第8話 「アキト

×暴走

                   ×自分の価値」










 ザッ!!


「・・・貴方を、殺します!!」
 

 そう言い放ち私は刀を構える。

 相手は中肉中背で漆黒のマントとバイザーを着けた男。

  
 相手の男は動かない・・・


 タッ!!


 私は地を蹴り、一気に距離を詰める。

 それでも男は無防備のままだ。

 そして・・・


 ザクッ!!


 私の刀が男の心臓に突き刺さる。


 流れ落ちる血、冷たくなる身体・・・


 男だったものは私の方に倒れてくる。

 そしてバイザーが落ち、私が見たその男の顔は・・・







「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ガバッ!!



『どうしたのルリ?』

(ルリどうした!!)

(何かあったのか!!)

(ルリどうしたの!!)


 目の前に映し出されるオモイカネのウィンドウ。

 直接頭に響くアキトさんとカイトとラピスの声。


 ここは・・・ナデシコの私の部屋?


「・・・ゆ・・・・夢・・・だったの?」


『ルリ何があったの?』

(ルリ!!)


 私に何かあったのかと聞いてくるオモイカネとアキトさん達。


「(なんでもないですよ、ちょっと嫌な夢を見ただけですから。)」


 私はオモイカネとアキトさん達に弁解する。


『本当に大丈夫?』


 それでも心配そうに聞いてくるオモイカネ。


「ええ、大丈夫です、驚かしてごめんなさい。」


『そう・・・それならいいけど。』


 そう言ってオモイカネのウィンドウは消える。


 それにしても、よりによってあんな夢を見るなんて・・・


(本当に大丈夫か、ルリ?)


(はい・・・アキトさん?)


(なんだい?)


(あの約束は、まだ守らなくてはいけませんか?)


(!!)


 アキトさんは私がどんな夢を見たか察したようだ。


(・・・すまない、君には本当に迷惑をかける、

 だが今の俺はとてつもなく危険なんだ、・・・もしもの時は、頼むよ。)


 今のアキトさんは精神的にかなり不安定な状態です。

 元の世界であれだけ血眼になって捜し求めたユリカさんが目の前に居るのに

 アキトさんは抱きしめる事も出来ません。

 ナデシコに搭乗してから極力ユリカさんを避け、辛く当たってきましたが、

 アキトさんも限界に来ています。


 もしもアキトさんが暴走した時は、私達の手でアキトさんを・・・


(アキトさん、今からそちらに行ってよろしいですか?)


(ああ、構わないよ。)


 今は自分のためにもアキトさんのためにもそばに居るべきだろう。









 そして、その朝・・・



プシュ!!



「おはようございます、兄さん、朝ですよ!!」


 入り口からアキラの声が聞こえます。

 う、う、まだ眠いです。


「や、やあおはよう。」


 アキトさんはおきたようです、掴んでいた腕が離れてしまいました。

 それにしてもドアを開けっ放しです、もう少し寝ていたいのに・・・

 それに勝手に入ってきて、ちゃんとロックしたのに・・・


「ふぅあぁ・・・アキラ、ドアを閉めてください。」


 仕方なく私は起き上がりアキラに言う。

 
 ピキ!!


 あら?アキラが固まってしまいましたね。


 そういえば昨夜は悪夢のせいで汗を掻いているのをアキトさんの部屋に来てから気付いて

 このまま寝るのもなんなのでシャワーを浴びて、服を洗濯して、そのまま寝てしまったんですよね。

 ですから今は私は何も着ていません、まさに一糸纏わぬ姿です。

 因みにアキトさんは上半身裸です、シーツで下半身が隠れているため、

 二人とも全裸に見えますね。


 まあ、それ以前の問題もありますし、相乗効果ですね。


「何時までドアの前に突っ立っている気だ?」


 カイトも起きあがりました。


 パキィィィィィィィィン!!
 

 因みにカイトも全裸です。

 カイトの場合は寝巻きを持っていないだけですが・・・その必要がないとも言いますね・・・

 
「これは・・・その・・・違うからな。」


「・・・お・・・」


「お?」


「お兄ちゃんの、バカーーーーーー!!」


 タッタッタッ・・・ 


「ち、違うんだ、アキラ!!」


 バッ!!ダッ!!


 プシュ!!


 アキトさんは上着を着て慌てて追いかけて行ってしまいました。


 ・・・あながち間違いと言いきれないのでは?









 俺はアキラを追いかけて食堂に来ていた。


「えっく、えっく

 お兄ちゃんはお姉ちゃんとカイトさんばかり・・・

 私のことなんてどうでもいいんだぁ。」


「だから違うって、アキラ、聞いてくれよ。」


「おやおや、テンカワまた女の子を泣かしてるのかい?」


「ち、違うんですよホウメイさん!!」


 いや、全然その通りなんだけどね・・・


「おはようございます、ホウメイさん。」


 と、そこにルリが入ってきた。


「おや、ルリちゃん、おはよう、なんだか眠そうだねえ。」


「はい、昨日は眠れなかったもので・・・」


 こんな時にとんでもないことを言うなよ・・・


「・・・オモイカネ、さっきの部屋の映像と今の会話を同盟全員に送信。」


「ま、待つんだアキラ!!」


 それはマジでシャレにならん!!


「ダメよ、オモイカネ。

 もう、アキラも素直じゃないですね、あなたも・・・・・でしょう。」


「え?で、でも・・・」


 ルリがアキラを説得し始める、でもなんで小声なんだ?


「・・・なら・・・・して・・・・・・ですよ。」


「・・・・んと・・・・でも・・・・・・・」


「だから・・・・・・して・・・・・・・ね。」


「うん、判った。」


 どうやら説得は成功したようだが・・・

 なんか激しく嫌な予感がするのは何故だ?


「アキト、今日の鍛錬はどうする?」


 カイトがタイミングを見計らい話しかけてくる。

 
 カイトの前のテーブルには朝食がのっていただろう皿が在る。

 ・・・こんな状況で一人で飯を食うなよ。


「ああ、じゃあ飯食ったら行くか。」


「あ、私も行きますね、今日は暇ですし。」


 そして俺達は朝食を済ませアキラと別れてトレーニングルームに向かった。


 そうそう、言い忘れてたけど今ナデシコは、あのふざけた親善大使を回収しに行く所だ。





「はっ!!」


 ジャィィィィリン!!


「甘い!!」

 俺の放った鎖を避けるアキト。

 その後ろに


「これなら!!」


 シュッ!!


 ルリの放った飛針が体勢を崩したアキトに迫る。

 
「くっ!!」


 バッ!!


 それでも飛んできた針を叩き落す。


 タッ!!!


 一旦体勢を整えるためにお互いに距離をとる。


「ふぅ・・・もうルリと二人掛かりで互角か・・・」


「ああ、やはり五感を取り戻したのは大きいな。」


「最早こんな物何の役にも立ちませんね。」

 
 そう言いながら近くに落ちていたムネタケ人形の首を掴むルリ。


「そうだな、やはりこいつ程度の動きじゃなあ。」


「いちおうゴートさんの戦闘データを基に作った人形も作りましたけど

 それもあまり役に立ちそうにありませんね・・・」


「ゴートさんのってことはやっぱり諜報戦用か?」


「はい、いちおうこのムネタケ人形の30倍位は強いはずですよ。」


「そうか、じゃあ久しぶりに銃撃戦の訓練でもするか。」


「そうですか?じゃあ・・・」


 何処かボタンを取り出し押す。


 シュィィン、カチャ!!


 突然部屋の壁の一部が開き中からゴートそっくりの人形が何体も出てくる。

 更に床の一部が飛び出し障害物になる。


 何時作ったんだ?あの人形もこの部屋の仕掛けも・・・


 その人形達がブラスターを構える。


 ダダダダダダダダダダダ!!
 

 俺達は人形が撃ってくる弾を避けながら距離を詰める。

 そして俺とアキトの鎖、ルリの飛針によってその人形を倒していく。


 立っている人形の数が半分くらいになったころ・・・


 シュィィン、カチャ!!


 今度は別の壁が開き中から同じ人形が出てくる。


「面白い!!」


 更に数分訓練をしていた所に・・・


 プシュ!!


「おい、テンカワ話が・・・」


 この部屋に本物のゴートが入ってきた。


「そこか!!」


「あっ!!カイト、それは本物・・・」


 ドゴッ!!


「あああ!!ゴートさん!!」





 数分後・・・


「まあ良かったですね、とりあえず命に別状がなくて。」


「人形が本物そっくり過ぎるのも考え物だな・・・」


「とりあえず、これどうする?」


 俺はさっき自分が間違えて気絶させてしまったゴートを指す。


「ん〜、命に別状無くても打ったのが頭だからな、一応医務室に連れていこう。」


「じゃあ俺が切れた医薬品を取ってくるついでに持って行くよ。」


「そう、じゃあ私はそろそろブリッジに向かいますね。」


「俺は格納庫に行くから頼んで良いか?」

「ああ、元々俺が原因だからな。」



 と言うわけで俺はゴートを引きずって医務室に向かった。



 プシュ!!
 
 
「あら、カイトくん何か用?」


「ああ、手持ちの薬と包帯がきれたからもらいに来たのと。」


 ドスッ!


 俺は持ってきたゴートを適当なベットに置く。


「ゴートが俺達の訓練に巻きこまれて頭を打ったんだ、

 命に問題は無いが一応見といてくれ。」


「解ったわ、そこに置いといて。」


 結構酷い扱われ方だ・・・


「それより、薬と包帯がきれたって、一週間くらい前に持っていったばかりじゃなかったかしら?」


「そうだが、毎日使う物だからな。」


「毎日使うって、どれだけ使っているの?

 一体どんな怪我を毎日したら一週間で無くなるのよ。」


「まあ大した物じゃないが、使った方が早く治るからな。」


「・・・ちょっと身体を見せなさい。」


「何故だ?」


「いいから見せなさい、見せないなら薬は渡さないわよ。」


 ・・・アキトとルリにイネスには身体を見せるなと言われているの。

 まあサンプルを取られない限りは特異体質の事もばれないとは思うが・・・

 仕方ない。


 俺は上着を脱ぎイネスの前に置かれている椅子に座る。


「!!なにこれ、殆ど消えかけてるけど・・・

 身体中傷だらけじゃない!!一体どんな訓練をしているの!!」


 どんな、と言われてもなあ・・・


 ピッ!!


『カイトそろそろブリッジ来てください。』


 返答に困っていると、リンクで様子を見ていたのだろうルリが通信をいれてきた。


「じゃあ、呼ばれたので。」


 俺は手早く上着を着て必要な物を手に取り医務室を出る。


「ちょっとまだ話しは・・・」


 ポンッ


 俺を引きとめようとするイネスの肩に

 何時の間にか起きたゴートが手を置いた。


「イネス君、君は神を見た事があるかね?」


「はぁ?」


 プシュ!!


 なんか出る直前にゴートが変な事を口走ったと思ったが・・・

 まあ気にする事ではないだろう・・・








「まったく、逃がしちゃったじゃない。」


 私はカイト君が部屋を出た後

 「神を見た」とか「時の涙が」とか訳の解らない事を口走るゴートを

 ルリルリ特製 故か○り嬢100トンハンマーでショック療法を行った。

  
「それにしても、もう殆ど判らなくなっていたけど・・・」


 あの子の胸に握りつぶされたような痕があるのは何故なの・・・







 俺は医務室から脱出した後、薬等を部屋に置きブリッジに来た。


「もう、気を付けてくださいね。

 まだあなたの身体のことをイネスさんに知られるわけにはいかないんですから。」


 俺が自分の席に座るとルリが話しかけてきた。


「ああ、すまなかった。」


 元の世界ならイネスしかこの事を相談できなかったのに、不便なものだ。


「そう言えば、最近艦長元気ないわね。」


 ミナトが艦長席で肘を突いた格好でボォとしている艦長を見て呟いた。

 その横で


「兄さん。・・・・と言うような状況なんですが・・・」


 アキラが今の艦長の状態をアキトに報告していた。


「アキラ!!」


 そんなアキラを睨むルリ。

 
『解った、ユリカは俺が何とかしよう。』


「!!アキトさん・・・」


「お願いします、兄さん。」


『ユリカはこれから平和を実現させるために

 絶対必要な人物だからな、何とかするさ。』


「でもそれでは貴方が・・・」


 ルリは反対の様だ、それもそうか・・・


『すまない、でも・・・』


「・・・解りました、その代わり今日も一緒に寝てくださいね。」


 ルリの顔はいたって真剣だ。


『ああ、努力する。』


 「約束する」ではないのだな・・・





 その後、昼食をとっていいる間に一人ブリッジに残った艦長が

 何故かグラビティー・ブラストを発射し、今現在後退中。




 今はユリカさんとアキトさんはバーチャルルームにいます。

 場所は火星の草原なのですがそれ以外はプロテクトされています。

 リンクも拒否され二人が何をしているかまったく解りません。

 それでも流れ込んでくるアキトさんの心情は・・・

 やはり自分を押さえ込んでいます。





 『敵襲!!』 
  

 敵に発見されてしまいました!!

 あっ、アキトさん達もバーチャルルームから出てきたようです。


「皆さん、遅れてごめんなさい!!」


 ユリカさんがブリッジに戻ってきました。


 どうやらユリカさんの方は治った様ですね。


「アキト、親善大使はアカツキさんに行ってもらうから。

 アキトはナデシコの防御をお願い。」


『その必要はない。』


 ゾォォォォ!!


 !!この感覚、アキトさんのあの目は、まさか!!


「え?必要ないって?」


『敵は俺が殲滅する。』



 そう言ってアキトさんからの通信は途絶えた・・・



『オオオオオオオオオオオオオオ!!』


 ザン!!

        ギシュ!!


    ザン!!

         ズッッッッガァァァァンンン!!



 アキトさんの持つ光の剣で次々撃破される無人兵器。


 あの剣、、まさか・・・


「ウリバタケさん!!DFS完成していたんですか!!」


『ああ、今しがたな。

 それよりアキトのやつ何を考えてやがる!!』


 その後の会話はほとんど耳に入らなかった・・・


 よりによって最悪のタイミングだ!!



「・・・アキト君はあの中で平常心なのよ。」


 イネスさんが解説をしています。

 
 でも間違っています。

 アキトさんは平常心なんかではありません!!


 ドッッゴォォォォォォンンン!! 


 今アキトさんのDFSにより護衛艦が一撃で沈みました・・・


 私の脳裏に昨日の悪夢がよぎりました・・・

「・・・ウリバタケさん、DFSはちゃんと二本完成していますか?」


『あ、ああ。

 頼まれた通り2本同時に完成させたぞ。

 でもなんで2本同時に作る必要があったんだ?』


「・・・カイト、格納庫に行って、

 私も全力で止めるけど、もしもの時は・・・」


「・・・解った。」


プシュ!!タタタタタ!!


 そして今、アキトさんは最後のバッタを・・・

 エステの手で・・・


 グシャッ!!


 握りつぶしました・・・


 そして再びDFSに漆黒の光が!!


「(アキトさん!!戦闘は終わりました!!帰艦してくだ

さい!!)」

 
 私はあらん限りの声と意志力を込めて

 アキトさんにリンクとコミニュケの両方で叫びました。


 リンクをフルコンタクト状態にしたせいで私の身体が一瞬光ります。


 返答はありませんでしたがDFSの光は消えこちらに向かってきます。


(カイト、なんとか戻せたから

 今からそっちにいくけど、後を、お願い。)


(解っている、任せろ。)


「オモイカネ、アキトさんとカイトのコミニュケを使用禁止にして!!

 皆さんは暫くここから動かないで下さい。

 特にユリカさんとアキラはアキトさんの目に付いたり声が聞こえる事があっては

 絶対にいけません!!

 いいですか、動かないで下さいね!!」


 プシュッ!!


 アキトさんと私の行動に固まっているブリッジの皆さんにそう言い放ち私は格納庫に向かいます・・・










 今アキトのエステは固定が終わり、アキトが降りてくる。


 タン!!


 アキトは無表情だ・・・


「アキト、部屋までもつか?」


 返答はない・・・

 早く連れていこう。


「おい、テンカワ話がある!!」


 ウリバタケが近づいてくる!!

 まずい!今のアキトに近づけるのは俺とルリだけだ!!


「待ってください!!ウリバタケさん!!」


 そこにちょうどルリが到着した。


「カイト早くアキトさんを!!」


「解った、行こう、アキト。」


「待てテンカワ!!」


「ダメです!!今のアキトさんに近づいては!!

 明日になれば元に戻りますから明日まで待ってください!!」


「ちっ!解ったよ。」


 ルリの説得に引き下がるウリバタケ。

 他の奴等も来たのでルリが止めている間に俺は急いでアキトを部屋に連れていった。






「オモイカネ、これよりルリ以外の人をこの部屋に入れるな。

 それから今から起きる事は記録から抹消してくれ。」


『了解。』


「これでよし・・・」


 俺はアキトの方に振りかえる。

 アキトは壁を殴りつけている、もう限界だな・・・


 元の世界でもこんな事はあった、ユリカに逢えない事に狂いそうになるアキトは

 自分を傷つけていった・・・

 このままではアキトがもたないと判断され取られたのがこの方法だ。

 当初はイネスとエリナとルリが担当する筈だったが、

 破壊衝動から変換したそれはあまりにも荒々しく3人掛かりでも止めるのが精一杯だった・・・

 だから異常の自己治癒力があり女である俺がやる事になった。

 もちろん自分で志願した、皆は反対したが俺にしかできない事だ。

 アキトも勿論嫌がったが、殆ど強制でこれは行われている。


 俺はアキトに近づきそっと頭に触れる。

 そしてリンクシステムを使い

 ユリカと会話で発生した「何か」を押さえるために生じた

 破壊衝動を更に別の物に変換する。


 これは俺にしか出来ないこと。

 俺だけがアキトにできる事。

 だから・・・


「アキト、いいよ・・・」


 これから始まることは俺にとっては

 至福の時間・・・








 次の日の朝・・・


 私がアキトさんとカイトの部屋の前に来ると

 そこではユリカさんとアキラがドアの前を行ったり来たりしていた。


「何をしているんですか?」


 私の声に驚く二人。


「あ、ルリちゃん!!」


「ね、姉さん!!」


「二人ともドアから離れてください。」


「えっ?でも・・・」


「離れなさい!!」


「「はっ、はい!」」


 私の殺気のこもった声にドアの前から離れる二人・・・

 
 まあ、あれだけ離れれば十分ですね。


 プシュッ!!

   プシュッ!!
 

 私はアキトさんの部屋に入り素早くドアを閉めた。


 入ってきてすぐ鼻につく血とアレの入り混じったにおい・・・


 壁には所々へこんだり血が付いています。

 そして部屋の奥のベットに座っている二人・・・


「アキトさん、もう大丈夫ですか?」


「・・・ああ、俺はな・・・でも・・・」


 アキトさんはカイトの治療をしていました。

 
 破壊衝動から変換された事と変換しきれない事もあり

 歪んだ暴力的な性欲・・・

 SMなど比になりません、あれはカイトか16歳時の私でなければ死にかねません。
 

「すまないカイト。

 またやってしまったな、俺は・・・

 こんな事、如何なる理由があろうとも許されるわけがないのに。

 カイト、本当にすまない・・・」


「いいん・だ、これは・・俺が望んでやっている事・・・

 それにこうしたのはアキトの責任じゃない・・」


「しかし!!」


「いいんだ・・・じゃあその代わり約束してくれ、今夜は・・・」


「解った、約束しよう。」


 カイトとアキトさんはなんだか良い雰囲気です。

 ちょっと妬けますね・・・


「あ、いいですね、私も混ぜてください。」


「ル、ルリそれはまずい!!

 それはマジで犯罪だ!!

 だいいちその身体じゃ絶対に無理だ!!」


「口で、なら出来ますよ。

 それに一人の夜は寂しいんですよ、

 たまには私の相手もしてください。」


「いや、でもだな・・・」


「私をこんな身体にしたのは誰ですか?」


「あうあうあう・・・・」


 アキトさん困ってます、本当に困っているときの顔はかわいいのですが・・・


 ってこんな事している場合ではありませんね。

 でも、この表情が出来るのなら、もう問題ないでしょう。


「ふふふふ、まあ100%本気ですけど、とりあえず置いといて・・・

 アキトさんそろそろ皆さんに顔を見せてあげてください。」


 さっきの表情から一気に暗くなるアキトさん・・・


「・・・合わせる顔がないよ・・・

 俺はこのナデシコを落とそうとしたんだぞ。」


「皆さん心配していますよ。

 いいから、ここは私に任せて、ユリカさんとアキラは表にいますから。」


「ちょっ、ちょっとまてルリ!!」


 私はアキトさんを部屋から追い出すように出しました。


 プシュッ!!

     プシュッ!!


「・・・まったくアキトさんも困った物です。」


「ルリ、アキトは大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ。

 ここはナデシコなんですから。」


 そうして、私はカイトの治療と部屋の掃除を始めた。






 俺はルリに部屋から追い出され、部屋の前に出ると

 そこにはルリの言った通りユリカとアキラが居た。


「あ、アキト・・・」


「兄さん・・・」


「・・・」


 少しの沈黙の後


「兄さん・・・

 私とユリカさん

 どっちの方が大切ですか?」


 ズルッ!!

   べチッ!!


 ・・・顔面から床に突っ込んでしまった。

 かなりいたひ・・・


「ふふふふ、よかった元の兄さんですね。」


「・・・へ?」


「もう元に戻ったんですね、心配したんですよ。」


 まさかそれを試すために言ったのか?

 そう言うのは止めてくれ、頼むから・・・


「それでアキト、回答は?」


「は?」


「だからさっきの質問の答え。」


 まったく、こいつは・・・


「二人を比べる事は出来ないよ。

 (二人とも俺の守るべきものだから・・・)」


 とりあえず答えておく、本音は言わなかったが・・・


「ん〜〜、まあいっか、今日はそれで許してあげる。

 じゃあ、アキトも元気になったみたいだし、私はブリッジに戻るね。」


「じゃあ私も戻りますね。

 あ、そうそうウリバタケさんとホウメイさんが呼んでいましたよ。」


「解った、行ってくるよ。」


 そして俺はユリカ達と別れ格納庫に向かった。

  

 格納庫でまずウリバタケさんに会い、昨日の戦闘についてこっ酷くしかられた・・・

 本当に心配してくれているようだった。


 それから・・・


「おっ、テンカワ、もう身体は良いのか?」


 リョーコちゃん達と出くわした。


「ああ、もう大丈夫だよ。

 ごめんね、迷惑かけて。」


「ま、まあいいって事だよ。」


 よく見るとリョーコちゃんの目の下にクマが出来ている。

 それになんだか眠そうだ・・・


「あれ、リョーコちゃん、眠そうだね?どうしたの」 


「ああ、ちょっとな・・・」


「リョーコね〜、昨日部屋で動物園の熊みたいにうろうろと落ち着きがなくてさ〜

 ほんと、見ているこっちも眠れなかったよ〜。」


「う、うるせ〜余計な事を言うな!!」
 

 顔を真っ赤にしてヒカルちゃんに抗議するリョーコちゃん。


 と、そこに・・・


「おいアキト、もう大丈夫なのか?」


 珍しくガイが現れた。


「ああ、昨日は迷惑かけたな。」

「ま、迷惑っていってもお前が敵を全部倒しちまったからな・・・

 それより何か悩みがあるなら相談しろよ、

 お前は俺の親友なんだぜ。」

 

「・・・ああ、ありがとう。」

 

 


 さらに食堂では


「遅いぞテンカワ!

 もうピーク過ぎちまったじゃないか。」


「す、すみません。」


 入って早々ホウメイさんに怒鳴られた。


「まったく、今日は客をだいぶ待たしちまったじゃないか、

 お前もコックなんだから、あまり腹を空かしてる客を待たしちゃいけないよ。」


「はい、申し訳ありません。」


「よし、じゃあ行ってよし、

 まず奥に溜まってる洗物を片付けといて。」


「解りました。」


 俺は厨房の奥に向かった。


「はい、アキトさん。」


 洗物を始めようとしたときエリちゃんが俺のエプロンを持ってきてくれた。


「ありがとう、エリちゃん。」


「アキトさん、パイロットも大変でしょうけど、

 ここもアキトさんの仕事場なんですから

 ちゃんと来てくださいね。」


「ああ、ごめんね。」


「あ〜〜!!エリが抜け駆けしてる〜〜〜!!」


「なんですって、エリ!!」


「エリ、ずる〜い!!」


「約束を破るきなの?」


 俺とエリちゃんが話している所に他のホウメイガールズもやってくる。


「エリ、前回あなただったんだから少しは遠慮しなさい。」


「あれは公平なじゃんけんで決めた物でしょ。」


「喋っていても手は動かす!!」


「「「「「は〜〜い!」」」」」


 ・・・・


(アキトさん、泣いているんですか?)


(なあルリ、ここはやっぱりナデシコなんだな。)


(ええ、そうですとも、ここはナデシコ。

 私が私になれた場所です。)


 俺は皆に悟られないように流れ落ちる涙を拭い作業を再開した。


 













 あとがき



作:さて次回は、一気に飛ばして外伝に行きます。

ルリ:外伝?そこは飛ばさないんですか?

作:ああ、外伝ではまたオリキャラが出るし、ちょっとオリジナルに入る上でも意味のあるポイントだからな。

アキト:またオリキャラか?ただでさえキャラを操りきれてないのに?

作:まあ、ここで出るやつはオリジナルに入ったら絶対に必要になるんだ。

  それにちゃんと減るキャラもいるし。

ルリ:誰がいなくなるんですか?

作:とりあえず今のところ全く元を知らないカグヤは消える事が確定している。

アキト:他は?

作:まあ、サブキャラが何人か消えるかも知れない・・・

ルリ:まあ、今はそんな所ですか。

作:そうだな、ではまた次回作でお会いしましょう、でわでわ〜。

 

アキト:読んでくれている人がいたらな・・・

 

 

 

 

 

管理人の感想

 

 

T-SAKAさんからの投稿です!!

DFSの初お披露目ですか。

まあ、確かに外せない場面ではありますよね。

しかし、アキト・・・壊れてるな〜(苦笑)

ま、ここまでイッちゃってたら逆に開き直ると強いかもね。

それが出来なのいのがアキトなんだけど(笑)

 

それでは、T-SAKAさん投稿有難うございました!!

 

感想のメールを出す時には、この T-SAKAさん の名前をクリックして下さいね!!

後、もしメールが事情により出せ無い方は、掲示板にでも感想をお願いします!!

出来れば、この掲示板に感想を書き込んで下さいね!!

 

 

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