戦闘後 ナデシコ格納庫

 

 自力で帰還したエステ隊の後、カオスに抱かれる様に帰還するハデス。

 

「あ〜〜〜〜〜〜ったく、こんなに派手に壊しやがって」

 

 そんなハデスと装着しているクロノスを見て叫ぶウリバタケ。

 そんな中、ハデスを固定したカオス、カイトINアキト(以下カイト)は、

 ハデスに取りつき、

 

 ガン!!

 

 手動、と言うか無理やりハデスのハッチを覆っているクロノスの前面部をそこだけ分離させる。

 そして、もう維持装置しか動いていないハデスのハッチを素手でこじ開けて、

 

「カイト、大丈夫か?」

(ルリ、大丈夫か?)

 

 コクピットで動かないルリINカイト(以下ルリ)に手を差し伸べる。

 

「ああ」

 

 俯いたままその手を取るルリ。

 そして、カイトが引く手に、アキトの身体に抱き着く様にして立ち上がる。

 俯いている為、その表情までは伺えない。

 だが・・・

 そのまま、二人抱き合う様にハッチから飛び落ちて着地する。

 

「ハデス、直さないと」

 

 そこで、カイトから離れ、ハデスの修理に取りかかろうとするルリ。

 その動きに全く覇気、生気は感じられないが。

 

「まったく、今日はカオスがほとんど無傷かと思えばハデスが大破かよ」

 

 と、そこに、ウリバタケがハデスの修理にやってくる。

 

「自分の機体は自分で直す。

 壊したのは俺の腕の無さが原因だ」

 

 ルリはウリバタケの整備を断ろうとしたが、

 

「何言ってやがる。

 そんな状態でまともな修理ができるのかよ?

 ここはいいからお前はとっととアキトにでも修理してもらえ。

 俺は人間の修理は専門外だ」

 

 そう言ってウリバタケはルリをカイトの方へと突き飛ばす。

 普段ならそんな事でバランスを崩したりしないルリも、

 今の精神状態では簡単によろけ、カイト、つまりはアキトの胸の中へと収まる。

 

「しかし・・・」

 

 アキトの胸の抱かれながらも、尚も自分の手で整備し様とするが、

 

『今回の戦闘での味方機の被害は少ないですし、

 システムの整備は俺達でやっておきますから』

 

『マスターは休んでいてください』

 

 二人の前に出現するブロス、リリス。

 

(ルリ、今日は休め)

「カイト、今日は休め」

  

 アキトからの通信、カイトの意見で、

 

「・・・解った」

 

 やっと折れるルリ。

 

「ありがとうございます、ウリバタケさん」

 

 ルリを抱く様にして移動するカイトは、

 最後にそう言い残していく。

 

「ケッ!彼女を突き飛ばした奴に礼なんか言うなよ」

 

 そう答えるウリバタケ。

 それも、照れ隠しに頭を掻きながらでなければ決まっていただろう。

 でも、それを見て、カイトは微笑んでその場を立ち去った。 

 

 そこから少し離れ。

 

「やっぱり、ショックみたいだね」

 

「そうみたいね」

 

 そんな二人を見つめるメティINラピス(以下メティ)とラピスINルリ(以下ラピス)。

 

「うちのサブロウタもああみたいよ。

 今は三姫が見てるけど」

 

 と、他には聞こえない様に言う舞歌INメティ(以下舞歌)。

 

 その後、軽いパイロットのミーティングの後、解散となり、

 カイト達は、

 

「どうする?俺は予定通りこれから食堂に向かう」

 

 アキトの口調を真似して話すカイト。

 勿論他のメンバーも真似は怠らない。

 話すのもリンクで話せば良いのでは?と言う意見は、

 これだけの人数が揃っていて、歩きながらとは言え、

 全く会話が無いのは不自然なので、却下される。

 

「俺も予定通りでいい」

 

 そう答えるルリ。

 

「大丈夫ですか?」

 

 ルリの顔を見て尋ねるラピス。

 ルリはまだ沈んでいる。

 

「アキトと料理していた方が落ちつく」

 

 それだけ答えるルリ。

 

「そうですか、では私も予定通り部屋に戻りますね、

 もう眠くって」

 

 軽く欠伸をするラピス。

 

「じゃあ、私は仕事。

 アキト、1時間したらご飯食べに行くから」

 

 本来のラピスの仕事に戻るメティ。

 

「私はさっき取ったデータをまとめてから食事に行くから」

 

 そう言って部屋に向かう舞歌。

 そして、カイトとルリの二人は食堂に向かう。

 

 

 食堂

 

「お、来たね」

 

 二人を出迎えるホウメイさん。

 

「はい、遅くなりました」

 

「・・・遅くなった」

 

 それぞれ挨拶を交す3人。

 その間、ホウメイさんはルリの様子を見て、少し考えたが、

 

「じゃあ、いつも通り頼むよ」

 

 と普段通り(カイトの)にルリに接した。

 

「ああ」

 

 ルリは普段カイトがしている様に、包丁を取り、野菜を切り始める。

 一方、カイトはと言うと、

 

「「「「「おはよう、アキトさん(君)」」」」」

 

 既に仕事をはじめているホウメイガールズに、

 

「やあ、おはよう皆。

 今日も皆綺麗だね(仕事が)」

 

 キラ〜ン☆

 

 爆弾と共にアキトスマイルMKU(光る白い歯付き、余談だがMKWまである)

 それを背で聞いていたルリは、

 

 スパ〜ン!

 

 包丁の振り下ろす勢いが余ってまな板を通り越し、台ごと切り裂いてしまう。

 まあ、指を斬らなかったのは幸いである。

 精神的なダメージもあるのでそのままちょっと突っ伏しているルリ。

 

「カイト、厨房を壊さないでおくれよ」

 

 因みに台の下は器具置きになっていたので、被害は軽微で済んだ。

 

(クァ〜イ〜トォォォ〜〜!)

 

 復活したルリは即座にカイトにリンクを繋ぐ。

 そりゃあもう地獄の番犬ケルベロスも裸足で逃げ出す様な声で。

 

(何だ?ルリ)

 

 それを平然と受けるカイト。

 因みにちゃんと作業をしながら。

 

(何だ?じゃありません!!

 何やってるんですか!!)

 

 ダメージのせいか、いつもより少し迫力が劣るが、

 十分殺せる殺気を込めているルリ。

 

(いや、何ってアキトが普段やっている事だが?)

 

 しれっと答えるカイト。

 因みにカイトはあのセリフの真意を解っているのと、常識が薄いのとで、 

 アレを爆弾発言だと認識していなかったりする。

 それと、言っておくが、ルリ達も四六時中アキトを見張っていられる訳では無い。

 特に誰かが一緒にいる時とか、

 自分の作業に専念する為にリンクは切っているのがほとんどだ。

 ま、何かあると(感情が揺らいだり)すると自動で接続されるけど。

 

(アキト!!)

 

 即座にアキトに繋ぐルリ。

 

(は、はひ?)

 

 突然の事に流石に動揺するアキト。

 

(帰って来たらお話があります)

 

 ゆっくり、低く、言葉を送るルリ。

 

(い、いや、話しなら今でもできるが・・・)

 

(ゆっくりと、面と向かって話し合いましょう?)

 

(はい・・・)

 

 そこで通信を切るルリ。

 

「はぁ・・・」

 

 溜息をつきながら改めて食材を切り始めるルリ。

 

「カイト、それはこうやって切るんだよ」

 

 と、ルリにしては突然に、カイトに後ろから抱き付かれるような感じで、

 手を持たれて、包丁の使い方の指導を受ける。

 

 トントントン 

 

 カイトに指導されながら、軽快に響く包丁の音。

 

「こんな感じだ」

 

「解った」

 

 普段通りを装い応答するルリ。

 

(・・・カイト、毎日こんな風に料理をしているの?)

 

 少し羨ましげに問うルリ。

 

(ああ、俺はまだまだ未熟だからな)

 

 セリフの内容とはうらはらに、ちょっと嬉しそうに答えるカイト。

 

「・・・アキト、そう言えばルリが料理を習いたいと言っていたぞ」

 

 ホウメイさんにも聞こえるくらいの声で、そう告げる様に言うルリ。

 

「そうか・・・いいですかホウメイさん?」

 

 少し考えてホウメイさんに許可を求めるカイト。

 

「ああ、私としては人手が増えて嬉しいけど、

 ここを戦場にしないでおくれよ」

 

 いつもの調子でそう答えるホウメイさん。

 

「厨房はいつも戦場だと思いますが?」

 

 ホウメイさんの言葉の意図を解らないかの様に、そんなことを問うカイト。

 

「まあ、そうだね。

 だけど、嫉妬と言う名の嵐を呼ばないでおくれよ」

 

 冗談半分(半分マジ)でそう言い直すホウメイさん。

 

「?まあ、そんなものは呼ばないと思いますが?」

 

 アキトらしい反応で答えるカイト。

    

「約束だよ」

 

 あんまり期待してはいない様だが、一応許可を出すホウメイさん。

 

(カイト、アキトさんの演技上手いですね)

 

 今のやりとりを見て、素直な感想を述べるルリ。

 ちょ〜っと複雑な心境の様だが。

 

(そうか?いつも側で見てるしな)

 

 そう言われて、少し嬉しそうなカイトだが・・・

 

(ところで、ルリ、俺はさっきのホウメイさんの言葉の意味が解らんのだが?)

 

 とのたもうた。

 

(・・・素なの・・・)

 

 カイトのアキトの演技は全く問題無い様だ。

 

 

 一方その頃、シャクヤク食堂

 

 シャクヤクから取った例の試験のデータも舞歌に送り(と言っても通信で話して、だが)、

 機体の状態も、優華部隊の物はそう大した事は無いので、

 取り合えず食事にきたアキトが率いる優華部隊。

 三姫だけは現在サブロウタの所に行ってしまったが。

 

 トン・トントン!

 

「・・・」

 

 そして、料理ができるのを待っているアキト。

 今は舞歌だから、自ら料理をするなどと言ったら不自然になる。

 

 ジュ〜 ボッ!

 

「・・・・・・」

 

 なるんだが・・・

 

 パラパラ・・・バサッ!

 

「・・・・・・・・・」

 

 ・・・

 

 ガシャン!

 

「あ、きゃ!」

 

 調味料を落としてしまう女性。

 因みに、このシャクヤクにいるのは厨房で働いている女性も含め25程度までの女性だ。

 

 ガタン!

 

 突然立ち上がるアキト。

 

「どうなさいました?舞歌様」

 

 そんなアキトを怪訝そうな千沙。

 因みに優華部隊+北斗で並んでるのだ。

 

「ん〜何だか急に料理がしたくなって」

 

 と、アキトはまずいかな〜と思いつつも厨房に向かう。

 その時の優華部隊の心境だが、

 

(舞歌様が料理?!)

 

 で統一されていたのは・・・言うまでも無いことかな?

 北斗は、(舞歌って料理できたのか)程度だ。

 こう言う時は素直でかわいかったりする。

 

「ちょっと厨房かしてね〜」

 

 厨房に入り、道具と材料を一式借りるアキト。

 

「え?舞歌様?」

 

 突然の事で戸惑っている女性A。

 

「むしょうに料理がしたくなったのよ」

 

 そう言って調理を開始するアキト。

 それを戸惑いながらも見ている女性A。

 

「ハイでき上がりっと」

 

 あっと言う間に完成させるアキト。

 因みに品目はチャーハンだ。

 

「貴方達も食べる?」

 

 と、優華部隊に問うアキト。

 

「「「「「ええええ!!」」」」」

 

 やたら驚く優華部隊。

 

(・・・舞歌さん、昔優華部隊のメンバーに料理で何かしました?)

 

 流石にこの反応には舞歌に問いただすアキト。

 

(え?別にしてないわよ。

 食べ物を粗末にできないし)

 

 そう答える舞歌。

 因みに舞歌は先ほどの戦闘のデータを、

 アキトがシャクヤク側から取ったデータと共に、まとめていたので、

 こちらの様子は解っていない。

 

(そうですか?)

 

 じゃあ、この反応は何だと思うアキト。

 

(どうしてそんな事を?)

 

 そう問い返してくる舞歌に、

 

(それは・・・) 

 

 今の場面を教えるアキト。

 そして、勿論、

 

(無理にでも食べさせてあげてね♪)

 

 怒りを抑えながらもそう頼む舞歌。

 

「あら、私の料理が食べられないの?」

 

 その感情を匂わせつつも、笑顔で優華部隊に問うアキト。

 

「「「「「・・・頂きます」」」」

 

 しぶしぶ答える優華部隊。

 北斗は既に自分の分を取っていたりする。

 そして、優華部隊と北斗の前にアキト特製のチャーハンが並ぶ。

 優華部隊は、スプーンを持っているが手を震わせて食べる事を躊躇している。

 

(どうしたの?)(怒)

「どうしたの?」

 

 舞歌の指示通り喋るアキト。

 

「「「「「い、いえ」」」」」

 

 そう答えるものの、まだ食べる事に躊躇している。

 

(・・・)(怒)

 

 そんな中。

 

「どうした、食わないのか?」

 

 既に食べ終えた北斗。

 

「北ちゃん?!」

 

「北斗殿!大丈夫ですか?」

 

「身体に異常は?!」

 

 全員北斗にそんな事を問う。

 

「ん?何を言っている?

 それにしても、舞歌、結構料理上手かったんだな」

 

 と、素直にアキトの料理を誉める北斗。

 

「これならアキトにもそうそう負けないぞ。

 そう言えば味付けがアキトに似ているな・・・」

 

 ピクッ!!

 

 流石にそれには少し反応してしまうアキトだが、

 

「もしかして、ナデシコにいる時に習ったのか?」

 

 純粋な疑問を聞いてくる北斗。

 

「見様見真似よ」

 

 取り合えず平静を保ち、誤魔化しておく。

 その北斗を見た優華部隊は恐る恐るチャーハンを口にし、

 

「美味しい!」

 

 と、絶賛し、

 

「そんな、舞歌様が・・・ありえない・・・」(千沙)

 

「私より上手いなんて・・・」(零夜)

 

「そんなバカな・・・」(飛厘)

 

 などなど、割りと酷い事を口にする。

 本人達は舞歌に聞こえない様に言っているつもりだろうが・・・

 

(・・・ふふふ・・・帰ってからの楽しみが増えたわ)

 

 中身がアキトなのでちゃんとその呟きは拾われてしまっている。

 

 全員が食べ終え、優華部隊と北斗はそれぞれ思い思いに食堂を後にする。

 アキトは使った食器等の片付けをしている。

 優華部隊と女性Aには止められたが、アキト的には気が済まなかった為断ったのだ。

 そんな頃、三姫が厨房に現れる。

 

「ちょっと貸してください」

 

 どやら三姫も自分で料理をするらしい。

 

「あら?貴方も自分で作るの?」

 

 後ろから話しかけたアキト。

 

「え?舞歌様?!何故この様な所に?」

 

 大層驚く三姫。

 それは司令官がここにいる事に驚いているのか、

 それとも、舞歌だから驚いているのか・・・

 

(ああ、別に確かめなくていいわよ、どうせ一蓮托生だから♪)

 

 Amen・・・優華部隊に神のご加護があらん事を・・・

 まあ、それはともかく。

 

「料理がしたかったからよ。

 で貴方は?」

 

 適当に誤魔化して質問するアキト。

 

「私は・・・その、三郎太が元気無いから、

 料理を作ってあげようかな〜っと」

 

 ちょっと顔を赤らめながら言う三姫。

 それを聞いたアキトは・・・ 

 よし!このままサブロウタ君は三姫ちゃんに持って行ってもらおう。

 などと、アキラの事を考えて、そんな事を思っていたりする。

 

「ふ〜ん、じゃあ見ていい?」

 

 とのアキトの言葉に、

 

「え?!」

 

 あからさまに嫌そうな顔をする三姫。

 

(レベルア〜ップ☆)

 

 それを聞いてそんな事をのたまう舞歌。

 何のレベルですか・・・

 

「ええっと、構いませんが・・・」

 

 渋々了承する三姫。

 そして料理を始める。

 

「あ、そこもっと小さく切った方が火の通りがいいのよ」

 

「え?そうなんですか?」

 

「それはもっと時間をかけた方が」

 

「なるほど」

 

「こっちは・・・」

 

 つきっきりで指導するアキト。

 そう、つきっきりで。

 カイトにする様に後ろから抱き付く様に指導したり、同じ皿で味見したり。

「か、完璧です!

 ありがとうございます舞歌様」

 

 できあがった料理に満足する三姫。

 

「じゃあ、がんばるのよ」

 

 そして、激励して送るアキト。

 

「はい」

 

 スキップする勢いでサブロウタの元に向かう三姫。

 それをガッツポーズで見るアキト・・・何に対してかは言うまでもないだろう。

 三姫の気配が遠ざかった後、

 

「あの、舞歌様」

 

 先ほどの女性Aがアキトに話しかけてきた。

 

「何?」

 

 一仕事終えた後の余韻に浸っていたアキトは、笑顔で答える。

 

「あの、お時間がよろしければ私にも料理を教えてもらえませんか?」

 

 などと聞いてくる。

 勿論アキトは、

 

「いいわよ」

 

 即答だ。

 

「あ、ありがとうごさいます」

 

 その答えに歓喜する女性A。

 

「じゃあ、まずは・・・」

 

 すぐに指導を始めるアキト。

 そのアキト(舞歌だよ?)を見つめながら指導を受ける女性A。

 そう、それはまるで恋する乙女の様な瞳で・・・

 

 

 その頃 ナデシコ ブリッジ

 

「・・・ポイント2点追加〜っと」

 

 などと呟くメティ。

 

「ラピスちゃん何か言った?」

 

 そんなメティに気付いたアキラだが、

 

「あ、なんでもないよ」

 

「そう」

 

 さして気にする事もなかった。 

 

 

 昼を回った頃 ナデシコ カイト視点

 

 あの後は滞りなく進み、そろそろいつもなら鍛練を始める時間となった。

 まあ、それまでに変わった事があったとすれば・・・

 

「アキトく〜ん、聞いてくれよ〜、

 アヤのやつホントに飯を作ってくれないんだよ〜」

 

 などとシュンとカズシが昼間から酒を飲んでいた事くらいか?

 因みにそれを見た舞歌は

 

(こんなのが提督でよく今まで生きてこれたわね・・・

 いや、こんなんだからここまでこれたのかしら?)

 

 少し複雑な心境の様だ。

 まあ、そんな事はささいな問題だ。

 この程度の事なら日常茶飯事だし。

 

「カイト、どうする?」

 

 ルリに今日の鍛練をどうするか問う。

 

「いつも通りでいい。

 変に暇になると余計な事を考えそうだ」

 

 まだ立ち直りきっていないルリ。

 

「解った、じゃあ先に行っていろ。

 俺は装備を持って来るから」

 

「ああ」

 

 ルリはトレーニングルームに向へ、俺は一旦部屋へ向かう。

 

 部屋に戻る途中、舞歌と遭遇する。

 

「そろそろ鍛練の時間でしょう?

 私はどうする?」

 

 と聞いてきた。

 

「別に無理に参加する必要は無いだろう。

 普段からメティは自由気ままに艦内を歩いていたから、

 この時間にトレーニングルームにいなくても怪しまれはしないさ。

 俺とアキトだけでの鍛練っていうのも多かったしな」

 

 それに、いくらメティの身体とは言え、

 中身が舞歌では、俺達にはついてこれないだろう。

 

「そう、解った」

 

 と、そこで、俺は舞歌が指にはめている物に気付く。

 

「それは何だ?」

 

 一応問いただしておく。

 

「ああ、これ?

 メティちゃんに渡されたんだけどね」

 

 一見指輪の様に見えるが。

 

「まあ、メティから渡されのなら着けておくべきだと思うぞ」

 

 多分また妙な物だと思うが。

 

「そうするね。

 じゃあ、私は散歩してるね」

 

 因みに散歩はメティの趣味みたいなものだ。

 

「ああ」

 

 そう言って俺達は別れる。

 

「あ、それから、ラピス、爆睡してたけどいいの?」

 

 思い出した様に言う舞歌。

 

「ま、別に構わないだろう。

 ルリが夜勤の後に寝てるのは自然だ」

 

 それでも、いつもは3時間ほどで起きてきて鍛練に加わるがな。

 ラピスの精神ではルリの身体にたまっている疲労には勝てないだろう。

 ルリの身体にはいい休養になるだろう。

 

「そう。

 じゃ、またね〜」

 

 今度こそ別れる俺達。

 

 

 その頃 シャクヤク 舞歌自室

 

「あ〜〜〜〜なんでこんなに雑務が〜〜〜!!」

 

 アキトは艦長としての雑務に追われていた。

 あの後、ブリッジに戻ってすぐに神谷 千鶴(以下ちーちゃん)に仕事を押し付けられたのだ。

 

(舞歌さ〜ん、仕事溜めすぎですよ〜〜)

 

 泣き言を言うアキト。

 まあ、某仮面皇もビックリの仕事を積まれては流石に泣き言も言いたくなるだろう。

 

(別に溜めてないわよ。

 それがいつもの量なのよ、何故か。

 私もどこから出てくるか聞きたいくらいだわ)

 

 すぐに返答する舞歌。

 

(じゃあ毎日こんな量の仕事をこなしてるんですか?)

 

 流石に信じられないアキト。

 

(あ、それはいつもプラスにやらせてる)

 

 あっさり暴露する舞歌。

 

(なるほど。

 と、言うか、ナデシコもこう言う雑務は大半オモイカネの仕事だったな)

 

「と、言う訳でプラス〜」

 

 即行でプラスを呼び出すアキト。

 

『なんでやんしょ?』

 

 相変わらず舞歌の悪戯で変な口調のプラス。

 

「これよろしく」

 

 と、仕事を示すアキト。

 

『がってんしょうちのすけ!

 ・・・・っと、終りやしたよ』

 

「はやっ!」

 

 マジで『あっ』と言う間に終わらせるプラス。

 AI様様だと痛感するアキトであった。

 

(よし、これで晴れて自由の身だ〜。

 この時間なら鍛練ですね?)

 

(そうだけど、あまり激しく動かないでね。

 明日地獄の筋肉痛になりたくないから)

 

 割りとマジで訴えている舞歌。

 

(善処します)

 

 身体を動かしてないと落ちつかないアキト。

 普段が普段だけに仕方の無いことかもしれないが。

 

 プシュ!!

 

 そして、トレーニングルーム(こっちじゃ鍛練室かな?)

 に向かおうとするアキト。

 そこへ、

 

「どちらへ行かれるのです?舞歌様」

 

 ちーちゃんに呼びとめられる。

 

「ええ、ちょっと身体を動かしに」

 

 そう答えてすぐに鍛練室に行こうとするアキト。

 

「まだお仕事が残っているのでは?」

 

 そりゃあ、あの量は普通一日掛けても終らないからな。

 しかし、

 

「終ったわよ〜」

 

 と、ちーちゃんに99%プラスにやらせた雑務を見せる。

 

「・・・うそ・・・」

 

 流石に驚くちーちゃん。

 

「じゃ」

 

 ちーちゃんが固まっている隙に逃げ出すアキト。

 暫く行った所で、

 

「そんな、いつもより更に余計に仕事を回したのになんでもう終ってるの?!」

 

 そんなちーちゃんの呟きを拾ってしまう。

 

(ふふふ・・・そうちーちゃんも私に構って欲しいのね)

 

 なんかシャクヤクの人が不幸になるからあたりに気を配るのを止めようかと考えるアキト。

 いや、今のは自業自得か・・・

 

 鍛練室に向かう途中。

 

「あ、舞歌様」

 

 千沙に出くわす。

 どうやら千沙も鍛練の様だ。

 

「貴方も鍛練?」

 

 一応確認しておくアキト。

 

「はい、何故か最近妙に仕事が少なくって時間ができたので」

 

 どうやら、千沙の仕事まで舞歌に回っている様だ。

 それはそれでプラスを有効に使えるのだから良いのではないかと思うアキトだった。

 

「そう、じゃあ、私と一緒ね。

 久々に一緒にやりましょう?」

 

 誘うアキト。

 

「え?」

 

 かな〜〜〜り嫌そうな千沙。

 ま、それでも断れるわけも無く・・・

 

 鍛練中〜

 

「ほ〜ら、これでどうかしら?」

 

「あん!

 そんな、酷いです舞歌様〜」

 

「ふふふ、ここも弱いみたいね」

 

「きゃぅ!

 や、止めて・・・あ!」

 

「あらあら、まだ早いわよ」

 

「そんな・・・もう、もう許してください」

 

「だ〜め、私はまだぜんぜん満足してないわよ」

 

「ああぁ!!そんな激しすぎる!

 も、もうダメですぅ!」

 

 二人きりのトレーニングルーム。

 響く二人の美女の声。

 

 

 言っておくが鍛練中だ。

 

 

 そしてたっぷり2時間後

 

「ん〜いい運動だったわ」

 

 やったら清々しいアキトと、

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・

 も、もう腰と足が・・・」

 

 良いぐあいに服がぼろぼろに破け、

 息も絶え絶えで、汗で残った衣服もスケスケな千沙が倒れているのであった。

 

 と、そこへ、

 

 プシュ!!

 

 この鍛練室に北斗が入ってくる。

 

「何だ、舞歌か」

 

 中にいるアキト達を確認してそう呟く北斗。

 

「あら、どうしたの北斗?

 貴方も鍛練?」

 

 余韻に浸っているアキトがそう尋ねると、

 

「いや、飯を食った後はもう血の騒ぎが抑えられなくてな、

 ちょっと夢見月で九十九達3人と遊んでたんだ」

 

 血の騒いでいる北斗に遊ばれる三羽烏・・・

 ま、些細な事であろう。

 

「そう」

 

 では何でここに来たと聞こうとしたアキトだが、

 アキトが聞くよりも早く、

 

「それでスッキリして、汗もかいたし風呂にでも入ろうと帰って来たら、

 その通り道のここが騒がしかったから覗いて見たんだ」

 

 と、答える北斗。

 

「お風呂、そうね・・・・あ!」

 

 と、そこで重大な事を気付くアキト。

 すぐに対応策を考えるが・・・

 

「で、ついでだから一緒に入らないか?」

 

 先手を打たれてしまう。

 

 

 続く

 

 

 

 

 特に意味の無いなかがき 

 

作:秘密の花園へと強制連行に近い形で誘われるアキト!

  そこでアキトのとった行動とは!!

  一方、子供の姿を借りてナデシコを縦横無尽に歩きまわる舞歌!

  かき回されるナデシコ!!

  次回『ナデシコと×シャクヤクの×長い一日 その6』にレ〜〜ッツ!ゲキ・・・

 

 ガイン!!

 

ル:何をやってるんですかぁ!! 

  しかもなんですか!この更新の遅さは!!

作:ぐふ・・・い、いろいろといそがしくて・・・

ル:ただの浮気でしょうがぁぁぁ!!

 

 ザシュ!!ズブブブ・・・バシュゥゥゥ!!

 

ア:うわ、えぐってるえぐってる・・・

ル:貴方もですよ、アキトさ〜ん<笑顔がとっても素敵〜

 

 暗転

 

 こっちも無意味に続く

 

 

 

代理人の感想

・・・ナニやってんだか(苦笑)