ミリア、メティ、ナオ、シュンサイド


「お姉ちゃん!!」


「メティ!!」


 西欧方面基地に着いた私は久しぶりにお姉ちゃんと再会する。


 私を見て私を抱いてくれるお姉ちゃん。


「お姉ちゃん、もう傷はいいの?」


「ええ、もうすっかり良いわ。」


「一人で寂しくなかった?」


「ふふふ、貴方にそのセリフを言われるとは思わなかったわ。

 そうね・・・寂しくなかった、と言えば嘘になるわ。

 でも、ここには帰ってくる人がいる、

 必ず帰ってきてくれる人がいるから、

 だから大丈夫よ。」


「お姉ちゃん・・・」


 私達は暫し無言で抱き合う。


「・・・そう言えば、あの人は?

 一緒に来るんじゃなかったの?」


「ナオさんなら・・・」


 私はお姉ちゃんから少し離れ、

 いままで家族の再会を邪魔しないように隠れていたナオさんに合図を送る。

 そして


 バサッ!!バサッ!!ヒュゥゥゥゥン!!


 上空にペガサスが現れ、ここに向かって突っ込んでくる。


 バサッ!!バシ!! 
 

「え?きゃっ!!」


 そしてお姉ちゃんを攫って飛んでいってしまう。


 ペガサスが見えなくなると


「ふぅ・・・ヤガミ君も随分凝った事するな。」


 私の後ろからシュンさんが現れる。


「まったくです。

 その為にわざわざナオさん専用のを作ったんですよ。」


 さっきのはナオさん専用機『レックス』、カラーはアキトお兄ちゃんの

 『ファルコン』同様白。

 因みにサブロウタさん専用機『ブラックジャック』のカラーは漆黒。

 本当は『ブラックジャック』がアキトお兄ちゃん専用になる予定だったんだけど、

 ルリちゃんの説得により、白馬の方がアキトお兄ちゃん専用になった。


「はっはっは、まあ、彼もなかなか思いの人と会えないからね。

 ところで良いのかい?君とミリアさんの時間をもう少し取ろうか?」


「構いません。

 ここに予定以上留まる訳にはいきませんし。」


「そうか?しかしヤガミ君もなにも攫っていく事はないと思うが・・・」


「それも良いんです。

 お姉ちゃんは今まで私のせいでロクな恋愛ができませんでした、

 まあ、そのおかげでナオさんに出会えた訳ですが・・・

 でも、これ以上私の為にお姉ちゃん自身の幸せの時間を取りたくありませんから。」


「君は良いのかい?それで。」


「はい、私にはちゃんと大切な人がいますから。」


 私はシュンさんと向かい合う。


「・・・家の娘のライバルは強者ばかりだな。」


「強くならないとあの人には付いていけませんから。

 では私達はこちらでの仕事をやってしまいましょう。」


「そうだな、それでは護衛を頼むよ。」


「ええ、では行きましょう。」


 私とシュンさんは西欧方面軍の本部に向かった。

 
 そして此方での仕事は何事も無く終わった。


 因みにお姉ちゃんとナオさんが戻ってきたのは出発ギリギリだった。


 ナオさん・・・ちゃんと仕事もしてね。

 

 

 カイト、シキサイド


 ピースランドに着いて、

 まあ、あのルリとアキトの登場にはかなり騒ぎが起きたが、

 おおむね予定通り事が運んでいる。

 今はプロス達が交渉をしているところだ。

 護衛の任務もアキトとルリには必要無いし、

 プロス達の交渉にもアキトとルリが立ち合っているから心配無し。

 暇になった俺はアキト達の仕事が済むまで散歩する事にした。


「お、カイト、あれなんかお前に似合いそうだぞ。」


 ピースランドの街を歩いているのだが


「カイト、そろそろ昼食にしないか?」


 何故か俺にオマケが付いてくる。


「・・・なあシキ。」


「ん?なんだ?俺はあの店なんかちょうど良いと思うけど。」


「飯の事はいいんだが。

 なんで俺に付いて来るんだ?」


「ん?いいじゃなか、俺も暇なんだし。

 一人で歩くよりかは良いだろ?」


「俺は散歩に来ただけだぞ。

 大体俺なんかに付いてきても良い事無いだろ?」


「何を言う、美女に付いて歩くと言うだけで意味はあるぞ。」


「はぁ・・・言っとくが、

 俺は死ぬまでアキトに付いていくつもりだ、アキトが俺を必要としなくなるまでな。

 前にも言ったと思うが?それでも俺に付いて来るのか?」


「まあ、それでも美女の隣を歩くのは意味のある事だが・・・

 まあ、今はそれは置いといて。

 俺も解ってるよ、ナデシコでお前達を見てて、お前達の絆の深さは解ってる。

 アキトがお前を必要としなくなる事は無いだろう、つまりお前はアキトに一生付いて行くわけだ。」


「解ってるんだろ?

 だったら俺なんかに付いて回るより、他の女でも追いかけていた方が良いと思うが?」


「解ってるけどよ、なんつ〜かな・・・

 最初はお前とアキトの仲をどうにかして裂いてでも、って思ってたんだが、

 どうもそれは無理らしい。

 だからさ、今みたいにアキトがいない時くらいお前の隣を歩いても良いだろ?

 別にお前とアキトの邪魔をしなければさ。

 やっぱり俺はお前にしんそこ惚れちまったみたいだからさ。」


 ちょっと苦笑して頭を掻きながら、俺にそう言うシキ。


「勝手にしろ。」


 俺は対処の仕方が解らず、とりあえずそっけなくそう言った。


「そうさせてもらうぜ。

 さっそくだが、あの店で昼食でも取らないか?」


 何時もの調子に戻るシキ。


「そうだな、そうするか。」


 俺とシキはその後も、ルリに呼び出されるまで街を歩いた。


 
 因みにルリの用件はドレス選びだった。

 

 

 

 その頃、ナデシコバーチャルルーム

 ヤマダサイド


 ズドォォォォォン!!


 プシュ!!


 シミュレーションの俺の機体は爆発し、

 俺は死亡したことになり、シミュレーターの外に出る。


「まだだ!!できるはずだ!!」


『ん〜理論上は可能だけど。』


 もう一度シミュレーターに入ろうとした俺の前にディアが現れる。


『少し休んだらどうです?

 他の皆さんは休まれているんですよ。』

 
 さらにブロスも現れる。


 因みに俺は今、他のパイロット達との訓練を終えた後

 一人で特訓をしている。


「体力には自信があるんだよ。

 すまんがもう少しつきあってくれ。」


『それは良いけど。

 どうせならガイアと合体したら?

 そうすればできると思うよ。』


『そうですよ、ガイアの補助が付けば成功しますよ。』


「いや、それではダメだ。

 いざって時、常にガイアが合体できるとは限らない。

 だから俺一人でできなくれはならないんだ。」


『それはそうですけど・・・

 解りました、では行きますよ。』


「おう、頼むぜ!!」


 プシュッ!!


 そして俺の特訓は皆が戻ってくるまで続いた。





 ナデシコ休憩室

 アカツキサイド


「さすがに疲れたよ。」


 ドサッ!!


 僕は椅子に倒れる様に座る。


 今、エステのシュミューレートによる訓練を終えたところだ。


「お疲れ様です。

 はい、どうぞ。」

 
 そう言って僕にコーヒーを手渡してくれるアキラ君。


「これはどうも。」


 他の皆にもラピス君と二人で飲みのもを配っていく。


 プシュ!!


「やあヒカル君、ヤマダ君は?」


 僕は入って来たヒカル君に一人バーチャルルームに残ったヤマダ君のことを尋ねる。


「ヤマダ君はもう少し一人で練習するって。」


「そうか、彼もがんばるねぇ。」


『一人と言ってもディアとブロスが一緒だけど。』


 と初期のカイト君を思わせる感情の無い口調のリリス君。

 カイト君は最初は殆ど感情が現さなかったけど、最近はよく・・・

 まあそれでも少ないけど、表情を見せるようになった。


『何やら必殺技の特訓をしているようですね。』


 これはクオン君。

 今はメイド服だ。

 でもなんで見た目8歳の女の子にメイド服なんだ?

 プログラムは全てメティ君がやってるのに・・・

 しかも働いているのはアキラ君とラピス君だし。

 まあ物が持てないんじゃあ仕方ないか。

 某ユニバースみたいに物を持てたら便利なのに・・・


『それにしてもヤマダ様もよく体力が持ちますね、

 他の皆様も限界近くまで訓練されていますのに。』


 とフィリア君。

 僕達はさっきまで彼女達に相手をしてもらっていた。

 因みに8対3なのに負けた。

 惜しい所までは行ったと思うんだけどねぇ・・・

 でもテンカワ君との対戦みたいに手も足も出なかった訳じゃない。

 まあ、今ではテンカワ君とだって8対1なら勝てる見込みはあるけど。


「それにしても、さっきまで俺達を相手してたのは

 ルリとカイトとメティの戦闘データもとにしたんだろ?

 あいつ等、本当にあんなに強いのか?」


『ええ、勿論です。

 なんたって私達のマスターですから。

 あれでもマスター達の動きを完璧には再現できてないんですよ。』


「あれでですか?

 では本来なら私達は惨敗していたんですね。」


『でも私の攻撃を受けられるとは思わなかった。』


 リリス君の『ハデス』はステルスと光化学迷彩を駆使して、

 完全といって良いほどにその姿を隠している。

 そしてこちらに近づき、DFサイズで攻撃。

 と言うパターンだった。

 あれは本当に見えないから、殺気を読むしかない。

 多分テンカワ君と訓練してなければ、全く抵抗できなかっただろう。


『そうですね、私も動きを捉えられるとは思いませんでしたし。』


 フィリア君の『エリヌース』は超高速移動で二刀のDFSによる攻撃。

 これもはっきり言って見えなかった。

 あれはルリ君本人の『神速』を再現しているそうだ。


『私もイージスの盾を使ってしまいましたし。』


 クオン君の『アテナ』は後方援護がメイン。

 レーダーに映らない小型のビット『ファミリア』で二人を援護する。

 もし接近できたとしても、あの踊るような剣技に切り裂かれる。

 しかも、赤雷らバルキリ―ランス、フェザースマッシャ―をも耐えるイージスの盾、

 しかも『アフロディテ』まであるから攻撃が当たってもダメージを与えられない。

 因みに回避も並じゃなく凄い。


『まあ、こっち一人あたり3人いれば互角かな。

 実際、あとそっちにもう一人いるとかなり勝つのが難しくなるし。』


 あと一人って言っても俺達と同等のパイロットがそういるわけ無いけど・・・

 と言うより、俺達以上のパイロットはもう地球にはいないだろう。

 多分、これは自惚れではない。


「なあ、カイトはともかく、ルリとメティはなんであんなに強いんだ?」


「白兵戦もそうです。

 あの二人・・・

 いえ、アキトさんカイト君、アキラちゃん、ラピスちゃんも一体どんな道を歩んできたの?」


 リョ―コ君とアリサ君の言葉に動きを止めるアキラ君とラピス君。


「・・・知らない方が幸せって事もあるんだよ、

 この世の中には・・・」


 ラピス君が呟く。


「・・・メティちゃんは、その知らない方が良い事を知った。

 だから普通の少女からあそこまで強くなれたんだよ。

 その代わりに多くのものを失っていますが・・・」


 アキラ君が俯いたままそう語る。


「・・・では私達もそれを知れば強くなれますか?」


 アヤ君が二人に問い掛ける。


「止めておいた方が良いよ。

 知ってしまった、もう普通の人生は歩めない。」


「メティちゃんが強くなれたのは、才能があったからこそです。」


 感情の無い声で答える二人。


「なら、あの人の闇を私達で照らす事はできますか?」


 アリサ君が真剣な表情で問い掛ける。


 しかし、アキラ君は表情を崩し、


「あら、てっきりその為に強さを求めているものと思っていましたが?」
 

 と笑いかける。


 ・・・ま、そんなかっこつけた言い方をするつもりはないが、似たようなものかな。

 僕は彼に出会って随分変わっただろう。

 昔の僕ならこんな事は考えなかった。

 そうだな・・・彼の魅力って言うのは男にも影響を及ぼすんだろう、きっと。

 いや、変な意味じゃなくて。


「では、皆さん、がんばって下さい。」


 プシュ!!


 部屋を出る二人。


「さ、皆、十分休んだし。

 訓練再会と行きましょうか。」


 そして僕達はバーチャルルームに向かう。


 少しでも彼に追いつく為に。

 

 

 サブロウタサイド


 俺はナデシコから脱出し、ここで舞歌様の迎えが来るのを待っている。

 しかし・・・

「お土産を抱えて脱出するってのもなぁ〜」


 俺の両手には地球と月のお土産袋が握られたりしている。


「まあ、それは良いとして、

 問題はこれか・・・」


 俺は服の内側に隠してある鎖とポケットの中の腕時計を取り出す。

 見た目は何の変哲も無い鎖と腕時計だが、

 実は『ブラックジャック』の呼び出し装置だったりする。

 
「舞歌様にはなんて説明するかな・・・」


 仮にも新兵器だし。

 因みにこの鎖は・・・


 ゴォォォォォォォォォ 
 

 一台の連絡船が現れ、


 シュゥゥゥゥゥゥ・・・


 俺の前に着陸する。

 
 ん、時間ピッタリ、流石木連軍人。

 
 そしてドアが開き・・・


「へぇ〜これはこれは。」


 俺は思わず呟いてしまった。


「高杉殿ですね?」


「はい、そうです。

 ですが、優華部隊の皆様おそろいで何かあったのですか?」


 俺は千沙ちゃんに質問する。


「新しく指令が下ったんです。

 はい、これが舞歌様からの命令書。」


 と飛厘ちゃんに指令書を手渡される。


 とりあえずその指令書に目を通す。


『北斗がある理由により失踪しました。

 手引きをした犯人には、こちらで目星を付けています・・・が、それは問題ではありません。

 多分、私の予想では北斗はテンカワ アキトの元に向かうでしょう。

 あの子を止めて下さい、まだ二人が出会うのは早過ぎます。

 そこで各務達、優華部隊を貴方の下に配属します。

 彼女達と協力をして、この任務を遂行して下さい。

 

 追記

 この命令に貴方の拒否権は認めません。

 また、作戦の失敗も絶対に認めません。

 頑張って下さいね(ハート)

                                    以上、舞歌より』



 ・・・・・・・・・・・・

 はっ!!

 今何か不吉な物を見たような気が。

 さあ、改めて指令書を見よう。


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・・・やっぱり変わらないか。


 はっきり言おう、無理


 北斗の白兵戦は見たこと無いけど、恐らくアキト並だろう。

 
 となると、俺はアキト相手でも相打ちすらできない。

 
 ミッション・インポッシブルだ。


 さて、『ブラックジャック』呼んでナデシコに帰るか。



「こら何をぼさっとしている、早く案内しろ。」


 と三姫に睨まれる。

 
 はぁ〜でもやるしかないのか。

 俺が逃げたらこの子達が犠牲になるだろうし。


 アキラ、もう一度お前の笑顔が見たかった・・・


「おい、何時まで呆けている気だ?」


「解ってます。

 じゃあ、とりあえず、皆さんの特技とかを教えてください。

 ピースランドへの侵入はこちらで何とかしますから。

 あの二人の接触を回避することを考えたいので。」


 とりあえず今の人材を有効に使って何とか乗り切る事を考えよう。


「では私から。

 名前は各務 千沙、雷神皇のパイロット兼、優華部隊の隊長をしています。

 特技は射撃と戦闘時の采配です。」


「はい、次どうぞ。」


「名前は御剣 万葉、風神皇のパイロットだ。

 体術と諜報活動が得意だな。」


「はいはい、次の方。」


「名前は神楽 三姫。

 炎神皇のパイロット、特技は木連式抜刀術と薙刀だ。」


「はい、次。」



「私の名前は空 飛厘よ。

 闇神皇のパイロットをしているわ。

 特技は陰行術と武器の開発、それと護身術ね。」



「はいはい。」



「はい、私の名前は百華です。

 竜神皇のパイロットをしてます。

 体術・・・と言うより格闘戦が得意です。

 後は、これと言った特技は有りません・・・すみません、です。」

 
「はいはい、ところで皆さんは同年齢ですか?」


 百華ちゃんを見て、ふと気になったこと聞いてみる。


「皆大体19歳前後です。

 それが何か?」


 千沙ちゃんが答えてくれた。


「いえ、ちょっと気になったもので。」


「次、私よろしいですか?」


「あ、はいはい。」


「えっと、天津 京子です、19歳です。

 氷神皇のパイロットをしてます。

 特技は爆発物の取り扱いと、重火器の制御・・・かな?」

 
「はい、どうも、次の方。」


「私の名前は紫苑 零夜、19歳です。

 光神皇のパイロットです。

 一番の特技は・・・料理と裁縫、かな?」


 なんでこの子だけ家庭的な特技なんだ?


「はい、では次の方・・・」


 っといけねぇ、優華部隊は6人だった・・・


「東 舞歌、20歳。

 シャクヤクの艦長で優華部隊の司令官。

 特技は格闘術と料理で〜す(ハート)。」


 ズガガガガガン!!


 俺はギャグキャラの如く盛大にこけた・・・



「なんで舞歌様がこんな所にいらっしゃるんですか!!」


 そしてあらん限りの声で叫んだ。


「ん〜、やっぱり心配だったから来ちゃった。」


 と笑顔の舞歌様。


「大体いらっしゃるのなら何故あんな指令書を?」


「せっかく書いたものだから、ねぇ。」


 ねぇ、っておい・・・


「はぁ〜・・・」


 俺が溜息をついた後ろで話し声が聞こえる。


「舞歌様が20歳?確実にそれ以上だったと記憶しているが?」


「そうだね、かなりさばよんでるね。」


「あの方もあの性格が無ければ完璧な司令官なのだが・・・」


「千沙ちゃん大変だね。」


「ホント、代わって欲しいわ。」


「それはイヤだけど。」


「舞歌様って料理できたの?」


 などなど・・・


 あ、舞歌様が青筋立ててる。

 俺は知らんぞ・・・


「とりあえず案内してくれるかしら?(怒)」


「はい。」


 とりあえず俺はピースランドに向かった。

 

 

 

波乱を含みつつ続く。