メティサイド


 私が東 舞歌の事を調べている時、それは起きた。


 ピッ!!


 私の前に一つのウィンドウが開く。

 そこには・・・


「え〜と・・・一番星コンテスト ルール変更のお知らせ?

 何?結局やるの?わざわざ変更したって事は優華部隊の人も参加できるようにしたのかな?」


 そして、私は内容を読み進めていく。


「変更点は参加資格が無制限になり、個人、グループでの重複参加も可能となります。

 ですが優勝はあくまで個人、つまり参加する回数は自分をアピールする回数と言う訳です。

 順位はナデシコクルーとAIズ、優華部隊のメンバー+α、特別ゲストの投票により決定されます。」


 ふむふむ・・・


「優勝商品はテンカワ アキトの生殺与奪権」


 これは変わってないな、でもそれだとナデシコ側が不利なんじゃ?


「か」


 か?


「東 舞歌 及び 北斗 の生殺与奪権の選択・・・って

 舞歌と北斗の命?!

 何を考えてるの!?」


 自分の命をかけて世界の覇権を狙うつもり?

 それとも唯お兄ちゃんに落ちただけか・・・


 更にその下には『なお、これは舞歌殿の意思による変更です。』と書かれている。

 それを承諾したプロスさんもプロスさんだ。

 これって下手したら木連に世界を渡すような物だし・・・


 はぁ〜ますます解らないよ、舞歌の性格が。

 

 そして、次の日


 私は稽古中にサブロウタ君に呼ばれ、現在ナデシコの艦内を歩いている。


「ねえ、サブロウタ君、何処に行くの?

 私は自分の稽古と北斗と枝織の稽古で忙しいんだけど。」


 昨日、艦内を案内されている時・・・


『あら、この張り紙は何ですか?」


 私は廊下に満遍なく張られている張り紙を見る。


『ああ、それですか?

 3日後に行われる筈だった、一番星コンテストの張り紙ですよ。』


 なんか妙に嬉しそうなテンカワ アキトが説明してくれた。


 私は張り紙の内容に目を通す。

 
 ・・・なるほど〜


『このコンテスト、私達も出場しても良いですか?』


『え?それは流石に・・・』


『流石にこのままでは出場は許可しかねます。』


 突然私とテンカワ アキトの間に現れるプロスペクターさん。

 今、絶対気配が無かったわよ!!

 テンカワ アキトと枝織も驚いている。

 と言う事は二人にも気配を感じ取れなかった事になる。

 何者?プロスペクタ―・・・


『優華部隊の方々に出場される場合、この商品の価値をもっと下げなくてわなりません。

 そうすると、参加する人はいなくなります。

 だから、このコンテストは中止になったのです。

 優華部隊の皆さんを無視してコンテストを行う事も出来ませんからね。』


 と驚いている私に説明をするプロスペクタ―さん。


『せめて優華部隊の皆さんから、この商品に相当する物を

 提示していただければ、コンテストを行えるのですが・・・』


 そう付け加えるプロスペクタ―さん。


 ふ〜んそおねぇ・・・


『地球側の英雄、テンカワ アキトに相当する物ね。

 それでは、私,だけでは不足だから、北斗の生殺与奪権を掛けるわ。』


『ええええええ!!!!!』 


 その場にいる、私以外が驚愕の声を上げる。

 プロスぺクターさん以外。

 
『確かに聞きましたよ。』


 そう言って何処かに行ってしまうプロスぺクターさん。


『ちょっと、舞歌さん、なんて事を!!

 早くプロスさんを止めないと!!』


『舞歌様、なんて事を仰るのです!!』


『そうですよ、ご自分の立場を考えてください!!』


 私に詰め寄る皆。


『あら、あの英雄テンカワ アキトが命を張ってるのよ。

 そのコンテストを私達のせいで中止にするなんて、失礼でしょ?』


『そう言う問題では・・・』


『舞歌!!どう言う事だ!!』


 まだ反論してこようとしていた皆を押し退けて、北斗が私に掴みかかる。

 枝織を押し退けたのね。


『あら、北斗、貴方はテンカワ アキトとの決着が付けたいんでしょ?

 いい、舞台じゃない。』


『なんだと!!こんなコンテストで俺達の戦いの決着をつけろと言うのか?

 バカバカしい!!』


『こんな、とはなんです。

 これも命を掛けた真剣勝負よ。

 それとも北斗はテンカワ アキトととの真剣勝負から逃げ出すの?』


『俺が逃げるだと?

 笑わせるな!!良いだろう、この勝負、受けてやる!!』


 と言う事があって、現在北斗と更に枝織も猛特訓中。

 勿論優華部隊の子達も必死に稽古をしているわ。

 ああ、コンテストが楽しみだわ。


 まあ、優勝者は決まってるし、その優勝者も何を選ぶか、

 北斗みたいに分かり合ってるわけではないけど、解るわ。 

 だからこそ、あんな事言ったんだけどね。

 あ、勿論負ける気も無いけど。


 それにしても、珍しく真面目な顔のサブロウタ君。

 
「大事な話しがあるんです。

 世界の命運を掛けたと言っても良いくらいの。」


「ナデシコの艦長とならもう話しはしたわよ?」


「・・・地球側の英雄ですよ、待っているのは。」


 プリンス オブ ダークネス テンカワ アキトか・・・

 
「でもユリカさんとの話し合いの時、彼も一緒にいたけど?」


 そう、昨日の会議にもちゃんと彼は立ち合っていたし、意見も交わした。


「・・・ちょっと、特殊なんですよ、メンバーが。」


「特殊なメンバー?

 それならなんで貴方が私を呼びに来たの?

 ・・・貴方、まさか・・・」


「ええ、木連から見ればスパイの様な物でしょうね。」


 そんな事を平然と口にするサブロウタ。

 まさか、本当にナデシコと繋がっていたの?


「ここです。」


 プシュ!!


「なに?真っ暗じゃない。」


 私はサブロウタ君に連れられ、真っ暗な部屋に入る。


 プシュ!!

 
「!!」


 入って来た扉が閉り、部屋は完全に暗闇に包まれる。


「サブロウタ君、ホントにここであってるの?」


「ええ、あってますよ。」


 突然、私の前に姿を現すテンカワ アキト。


「ビックリさせないでよ。」


「すみません。」


 素直に頭を下げるテンカワ アキト。

 謝るならこんな変な演出しないでよ。


「ところで、本当に信用して良いのですか?

 東 舞歌という人物を。」


 今度はオペレーターの少女、確かホシノ ルリだっけ?が姿を現す。


「昨日調べた程度ではやっぱり、それを判断することは出来ないよ。」


 今度はテンカワ メティ。

 それにしても、この艦にはテンカワの姓を持つ者が5人もいるのよね。

 たしか二人はテンカワ アキトの兄弟、もう二人はテンカワ アキトの養子だったわね。

 それにしてもなんで独身のはずなのに養子が取れたんだろう?


「そうですね、それに私が軍に所属していた時、

 東 舞歌なんて人聞いたことありませんよ。」


 更にテンカワ アキラ。

 軍に所属していた時?どう見ても10歳前後の女の子が軍に所属していた過去を持つの?

 
「私も、聞いたことが無い。」


 ラピス ラズリ テンカワ。

 普通、私達の名前を知っているほうが変だと思うけど?


「俺もだ。」


 テンカワ カイト。

 それにしても、テンカワ カイトって子、どうも会った事があるような気がしてしかたないんだけど・・・


「それに着いては、舞歌殿が終戦後,すぐに事故死されていたからです。

 それと、舞歌殿の人間性につきましては俺の全責任を掛けて保証します。

 恐らく、木連にはこれ以上の人材はいません。」


 サブロウタがそう皆に説明する。

 終戦後?私が事故死?何を言っているの?


「そうか、本来ならさほど目立つ事の無かった人物だ、

 あの混乱期に事故死なら、そう大きくは報道されないだろう。

 更にそのあと名を残す事も無かった、と言う事だな。」


 本来?


「そうですね、でも事故死と言うのは恐らく偽装でしょう。」


「ああ、本来,表に出る事が無かった北斗、それに北辰が関係しているのだろう。」


 さっきから何を話しているのだろう?

 私にはサッパリ理解できない。


「・・・解るように説明してもらいたいんだけど?」


 私はたまらず、そう言い放った。


「ああ、すみません。

 ちゃんとこれから説明しますよ。

 ルリ、ラピス準備は良いか?」


「はい、完了しています。」


「いつでもいいよ。」


「では舞歌さん、この椅子にお座りください。

 あ、あと、これを。」
 

 私はテンカワ アキラが指した椅子に腰掛ける。

 そして何やら円柱形の物を差し出す。

「それは何?」


「これから始まる事にどうしても必要な物です。

 毒性はありません。

 これは私達を信じてくださいとしか言い様がありませんが。」


「いいわ、サブロウタ君の仲間なんでしょう?

 彼の事は大体解ってるつもりだから、貴方達も信じるわ。」


「ありがとうございます。」


 そういって、私にそれを打ち込む。


「大丈夫なの?」


 テンカワ アキトが他のメンバーに聞いている。

 何を打たれたの?

 
「ええ、昨日サブロウタとアキラで実験しましたから。

 流石に何度も打って良い物ではありませんが。」


 そして、私が身体に少し違和感を感じた頃

 
「これから何が始まるの?」


 私の周りを取り囲む様に7人が立つ。

 はっきり言って異様な光景だ。


「これからお見せするのは俺達の記憶。」


 テンカワ アキトはそう切り出した。


「北斗に続き、七星の出現。

 最早、和平を成立させるには木連の協力が必要なのです。」


 もう、協力はしてるけど、足りないの?


「はい、もっと裏まで協力が必要なのです。」


 私の心を読んだ様に答えるテンカワ アキト。


「その為に知っていただく必要があります、真実を。」


 7人の身体が、IFSが光だし、身体中に紋様が浮かび上がる。


 そそて、私に映像が流れ込んでくる。



 流れ込んでくる二つの風景。

 一つは、あの漆黒の戦神らしい、隠しているけど、片鱗が見える行動と言動。

 もう一つはあの戦神とは到底思えないほどの素人のような戦闘を行動。


「・・・これは一体何なの?」


 映像が一旦途切れたところで私は疑問を口にする。


「最初のが今現在の歴史で俺が行った事。

 そして、もう一つは、この世界が本来歩むべきっだった道です。

 続けますよ。」


 また、私に映像が流れ込んでくる。


 地球脱出、宇宙での戦闘、火星へ突入、チューリップでのボソンジャンプ、

 ナナフシとの戦闘・・・

 どれも極端な差がある。

 一つはテンカワ アキトの戦闘力と行動力、一つは全てを先読みしたかの行動をする。

 でももうひとつは・・・とてもあのテンカワ アキトとは思えない。

 そして、もう一つの違い、それはカイトの存在・・・


 
「どう言う事のなの?これは・・・」


「・・・ボソンジャンプについて貴方はどの程度知っていますか?」


「え?・・・確か学説では空間ではなく時間を飛ぶものだと・・・

 !!まさか・・・」


「続けます。」


 流れ込んでくる映像にハッキリとした差が出来た。

 それは西欧方面基地への移動だ、もう一つの映像には西欧方面に行く気配すらない。

 そして、片方では平和・・・とは言えないけど、もう一つよりかはましな旅が続いている。

 北辰の登場も無く、激戦も無く、どんどん差は広がるばかりだ。

 そして。ピースランド。

 テンカワ アキトと北斗の戦闘。

 一つの映像はここで途絶える。


「そして、今に至ります。

 ここからは本来の姿のみになります。」


 宇宙で行われる一番星コンテスト。

 そして、和平の使者としてナデシコへ訪れる九十九君。

 和平の席、草壁のめちゃくちゃな要求、そして・・・


「そんな!!九十九君が元一郎君に暗殺される!!」


 まだ続く映像

 その九十九君の死を餌に木連を戦争ムードに狩りたてる草壁。


「今のは俺の記憶です。」


 とサブロウタ君。


「こんな事が本当に?」


「ええ、かなり歴史は変わってしまいましたが、恐らくこの部分は・・・」


 前々から草壁には疑念を抱いていたけどこんな事まで・・・


「これがこの戦争の真実です。

 御分かり頂けましたか?」


「・・・いえ、まだ貴方達の事が解っていないわ。」


「そうですか・・・ここからは完全に私達の記憶,思いでになります。」


 また流れ込む映像。


 和平が成立し平和に暮らす家族。

 テンカワ アキトとミスマル ユリカの結婚式。

 そこで、シャトルの爆破、北辰の嘲笑。

 テンカワ アキトをテンカワ ユリカに施される異常な人体実験。


「く、ヤマサキ、北辰、外道だとは思っていたけどここまでとは!!」


 二人の修行期、その頃のアキラとサブロウタの出会い

 最後に、結局助けられなかった、愛しい人・・・


 そして・・・ランダムジャンプ。


「これで御分かり頂けましたか?」


「ええ、この戦争がどれだけ愚かな事かもね。」


「ありがとうございます。」


「一つ良い?カイト君の事だけど。」


 私がそう言うと、カイト君は私の前に来て髪を下ろす・・・


 !!そうんな・・・


「俺からももう一つ伝えておこう。」


 カイト君がそう言うと、またピースランドの映像が流れてくる。

 そこで行われているのはカイト君の戦闘。

 相手は・・・!!


「そんな・・・こんな事って・・・」


 ヤマサキ、奴は次にあったときに刺し違えてでも葬っておく必要がありそうね!!


「だからこそ、貴方にこれを見せました。

 北斗の信頼を得ている,貴方に。」


「・・・解った、協力は惜しまないわ。

 元々惜しむつもりは無かったけど、尚更ね!!」


「ありがとうございます。

 これからは協力して、全てを終わらせましょう。」


 私はテンカワ アキトを手を交わす。


「ええ。

 それと、ちょっと頼みたい事があるんだけど。」


 ・・・


「・・・解りました、後でまた私の部屋に来てください。」


 私の要求は通った。


「それでは今はこの平和なひとときを楽しみましょう。」


「そうですね、今は、この時間を楽しみましょう。」


 そして、私は何事もなかった様に稽古に戻る。


 しかし、新たな決意を内に秘めて。

 

 

 一番星コンテスト当日、メティ視点
 
  
「さあ、始まりました一番星コンテスト。

 司会はこのアカツキ ナガレが担当いたします。」
  

 司会席に座り、マイクを取るアカツキさん。


「進行は私、プロスペクタ―が勤めさせていただきます。

 ではここに、一番星コンテストの開会を宣言します。」

 
『オオオオオオオオ!!!!』


 熱狂に包まれる艦内。

 ついに一番星コンテストが開催された。

 でもプロスさん、なんで金ラメのスーツを着てるんだろう?

 ま、いっか。

 それにしても皆凄い気を感じるよ・・・


 え?私は良いのかって?

 私はあの舞歌さんとの話し合いの後、舞歌さんになんで自分を掛けたのか聞いたんだ。

 それで、落ちついて考えてみれば解ることを気付かせてもらったの。

 他の人は商品に目が行ってるから絶対に気付かないけど、私も気付けなかったし。

 それがプロスさんの狙いだったのかもしれない。

 
 だから、他の人よりかは落ちついてるの。

 まあ、私も出るし、負けないつもりだけどね。


「それではゲスト審査員を紹介します。

 一人は・・・」


 アカツキさんの声にスポットライトが暗かった一点を指す。

 そこには・・・


「西欧方面からの特別ゲスト、ミリア テアさんです!!」


「どうも、はじめまして、メティの姉にして、ヤガミさんのフィアンセ(ポッ)

 ミリア テアです。」


 ズデデデェェェェェン!!
 
 
 な、何故御姉ちゃんがここに・・・
 
 思わずこけてしまった、私はギャグキャラじゃないのに・・・


 因みに今の自己紹介でナオさんに男性陣の殺気がいっきに集中した。

 ナオさんは浮かれてるし・・・


「そして、更に通信での参加ですが。」


 え?まだいるの?


「西欧方面軍の野郎の皆さんです!!」


 ええええ!!


『オオオオオオオオ!!!!』 

 
 突然会場に大きなウィンドウが開く。

 そこには恐らく、格納庫だろう特設会場に集まった多数の男性が・・・


 
 そして、波瀾の一番星コンテストは始まった。

 

 

続く