機動戦艦ナデシコ

〜時の旅人〜

 

 

 

第一話(その1)解雇

 

 

 

 

 

昼時。

この時間帯は言うまでもなく『食べ物屋』の掻き入れ時であり、

大抵何処の食べ物屋も人で込み合っている。

この時間に人が込み合っていない食べ物屋は、一般庶民には絶対に立ち入る事が出来ないくらい

高額な料金をふっかける高級懐石料理店か、

料理が不味くて流行っていない店くらいなものだ。

……モノなのだ、が。

ここ、『雪谷食堂』の店内には5・6人程度しか客がおらず、昼時だと言うのに殆ど活気が無い。

別段、高額な料金を取っている訳でもないし、料理が不味いという訳でもない。

むしろ値段は低料金で、料理の味は万人が納得するほどだ。

有名な料理雑誌にも紹介された事がある。

……にもかかわらず、日を追う毎に客足はとおのく一方。

常連の客は毎日来てくれるものの、最早赤字スレスレだ。

何故、ここまでこの食堂が衰退したかと言うと……

「……あーあ。全く、ついてないよなあ、最近。犬に追っかけまわされるわ、

アレな客には絡まれるわ……」

原因は一人の店員の態度にある。

その店員、テンカワアキトははあと溜め息を吐き、一人愚痴っている。

「おーいテンカワァ、野菜炒め一つな。くれぐれも間違えるんじゃねえぞ」

「うーす」

店長である才蔵の催促を生返事で返し、チャッチャと手を動かす。

(……しっかしなあ)

ボケっと考え事をしていても手だけは勝手に、まるで別の生き物のように動き、

中華鍋に放り込まれた野菜を炒めている。

才蔵には『魂がこもっていない』とかいわれるのだが、どうにもこの癖ばかりは抜けきらない。

(……何時から俺はこの星にいるんだろう?そして、一体どうやってきたんだ?)

野菜を炒めていた手を休め、本格的にぼけーっと考え始める。

テンカワアキトはこの星(地球)の人間ではない。

と言っても、『地球を征服しようとする悪い宇宙人』と言う訳ではない。

この時代では既に『他星移民』が成功しており、人類の生活圏は一気に火星まで広がった。

生活圏の最北端である火星は『テラフォーミング』が終了し、環境は地球と何ら遜色が無い。

地球と同じ様に学校があり、会社があり、家庭が有った。

アキトもその星で穏やかに日常を送っていた。

……第一次火星会戦が始まるまでは。

今思い出しただけでもぞっとする。

 

 

「あの日」、アキトは『いつもの様』に町へ買い出しに出た。

『いつもの様』に食材を買い、『いつもの様』に町の人と談笑し、『いつもの様に』帰路についた。

そして『いつもの様』に料理を作る。……筈だった。

耳をつんざくような爆音。その音によって日常は、平穏は完全に叩き壊された。

空は朱に染まり、機械の『虫けら共』は蹂躪する。

さっきまで穏やかだった町に甲高い悲鳴が木霊し、

子供たちは『お母さん、お母さん』と叫びながら泣きじゃくり、

虫けら共は人を、まるで『虫けら』のように殺戮し尽くす。

無表情に、無感情に。

ふ、と辺りに目を落す。血と、肉と、糞尿が辺り一面に飛び散っており、まるで地獄のような光景だ。

人がそこにひれ伏していた。

内臓はグチャグチャで、頭蓋骨はむき出し、右足は奇麗に無くなっている。

それでもまだ生きているらしく、小さくうめいていた。

助けるべきか、見捨てるか、考えている暇など無かった。

後ろから聞こえる嫌な機械音。

今度は自分を殺すつもりなのだ。

アキトは絶叫し、自分の乗っていた車を全速力で走らせる。

それから直ぐだった。車が何か柔らかいものを踏み、大絶叫が響いたのは。

必死で車を緊急災害用地下シェルターに向かって走らせた。

『助けてくれ』という自分に助けを求める断末魔に耳を伏せ、

途中、何度も『柔らかいもの』を踏みつけ、叫びながら。

シェルターの中に入っても、不安と恐怖感はやはり消えなかった。

それは他の人も同じらしく、大半の人達は体を丸め、親しい者同士で身を寄せ合っていた。

アキトはこの時、何故だかやけに頭が冴えており、冷静に当たりの様子を観察していた。

小さな女の子の姿が目に留まる。大体小学1〜2年生と言った所か。

『ねえ、ママ、何でみんなこんなに薄暗いところでまるまっているの?』

と、心底不思議そうな顔で母親らしき人物に尋ねていた。

まだ小さいが故に、『何が起こったのか』解らないのだろう。

無邪気な表情で『おなか、すいちゃったよ。ねえママ、今日のご飯は何?』と言っている。

今日、こんな事にならなければ、あの家庭の夕ご飯はどんなものだっただろうか?

そう考えながら、女の子に近づいた。

女の子もこちらに近づいてくる足音に気付いたらしく、アキトの方へ顔を向けた。

『おなかがへっているんなら、これを食べるといい』

買い出しの時に買ったみかんを赤いリュックサックの中から取り出し、女の子に差し出した。

『もらっていいの?』女の子は尋ねる。

『遠慮しなくて良い。遠慮しなくていいんだよ』

女の子を頭を撫でてやりながら、そう言った。

『有り難う』

女の子はにっこりと、可愛らしい笑みをアキトに見せる。

『本当に有り難うございます』

女の子の母親が頭を下げて礼を言う。

『いえ、困った時はお互い様ですから』

良く言えたものだ。

ここに来るまで、一体自分がどんな事をしてきたか。

叫びながら死人を踏み付け、泣きじゃくりながら生者を見殺しにしてきた。

偽善者も良い所だと自分で思う。

しかし、この小さな、まだ何も知らない女の子にこの事を悟られては駄目だと思い、必死で笑顔を作る。

そして、やっとの思いでこの言葉を口から出した。

『君の名前はなんて言うの?』

その声は震えていた。

『アイ。ねえお兄ちゃん、今度一緒にでーとしない?』

この女の子の、純真無垢な笑顔を見ていると、

何か自分が酷くみすぼらしい生き物のように思えてくる。

『ああ、良いとも。君が大きくなったらね』

この言葉を吐くのが精一杯だった。

アキトの気持ちとは裏腹に、女の子はより一層可愛らしく笑い、

それから……

それから……

 

 

「うわああああああああああ!?」

「うーるーせえ!!」

――ゴツン。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!?」

才蔵の投げたオタマがアキトの頭部にクリーンヒットし、

アキトは頭を押さえながら狭い厨房の床をのたうつ。

余程痛かったらしい。

「何、おセンチになっていやがる!!料理作っている時は料理の事だけを考えろ!!

毎回毎回食材を無駄に使いやがって!!

愛も怒りも悲しみも、全てを忘れて料理に魂を注げ!!

それが出来なければ死んでしまえ!!

いや、今すぐここで死ね!!」

羅刹のような表情の才蔵。

厨房には焦げ臭い匂いが充満しており、

アキトが先ほどまで野菜を炒めていた中華鍋からは黒い煙が立ち昇っている。

炒めていた野菜は殆ど真っ黒こげになり、食べられたものではない。

「な……殴らなくったって良いじゃないすか!?」

アキトは涙目で才蔵に抗議する。

「黙れ!!口でわかんねえやつはぶん殴る他ねえだろう!?

……もう良い、早っさとこげたやつ処理して注文取りにいってこい!!」

才蔵のこめかみにぴくぴくと浮き出る血管。

アキトの頭をもう一度オタマで殴り、怒鳴りつけた。

「……うぃす」

アキトは頭をさすりながらレジの近くにあった紙とペンを取り、食堂の方へと足を向けた。

 

 

 

一ノ瀬真矢はその日、機嫌が悪かった。

何故機嫌が悪いのか。給料日前日で懐に金が無くてピンチ、『上』からの理不尽な命令……

その理由を挙げればきりがないが、その最大の理由は彼の隣を歩いている一人の少女

いや、果たして歩いていると言って良いものか、彼女の顔は真っ青で、

瞳孔は開ききり、足は歩く事もままならないほどガクガクと震えている。

重病の患者が無理矢理体を振るい立たせ、一生懸命に歩いている、と言った感じだ。

いかにも病弱そうな(というよりも死ぬ間際。ただいま顔も見た事の無い曾祖父と邂逅中)

彼女の名は、霧原優と言う。

彼女の外見は特徴的で、膝の裏辺りまで伸びた黒い艶やかな髪。

メッシュなのか、それとも地毛なのか、所々に真っ白い髪が交じっている。

服装は上半身、下半身共に真っ黒ずくめ。

……と言っても、どこぞの黒の王子様みたいな怪しさ爆発と言う訳ではなく、割と普通である。

が、服の至る所に、ふくらはぎの辺りまである少し長めのスカートの端の部分にまで、大小問わず

『ポケット』がついている。

そのポケットに何かが入っていると言う感じはなく、どのポケットも全部平べったい。

「はあ……はあ……ち、ちょっと待ってよ……ねえ……」

真矢は、ほとんどうめき声に近い優の呟きを無視し、振り返る事無く前へ前進する。

「……ねえ…………」

やはり、真矢は優の声を無視し、止まることなく歩き続ける。

「ああ……ちょ………差が段々と……ねえ、まってってば……」

真矢と優の距離が50メートルほど離れた時、真矢は突然、前進を止めた。

優がその様子を見てほぅっと安堵の溜め息を口から漏らした、次の瞬間。

「ああ!!……だから待ってってば!!何で全速力で走り出すの!?」

真矢は全速力で走り出した。

優はその場に一人残され、必死に(本当に必死に)真矢の名前を連呼する。

が、真矢がそこに戻ってくる気配はない。

「……本気でヤバイかもしれない。冗談じゃなくて本当に刻が見える……」

優は意識が朦朧とした中で呟き、そこにどさりと倒れた。

 

 

真矢は全速力で走り続けていた。

……とても爽やかな表情で。

今まで背負っていた重荷が取れ、『開放された』とでも言わんばかりに。

「やっと……やっとあの女から開放された。

いくら命令だからと言って、あの女と一緒に組んでいられるか。

あんな疫病神と一緒にいたら、胃に何個も穴が空いちまう……!!」

あの女に関って今までろくなめに有った事はない。

思い出しただけでも頭が痛くなる。

真矢は一度立ち止まり、後ろを振り返る。

2〜3人がこちら側に歩いてきているが、その中に優はいない。

まあ、彼女の体調を考えれば当然の事だが。

「さて、と。今ごろアイツはのたれ死んでいる頃だろうなあ。

『目的』も成就しない内に死んでしまうとは報われねえやつだ。

………安心しろ。お前の死は思いっきり無駄にしてやるからな」

うんうんと感慨深げに頷く。

優が目の前から消えたので気持ちが軽くなったのか、真矢は鼻歌混じりに歩き始めた。

これほど清々しい気分になったのは何年ぶりであろうか。

今まであの女がどれだけ負担を掛けてきたか改めて実感した。

しかし、たった今からそんな事を考える必要も無い。

自分は『霧原優』と言う呪縛から開放されたのだから。

「……死んでないよ。私」

……何か後ろから『アイツ』の声が聞こえたような気がしたが、それはきっと気のせいだろう。

先ほどどれくらいの距離を走ったのか正確には解らないが、大体3キロ程度は走ったはずだ。

健康な常人なら兎も角、『あいつ』には日が沈んでも追いつけない距離だ。が……

「ねえねえ、さっきなんで私を置いてけぼりにしたの?危うく鴉の餌になっちゃう所だったよ?」

……間違いない。

息を荒げながら、必死で腹の底から絞り出しているようなこの声は……霧原優だ。

「何故」

「……はい?」

まだぜいぜいと苦しそうに呼吸している優に真矢はきいた。

「なんでお前が此処にいる?」

「居ちゃ駄目なの?」

「そういう意味じゃなくて、だ。どのようにしてここまでたどり着けたんだ?」

前述した通り、彼女の体力で真矢の所までたどり着くのは極めて困難である。

「『移動』したからだよ。確かに普通に歩いてきたんなら、私は途中で日射病になって倒れちゃうけど、

『移動』する事位は出来るもんね」

「……はあ?」

「詰まり……『ボソンジャンプ』したんだよ。

あそこから、ここまでね」

最初からそう言えば直ぐに分かったのに。と、真矢は思う。

こいつの悪癖は、自分の分かるようにしか説明しない事だ。

「『真矢の近くにジャンプアウトする』ようにイメージングしたの。だから私は此処に居る訳」

真矢はふうんと優の言った事をさして気にしていないような素振りを見せ、暫く考え込み、

数十秒後、顔を真っ青にしながら『まさか』と口の中で小さく呟いた。

『自分の近くにジャンプアウトできる』と言う事は……

「俺とお前の距離がどれくらい離れていても、お前は一瞬で俺の元へたどり着けるって訳か?」

「うん、迷子にならなくてとっても便利でしょー?」

要するに、自分はこの疫病神から絶対に逃げる事が出来ないと言う事だ。

……地獄だ。

この女と一緒に居たら本当にろくな事に……

――グシャ。

その時、空から何かが降ってきた。

「……あ、バッタだ」

優の呟いた通り、それはバッタだった。

そのバッタは大きな機械音を立て、こちらに機銃の照準を合わせる。

空から落ちてきた衝撃で半分壊れているが、こいつの相手は機動兵器ではなく、人間だ。

対した問題ではないだろう。

ビクンとバッタの赤い目が動き、

――ドドドドド……

戸惑うことなく機銃を乱射してきた。

まあ、こいつは『こういう事をするために作られた』のだから、当然と言えば当然なのだが。

真矢は銃弾を難なく避け、全速力で走り出した。

銃身を見、軌道を予測すれば銃弾を避ける事くらい簡単だ。

所詮、銃弾は一直線にしか飛んでこないのだから。

「……っと、優、この場は任せた。精々戦って、もろともに逝け!!」

「ええっ、わたし!?

……しょうがないなあ。じゃ、あそこで待ってて」

50メートルほど先に有る、『雪谷食堂』と書かれた看板を指差した。

真矢は声も出さずにその食堂に向かって走る。

――後ろから聞こえる機関銃の乱射音。

時々甲高い悲鳴が上がるが、それが優の悲鳴ではない事は直ぐに分かる。

大方、一般人がとばっちりを受けているのだろう。

赤の他人だ。気に留める必要はない。

 

 

程無くして『雪谷食堂』にたどり着き、ガラリと入り口である戸を開ける。

それと同時に漂ってくる『焦げ臭い』匂いと黒い煙。

中に居る客はその煙を吸ってむせ返り、鼻を押さえながら店員らしき人物に文句を言っている。

店員はそのブーイングに頭ごなしに謝っている。

……もしかすると自分はとんでもなく不味い料理を出す店に来てしまったのではないか、と、考える。

しかし、そんな事はどうでも良い。

真矢は味に五月蝿い『食通』とか言う人種ではないし、どの道腹がすいている。

『腹に入れば皆同じ』と言うやつだ。

真矢は適当な椅子に腰を下ろし、テーブルの上においてあったメニューを見る。

ラーメン、チャーハン、定食。

……どれも低価格だ。

「あの、すいません……よろしければメニューを」

ぼさぼさ髪の、冴えなさそうな青年が紙とペンを持って自分に話し掛けてきた。

年の頃は大体自分と同じくらいだろうか。右手の甲にIFSの刻印が浮き上がっている。

……パイロット?

しかし、そうだとしても何故パイロットが注文取りを?

一年前に全滅した火星はともかく、此処、地球ではナノマシンを好き好んで体内に注入するのは

IFS式の機動兵器のパイロットくらいなものだ。

他の人間は皆、『体内に異物を注入する』と言う行為に抵抗感が有るらしい。

手のひらにも、体の中にも、人間の体には数千数万の生物が寄生している。

今更「寄生」するものが一つ増えようと二つ増えようと、あんまり変らないような気がするのだが。

……もしかするとこの青年はパイロットではなく、全滅した火星の生き残りかもしれない。

火星が「木星」の手によって全滅したのはたったの一年前の事だ。

全滅する以前に地球に引っ越してくるなりしたのであれば、此処にいるのは納得できる。

『数年前に火星から地球に引っ越してきた青年が金に困り出し、この食堂でバイトするに至った』

とでも解釈すれば、辻褄が合う。

「……あのう、注文を」

「チャーハン」

その声によって自分の思考が遮られたため、真矢は少しぶっきらぼうな調子で応えた。

「注文はそれだけですか?」

「ああ」

「横に座って居る方の注文は?」

この店員は一体何を言い出すのだろうか。

自分の隣に座っている人間など居る筈が無い。

第一自分は一人で来たし、『あいつ』は今ごろ半壊したバッタに銃殺されている。

「あいつ」にバッタをどうにかする事の出来る戦闘力は持っていない。……筈なのだ。

「じゃあ、水を一杯」

真矢の隣から、聞きなれた声が響いた。

その声は間違いなく……

「水……ですか」

「肉……嫌いだからね」

呆然としている真矢をよそに、二人は会話を続ける

「はあ……?」

「あと野菜と穀類と果物も。固形食は全部駄目」

ならばコイツはどうやって栄養を補給しているのだろう?

青年は注文を取り終わり、厨房の方へと戻っていく。

真矢はゆっくりと視点を隣に移動させた。

そこに居たのは案の定、霧原優だった。

『ヤッホー』とか言いながら軽く手を振っている。

「いつからそこに居た貴様ぁぁぁぁぁぁ!!」

真矢は優の首根を掴み、がくがくと揺さぶる。

「や、婦女暴行?駄目だよ。そんな事しちゃあ」

むかつくほど爽やかな笑顔で優はそう言った。

本当に暴行してやろうか、などと考える。

 

 

「ねえ、なんで私達、ここに居るのかな?」

それまで真矢がチャーハンを食べる姿をじっと見詰めていた優が口を開いた。

訳の分からない、奇妙な質問だ。

「あ?ああ、そりゃあお前、『前進』するためさ」

真矢は口に運ぼうとしていたレンゲを皿の上に置き、その奇妙な質問に答えた。

その答えも奇妙なものだった。

少なくとも、質問の答えにはなっていない。

真矢の答えは余りにも『漠然的』過ぎる。誰が聞いたって、

その答えの意味はさっぱり分からないだろう。

優は小首をかしげ、

「『前進』するため?」

「そう、前に進むためだ」

「……『此処』が何処だか分かってていってるの?」

『此処』は優達にとって、言わば『後ろ』なのだ。

『後進』しているのに『前進』しているとは矛盾しているのではないか、と、優は疑問に思う。

「ここに来るしか方法がなかったから、ここに来たんだよ。あそこじゃもう、前に進む事は出来なかった」

「『遺跡』のせいで?」

遺跡……それは太陽系内に存在する、何者かが残した過去の『はた迷惑』な遺物。

そのテクノロジーは現在の人類の科学力を軽く超越し、使い方次第では一瞬にして

生きとし生けるもの全てを屠り去る事の出来る余りにも強大なもの。

そんな物が太陽系内にごろごろと転がっているのだ。

迷惑極まりない。

「そうだよ。あれは人間を狂わせる。有無も言わさずにな。

あれさえなけりゃあこんなとこに来る事も無かったろうよ。全く、愚かとしか言いようが無いね」

遺跡の力に魅せられ、堕落していった者達は数知れない。

ある物はそれに利益を求め、あるものはその力を欲し、

またあるものはそれを使って他人を服従させようとした。

遺跡は人間にとって、『何でも願いをかなえてくれる夢のようなもの』なのかもしれない。

しかし、そういう都合の良いものは大抵、『悪い願い』しかかなえてはくれない。

彼らの『故郷』が、それによって滅びたように。

「けれども、あれが無きゃ私達はここに来る事は出来なかったよ?」

「あれが最初から無ければ何も起こらなかったはずだ。

……それに見てみろよ。今、ここで起こっている状況を。『木星』と『地球』はあれの利権をかけて争い、

この戦争に巻き込まれている人間の殆どは『遺跡』の事なんて全く知らない。

地球側の兵隊は木星の正体が自分等と同じ『人間』だとは知らず、

『異星人から地球を守る正義のヒーロー』を気取っていやがる。

木星側の方は更に質が悪い。『徹底抗戦派』の連中は『百年越しの復讐』だの何だの言っているが

そんな物は既に風化しきって、ボロクズと化している。あいつらはその事に気付かず、

盲目的な正義を信じ、偽善的な熱血に先導され、良い手駒に成り下がっている事実にすら目を背けている。

……はっ、最低に最悪が重なって起こった目眩がするほどの無駄死にのオンパレードだ。

嫌になってくるね。こんなあほらしい戦争」

真矢はコップに並々と注がれた水を一気に飲み干し、再びチャーハンを食べはじめる。

先ほどはおいしそうに食べていたのだが、今はムッとして、険しい表情で食べている。

恐らく、味は吟味せず、唯、単に食べているだけだろう。

店の中にいた客は2人ほどになり、厨房からは食器類を洗う音が聞こえてくる。

誰一人として喋らず、食器を洗う音だけが食堂に響く。

昼時の食堂だと言うのに全然活気が無い。

……気まずい雰囲気。

「……ゴメン。せっかく美味しそうに食べていたのに」

その雰囲気に耐えかねた優が暗い表情で真矢に謝った。

真矢は既にチャーハンを食べ終わっており、顎に手を当て、

ご飯一粒も残っていないチャーハンの皿をじっと見詰めながら、考え事に耽っていた。

優の声は全く聞こえていない。

真矢は時間さえあれば大抵、何か考え事をしている。

今自分が置かれている状況、昨日食べた夕食、先ほどすれ違った、縁もゆかりも顔も知らない人、

兎に角何でも良い。

いくら考えても結果のでない物や、逆に一分と掛らずに答えが出てしまう物であろうが。

真矢は『何かを考える事』が趣味であり、『その考えの結果を導き出す事』にはあまり興味はない。

考え事をしているだけで、それだけで満足なのだ。

因みに今回のテーマは『近所に住んでいるさっちゃんとまーくんの関係』

真剣な顔で思考している割には何とも仕様の無いテーマだ。

「ねえ、真矢、聞いてる?ねえ?」

真矢に無視されたため、少し不機嫌な様子で優は真矢の肩を揺する。

先ほどから話し掛けているのだが、ずっと無視されっぱなしだ。

真矢は鋭い目つきで優をジロリと睨む。

真矢にとって自分の思考を邪魔されると言う事は、これ以上無いほど不快なものである。

邪魔した人間が親しい者であっても、自分の上司であっても、声を荒げ、険悪な態度を取る。

それが優であれば尚更だ。

優はその事を承知しているのだが、そんな事はお構い無しに何時も何時も真矢の思考を遮る。

いくら注意しても、首を絞めても、銃で威嚇しても、懲りる事無く真矢の思考を遮る。

真矢は優のそこがとびきり気に入らなかった。

「用件は手短に言え。うざい。邪魔。死んでしまえ」

「ひっどーい!!人が謝ってるのに、そんな言い方って有る!?」

「良いからさっさと言え」

「……もう良いよ。それより、いつまでここにいる気?

私が声を掛けなきゃずっとそうしてたでしょ?

チャーハン一杯でずうっと食堂に居座るのは図々しくない?

考え事は他でも出来るから早くこの食堂から出ようよ」

水一杯で食堂に居座る方が余程図々しいと思うのだが、優の言う事にも一理ある。

遅かれ早かれ食堂から出る羽目になるのなら、早い方が良い。

真矢はズボンの右ポケットに手を突っ込み、財布を取り出そうとする。

が、右のポケットには何も入っておらず、真矢はちょっとした違和感を感じた。

左のポケットに財布を入れたのだろうか。

真矢は何時も右のポケットに財布を入れている。

これは習慣と言うよりも『癖』であり、体に染み付いてしまっているため、

『何時も財布を入れている場所に財布が入っていない』と言うのは少しばかりの不安を掻き立てる。

今度は左のポケットに手を入れてみる。

しかし、財布はない。

まさか、と思い上着のポケットの中に財布があるかどうか探ってみた。

財布は何処のポケットにも見当たらない。

……状況を整理してみよう。

真矢は財布が無い事に気付かず、チャーハンを注文し、それを食べた。

要するにお金を持っていないのに商品の料理を食べてしまってしまった、と言う事になる。

人はこれを、『無銭飲食』と言う。

真矢は優の耳に口を近づけ、優にしか聞こえない様に小さな声で囁いた。

「……逃げるぞ」と。

 

 

アキトは必死になって商店街を疾走する。

ぜいぜいと、息を荒げながら苦しそうに走る。

一年前ならばこの程度の運動など訳ないのだが、

今更ながらにもっときちんと運動しておけば良かったと後悔する。

しかし、後悔した所でこの状況を打開できる筈も無く、アキトは自分の頭の中でぐるぐると回っている

マイナスの思考を払拭し、前を走っている『食逃げ犯』を捕まえる事だけに集中する。

何せ自分の首が掛っているのだ。

このままむざむざと取り逃がす訳には行かない。

『もしも食い逃げ犯を逃がしたら、お前を本当に首にする』

才蔵は冗談を言わない人間だし、何しろとてつもなく頑固だ。

絶対に自分の考えを曲げない。

その為、料理に難癖をつけてくるヤクザと正面衝突をする事もしばしばある。

店員のアキトがとばっちりを食うのもしょっちゅうだ。

『待て』とか『止まれ』とかいっても食逃げ犯が言う通りに行動してくれる筈も無く、

差は開いていく一方だ。

食逃げ犯は肩に人一人抱えているにも関らず、そのスピードが落ちている様子はない。

むしろ、スピードがぐんぐんと上がっている。

何で人を担いでいるあんなに早いのか、良く考えてみればかなり『異常』な光景なのだが、

無我夢中になって食逃げ犯を追いかけているアキトにはその事まで頭が回っていない。

食逃げ犯を捕まえるためだけに意識を集中し、疲弊しきった足を酷使させ、力を振り縛る。

今の状態のアキトに、商店街の上空から響いた爆発音を認識する事は出来なかった。

 

 

霧原優を右肩に担いだ格好で、真矢は先程の食堂の店員、テンカワアキトから逃げ回っている。

そんなに早いと言う訳でもないのだが、兎に角しつこい。

アキトをまくために商店街の裏道を通り、人様の家に勝手に入り、

路上で気持ちよさそうに寝ていたブチ猫の尻尾をふんずけた為に顔を引っかかれ、

障害物を飛び越え、行く手を遮る人間を千切っては投げる。

それでもアキトはしぶとく食いついてくる。

アキトの瞳には殺気と言うか執念と言うか、そう言った類の強い感情が篭っている。

もう勘弁して欲しい。

アキトの執念には敬意を払うが、いくら何だってしつこすぎだ。

息も上がって、体を動かすの辛いのがなら、大人しく引き下がってくれ。

こっちだってこんな茶番に付き合っていられるほど暇じゃあないんだ。

胸中で悪態をつき、八百屋の角を曲がった時だった。

――上空から聞こえてきた何かの爆発音。

この町は軍の戦艦のドックの近くにあり、地球軍と木星蜥蜴、

即ちバッタやジョロが交戦する事はさして珍しいものではない。

日に何度か、酷い時は一日中町の真上で派手な空中戦を繰り広げる。

町の住人達にとってはいい迷惑なのだが、軍は民間人を巻き込まないよう、

精一杯に努力しているのだ。

文句を言える立場ではない。

しかし、それでも町への被害を全て押え込める事は出来ず、町には小さな被害が出る。

尤もその被害は、爆発四散したバッタの破片が町に降ってくるとか、騒音など、

本当に気にする必要がない、微風程度のものだ。

たまにバッタが町に降下して来る事もあるのだが、それも直ぐに鎮圧される。

上空で『戦争』をやっていると言うのに、この町は軍のお陰でとても『平和』なのだ。

真矢はぴたりと立ち止まり、上空を見上げる。

地球側の機動兵器、『エステバリス』が10匹程度のバッタに囲まれ、四方八方から攻撃を受けていた。

コックピットは既に射出され、無人になっている。

バッタの人工知能はその事が解らないほど間抜けではないのだが、

敵機を完全に殲滅するようプログラムされているのだろうか?

真矢は思考を巡らせようとしたが、

『待て!!』という大きな叫びと体を前に倒される衝撃で、それは出来なかった。

真矢の肩に担がれていた優は頭からアスファルトに激突し、蛙がひき潰されたような声を出した。

頭から血をだくだくと吹き出し、路上を黒く染める。

直ぐにでも救急車を呼ばなければ確実に生き絶えてしまいそうな気がしないでもないのだが。

真矢はアキトとの取っ組み合いで優を気に留めていないし、そうでなくても優を無視するだろう。

優が名前も知らない曾祖父と邂逅したのは、今回で二度目だ。

太陽の光を吸収して、生暖かくなったアスファルトの上で、

真矢とアキトはゴロゴロと転がり、取っ組み合いを始める。

アキトが真矢の右手を掴み、真矢がそれを力任せに振り払う。

疲れていのるか、それとも怒り狂っているのか、

アキトは顔を真っ赤にしながら、『金を払え!!』と叫ぶ。

間近で叫ばれ、真矢の耳がきんとする。

金を払えと言いわれても、払えないものは払えない。

そう言おうとしたが、寸前で止めた。

いった所でアキトの神経を逆撫でするだけだし、彼は我を忘れている。

我を忘れているのなら、正気を取り戻させてやればいい。

そうする方法は単純かつ明快だ。

>殴ってやればいい。

馬乗りになっているアキトの頭をがしりと掴み、頭突きをかましてやる。

アキトは怯み、その隙に腹部に掌底を叩き込む。

真っ赤だったアキトの顔が真っ青になり、漸く『食逃げ犯』以外の景色が目に映る。

それと同時に胃の底から込み上げてくる嘔吐感。

見事に掌底が効いたのだろう。

確実に吐いてしまう。堪える方法はない。

ならばいっそのこと吐いてしまおう。

この男の顔めがけて。

それがアキトの出来る、食逃げ犯への唯一無二の反撃だった。

真矢はアキトのやろうとしている事に気付き、そうはさせまいとアキトを投げ飛ばした。

誰だって顔に吐瀉物を掛けられていい思いをする筈がない。

顔に排泄物を掛けられるよりはマシかもしれないが、それは比べるだけ野暮と言うものだ。

アキトは嘔吐しながら宙に弧を描き、地面に叩き付けられた。

格闘技の類をやった事のないアキトは受け身を取る事が出来ず、全身に痛みが走る。

頭から落ちてなかった事が幸いし、脳震盪は起きていない。

「全く、酷い目に会ったぜ」

耳の中に先ほどの食逃げ犯、真矢の声が入ってくる。

冗談じゃない。

酷い目に会ったのはこっちの方だ。

あんたを捕まえる事なんて俺には到底無理だろうし、俺の首が切られるのは決定的だ。

食逃げやっているあんたは知らないだろうが、今の時代は何処もかしこも就職難なんだぜ?

何せ戦時下なんだ。何処も不況真っ最中さ。俺のように能力も学歴も中途半端な人間は

仕事一つ見つけるにも血眼になって探す。

これから次の仕事を見つけるまでにかなりの時間が掛る筈だ。

20歳にも満たないガキが持っている金の額なんてたかが知れてる。

野宿して、バッタに会って、それで終わりだ。

いや、ここら辺は治安が安定しているからそういう事は殆どないか。

あんたが俺の仕事を斡旋してくれるんなら随分と気持ちが楽になるんだが。

どーしてくれるんだよ、おい。

アキトは真矢に向かって大声で散々に罵ってやりたかった。

そうすれば自分の中にたまっている鬱憤が少しは解消されるのだが、

体全体を駆け巡っている痛みがそれを許してくれない。

暫くたって全身の痛みが引いてきたアキトはよろよろと、吐瀉物を地面に撒き散らしながら立ち上がる。

胃へのダメージは相当なものだ。

先程の掌底は単なるがむしゃらな殴打ではなく、中国拳法か何かなのだろう。

やがて胃の中が空になり、吐くものも無くなったらしく、口からは何もでなくなる。

口内には甘ったるいのような、苦いような、気持ち悪いような、形容し難い味が広がっている。

アキトは憎々しげな表情で真矢を睨むが、真矢はアキトを一瞥するとすぐさま上空へと視線を移した。

「……来る」

そう小さく呟き、懐から取り出した、

無骨で、いかにもと言った感じの黒塗りの銃の照準を上空へと向ける。

目つきが鋭くなり、辺りに殺気が満ち、ピリピリとした雰囲気になる。

殺す気満々、と言った感じだ。

「……今すぐに身を屈め、うずくまれ。高々100円か200円で命が救われるんだ。安いもんだろ?」

100円か200円とは先程のチャーハンの事を言っているのだろう。

アキトは真矢の指示に従う気は毛頭無く、憎しみが篭った視線を送るばかりだったが、

直ぐにそうせざるをえなくなった。

けたたましい轟音と共に降り注ぐ、殺傷力を持った重苦しい雨。

無数の銃弾が地面に突き刺さり、強固なアスファルトにひびを入れる。

近くに在った建物の屋根は崩れ、勢いを伴って下に落ちていく。

『ぎゃー!!』とか『ワー!!』とかいった悲鳴が上がったが、

その声は建物の崩壊音によって直ぐに掻き消された。

何があったのかと野次馬達がその場に集まってくる。

おかしな話だが、

これ程の被害が在ったのはこの町の上で『戦争』が繰り広げられるようになってから、初めての事だ。

その光景を見てアキトの頭の中で再生される、あの日の事件。

ユートピアコロニーでの、惨劇。

この町もああなってしまうのか、虫共はまた蹂躪し、人の命を安々と奪い取るのか。

自分はまた逃げ回るのか、またあの女の子と会い、目覚めればまた違う場所に居るのか。

再び聞こえる、あの嫌な機械音。

これは全て夢ではないのか、と、考え出す。

試しに頬を引っ張ってみる。

……痛かった。

アキトは虚ろな顔で機械音が聞こえる方向、上空に目を向ける。

バッタが垂直状態になり、こちらへと機関銃を向けていた。数はおよそ10。

その中の一匹と目が――正確にはモノアイだが――合う。

間違いない、標的は自分達だ。

「虫風情が……図々しい」

忌々しげに呟くが、アキトはその虫風情をどうにかする力は持ちあわせていない。

出来る事が有るなら、脅え竦み、バッタに殺されるのを待つ事くらいだ。

虫風情にも抵抗する事が出来ない。自分は虫以下だ。

銃声が三回、辺りに響く。

遂に自分が死ぬのか。

そう考え、アキトは目をつぶる。

が、何時までたっても来ると思っていた自分の体を貫く銃弾の衝撃が来ない。

アキトが目を開けるのと、目の前に何かが落ちてきたのはほぼ同時だった。

落ちてきた物体はバッタだ。

モノアイに大きな穴が空いており、ばちばちと火花が飛び散る。

ぴくぴくと、機械のくせにまるで本物の昆虫のように動いていたバッタはやがて動きを止め、

完全に機能が停止した。

続いて落ちてきた二匹目と三匹目も同じ様に穴が空いていた。

「安いもんだろう。本当に」

真矢は銃を天に向けたまま、アキトに言った。

確かに、とてつもなく安い。

しかし、その安い金額を払ってもらわないと自分は雪谷食堂を首になってしまう。

アキトは再び真矢に敵意が篭った視線を向けた。

真矢はそれを素知らぬ顔で受け流し、バッタをもう一匹落そうと引鉄を引いた。

――ガキン

「……?」

弾が出ない。

真矢はもう一度銃の引鉄を引いた。

――ガキン

やはり弾は発射されず、引鉄の音だけが空に響く。

冷や汗がたらりと頬を流れる。

「………やべっ、そう言えば」

思い出した。

真矢が今撃っている銃は一度に7発の銃弾を装填する事が出来る。

が、諸々の事情により銃弾は三発しか装填していなかった。

銃弾には「一時的に敵機が展開しているディストーションフィールドの防弾性を緩和させる」

という効果が付加されている。

それもきちんとすべての弾丸に。

その為、弾丸一つの値段がべらぼうに高い。少なくとも普通の銃弾の10〜20倍。

どこぞの重工の会長なら兎も角、

安月給で働いている真矢にその値段は目玉が飛び出るほど高価だ。

100円か200円のチャーハンの金すら出せないくらいに。

真矢は銃を下ろし、引きつった笑いを口から漏らしながらアキトの方へと体を向けた。

「なあ、冴えない店員、ゲームってさ、スタートボタンを押せばポーズがかかるよな?」

「……?それが何だって言うんだよ食逃げ犯。そんな事はどうでも言いから金を払え」

「なにおう、お前、金が無くて貧困している人間にまで金を巻き上げようって言うのかよ。

どうせ食逃げしたのが可愛い女の子だったら、へらへらしながら『これは俺の奢りだよ』

なんて言うんだろ?……ケッ、偽善者野郎が」

「ああ、そうさ。無銭飲食恐喝傷害野郎。腹に掌底をかまさない女の子になら喜んでそう言うだろうさ」

「……ゲロ吐き」

「吐かせたのは他でもないお前だ」

険悪なムードの二人。バッタそっちのけだ。

口論は次第に激しくなり、

「この電波野郎が!!なにアホな事いっているんだ!?」

「っせえな!!ほんとなんだよ!!唯単におまえ等が気付いちゃいないだけの事だ!!」

「『僕は未来人です』なんて信じられるか!!お前は妄想しがちな中学生か!?

見るな!!寄るな!!あっちいけ!!」

「居るんだよ!!本当に!!俺がそうであるように、

この時代の人間じゃない奴等なんてゴマンと居るだろうさ!!」

「じゃあ何か?『世界は未来人に操られている』とでも言うのか?

はっ、何処の三文小説だよ!?」

「事実なんだから仕方ねえじゃねえか!!」

――ドドドドド

「「あ?」」

いつまでも続くと思われていた口論を中断させたのはバッタが放った機銃だ。

アキトと真矢はその機銃の音で自分達がどのような立場に置かれているかを思い出し、

さっきからずっとそのままなのであろうか、垂直になったバッタを見る。

バッタの背中は開かれ、其処から無数のミサイルが顔を覗かせていた。

それも撃ち落とされなかった残りのバッタ七匹全員が、だ。

あんな物に当たったら確実に体が爆ぜてしまうだろうし、ここは商店街だ。

被害は先程の比ではない。

その光景を見ていた野次馬達が『軍は一体どうしたんだ』とか言いながら、

全速力でその場から離れていく。

アキトは自分もそれに乗じて逃げようかと考えたが、

バッタ達が発射しようとしているミサイルの数は相当なものだ。

今逃げた所で早く死ぬか、遅く死ぬか、それくらいしか変らないだろう。

「ヤバイな……大ピンチだよ。どうしようか?」

真矢は困った顔で――それでもまだ余裕があるような表情で――

アキトの顔を見た。

どうしようかと尋ねられても、アキトはその問いに答える事は出来ない。

「あのさ、真矢。ちょっと相談が有るんだけど……」

その声は真っ黒い血の海に横たわっている霧原優から発せられた。

いまだに頭から血を流し、口からも血を吐いている。

その出血量はゆうに体内の三分の二は有りそうだ。

と言うか、常人ならとっくに出血死している。

「……優、そう言えばお前って『S』級ジャンパーなんだろ?ならこの状況を何とかしろ。今すぐに」

そう言って真矢は上を指差す。

優は仰向けになり、垂直になったバッタを暫くじいっと見つめる。

『ああ、時が見える』とか呟いているが、真矢はそれを無視した。

優は弱々しく口を開き、

「……なんで私に話を振るの?移動する事しか能の無い自分に。

それに『S』級って言うのは『より精密なボソンジャンプが出来るA級ジャンパー』の事で、

別にCCとかジャンプフィールド発生装置が要らないって訳じゃあないんだよ?」

アキトに彼らの話は全くの意味不明だが、要するに『ボソンジャンプ』と言うのをやれば助かる

という事だけは分かった。そして、それには何かしらの道具が必要であると言う事も。

「だから、俺を移動させろって事だよ」

「町の人達は?」

「ああ?知るか。運が悪かったと思って諦めるしかないだろうな」

「それじゃあ駄目だよ。町の人達も助けなきゃ」

「ほお、ならお前は町の住人全員をジャンプさせるのか?」

「出来なくはないけど………それじゃあ余りにも手間が掛りすぎるよ。もっと簡潔に済ませる」

「その方法で俺達は助かるのか?」

「少なくとも、誰も死なずに済む方法はこれしかないんじゃないかな?」

「じゃあ、さっさとやれよ」

「うん…………その前に私、AB型なんだけど」

「はあ?俺はO型だ」

「輸血」

「ああ、分かった。後で好きなだけやらせてやる」

「良かった……それじゃあ、少しの間だけ眠ってて」

「……?それは一体どういう意味なん」

言い終わらない内に真矢の意識は途絶え、弦が切れたようにそのまま地面に力なく倒れた。

「……え?」

その様子を見ていたアキトがこの状態を引き起こしたのであろう、優に視線を移す。

優はアキトの方へと手を翳し、にこりと微笑む。

もっとも、優は血を吐いていたため、アキトにはその笑顔がとてつもなく不気味に感じられた。

はっきり言って、怖い。

「君も……って君、A級ジャンパーなんだ。

可哀相に。きっとその能力の所為で人生滅茶苦茶になっちゃうよ?

人間はとても貪欲な生き物だからね。

私達は彼らにとってモルモットと同じ、『実験動物にしか』見えていないの。

ちょっとしか違わないのに、人間として有り得ない能力を身につけてしまった私達は、

人間として扱われない。言うなれば、人類をより繁栄させるための道具。

人類に救いをもたらす一筋の光明。けれどもその実態は、人類を屠り去る、死神の大鎌。

はた迷惑な産物。そして……」

最後の言葉は聞き取れなかった。

 

 

優はゆっくりと立ち上がり、上空のバッタ達を見据えた。

髪に染み込んでいた血がぽたぽたと地面に落ちる。

アキトにやったように、バッタ達にむけて手をかざす。

「多分、私を狙っているんだろうなあ。私、S級ジャンパーだしなぁ。

捕獲できなかったら即暗殺。か。勝手過ぎるよ、そんなの」

平べったい『ポケット』の一つに手を入れ、

普通のポケットからは取り出す事は不可能な大きさの、消化器を取り出した。

「……って、違う。これじゃなくて」

取り出した消化器をごろりと転がし、再び『ポケット』の一つに手を入れる。

次にとり出したのは●スマ●クだ。

「……『ガ●マス●』でもなくて、というかなんで伏せ字?」

そう言う事を気にしてはならない。

優は●●●●クをポケットの中に戻し、もう一度ポケットの中を探る。

今度は、奇麗な青色をした宝石を取り出した。

「そう、これだよ」

大きく頷き、左手に握った青い宝石を胸元まで持っていき、目を瞑り、精神を集中する。

宝石が青白い光を漏らし始めた。

ボソンジャンプの兆候。

優は目を見開き、その瞳は先程の死んでいた目つきと違い、生き生きと、爛々に輝く。

今まで様子を見ていたバッタは、すぐに状況が異常な事を察し、優に向かってミサイルを発射する。

異常事態発生、異常事態発生。

人工知能がそう警告するが、警告するだけだ。

彼らは捨て駒。逃げる事は許されない。

とる行動は一つだけ。この異常事態に順応し、入力されたプログラムを遂行する。

順応できないからこそ『異常事態』なのだが、彼らのプログラムに退却するとは入力されていない。

殲滅できないのであれば、特攻しろ。

主から命じられた、極めて簡単な行動を実行しようとする。

発射されたミサイルは優に当たる前に、

何か『壁』のようなものに接触し、目標をなぎ払う事が出来ないまま爆発する。

ミサイルを一回きりで撃ち尽くしたバッタは今度は目標めがけて機銃を乱射する。

機械が全てをコントロールしているのだから、その射撃は人間のそれよりも数倍正確で、

本来ならば確実に優の体を蜂の巣にする筈なのだが、

透明な壁に弾かれてしまい、有らぬ方向へと跳弾し、肝心の目標は傷一つつかず、

ぴんぴんとしている。

何度機銃を撃っても、或いは体当たりしても、

バッタ達は不可視の壁を突破する事が出来ず、弾かれてしまう。

どうする事も出来ず、バッタ達は空中で右往左往するばかりだ。

その様子を終始見ていた優はニヤリと笑い、澄み渡った声でこう宣告した。

「無駄だよ。貴方達じゃこれを突破する事は出来ない。

このディストーションフィールドはチューリップ級の、

いや、『チューリップそのもの』が展開しているから。

……貴方達に残された道は一つ。芥よりも小さく、埃よりも小さく、

視認出来ないくらいに私の手によって『分解』される事だけ。

塵にも、灰にも、形すら残す事は出来ない」

刹那。

バッタ達は体が砂で構成されていたかのようにぼろぼろと崩れ出し、

地面に落下していく。地面に近づいていくにつれ、更に崩れ細かくなり、

最後には地に付く前に跡形も無く消え去ってしまった。

優の左手に握られていた青い宝石も何時の間にか欠片一つ残さずに消え去っている。

彼女は自分の吐いた血の海にへたりと座り込み、

バッタが消え去って静けさを取り戻した空を仰ぎ、また血の塊を吐き出した。

頭の中がぼうっとしてくる感覚と、

全身が鉛を背負っているように重く、鈍くなっていく感覚。

貧血と日射病が一緒になって体中を駆け巡る。

側に倒れている真矢に助けを求めようと軽く彼の頬を叩き、

意識を取り戻させようとするのだが、何回叩いても意識は戻ってこない。

それもそのはず。優は真矢の意識を何処かへと『移動』させたのであるから、

体にどんな衝撃を与えても、意識が戻ってくる事はない。

失敗したなと優は舌打つ。

真矢の意識が戻ってくるまで後五分。

この数字は優が『調節』したものだから間違いはない。

S級ジャンパーの能力は『より精密なボソンジャンプ』。

人間の意識だけを移動させたり、

目標を視認出来ないくらいにバラバラに移動させる事など造作も無い。

5回目の曾祖父の邂逅にして、優はやっと彼の名前を知った。

 

 

「それで……食逃げ犯は?」

「……はあ?」

「食逃げ犯はどうしたかときいている。まさか、おめおめと逃げ帰ってきたのか?」

「……食逃げ?有ったんすか?そんな事」

血管をこめかみに浮かび上がらせている才蔵の問いに、アキトは答えようがなかった。

何せ食逃げに合った記憶も、それを追いかけた記憶もアキトの頭の中にはないのだ。

もう一度、今日の出来事を思い出してみる。

朝の仕出し、野菜炒めを焦がした事、それを才蔵に怒られた事、

『買い出しにいき、ふと気がつくと半壊した八百屋の直ぐ側でぼっと突っ立っていた事』

それから金を持っていない事に気付き、何も買わず、この食堂に戻ってきた事。

いくら頭の中を揺さぶっても、『食逃げされた』という出来事は思い出す事は出来ない。

「手前、誤魔化す気か?」

「そんな!?知らないっすよ、食逃げなんて!!

今日は俺が俺が野菜炒めを焦がした事が有ったくらいで、何時もと変らなかったじゃないすか!?」

因みにアキトが食材を焦がす事は最早や日常茶飯事であり、さほど珍しい事ではない。

才蔵は右手を出血するほど強く握り、アキトの顔を思いきり殴った。

アキトはよろけ、テーブルの角に頭をぶつける。

当然の事だが、オタマで殴られた時よりも数倍痛い。

涙目になって頭をさすっているアキトを見下し、

才蔵はいつもでは考えられ無いほどの大声でアキトを怒鳴りつけた。

「でてけ!!もうお前の顔なんか見たくも無い!!食逃げ犯に逃げられた事を素直に謝るのなら

まだしも、それを無かった事にするなんざあ最低のやる事だ!!

お前がそんなに腐った奴だとは露にも思わなかったっ!!

荷物まとめてここから消え去れ!!俺がお前の顔に唾を吐きかける前にな!!」

 

 

雪谷食堂から追い出されたアキトは、何処へ行く訳でもなく、

愛用の自転車を手で押しながらふらふらしていた。

地球に親戚らしき親戚は居ないし、

親しいものも居ないので、何処かに厄介になるという事は不可能だ。

天涯孤独。

大袈裟な表現かもしれないが、今のアキトはまさにそれだった。

第一次火星大戦によって、親しかった友人は殆ど死に絶え、近しい親戚は音信不通。

恐らくはみんな死んだのだろう。アキトが地球にきて、火星の住人が地球に逃げ延びたという話は

一度も聞いた事が無い。頼みの綱であった雪谷食堂からは、たった今追い出され、

才蔵のあの怒り方から察するに、もう二度と戻る事は出来ない。

自分の業務態度を顧れば解るが、アキトが首になるのは遅かれ早かれ確実だった。

しかし、それならば遅い方が良かった。そうすれば次の職を探す余裕も十分に有った。

あの時に、もう少しこの食堂においてくれと頭を下げるべきだったろうか?

否。そんな事をやったって、あの状態の才蔵は絶対に聞き入れてはくれないだろう。

何よりも自分という存在は雪谷食堂にとってかなり迷惑な筈だ。

自分が雪谷食堂を赤字塗れにしたと言っても過言ではないのだから。

それなのに、『もう少し置いてくれ』と言うのは余りにも図々しすぎる。

あの場で、潔く身を引いておいて正解だったのだ。

もしも駄々をこねていた場合、自分の眉間に包丁が飛んでくるとも限らない。

懐の中は寒い。その上今は何処もかしこもインフレで、物価は上昇し続けている。

次の職を手につけるまで、資金が持つかどうかは疑問だ。

給料が高く、安定していて、今すぐに見つけられる職業。

一昔前ならば兎も角、今現在でそんな夢のような職業がある筈が無い。

有るとしても、確実に高い能力を要求されるのは目に見えている。

あいにく、自分にそんな高い能力はない。持っていたら、こんな所で路頭に迷ったりはしない。

ふと自分が空腹である事に気付く。

アキトは足を止め、半壊した八百屋の商品棚にならべられている、

真っ赤に熟れて、見るからに美味しそうな林檎に目を向ける。

『店長のオススメ』と書かれた、道行く人が足を留め、

見入ってしまうくらい奇麗に飾りたてられた紙には、こうも書かれていた。

『津軽産の林檎、蜜がたっぷりと入っていてとても美味しいです。一個お買い得な500円』

……辺りを見れば、夕方の商店街だと言うのに殆ど人影は見えない。

風が冷たく、アキトの頬を撫でた。

先ほど才蔵に殴られた左頬の痛みは、まだ引いていない。

 

 

 

 

……訂正しよう。

この町は平和なのではない。

表面的に平和なだけであり、戦争の影響が露骨なまでに滲み出ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

〜名前変更。だって如何考えたって『設定資料集』じゃないし〜

 

 

 

 

テンカワアキト

 

●本作品における主人公じゃない方の人。とっても紛らわしい。
●なんだか全然良い目に会っていない
吐瀉物ですら撒き散らす始末
●でも頑張れ、ウハウハは目の前だ。
●浦島景太郎と声優さんが同じ。
花中島マサルと声優さんが同じ。
●それ程出来た人間ではない。
●というか、もしコイツと同じ状況に立たされた場合、貴方ならどうしますか

 

 

 

アイ・フォースランド

 

●……で良いんだよね?名前。
●純真無垢な女の子。
●将来はマッドなあの人
●あの人の回想シーンが無ければ誰だってあの人=コイツだと気付かないだろう
●一体何があったのか。
●『イネスの『I』はアイちゃんの『アイ』だ』と言っていたので、すべての記憶を失った訳ではないようだ。
●一体何処らへんの記憶が欠落していたのか。
どっちが良い

 

 

 

一ノ瀬真矢

 

●「いちのせしんや」とよむ。
●オリジナルの人。その二。
●話からも分かるように『未来人』
●『帰還者』と言う訳ではない。強いて言うなら『移民者』
●タウンページで気に入った名字と名前を適当に組み合わせて命名。
●いいね。タウンページ。名前の宝庫ダヨ!!
●安月給で働く貧乏サラリーマン。
●アキトと同じ18歳。
●主に体術系。基本的にシリアスキャラ。
●ジャンプ能力は持ちあわせていない。

 

 

 

霧原優

 

●「きりはらゆう」と読む。
●オリジナルの人、その3
●黒7、白3で構成された髪の毛。メッシュではなく、地毛
●瞳孔は常に開きっぱなしっぽい
●病弱と言うかむしろ虚弱体質
●有り得る事の無いS級ジャンパー。
●主に不思議系。基本的にと言うか存在自体俺の遊び
●能力発動中は性格が変ると言う訳ではなく、魚が水を得たように生き生きするだけ
突っ込みどころ多すぎ
●最初はもっとまともなキャラだったのに
●イメージCVは大山のぶ代

 

 

 

無銭飲食

 

●別名食逃げ。
●少年犯罪の増加とか、万引きが多くなったとかは良く聞くのだが、食逃げが増えたというのは聞いた事が無い。この世に生を受けてから一回も。
●というか、考えてみればどのような犯罪よりも成功率が低いのでは
●料金先払いの店では食逃げ不可。と言うか寧ろやるな。

 

 

 

ポケット

 

●正式名称『超小型次元跳躍門』。
●別称『四次元ポケット
●霧原優の服についているポケットは全てこれである。
●ポケットは伸縮性なので、割と大きいものでも取り出し可能。
●っつーか服自体がチューリップを特殊精製したもの
●なのでディストーションフィールド発生装置やジャンプフィールド発生装置を携帯しなくても全然オーケー
●因みにまだ生きている
●ジャンプフィールドは兎も角、ディストーションフィールドを展開するのはチューリップの自己防衛本能。霧原優の意思とは関係ない。
●今回のお話はこのネタをやるための壮大な前振りである。
●それにしては描写が少なかったですが
●お値段据え置き国家予算の二乗
●この服の本当の性能はこんな物じゃない。
●と言っても、俺が考えるアイディアなんてろくでもない物しかありませんが

 

 

 

テンカワアキト

 

●この作品の後書きに登場する不思議な生き物
●本名「点皮飽斗」であり、作中の人物とは全くの別物。
●それ系の読者を獲得するために、猫耳でショタで巫女服
●外見は近所のイケメンな兄ちゃんに日夜貞操を狙われるほどのショタっぷり。
深紅のベヘリットを常時携帯しており、いつか俺を贄にしてやろうと画策中。ピンチだ俺。
●何時もは、恥かしがって品性下劣な言葉使いだが、普段、俺の呼び方は兄者
●そして語尾には「りゅん☆ミ」が付く。
●イメージCVは郷里大輔か若本規夫か銀河万丈。もしくは丹下桜
●はいそこ。『いつまでも友達でいようね』的な気まずそうな目線で俺を見ないで下さい。

 

 

 

 

 

 

後書き。もしくはオマケその二。

自分の文章センスの無さと遅筆っぷりには愕然です

 

すまぬ。

……イヤ、良く考えてみれば俺が謝るのはお門違いも甚だしいよな。

悪いのは俺じゃくて、SSを書いているみんなが悪い

俺以上の文章センスで文を書き、

それを俺の数倍のスピードでネット上に掲載するから俺が謝らなきゃいけない羽目に陥るのだ

皆、後三十倍くらいペースを下げろ。命令。

 

アキト:世界が自分を中心に回っていると思ってんじゃねえ。芥屑。

 

黙れ犬畜生が。家畜如きが高尚な人間様の言葉を理解すんな。

犬は犬らしく地に這いつくばれ。

 

アキト:……俺の設定をあんなにする辺り、相当に病んでいるな。主に精神が

つーか俺は猫耳じゃなかったのか

 

良いんだよ別に。どうせ脊髄反射で書いたような物だからな。

 

 

 

さて、ちょっと息抜きにクロスオーバー物でも書いてみようかと思っております。

要するに二つ以上の作品を混ぜて楽しもうぜって事ですな。

一言で言っちゃうと簡易版スパロボですか。

 

アキト:へえ。やっぱりナデシコプラスエヴァなのか?

 

うんにゃ。それは結構あるので却下。どうせだから新しいジャンルを開拓してみようかなと。

 

アキト:じゃあ、どんな組み合わせなんだよ?

 

時の流れに+ドラえもんキテレツ大百科

 

アキト:待て。何なんだ、

上等な料理にジャイアンシチューと謎ジャムをぶっ掛けて台無しにしたような組み合わせは。

 

冒険してみる事も大切ですぜ?旦那。

 

アキト:冒険と言うよりは投身自殺と言った方がシックリ来るような気がしないでもないがな。

 

まあそう言ってくれるな。頭の中では結構纏まっているんだ。

ヒラリマントによって跳ね返されるラグナランチャー

ぶんかいドライバーによってバラバラになるブローディア。

重要時間犯罪人に指定される漆黒の戦神。

今度の敵はタイムパトロール、別名歴史の是正効果だ。

……面白そうだろ?な?

唯一の欠点はバットエンドであると言う事。

取り敢えず逆行してきた人間は全員死ぬと思いねえ。

 

アキト:何でその組み合わせでバットエンドになるのか不思議でたまらないのだが

 

大体こんな感じ。

――瞬間、北斗の右腕が軽くなった。

好奇心でアリを手に乗せた時よりも軽く、真っ白で柔らかい羽を手に乗せた時よりも軽い。

今まで味わった事の無い、身震いするほどの軽さ。

右腕の感覚はある。それなのに何故こんなに軽いのか。

生死を賭けた戦闘の最中だと言うのに、北斗は暢気に天を仰ぐ。

空は灰色の厚い雲で覆われており、ぱらぱらと小雨が降っている。

ぐずついた天気。

見ているだけでムカムカしてくる。

晴れるのなら晴れ、雨が降るのなら思い切り降れ。

怒鳴ってやりたい気分だが、さしもの真紅の羅刹も天候ばかりはどうする事も出来ない。

如何足掻く事も出来ず、唯見守るのみ。

木星ならばこんなに陰気にならなくなったって済むのに、何故自分は地球にいるのだろうか。

ふと、雨ではなく、何か小さな物体が目に映る。『く』の字に曲がった、奇妙な物体だ。

北斗はその奇妙に曲がった物体に興味を持ち、右手でキャッチしようとする。

が、キャッチする事は出来ず、

奇妙な物体は『右腕をすり抜けて』為すがままに地面に叩き付けられる。

「……え?……・あ?」

自分の右腕をすり抜けた奇妙な物体をまじまじと見つめる。

見覚えがあり、馴染みの深いものだった。

腕だ。自分の、苦楽を共にしてきた腕。

それが自分の腕だと認識した途端、今まで感じなかった痛みが右腕から始まり、全身を蝕んでいく。

痛い。

北斗はその場にうずくまり、右腕をかきむしろうとするが、

右腕はとうの昔に離れてしまっているため、左手は空を切るばかりだ。

血が際限なく其処から流れ落ちる。

血が地面に落ち、跳ねて自分の服にかかる。

ポタリポタリと、自分の服を深紅に染める。

何時もはそれが快感に変る筈なのに、何時もはそんな物に何の感慨も湧かない筈なのに、

吐き気を催すほどの、嫌悪感。

誰か助けてはくれないか。誰かこの状況を打開してはくれないか。

普段では絶対に考え付く事が無い単語の羅列が頭の中を埋め尽くす。

他人の力を借りなくたって大抵の事は何でも出来る。その考えは変らない。

けれども、今は誰かに頼りたかった。

友に頼るか。

この場に居ないものに頼ってどうする。

父に頼るか。

あの外道にか。

母に頼るか。

自分を置いて何処か遠くへ行ってしまった。

頼れるものは何処にもいない。強いてあげるとするならば自分だけ。

その自分ですら今は全く頼れない。

どうしようもなく、怖かった。

ざすり、と足が地面を踏みしめる音。

血に塗れた刀を持った、着流し姿の男はうずくまって小刻みに震えてる北斗を見る。

何だ。この程度なのか。

顔には明らかに落胆の雰囲気が漂っている。

この男の北斗を見る目線は、北斗が父親に見せるそれと同じだった。

自分を制御する事が出来なくなった弱者を貶す、侮蔑の目線。

腕を斬られた。可哀相だな。

申し訳程度に哀れむ。

最早この男の眼に、北斗は映っていない。

唯呆然と、滝の様に降り出した雨をその身一杯に受けている。

何もかもが、興醒めした。――

 

アキト:死にたがりか。もう良いよ。存分に死ね。

 

そんなんじゃねえよ。少なくとも誰かをからかう為に書いているもんじゃない。

自分の欲望を満たす為に書いている。

 

アキト:もっと酷い。

 

書いといてなんだけど人様が作ったキャラを使ってやるような物じゃないよな

自粛。でも書きたい。ジレンマ。

因みにこの後の展開は、ドクターイネスが麻酔無しで北斗の腕を縫合し、

ドッポ・オロチの如く三日間で完治した後

再び殺助とリターンマッチ。そして勝利すると言う展開なんですが。

その後……駄目だわ、やっぱり

けれども書きたい。どうしよう。

 

アキト:どうもするな。

 

ちぇ。

まあ良いや。取り敢えずこの問題は保留と言う事にして置こう。

次は本編の話。

何となくシリアスな感じですが所々馬鹿な設定、描写が盛り込まれております。

まず最初に吐瀉物を撒き散らすアキト

吐瀉物を撒き散らしながら退避する姿にエリートファイターとしての誇りはありません。

 

アキト:やってんのはほかでもない貴様だ。

 

次。

『この時代の人間じゃない奴等なんてゴマンと居る』というセリフ。

ボソンジャンプ=タイムトラベルと考えるなら当然でしょう。

寧ろアキト達だけしか逆行してきていないと言う方が異常です。

でも、こう考えると蜥蜴戦争を仕掛けたのも火星の後継者を発揮を仕掛けたのも

未来人の仕業と言う事にする事も可能です。

ええ、電波一歩手前ですね

恐らく、この時代の人間の人口が100億とするなら、

2〜3割くらいの人間はそうなんでしょう。

アキト達のように事故で来た奴も居れば、

歴史を思いきり自分勝手に変えようとしている人間も居るんじゃない?

 

アキト:そう考えられない事も無いがな。いくら何だってやりすぎだべ30億もか。

 

アキト以外全員逆行してきた人間だと言う落ちも可

けっこう不安定な設定なんですな。タイムスリップって。

逆行してきている人間が一番多い作品だと言う事を自負しますが

でもこんなの書きません。

設定だけ。書いてどうするよ、おい。もしかしなくても消滅する可能性大。

他にも色々ありますが、まあ此処らへんですか。

もうなんだか辟易です。自分の馬鹿さ加減に。

 

それでは。また。

前編だけでこんな容量と言うのは如何なもんでしょう

完結する日はいつだ。

 

 

 

 

代理人の感想

 

う〜む、コメントに困る文章だ(爆)。

本編の内容に突っ込むべきか、それとも後書きという名のオマケに突っ込むべきか。

ただ、ボソンジャンプがいわゆるタイムトラベルと同質の物であるとするなら

確かにタイムパトロールの一つや二つくらいいてもおかしかぁないですな(笑)。

 

 

ところで、血を吐いて横たわっている霧原優さんが某黒髪の少女と重なるのは私だけですか(笑)?