ      :「じゃ、早速質問に行きますか。」

ヒイロ     :「まず、なぜアカツキ達だけ連行されたんだ。」

TOM-X    :「ああ、あれはネルガルが非人道的なことをやってたことを 聴取するためだな。」

ルリ      :「でも、そのことはかなりもみ消していたはずでは?」

TOM-X    :「連合が潰れたせいで、ぶり返ってきたんだよ。

          ただでさえ、賄賂とかで一掃されているからな。」

ヒイロ     :「なるほどな。だが、すぐに解放された理由は。」

TOM-X    :「それは、実際に悪事を働いていたのは前会長だからと、

           コウイチロウの助力によるところ。」

ルリ      :「そうゆうことですか。

          では、第二になぜL4コロニーにしたんですか。

          他のコロニーでもよかったのでは。」

TOM-X    :「L4コロニーにしたのは、あそこのコロニーのほとんどが

          ウィナー家の所有物だからというのが一つ。」

ヒイロ     :「それは、本編で述べているな。」

TOM-X    :「ああ、そしてもう一つが、アキトとカトルをあわせたかったからだ。」

ルリ      :「アキトさんにですか。その理由は。」

TOM-X    :「それは秘密。ただ、”ルリの世界のアキト”よりは酷いあつかいはしないよ。」

ルリ      :「そうですか。酷いあつかいをしたらわかってますよね。(冷笑)」

TOM-X    :「だが、この時点で草壁派による生体実験はされているが。」

ヒイロ     :「すでに、酷い扱いされているぞ。ルリ、いいのか?」

ルリ      :「それは、次回の時点で考えておきます。ふふふ(冷笑)」

TOM-X    :「ああ、それ以上はやらん。(おっかねぇー)」

ルリ      :「次行きましょう。」

ヒイロ     :「そうだな。では、ルリを誰が引き取るかの過程についてだな。」

ルリ      :「なぜ、あの時点で、ウリバタケさん、イネスさん、イズミさんをはずしたんですか。」

TOM-X    :「じゃあ、ルリは彼らと住みたかったか。

          スケベ親父に、マッドに、寒い駄洒落のネーさんに。」

ルリ      :「それは……住みたくないです。(冷汗)

          はずしてくれてありがとうございます。」

TOM-X    :「実際には、ミナトかユリカのどちらかだったんだけどな。」

ヒイロ     :「結局、”ルリの世界”と同じにしたわけだ。」

TOM-X    :「ああ。」

ルリ      :「では、アキトさんの家のことですけど。

          ”私の世界”に比べて豪華ですね、四畳半ですけど。」

TOM-X    :「それは、上でも言ったように連合の崩壊が関係しているんだな。」

ヒイロ     :「確か、”ルリの世界”のアキトは給料と慰謝両等の差し引きで一門無しだったな。」

TOM-X    :「そのとうり。

           だが、本編では払う必要が無いのでかなりの額を貯金しているよ彼は。」

ルリ      :「じゃあ、なぜ四畳半なんですか。1LDKでも住めるはずですよね。」

TOM-X    :「ああ、住めるよ。

          実際ユリカと結婚したらそこから引っ越す予定だったという設定だからな。」

ヒイロ     :「それまでは、無駄遣いしたくないということか。」

ルリ      :「なるほど、それで私達がおしかけてきたとき、愚痴をはいたんですね。」

TOM-X    :「実際は、狭い部屋で住んだことになっている。」

ヒイロ     :「シャトル事故のシャトルことだが、

          なぜカトルの所有している会社が製造したことにしたんだ。」

TOM-X    :「『シャトル事故の確率が最も低くて、乗客から絶対の信頼がある』

          という設定にしたからだ。」

ルリ      :「事故に不信感を持たせるためですね。」

TOM-X    :「そういうこと。それにカトルに設定しとけば、ヒイロが使いやすいからな。」

ヒイロ     :「確かに、知らない所だと俺は興味持たないからな。」

ルリ      :「で、ヒイロさんがハッキングで事故の真実を知ったわけですね。」

TOM-X    :「そういうことだ。他になにかないか。」

ヒイロ     :「今回は、もう無いな。」

ルリ      :「私も無いです。」

TOM-X    :「最後に、これを読んでくれた人ありがとう。」

ヒイロ     :「次回を待っている人は、いないと思うぞ。」

ルリ      :「その前に、これを読む人いるのですか?」

TOM-X    :「……(フリーズ)」

ルリ      :「固まりましたね、作者。」

ヒイロ     :「ああ、固まったな。ほっとくか。」

ルリ      :「ええ、では」

ヒイロ&ルリ :「次回をお楽しみに。」