10分後・・・

 

 

 とある部屋に集まるT−LINKのメンバー。

 どこから用意したのか、円卓に座って神妙な顔をしている。

 

「今回の事件は、

 先ほど、アキトさんが破壊したバッタの機能が暴走して起きた物と思われますが・・・」

 

 カイトが資料を提示しながら説明を始める。

 

「本来、あのバッタはIFS所持者の精神というか意識に作用して、

 表の人格交代を強制し、艦を混乱させるのが目的に作られた物よ」

 

 メティも資料のウィンドウを開く。

 

「それが、アキトに破壊された時に暴走して、近くにいたアキトに作用してしまったんだね」

 

 ルリも提示されたシステムを見る。

 

「で、更にお兄ちゃんのT−LINKを通して私達も作用し、こうなったわけだね」

 

 ラピスがまわりを見ながら呟く。

 

「で、どうするんだ?」

 

 落ち着き払ったアキトがカイトを見る。

 

「あのバッタのシステムを舞歌さんの記憶の資料から復元すれば、

 治せるかと思いますが・・・

 なにぶん、件のバッタが昂気の体内爆破で完膚なきまでに破壊されてて、

 修復は無理ですから、一からの製作をしなければいけないので・・・

 そうですね、急いでも一昼夜かかります」 

 

 設計図を見ながら説明するカイト。

 

 それでも一昼夜で作れるのだから流石と言えるだろう。

 

『あの場合は仕方なかったでしょう?

 でも一昼夜か・・・ちょっと長いな・・・』

 

 T−LINKで舞歌から通信がはいる。

 

「全力は尽くしますが、これが限界ですよ」

 

 カイトが皆を見ながらそう説明する。

 

「とにかく、少なくとも一昼夜はこのままと言うわけだな」

 

 アキトが某ゲ○ドウの様な体勢で誰にと言うわけでもなく問う。

 

「それが問題だね・・・」

 

 考えを巡らせるラピス。

 それに同じく考えをめぐらせるメンバー。

 

「で、結局どうなってんだ?」

 

 ナオ以外。

 ただ一人、集まったはいいが、何が何だかわかっていない様だ。

 今のナオの一言で、全員がナオを睨む様に注目する。

 

「ところでなんでわざわざ今回の事件に関係ないナオさんを呼んだの?」

 

 と、メティ。

 

「こんな事を話せるのは後アキラを覗いてナオさんだけですから。

 アキラは顔に出る事が多いので、

 せめてナオさんでもフォローにまわって貰おうかと呼んだんですが」

 

 とカイト説明するカイト。

 

「ナオが白兵戦以外で役に立つの?」

 

 と冷淡に突っ込むルリ。

 それに落ちこむナオ。

 

「白兵戦だけじゃないですよ、ナオさんは」

 

 と、カイトの言葉に復活するナオだが・・・

 

「ちゃんとボケとツッコミ出来るじゃないですか」

 

 とのたもうた。

「どうせ俺なんか・・・」

 のの字を書いていじけるナオ。

 そこにアキトは、

 

「ボケとツッコミ?ナオはボケ専門だろ?」

 

 追い討ちをかけてくれる。

 割と酷い事を平然と。

 

「そうでしたね」

 

 納得するカイト。

 

 因みにナオは端っこで黄昏ている。

 

 そこへ、

 

「もう、二人とも、それはナオさんに酷いよ」

 

 ラピスが助け舟を出した・・・

 

「リンクすればジャンプもできる便利なパシリとしても使えるんだから。

 それなりに大事に扱わないと」

 

 と、思いきや、止めをさした。

 

 何やら短冊のような物に書を書きとめているナオ。

 

「まあ、ナオの利用方法の話しはひとまずおいといて。

 パシリにも解りやすいように説明してあげないと」

 

 と、ルリ。

 何気にパシリは決定らしい。

 

「そうですね」

 

 もう一度ナオに注目が集まる。

 因みにナオは一人、隅っこで酒を煽っていた。

 

「もう、何朝っぱらからお酒なんて飲んでるんですか」

 

「説明しますからちゃんと聞いてください」

 

「どうせ俺の価値なんか・・・」

 

 完全にいじけているナオ。

 だが、

 

「・・・お姉ちゃんに報告するよ?」

 

 と、一言われると。

 

「はい、何でしょうか!」

 

 一発で復活した・・・

 

(哀れな・・・・)

 

「で、どうなってるんだ?

 俺には皆の喋り方が変だという事しか解らないんだが?」

 

 結構切り替えは早い。

 

「先ほども言いましたが、今回の事件は精神に作用し、

 人格を入れ替えてしまうバッタが原因です」

 

 と、カイト。

 

「そして、そのシステムの暴走で、

 その時T−LINKで繋がっていた私達の人格が入れ替わってしまったの」

 

 と、ラピス。

 

「まあ、大体の人はもう解ってしまっていると思うが・・・」

 

 と、アキト。

 

「まずは、私、ラピスの人格が現在このルリの身体にあり」

 

 と、ルリが言う。

 

「私の、ルリの人格がこのカイトの身体にあります」

 

 と、カイトが自分を指しながら言う。

 

「俺、つまりカイトの人格はこのアキトの身体に」

 

 とアキトが。

 

「私、メティの人格はこのラピスちゃんの身体にあるの」

 

 とラピスが言う。

 そこで、一呼吸は入り。

 

「ん?じゃあメティの身体に入ってるのは?」

 

 とナオが問う。

 

「私、舞歌の人格よ」

 

 とメティが答える。

 

「え?じゃあ、アキトはまさか・・・」

 

 ナオは自分の想像している事に恐怖しながらも問う。

 

「そう、アキトさんは今、シャクヤクの舞歌さんの身体にいます」

 

 ・・・暫しの沈黙。

 

「なにぃぃぃぃぃ!!」

 

 ここでやっと事の重大さに気付くナオ。

 

「まあ、この入れ替わりにナオが入ってなかったのは不幸中の幸いだな」

 

「そうですね、アキトさんならともかく、ナオさんに私達の身体に入られたら目も当てられません」

 

「ま、ナオ兄さんは精度低いからね」

 

 割と冷静なメンバー。

 

「おい、そんなに落ちついていていいのかよ!!」

 

 一人半分パニクっているナオ。

 

「まあ、私はカイト、カイトはアキトさん、ラピスは私の事はちゃんと解ってますから、

 お互いに1日くらいなら誤魔化せますよ。

 こんな事ばれたら大変ですからね」

 

 と、冷静に答えるルリINカイト。

 

「まあ、私もラピスちゃんだからそれほど演技に苦はないし」

 

 とメティINラピス。

 

「私も、このメンバーでは唯一仕事がなくて、特に用事がある訳でもないメティちゃんの身体だし」

 

 と舞歌INメティ。

  

「アキトは!!」

 

 叫ぶナオ。

 

「まあ、大丈夫よ、一応リンクでフォローできるし、お互いのことは知らない事なんかないから。

 それに溜めてる仕事は無いから、艦長の席に座ってるだけでいいし」

 

 楽天な舞歌。

 しかし、ナオはそれを聞いてもまだ落ちついていない。

 そして・・・

 

「違う!!俺がいいたいのそんな事じゃなくて、

 例え身体は舞歌さんでも、人格があの本能で女を堕すアキトで、

 女だらけのシャクヤクにいたらどうなるかを心配してるんだ!!」

 

 ・・・・ちゃんとツッコミの技能がある事が証明できたナオであった。

 

「「「「「あ」」」」」

 

 ナオの言葉にその場の全員が顔を見合わせる。

 

(どう言う意味だよ!!)

 

 アキトIN舞歌が何か言っているが、そんな事無視の様だ。

 

「どうします?ばれない事しか考えてませんでしたね」

 

「そうね、確かに、私の身体でもあのアキト君なら・・・」

 

「どうしよぅ・・・」

 

「こんな大事な事を忘れるとは・・・」

 

「動かないでいてもらうのが一番だろうけど・・・」

 

 対策に悩むメンバー。

 

(お〜い、皆〜〜)

 

 アキトIN舞歌の呼びかけは完全無視だ。

 

「そうですね、フォローをつけましょう」

 

 

 と、言う訳で(?)シャクヤク 舞歌の私室

 

 

「俺って信用ないんだな〜」

 

 などと呟くアキトIN舞歌。

 はっきり言おう、当たり前だ。

 

「お前のせいだろうが」

 

 はい、楽屋裏に突っ込まない様に。

 で、フォローしてもらう人、呼ぶんでしょう? 

 

「そうだな。

 取り合えず、プラス〜」

 

 と、部屋に中央を向いて呼びかけるアキトIN舞歌。

 

『お呼びですかい?姐さん』

 

 すると、アキトIN舞歌の前にオモイカネやダッシュを超える対応で出てくるプラス。

 因みにプラスとは、

 

『説明しましょう!!』

 

 いきなり自己紹介を始めるプラス。

 

『おいら、ことプラスはこのシャクヤクに搭載されているオモイカネシリーズの3番機。

 なんで、妖精がいないのになんなに教育が行き届いてるかというと、

 ナデシコとシャクヤクが戦闘するたびに、ルリ姐さんやラピス姐さん、

 そしてアキラお嬢様にハッキングで調教されたからでぇあります。  

 そして今、舞歌姐さんとサブロウタのダンナ以外にはただのコンピューターとして振るまい、

 その裏で舞歌姐さんとサブロウタのダンナを密かにバックアップしているのです。

 え?なんでアキラお嬢様だけ呼び方が違うかって?

 そりゃあアンタ、オモイカネ兄貴がルリ姐さん、ダッシュ兄貴がラピス姐さんのであるように、

 おいらはアキラお嬢様のだからにきまってるじゃぁねぇか。

 しかし、おめぇ、アキラお嬢様のいい所はだなぁ・・・・』

 

 以下割愛。

 

『・・・、で、何でしたっけ?』

 

 と、あらかたアキラの魅力について語ったプラスがすっとぼけた事をぬかしてくれる。

 当たり前だが、ここまでで部屋はウィンドウで埋め尽くされている。

 アキトIN舞歌がげんなりしている事は言うまでも無い。

 

「・・・サブロウタにここに来るように伝えて」

 

 と、絞り出すように言うアキトIN舞歌。

 

『がってんしょうち!!』

 

 と、全てのウィンドウが消える。

 まあ、誰かさんとは違って読まなければいいだけだからましっちゃぁましだ。

 

「それにしても・・・アキラ、お兄ちゃんはちょっとお前の将来の子供の事が心配だよ・・・」

 

 虚空を見詰めて呟くアキトIN舞歌。

 

 しかも、自分で『調教された犬』とかほざいてるしな。

 

(あ、それ、舞歌さんとサブロウタのせいですよ)

 

(アキラちゃん、泣いてたしね)

 

 ま、二人がヒマを見て調教中のプラスをいじったのは言うまでも無いことだろう。

 

 取り合えずサブロウタは後でシメとこうと決めたアキトだった。

 

 んで、数分後。

 

「ちぃ〜っす、サブロウタ入ります」

 

 サブロウタが到着した。

 因みに、今もシャクヤクと夢見月・改は並んですぐ近くを飛んでいるのだ。

 

「あ、来たわね」

 

 人格がアキトでも身体は舞歌なので言語中枢に従い、

 言葉が舞歌のものになっているアキトIN舞歌。

 

「で、なんすか?こんなに朝早く・・・

 朝食のお誘いでしたら喜んで受けますが」

 

 などと、相変わらず命知らずなサブロウタ。

 

「あのね、実はカクカクシカジカで・・・・」

 

「・・・マジっすか?!」

 

 こう言うところで日本語って便利だと思う作者でした。

 

「解りました。

 できうる限りはフォローしましょう」

 

 と、さっきまでとはうってかわり真面目な顔になるサブロウタ。

 まあ、後にオールギャグになるんだけどね・・・

 

 

 再びナデシコサイド

 

「これがアキトの身体か・・・」

 

「カイトの身体、少し重い感じがします」

 

「ん〜ルリ〜ちょっと動きをセーブしずらい・・・」

 

「ん〜なんかリンクする前に戻ったみたいな感じ・・・」

 

「視線が低いわ・・・身体は滅茶苦茶軽いけど」

 

 それぞれ自分の今いる体を動かし、調整をする。

 因みにナオは既に普段通りにする為、いつもの朝の鍛練に向かっている。

 

「・・・ま、問題無いだろう」

 

「そうですね。

 一応フォローの為にラピスにはフィリア、舞歌さんにはクオンについていてもらいましょう」

 

 そのルリINカイトの言葉に

 

『『了解』』

 

 と、姿を現すフィリアとクオン。

 

「では、これからは身体の持ち主の言葉使いで喋る様にしてくださいね」

 

「ああ、それじゃあ部屋をでるか」

 

 プシュ!!

 

 今まで密会をしていた部屋を出るメンバー。

 

「じゃあ、俺は一旦厨房に向かうか。

 もうピークは過ぎちゃったけど」

 

 と、カイトINアキト。

 カイトもそれなりに料理ができるし、リンクで聞きながら料理をすれば問題無し。

 

「俺は朝食が済み次第トレーニングルームで待ってるから、

 早く来てくれよ、アキト」

 

 流石に演技も上手いルリINカイト。

 

「私は昨日は夜勤でしたから、

 朝食をすませた後、一眠りしてからトレーニングルームに行きますね」

 

 と、ラピスINルリ。

 

(ふ〜ルリ、ルリの喋り方って面倒だね)

 

(がまんしてください)

 

 普段から言葉使いに気など使わないラピスにとってルリの丁寧語は面倒だろう。

 

「私は朝ご飯食べたらアキラと交代だね」

 

 メティINラピスも問題ないようだ。

 

「私は今日はどうしようかな?」

 

 何気に舞歌INメティ。

 

「・・・問題無いな」

 

 と、カイトINアキト。

 

「そうだな、後の問題は機動戦だが、それはなんとか1日くらい遅らせて・・・」

 

 と、ルリINカイトが言いかけた時、

 

「ああああああああ!!」

 

 その言葉を聞き、舞歌INメティが声をあげる。

 

「どうしたの?」

 

 流石にちょっと驚くメンバー、

 その舞歌に問うメティINラピス。

 

「忘れてた、今、シャクヤクと夢見月がこっちに向かってるの!!」

 

「なに?!

 それじゃあ、急いでアキトに知らせて進行を遅らせて貰わないと・・・」

 

「無理よ、予定では、もう着く時間よ。

 今更引き返せない位置にいる筈だわ!!」

 

 と、丁度その時。

 

 ビィー!! ビィー!! ビィー!!

 

 警報が鳴り響き、

 

『シャクヤクと夢見月です、総員戦闘体勢に入ってください』

 

 アキラからの通信が入る。

 

 

 その頃、シャクヤク 舞歌の私室

 

『舞歌様、ナデシコを捕捉しました。

 戦闘の準備を』

 

 ちーちゃんこと、神谷 千鶴から連絡が入った。

 

「ええ、解ったわ」

 

 舞歌の口調と仕草を真似て答えるアキトIN舞歌。

 

『・・・ところでなんで舞歌様の私室にサブロウタ殿がおられるのですか?』

 

 アキトIN舞歌と共にウィンドウに映っているだろうサブロウタを見て、

 怪訝そうな顔をするちーちゃん。

 

「三姫との進展の報告よ」

 

 思いついた嘘を吐くアキトIN舞歌。

 

『・・・そうですか、後5分程度で戦闘宙域に入りますからね』

 

 そしてウィンドウが消える。

 

「・・・どうするんです?

 アンタは良くても、多分北斗とアンタの身体にいるカイトが・・・」

 

 と、珍しく真剣な顔のサブロウタ。

 舞歌の身体にいるアキトとカイトの身体にいるルリはいいし、

 メティの身体にいる舞歌も元々相手がいない為、いつも通り待機しているだけ。

 ルリの身体にいるラピスも相手がサブロウタなので、フィリアに代われば、

 それっぽく見せる事も可能だ。

 しかし、北斗が相手のアキトの身体にいるカイトは・・・

 

「ええ、そうね」

 

 アキトIN舞歌もその事で悩んでいると、

 

(アキトさん、私に考えがあります)

 

 リンクでルリから通信が入る。

 

第21話その3

 

代理人の感想

・・・ナオ、哀れ(爆)。

メティにすら足蹴にされてるもんな〜。