第二話 「過去、傷跡」

 

 

 

 

 俺がデッキに帰還すると・・・ユリカが待っていた。

 

「アキト!!

 良かった無事だったのね!!」

 

 顔中に微笑みを浮かべて、俺の無事を喜んでくれている。

 やはり変わらないよな・・・その微笑んだ顔は。

 

「ああ、何とか生き延びたよ。」

 

 俺も軽く答えを返す・・・

 正直言って、余りユリカの笑顔を見たく無かった。

 

 自分の中の箍が外れて、抱き締めてしまいそうになるから・・・

 

「どうしたのアキト?顔色がちょっと悪いよ。

 それにしても、アキトって強いんだねやっぱり私の王「いやはやまったくですな。」

 

 いきないプロスさんが俺達の間に割り込んできた。

 気配がなかったぞ!!

 

「アキトさん、何処であのような技術を身に付けられたのですか?」

 

 目が怖いですよ、プロスさん・・・これは裏の顔かな?

 

「今日のが初めての実戦でしたよ。」

 

 この身体のね。

 

「嘘をおっしゃらないでください、

 初めての実戦であのような完璧な戦闘が出来ればこの戦争はとっくに終わっていますよ。」

 

 そりゃそうだろう、どんな終わり方かは知らないが。

 

「シュミレートを何度かやったことがあるんですよ、

 あと運動神経も良い方ですし、後のはまぐれですよ。」

 

 ん〜苦しいかな?そろそろ逃げるとしよう。

 

「シミュレートをやったとところ「すみません、ちょっと疲れているので医務室に行きます。」

 

タタタタタ・・・・

 

「あっ!!アキトさん、まだ話は終わっていませんよ!!」

 

 プロスさんの声が聞こえるがもちろん無視。

 

 

 

 ん・・・なんか忘れてるような・・・?

 

 

「くすん、プロスさんがいじめるの。」

 

 

 

 

 なんとかプロスさんを撒いて医務室まで来た。

 

 ピッ!! 

 

 突然コミュニケの画面が開きアキラが現れる。

 

「お疲れ様です、兄さん。」

 

「アキラか、あんなもの肩慣らしにもならんさ。」

 

「ユリカさんには事情を話さないんですか?」

 

「ああ、無用な混乱は招きたくないからな。」

 

 そのせいで変に未来が変わったらまずいからな。

 

「・・兄さんがそう言われるのなら、私は何も言いません。

 ですが・・・兄さんが死ぬ事が解ってる人を前にして、助けずにいられますか?」

 

 嘘は許さない・・・そういった目で俺を見つめるアキラ。

 成長したな・・・本当に。

 

「・・・すまない、正直言ってその事には自信が無い。

 ガイ、サツキミドリの人達、火星の生き残りの人達、白鳥九十九、・・・

 俺は・・・理解はしていても、実行する事は出来ないかもしれない。」

 

 彼等を見捨てる事は出来ない。

 全てが、未来の悲劇へと続くものだから。

 

「それでいいんですよ、兄さんは。

 私はそんな兄さんだからこそ、支えていきたいと思うんですから。」

 

(それは私もですよ。)

 

 今までの会話を聞いていたのだろうルリが、

 突然リンクで話し掛けてきた。

 

「有難うアキラ・・・心強いよ、本当に。」

 

(ルリもありがとう、これからもよろしく。)

 

(もちろんです。)

 

 俺は本当に良い家族を持ったものだ。

 

「そうだ!! 早速だけど相談があるんだ、アキラ。」

 

「ラピスの事ですか?

 それならもう一人の補佐を付けましたよ。」

 

 ルリに聞いていたのか。

 

 でもラピスを補佐する人物って・・・そうか!!

 

「マキビ ハリも来ているのか!!」

 

「はい、昨日のうちに連絡はしておきました。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

「あと、私と姉さんで資金提供もしておきましたよ。」

 

 資金?・・・そうかすっかり忘れていた。

 

「わるい、忘れていた。」

 

「ほんと、変なところで抜けていますね、

 そこは昔の兄さんのままなんですね。」

 

(まったくです、それともう一つ大きな問題がある以外は完璧に近いんですけど・・・)

 

(ルリ、「もう一つの問題」って何だ?)

 

(さあ何でしょう、宿題にしておきます。)

 

それを最後にルリとの通信が途絶えた。

 

「ところで兄さん、姉さん達とはまだ繋がっているのですか?」

 

 ルリの宿題が解らず悩んでいるとアキラが質問してきた。

 

「ああまだ繋がっているぞ、

 そう言えばなんで繋がったままなんだろう?

 でも精度は落ちてる気がするなあ・・・ん?どうした、アキラ?」

 

 俺が今まで触れなかった問題に付いて考えていると

 アキラが何やら羨ましいのか恨めしいのか、そんな視線で俺を睨んでいた。

 

「何でもありません・・・」

 

「そう言えばさっきルリに変なところが抜けている以外に

 大きな問題があるって言われたんだが何の事だか解るか?」

 

 あれ今度は冷たい視線が・・・。

 

「・・・そうですね、かなり大きな問題があります、

 でもそれはご自分で考えて下さんね。」

 

 そう言ってアキラは通信を切った。

 

「何なんだ?二人とも。」

 

 俺は訳が解らず暫らく頭を捻っていた。

 

 

 

「「鈍感。」」

 

 

 

 

そうこうしている内にムネタケの反乱は始まっていた。

 

(アキト、ブリッジでキノコが騒いでいるんだが、どうる?)

 

(ああ、ほっといて良いよ、俺も食堂から動く気は無いし。)

 

(そうか、味覚が戻ったんだったな、

 食べてみたいな、アキトの作った料理。)

 

(もう少し練習したらな。)

 

(ああ、楽しみにしている。)

 

 さて、カイトの期待に添えるようにいっちょ頑張るとするか。

 

 

 

 

 久々の料理の修行をして時間をつぶした。

 そろそろ触手の相手をしてやろうと廊下を歩いていると。

 

「何でこんな所で寝てるんだ?ガイ。」

 

 ガイがろうかでうつぶせで寝ていた。

 背中に大量の足跡が付いているのが気になるが。

 

「お〜い、起きろって。」

 

気づく様子が無いので取り合えず医務室に置いといた。

 

 

 結局、俺がまた余裕でチューリップの触手をいなし、遊んでる間にユリカが帰艦し。

 戦闘はナデシコがチューリップの入り口に頭を突っ込み、グラビティ・ブラストの一撃で決着はついた。

 

 

 

 一段落して、なまっている身体を鍛えなおすためカイトと共にトレーニングルームに向かっていると。

 

(アキト。)

 

 突然ラピスから通信が入った。

 

(そっちの様子はどう?)

 

(順調に進んでるよ。)

 

(そう、私もハーリーと一緒に地球で頑張るから、アキト達も頑張ってね。)

 

(ああ、ありがとう。)

 

(うん、それじゃあまたね。)

 

 そう言って通信を切った。

 ラピスも精神的に、急激に成長している・・・

 カイトもナデシコに乗っていれば問題無いだろう。

 俺の心残りは、だんだん解消されていく。

 

(・・・)

 

 さてと、この戦いを終わらせるためにも修行し直さなければ。

 

「何処に行くんですか?」

 

後ろからルリが近づいてきた。

 

「トレーニングルームだよ。」

 

「では、私もお供します。」

 

「!!何を言っているんだ、もう君が戦う必要なんて・・・」

 

「アキトさん、私は忘れません、あの日々を、

 見ているだけで何も出来なかったあの苦しみを。」

 

 ルリの目は、悲しみに満ちていた。

 

 

 

 

 

 あの日、私は休暇を取りアキトさん達の新婚旅行に付いて行った。

 そして、私達は北辰に連れ去られた。

 しかし、その時私はウリバタケさんと一緒に作った思兼超小型(腕輪型)を身に付けていた。

 それは、思兼のデータを移植し、思兼本体ともリンクできるスーパーコンピューターを

 腕輪に組み込んだ物、しかも外装はルナリウム合金製、もし壊そうとしても、

 先に私が壊れるでしょう、外すのはこの子が安全だと判断しパスコード入れなければなりません。

 さらに、半径100m以内なら如何なる電子機器もハッキング可能、

 もし私が気絶してもこの子を止めることはできません。

 私に最も相応しい護身アイテムだと思いました。

 実際、あの研究所も着いた瞬間に全ての電子機器を乗っ取り使用不能にしました。

 でもそれまででした、特殊な処理を施されている外壁のせいで救難信号も送れず、

 私自身、電波を完全に遮断するケージの中に入れられ手も足も出せなくなりました、

 そこに奴が来たのです。

 

「何の用だ、ヤマサキ。」

 

「イヤ〜参ったよ、貴方が持ってきたサンプルの一つが面白いおもちゃを持ってって、

 危うくここのシステムを全て乗っ取られる所だったよ、まあバックアップは取ってあったけど。」

 

「それが我と何の関係がある。」

 

「それがさあ、外せないし壊れないんですよ、北辰さんなら何とかなると思って呼んだんですよ。」 

 

「そのおもちゃとはあの腕輪のような物か、ならば腕を切り落とせばよかろう。」

 

「でもねえ、実験材料だって鮮度が命なんですよ、

 あれは珍しいサンプルですから長持ちしてくれないと。」

 

「ではこんなのはどうだ・・・」

 

 

そして私はケージに入れられたまま実験室まで連れてこられました。

 

「さあ、見るが良い。」

 

「え?!アキトさん!!ユリカさん!!

 

 

 私の目の前では二人に言葉では言い表せないくらい非道な実験が行われていました。

 

「どうだお前の大切な家族が苦しむ姿は。」

 

「ぐわああああああ!!」

 

「イヤァァァァァァァ!!」

 

「アキトさん!!ユリカさん!!止めて!!ヤメテェェェェェェェ!!」

 

ガンガンガン

 

私は力の限りゲージを叩き続けました。

 

「フフフ、無駄だ、このゲージは人間の力で壊せる物ではない。」

 

「いやぁ、流石は北辰さん外道ですねぇ。」

 

「お前も、人形の方がやり易かろう。」

 

「そうですねぇ、じゃあついでに人はどの程度のストレスで壊れるかを実験しましょう。」

 

「それなら奴自身には一切苦痛を与えるなあのようなタイプはそっちの方が苦痛になろう。」

 

「そうゆうものですか?いやぁ流石は外道ですねぇ。」

 

「お前もなかなかの外道だと思うぞ。」

 

「北辰さんに誉められるとは光栄ですねぇ。」

 

 

「「ハハハハハハハハハ」」

 

 

 私は二人が苦しむのをただ見ているだけの日々が続きました。

 

 

 そして血の涙も枯れた頃。

 

「やあ面白い物を見せてあげるよ。」

 

そう言うヤマサキの先にあった物は・・・

 

「・・・あああ・・・ユ・・リ・・カ・・さ・・ん・・・」

 

遺跡に取りこまれたユリカさんでした。

 

「ああああ・・・・イ・・・・ャ・・・・あああ。」

 

「しかし、なかなかこわれないねぇ、

 もう一つのサンプルはもう限界かな、

 後2,3回実験したら遺跡に取り込んじゃおうかな。」

 

 助けが来たのはそれからすぐでした、この子が諦めずに送りつづけた救難信号のお陰で位置が

 とくていできたそうです、でもユリカさんは助けられず、アキトさんも五感を失い、

 

 後数年の命しか残っていませんでした。

 

 それなのに、私だけは無傷と言って良い状態で救出されました、私だけが。

 

 

 

 

「もう嫌なんです、見ているだけで何も出来ないのは!!

 私だけ安全な位置に居るなんて耐えられないんです!!」

 

 今のルリの目はあの共に復讐を誓ったときの目だ。

 

「・・・解った、だが無理はするな、

 今の君は10歳の女の子に過ぎないのだから。」

 

「それはアキトさん次第です。」

 

「解った、俺も気を付けよう。」

 

そして俺達はトレーニングルームに向かった。

 

 

その日は復讐を誓い合った日のように互いを求めるように打ち合った。

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき

 

 書いてしまった駄文、第二話、まだ勢いだけはなくなりませんねぇ内容はともかく、

 因みに三人が行っている訓練は実戦形式の格闘戦です。

 

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

T-SAKAさんからの投稿です!!

ル、ルリルリが直接攻撃に出るんですか?

・・・ところで、ミナトさんとメグミちゃんの事が、一言も書かれてませんが?(笑)

ま、乗ってはいると思いますけどね。

そう言えば、ガイの初登場って・・・踏まれた後なんだ(苦笑)

未だに台詞なしだね、ガイの奴も(爆)

 

それでは、T-SAKAさん投稿有難うございました!!

 

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