明日も知らぬ僕達

第弐話 ナデシコ浮上

 

Side Free

 ネルガルのドッグを目指し、サセボの海岸沿いを疾走する一台の自転車。
 それをこいでいるのは、二月前に火星から地球におりたったテンカワ アキトである。
 その彼を背後から追い越していく自動車には、ジュンとカシワギが乗っている。

 ジュンはアキトの姿を認めたが、カシワギの手前、下手な行動は取れない。
 男性であるカシワギが、そう無茶な量の衣類を用意している筈も無く、「カバンが落ちてアキトに直撃」も起こらず、ジュンを乗せた車はそのまま通り過ぎてしまった。

 (あ、あああ……テンカワが、テンカワがナデシコに乗るチャンスが……)

 一方のアキトは、艦長がユリカでは無いことなど知る由も無く、

 (一体、いつになったらユリカ達が現れるんだ? こりゃB案に切り換えた方が良いかも知れないな……)

 などと、のんきに構えていた……

 

 「で、んな自慢話をする為に、俺をこんな戦艦に乗せたって訳ですか?」

 ナデシコのブリッジにて、そうカシワギに毒づく青年。
 どうやら、カシワギは小さい頃火星に住んでいたらしく、その時の知り合いが、この青年「センドウ カズキ」らしい。
 そんな話を当の本人達から聞かされたジュン。
 どうやら、カシワギもユリカほどでないにしろ、少々問題のある性格のようだ。
 もっとも、だからこそ「ナデシコらしい」と言えるのかも知れないが……

 「ま、自慢するような相手がお前しか残ってなくてな。もうすぐ出発だし、どうせ自慢するなら……」
 「戦艦をお披露目しよう、ってわけですかい」
 「まあそう言うこと。あと、プロスさんに頼まれたってのもあるんだが……」
 (な、プロスさんに呼ばれたって……どういうことだ?)
 「えと、そのプロスさんって、誰なんですか?」
 「スカウトマンみたいな人さ。俺もアオイも、あの人にスカウトされて、この艦にいるんだ。」
 「で、そんな人がなんで俺を?」
 「それはですね……」
 「「「!!!!」」」

 さりげなく話の中に入ってくる黒ぶち眼鏡の中年男性。
 三人とも、そのいきなりの乱入に度肝を抜かれる。

 「「プ…プロスさん、何時の間に!?」」
 「え、えーと、あなたがプロスさん?」

 このカズキという男。何があったのか、2年前に漫画を描き始めてから、随分と物怖じしない性格になっている。
 その為に、ジュンやカシワギよりも先に復活できた。

 「はい。プロスペクター、略して「プロス」です。ま、ペンネームみたいな物でして…」
 「はぁ、それで、ご用件はなんでしょうか?」
 「単刀直入ですね。まあいいでしょう。
 実はですね、あなたがどうやって火星から地球に戻ってきたのかを、お聞かせ願いたいのですが……」
 「それは……俺も訳が分からないんです。
 火星のシェルターにいた筈なのに、気がついてみたら地球にいて……」
 「そうですか……」
 (火星にいて……気がついてみたら地球にいて……まるで最初の人生のテンカワじゃないか!!)

 

 「さて、まさか艦長が変わっているとは思わなかったが……」

 B案を用意しておいて正解だったな、と心の中で続けるアキト。
 ちなみにB案とは、「ボソンジャンプの情報を餌にアカツキ、エリナ、プロスの内の誰かを呼び寄せて、ナデシコに乗艦できるよう便宜を図ってもらう」という、割といい加減なプランである。
 ユリカのカバン待ち、というA案に比べれば幾分マシという物だが……

 「ふ〜ん、生体ボソンジャンプが出来るのは、火星出身者に限る、ねえ……」
 「ああ。
 他にも手が無いわけではないが、少なくとも今のままでは被験者が死ぬだけで有効なデータなど手に入らないだろうな。」
 「成る程……そういえば、プロス君が言っていたカズキ君も火星生まれだったっけね……」
 「で、どうする?」
 「う〜〜ん、ナデシコの人事権は僕じゃなくてプロス君にあるからねぇ。
 ちょっとまってね。プロス君呼ぶから。」

 そういってコミュニケを開くアカツキを見やり、アキトはブラックサレナから知らされた未来に登場していない人物「カズキ」に思いを巡らせていた。

 

 「うん、じゃあ今からナデシコに乗ってもらうから。後、よろしくね。」
 (こんなアバウトな野郎に会長を任せて良いのか?)

そんな思いがよぎるも、当初の目的は達成できた。後は……

 

 ゴゴゴゴゴ…………
 ドカン、ドカン……

 (木連の攻撃? 俺はまだ格納庫までいってないぞ!!)

 焦るアキトを尻目に、ピンク色のエステが出撃する。

 (な……誰が乗っている? まさか、ヤマダとかいう奴か?)

 

 「つーわけで……」
 「連中の攻撃の拍子に、コクピットに入って、操作ミスでエレベーターに乗っちまったと」
 「で、どうしようかな〜と……」

 「一度地上に出ろ。エレベーターは途中でUターンなんか出来ないからな。」
 「そんな暇あるんかな……」
 「まあ無理だろうな。頑張って囮よろしく。」
 「そういう訳ですのでセンドウさん、このポイントで敵を引き付けといて下さい」

 カシワギの後をついで、中々ヘビーな事をのたまうオペレーターの少女。
 マシンチャイルド「ホシノ ルリ」である。しかも、彼女はその直後に通信を切ってしまった。

 (((((((酷い……それはともかくルリ(ちゃん、君)を敵に回すのはよそう(よしましょう)……)))))))

 彼女とムネタケ副提督以外の全ブリッジ要員の心の叫びである。
 中でもジュンはパイロットがアキトではなくカズキである事で、より一層不安になっている。
 が、しかし、はじめの頃こそ「1度目の人生のテンカワアキト」もかくやという、妙に強い素人でしかなかったカズキの動きが、数発の被弾の後から豹変した。

 

 「なんだあいつは……!!」
 「あの青年……背中に目があるとでもいうのか?」
 「す、すご…」
 「……綺麗……」
 (ばかな……テンカワ並の反応だぞ…あれは!!)
 「あいつ……エステなんて、これが初めてな筈なのに!!」
 「冗談でしょう!?う、嘘よこんなのって……」
 「敵機……残り120機……既に半数を割っています!!」

 上から2mを越す大男ゴート、ナデシコに提督として乗りこんでいる老将フクベ、通信士で元声優のメグミ、操舵手のナイスバディな女性ミナト、漆黒の戦神を知る者ジュン、艦長のカシワギ、勝手に押しかけてきて副提督を名乗っているムネタケ、そして「ワンマンオペレーションシステム」の中核でナデシコを統括するオペレータの少女ルリである。

 そして、作戦通りグラビディブラストで吹き飛ばされた敵機の数は、30弱でしかなく、それ以外の全てはカズキのエステに叩き潰されていた。

 

 「お手柄ですセンドウさん……センドウさん?」
 「ルリちゃん、カズキの奴、どうなってるんだ?
 敵を殲滅した直後から動きが全く無いけど……」
 「生命に異常無し……寝てますね、これは……」
 「はぁ? 寝てる?」
 「ルリルリ、それって本当?」
 「ま、まさか……これがあの修羅場モード…与太話だとばかり思っていたんだが……」

 と、なにやらしょうもない名前を口にしながら驚愕するカシワギ。

 「なんだよ、その「修羅場モード」っていうのは…」
 「……あいつな、漫画描いてんだけどさ、」
 (漫画か……そういえばパイロット三人娘のヒカルちゃんも描いてたっけな…)
 「原稿が落ちそうになると、秘めたる力を解放して、通常の数倍の効率で原稿が描けるようになるらしい。それが修羅場モードと呼ばれる状態なんだ。」
 「それと、今回の大活躍とどう関係があるんでしょうか?」
 「修羅場モードを使い終わったあいつは、即座に眠りこけて、最低丸1日は眠り続けるんだ。だから、今寝てるのも、さっき修羅場モードを使った反動なんじゃないのかなって。」
 「さっきの大活躍が、そんなしょうもない物のおかげですか……」
 (人間版フルバーストだな、これは……)

 

 ところ変わって、格納庫。何時の間にやら、ブリッジを抜け出していたプロスペクターがアキトと話をしている。

 「無用心この上ないな。こんな飛び入り参加を認めるとはな……」
 「そうは申しましても、かの高名な「メタルファング」テンカワアキトならば、こちらからお願いしたいくらいですよ。」
 「……そんな大した物じゃないさ…」

 アキトはどうやら、ナデシコ乗艦に成功したらしい。

第参話「ムネタケの叛乱」に続く

あとがき

 というわけで、ナデシコが飛びました。史実に無い人達も乗ってますけど。
 史実に無いセンドウカズキとカシワギコウイチですが、彼等はLeafというブランドのギャルゲーの主人公だったりします。しかし、ギャルゲーが絡んでいるのに、男女比はむしろ従来よりも男よりなのは何故だ……

 あと、サツキミドリにてもう一人「フジタヒロユキ」が合流しますし、それぞれの作品のヒロイン達にもご登場願う予定ですが、男女比は変わらない気がします(汗)

 ちなみに各キャラクターの強さですが
 アキト=劇場版アキト
 ヒロユキ=TV最終話時点のリョーコ
 カズキ(通常時)=TV版アキト
 カズキ(修羅場モード時)=劇場版アキト+健康な身体+マトモに働く五感
 位の強さで考えています。

 

 

代理人の感想

カズキとコウイチはわかるんですが、ヒロユキはわかりませんねぇ・・・・・

とゆーか、葉っぱ(Leafのこと)のゲームはこの2つしかやってませんし(笑)。

 

 

しかし修羅場モード発動すると劇場版アキトより強くなるんかい(笑)。