Side β

 「ホウメイさんっのごっ飯、ホウメイさんっのごっ飯♪」

 俺と枝織ちゃんは朝食を食べに、食堂に来ている。
 枝織ちゃんは、頼んだ炒飯が待ちきれずにいる様子だ。

 「おやおや、そんなに期待してもらえると、あたしも腕の振るいがいがあるってもんだよ。」
 「だって、ホウメイさんのご飯って、なんでもすっごく美味しいんだもん♪」
 「嬉しい事言ってくれるねぇ。」

 などと枝織ちゃんと話ながらも、ホウメイさんは忙しそうだ。

 「ねぇβ、そう思ってるんだったら、少しは手伝ってくれないかい?」
 「あれ? 俺、何か言いましたっけ?」
 「顔に出てるよ。
 あたしだって、あんたよりは少し長く生きているからね。
 少しは、何考えてるのか分かるつもりだよ。
 ま、アンタみたいな青二才があたしの心配なんて、本当なら十年早いんだけどね。」
 「はぁ……ホウメイさんには敵いませんね。」

 この人は……なんとなく頼りにしてしまうんだよな。
 俺は「プリンス オブ ダークネス」と違って、この人に師事してはいないのに……

 「ねえねえ、べーちゃん。」
 「ん? なんだい、枝織ちゃん?」
 「そういえばべーちゃんって、お料理できるんだよね?」
 「? そうだけど……」
 「だったら……わたしさ、べーちゃんのお料理食べてみたいな♪」
 「へ?」
 「へぇ、そりゃぁ良いねえ。 β、今度枝織ちゃんに何か作ってあげな。」
 「へ? え、え?」

 突然の話の流れに、困惑する俺。
 枝織ちゃんは、そんな俺を泣きそうな目で見ながら……

 「べーちゃん……ダメなの?」

 ………俺に、断る術は無かった………………

 

Side Kouiti

 草木も眠る丑三つ時。
 俺はブリッジに来ていた。

 う〜〜〜ん、キノコが良い感じに喚いているな。
 この番手の、フィリスさんやエリナ嬢の眠気覚ましとして、役に立ってるよ。

 「キーーーーーーッ、アタシの話を聞きなさいよ!!
 って、あら艦長、アンタなんでここに来ているのかしら?
 アンタは昼番のはずじゃない。」
 「ええ、そうなんですけどね。
 少し副提督にお話があるもんですから。」
 「何よ。 この間の話ならキッパリと断ったはずよ?」

 ここで本題に入りたいんだが……エリナ嬢がいる以上、あんまり込み入った話になるとヤバイな。

 「いや、今日は違う話ですよ。」
 「だから何よ?」
 「提督………子供の頃、どんなアニメを見てましたか?」
 「…………は?」

 前にコイツと話をした後、俺は、コイツに正義について考え直してもらう方法を、アレコレと考えた。
 その末に出てきた案が……アニメの話題を振る事。
 我ながら、かなりメチャクチャなやり口だとは思う。
 だが、今日び、子供の頃にアニメを見ていない奴がどれほどいるだろう?
 しかも、アニメの中には、正義を考え直すに当たって有用な作品も結構あったりするし。

 ま、話に食いついてくれなけりゃ、それまでなんだが。

 「だから、どんなアニメを見てましたか? って聞いたんですよ。
 まさか、全く見ていない、って事は無いですよね?」
 「はぁ、アニメねぇ……なんて言うか、ガキっぽいのよね。」
 「ま、子供の頃の話ですから。」
 「……そうねぇ、アタシが見ていたのは…………ゲキガンガーかしら?
 もう百年も前の奴だっていうのに、未だに再放送されたりするのよね。」

 …………ゲキガンかい。
 ま、まあ、かえって話が早いかも……

 「あの頃は結構楽しんだ物だけど、今時あんなものを大真面目で見ているのなんて、いるのかしら?」

 俺達と戦争している相手が、まさしくそうです。
 ……ああ、言いたいなぁ………………

 「ゲキガンですか……ゲキガンと言えば、提督、知っていますか?
 一般的に勧善懲悪物として有名なゲキガンガーなんですけど、実はそうとも言い切れない話も結構あるんですよ?」
 「な、何よ? ひょっとして、アンタもマニアなワケ?
 アタシをあんな下らない物で染め上げようったって、そうはいかないわよ!!」

 ………アキトかガイにでも捕まったのかな?
 ひょっとしてゲキガンで攻めるのは無理か?

 そうこう考えている内に、ムネタケは逃亡していった。
 …なにも逃げる事はないだろうに…………

 

Side Akito

 ふぅ、やれやれ。
 俺は「プリンス オブ ダークネス」とは違い、ユリカにもメグミちゃんにもリョーコちゃんにも迫られていない。

 ………という事はだ、毒料理のイベントがない!

 本来なら、モテない事は嘆くべき事なんだろうが、今は感涙に咽ぶ程嬉しい。

 オモイカネ、いや今はオモイカネCか。
 ナデシコCに載っていたオモイカネだから、オモイカネC。安直と言うか何と言うか……
 ともかく、アイツから聞いた毒料理の凄まじさと、それを食わされた「プリンス オブ ダークネス」の惨状と言ったら……
 あんなもん、死んでも体験したくない。

 それが無い!!

 いや、ほんとマジで嬉しい……

 

 と、俺が喜んでいた影で、コウイチさんがユリカの、ガイとヒロユキとβ、それにアカツキがリョーコちゃんの犠牲になっていた。
 ユリカは差し入れとして、リョーコちゃんはパイロット同士の親睦を深めようとして、料理を作ったらしい。
 ………毒料理の事、皆に教えておけば良かったな………

 ま、それはともかく、俺達は今、テニシアン島へと向かっている。

 アクア・クリムゾンがいる島へと……

 

明日も知らぬ僕達

第拾弐話 南海の出会い

 

Side Gai

 「「ア〜〜キ〜〜ト〜〜〜」」
 「な……なんだよ、お前等……」
 「お前、リョーコの料理が危険物だって、知ってやがったな?」
 「そ……それは…………」
 「お前だけ助かろうったって、そうはいかねぇぞ?」
 「お、おいガイ、落ち着け!!
 ヒロユキ、ガイの奴を抑えて……」
 「お前がコレ食ったらな。」

 と、ヒロユキはアキトに、あの料理と言う名の危険物を見せる。
 う……見るだけで、吐き気が…………

 「ま、まさかそれって……」
 「そう、リョーコの手料理だ。」
 「勘弁してくれ……
 そ、そうだ。 β、助けてくれ!!」
 「駄目だ。」

 アキトはβの顔を見るなり、数歩あとずさる。
 と、コミュニケがアキトの眼前に映し出され、アカツキの顔が出る。

 「ア、アカツキ!!」
 「ふぅ、アキト君、判らないのかい?
 ……君に逃げ場はないんだよ。」

 そして、アキトの顔は、死刑をまつ死刑囚の顔になった……

 

 ちなみに、これと同様のやり取りが、艦長と副艦長の間でも行われたらしい。
 ………副提督の料理も危険なのか……

 

Side Kazuki

 「俺……人殺しなんだよな。」

 俺は、自分の掌を眺めながら、そう呟く。
 その掌は、以前と変わりなく見える。
 だが、俺には、そこから血の匂いがしてくるような気がした……

 ん? 枝織ちゃん……か?
 展望室なんかに、何の用があるんだ?

 「アレ? ここ、食堂じゃないや。
 せっかく、べーちゃんがお料理ご馳走してくれる、っていうのに……
 あれ、カー君?」
 「は、はは、やほ、枝織ちゃん。
 食堂に行きたいの?」
 「うん。でも、道に迷っちゃって。
 枝織、方向音痴だから……」
 「へ〜、そうなんだ。
 それじゃあ、食堂まで一緒に行こうか?」
 「え、本当? うん、一緒にいこっ♪」

 俺は、その枝織ちゃんの返事を聞いてから、立ち上がって彼女の方に歩み寄っていった……

 

 「ところでさ、カー君。シロクマさん助けに行ってから、随分暗いよ?
 なんで?」

 枝織ちゃんが邪気の無い顔で、俺にそう問い掛ける。

 「……人を、殺したから、かな……
 ………この戦争が、人間同士の殺し合いなんだって、判ってた筈なんだけどね……」

 俺がそう答えると、枝織ちゃんは怪訝な顔をする。

 「え……? なんで、人を殺すとそんな風に暗くなるわけ?
 枝織は、そんな事無いよ。」
 「……枝織ちゃんは……生活が生活だったからね。
 人の死が酷く身近で、馴れ切っているんだよ。
 俺は……まだ、そこまで死に馴れちゃいない。
 ま、北斗あたりに言わせれば、「甘ちゃんのヒヨッコ」だから、かな。
 俺には、まだ……人殺しは、重すぎる。」
 「う〜〜〜ん、「人が死ぬ」ってそんな大事なの?
 枝織、考えてみた事も無かったけど……」

 …枝織ちゃん、本当に「道具」としてしか見られていなかったんだな……

 「そうだな…枝織ちゃん、ホウメイさんの事、好き?」
 「うん、大好き!!」

 枝織ちゃんとは、たまに一緒に食堂行くから良く分かる。
 枝織ちゃん、ホウメイさんには随分となついているものな。

 「じゃあ、北辰に、ホウメイさんを殺せって言われたら、枝織ちゃん、どうする?」
 「う〜〜〜〜ん、やっぱり殺しちゃう、かな?」
 「……そう。
 まあ、ホウメイさんはああいう人だから、枝織ちゃんを責めるような事は無いと思うけど……
 でもね、枝織ちゃん。
 ホウメイさんが死んじゃったら、もう彼女の料理を食べる事ができなくなるんだよ。」
 「…………………え? やだやだ、ホウメイさんの料理は食べたい!!」
 「でも、枝織ちゃんが殺したから、ホウメイさんはもういない。
 もう、ホウメイさんの料理を食べる事も、ホウメイさんに頭を撫でてもらう事も、ホウメイさんに叱られる事も、ホウメイさんとお話する事もできなくなるんだ。
 「人が死ぬ」って事はね、そういう事なんだよ。」

 俺の話を聞く内に、見る間に青くなっていく枝織ちゃんの顔。

 「そ……それじゃあ、枝織、たくさんの人、殺して……」
 「でも、今は戦争中だ。
 戦争で、前線に立つって事は、戦争の相手と殺し合うって事だからね。
 暗殺者の枝織ちゃんや、パイロットの俺なんかは、気にしていたらキリがなくなっちゃうよ。」
 「う……うん、そうだね………」
 「……ごめん。枝織ちゃんまで暗くさせちゃって。」
 「ううん、いいの……」

 とは言いつつも、枝織ちゃんの表情は随分と翳っている。

 ……そろそろ、食堂に着くな…

 

Side β

 「……と、いうワケで、枝織ちゃん、ちょっと落ち込んでるんですよ。」
 「へぇ、どうりで。」

 カズキを伴って食堂にやってきた枝織ちゃんは、カズキと似たような感じに落ち込んでいた。

 ホウメイさんは枝織ちゃんを心配して、その理由をカズキに問いただした。
 そして、カズキが口にした理由は……枝織ちゃんが人の死に対して恐怖を感じたから。

 よくよく、北辰という男は、娘を道具としてしか見ていなかったらしい。

 「β、手を止めてんじゃないよ。
 こういう時だからこそ、美味い物を食べさせて元気付けてやんなきゃいけないんだ。」
 「は、はい。」

 全く、良く見てるよ、この人は。
 本当に、ホウメイさんは頼りになる人だ。

 

 「はい、枝織ちゃん、チキンライスだよ。
 ホウメイさんのヤツに比べると、ちょっと見劣りすると思うけど……」
 「え……? あ、ありがと、べーちゃん。」

 枝織ちゃんはそういうと、俺が差し出したチキンライスを食べ始めた。

 「どう……かな? 美味しい? 枝織ちゃん。」
 「うん、おいしーよ。」

 そう言った枝織ちゃんの顔は、元気いっぱいだった。
 この子も現金というか、なんというか……
 まあ、いつまでも沈んだ顔をしているよりは、随分とマシだろう。
 それに……俺もコックを目指した身の上、自分の料理を食べてこんな顔をしてもらったら嬉しい。
 俺は、そんな嬉しさを胸に、枝織ちゃんに向かって微笑んでいた。

 そんな俺達を、ホウメイさんとカズキは微笑ましそうに見守っていた……

 

Side Kouiti

 俺達……ここに落ちてきた小型チューリップの調査に来たんだよな?

 なのになんで……

 「パラソル部隊、急げ〜〜〜〜!!」
 「お〜う!!」

 何故にこうなる?
 どうもアオイに言わせると、前回や前々回も、こんなんだったらしいが……

 「女子に負けるな〜〜〜〜!!」
 「お〜う!!」

 アカツキ……お前が率先して遊んでどうする。

 「ちょっと待ちなさい貴方達!!
 貴方達解ってるんでしょうね!!
 貴方達はネルガル重工に雇われているのよ!!
 だから…遊ぶ時間は時給から引くからね。」

 エリナ嬢、セコいが、マトモな意見を言うよな。

 「後、はい、これ私が作ったシオリ。
 よく読んでよね。
 まず、海の深い所には…」

 ……って、オイ。
 やっぱ彼女やアカツキも、ナデシコに乗るべくして乗った人材なのかなぁ。
 あ、みんな勝手に遊びに行ってるし。

 「…解った? って誰もいないじゃない!!
 もう!! 私も遊ぶからね!!」

 バッ!!
 制服を脱ぎ捨てた彼女は、その下に水着を着用していた……

 「……ミナトさん。俺達って、チューリップの調査でココに来たんですよね?」
 「ま、確かにそうだけど……
 ナデシコがこういう艦だっていうのは、火星でアキト君の話を聞く前から判っていた事じゃない。」
 「………確かに。」

 ま、俺も制服の下に海パンはいてんだけどさ。

 

Side Ruri

 「アレ? ルリルリは泳がないの?」
 「はい。私、泳げませんから。
 今日は、ここで甲羅干しでもしてます。」

 ミナトさん、胸があってうらやましいです。
 私も将来……と思った所で、オモイカネCに見せてもらった16歳の「私」の姿が脳裏に浮かびました。
 ……私は彼女とは違います!!
 今から努力すれば、きっと彼女と同じ憂き目を防ぐ事ができるはずです!!

 「じゃあさ、俺達が泳ぎ方を教えてあげるよ。」
 「そうそう、せっかく海に来たんだから、ね?」

 艦長もミナトさんもずるいです。
 そんな風に言われたら、断れません。

 

Side Akito

 さて、と。みんな何をやってんのかな〜〜〜?

 「さ〜、いらはい、いらはい!!
 海水浴場の三大風物と言えば!!
 粉っぽいカレーにマズいラーメン、そして溶けたかき氷!!
 俺はその伝統を今に伝える、一子相伝、最後の浜茶屋師なのだ〜〜っ!!」

 ………ウリバタケさん、その宣伝文句はちょっと……

 「粉っぽいカレーにマズいラーメン? そして溶けたかき氷だって?
 そんなもんわざわざ客に出すんじゃないよっ!!」

 ホウメイさんがちょっとエキサイト……
 あっ、ウリバタケさんの屋台を占拠して、自分でメニューを作り始めちゃったよ、この人……
 なんかβやホウメイガールズも、一緒になって料理してるし……



 カズキの奴は妙におとなしいな。 向こうの方でスケッチしてやがる。
 ま、アイツって元々絵画畑の人間だったし、ここの所戦闘訓練ばかりで、絵を描く暇なんてなかったもんな。
 戦闘訓練のおかげで鈍った画力のリハビリをしてんのか。

 「なあカズキ。絵も良いけど、せっかく海に来たんだ。
 お前、泳ごうとか思わないのか?」
 「ま、そうなんだけどよ。
 それ以上に、シミュレータじゃない生の光景が眼前に広がってるんだ。
 しかも結構いい感じの景色だし、やっぱり泳ぐよりはスケッチになっちまうのかな?」
 「なるほどね………」

 ………そういや、こういう奴だったよな、コイツって。





 向こうの方では、コウイチさんとミナトさんが、ルリちゃんと枝織ちゃんに泳ぎの基礎を教えている。
 …………枝織ちゃん!?

 枝織ちゃんって暗殺者だよな……泳げなくて、方向音痴の暗殺者?
 欠陥品だ……暗殺者としては、完全に欠陥品だ……………

 しかも……どうも、遠目で見る限り、ルリちゃんの方が泳ぎが上手だ。
 ………枝織ちゃん、枝織ちゃん。水面を走るのは、水泳って言わないよ……
 あ、沈んでコウイチさんに救助されてる………





 あっちの方では、エリナさんとイネスさんが甲羅干し。
 そのすぐ傍で、他のパイロット達がビーチバレーをしてる。
 ジュンは、ホウメイさんに占拠された屋台でラーメンを啜っている。

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 あれ? キノコがいない?
 そう思って、改めて周囲を見回すと、キノコの他に、さっきまでいたゴートさんもいなくなっている。
 ふと、ジュンから聞かされた、「二度目」のここでの、ゴートさんの行動を思い出す。
 クリムゾンのSSと一戦交えるつもりか………

 この時点で、俺の頭に、キノコの事は、これっぽっちも残っていなかった。





Side Kazuki

 俺がスケッチをしていると、向こうの方からエリナさんがやって来た。

 「ねえ、センドウ君。
 一つ聞いて良いかしら…あなた、火星から来たのよね?」

 ……これか。

 「火星人とボソンジャンプの関係については、アキトの奴から話があった筈ですけど?
 言っておきますけど、俺だってアイツに説明された範囲の事しか判らないんですからね。
 あ、そうそう。
 モルモットになってくれ、っていうのは、お断りさせてもらいますからそのつもりで。」
 「……そんな、先手を打たなくったって良いじゃないの。」
 「………そうは言いますけどねぇ。」

 話術に関してはプロスさんに遠く及ばない彼女でも、伊達に巨大企業の会長秘書をしているワケではない、筈だ。
 一気に押し切らんと、ズルズル向こうのペースに巻き込まれる危険性がある。
 と、いうワケで、俺としては彼女との会話はとっとと切り上げたい。

 「でもねぇ、彼の話やデータを鵜呑みには出来ないのよ。
 私達は私達で研究してきたワケだし、納得のいかない研究者も結構いるの。」
 「そんでもって、モルモットが俺、ですか?」
 「ま、モルモット云々は他にあてがあるし、優秀なパイロットでもあるあなたには頼まないわ。
 私が聞きたかったのは、
 どんな風にしてボソンジャンプをしたのか? とか、
 ジャンプの時どんな感じがしたのか? とか、そんな事だから。」
 「他にあて、って…………」
 「で、どんな感じだったのよ?」
 「あの時の事は、無我夢中だったから、全然憶えてません。
 ジャンプの時どんな感じがしたのか? ってのも、気がついたら地球にいた、ってな塩梅でしたし…」
 「………そう。判ったわ。」

 そういった彼女は、全然判って無さそうな顔で、その場を後にした……
 にしても、モルモットのあて………か。
 一体誰なんだろうな………




Side Akito

 おお、やってるやってる。
 今の所は銃撃戦って感じで、敵さんが数的有利を生かして押してるみたいだ。

 「なかなか手強い連中だな……」
 「そうですね。結構な精鋭部隊なんじゃないんですか?」
 「!! テンカワ! お前、いつの間に?」
 「気配を消してただけですよ。俺だって、撃たれたくはありませんからね。」
 「むぅ……」
 「ここにいる連中って事は……大方アクア・クリムゾンの護衛をしてるSSって所ですかね?」
 「その通りだ、テンカワ。
 何もしかけてこなければ、このまま見過ごすつもりだったが……」
 「俺だってそのつもりでしたよ。
 でも、なんで連中、しかけてきたんですかね?」
 「それなんだが、どうもアクア・クリムゾンとナデシコのクルーが接触したのが原因らしい。
 しかし、俺が見張っていた上陸クルー達は全員砂浜にいたはずだが?」

 ………そーいえばキノコがいなくなってたような…………
 ……まさかな。 いや、でも……

 「……どうした? テンカワ。
 何か心当たりでもあるのか?」
 「………いえ、砂浜にムネタケの姿がなかったものですから。
 まさかとは思いますけど、奴の事をナデシコクルーと勘違いしてるんじゃ………」

 大体、「二度目」で彼女を接触したガイからして、他のパイロット達とビーチバレーしてたし…

 「その可能性は、否定できんな……」

 沈黙が俺達を支配する………

 ………と、

 「上か!!」

 その俺の一言を合図に、ゴートさんはその場から飛び退く。
 その直後、樹上からゴートさんがいた場所に降り立つSS。
 だが、事前に気付かれた奇襲ほど、間抜けな物もそうはない。
 俺はソイツのナイフを余裕でかわすと、首筋への手刀一発で気絶させる。

 「これで、俺もターゲットか……
 救出目標がアレだと思うと、やる気が萎えるんですけどね。」
 「ムネタケは、一応ナデシコの提督だ。
 見捨てるワケにもいくまい。」

 などとゴートさんと話ながら、気絶させたSSからブラスターとナイフを失敬する。

 「さて、やるとなったら、とことんまで暴れてみましょうかね!!」








 ぬ、ぬるい……
 気配が丸見えで、次に撃ってくるブラスターの射線も丸わかり。
 だもんで、ブラスターを避けながらSSの懐に入り、気絶させるのも簡単。
 ブラスターを軽々と避ける俺に、こいつら程度の格闘術が通用するはずもないし。

 「ひ、暇だ……」

 確か、「二度目」では、ここでヤガミナオが現れたんだっけ。

 「化け物か、アンタは……」
 「その化け物の前にノコノコ出てくるかねぇ、普通?」

 コイツが……そのヤガミナオ、か?

 「ふっ、俺の隠れている場所なんて解ってたんだろ?
 なら隠れるだけ無駄だ、撃たれて負けるより・・・拳で負けた方が納得出来るんでね。」

 この考え方……間違い無さそうだな。

 俺は軽く微笑んで、ナオ?に応える。

 「判ったよ。こっちだって暇してたんだ。付き合ってやるよ。」
 「では、お言葉に甘えて……!!」

 ザッ……ドスッ!!

 あ…………
 ナオ?が一飛びで俺との間合いを詰めて……
 カウンター気味に俺のボディブローが奴の腹に突き刺さる…………

 「な、何が、「付き合ってやるよ」だ………」
 「すまん、つい…………」

 ナオ?は、そのまんま沈んでしまった………






 SSは1ヶ所に集めて、ロープで木に括り付けておいた。
 怪我した奴には、応急処置もしておいたし…… ムネタケを探しにいくか。

 そう思ってゴートさんと合流すると……ムネタケが一緒にいた。

 「キーーーーーーッ!! なんなのよ、あの小娘っ!!
 「私と一緒に死んでくれる男性は、あんたみたいなヒス親父じゃない」!?
 あんたこそ、死にたければ一人で勝手に死んでなさいよっ!! 全くもう!!」

 「…………ゴートさん、そのキノコの首をこう、クリッってやっちゃっていいですか?」
 「………耐えろ、テンカワ…………」





Side Jun

 今、俺達は昼食をとっている。
 今回は、ホウメイさんが例の屋台を占拠してしまったので、バーベキューではなく浜茶屋のメニューが昼食となった。




 「最近になってこの島は、個人の所有になったみたいですね。」

 ズルズル………

 「へ〜、誰のだい?」

 パクパク………

 「おや?
 センドウ君。生姜を避けながらヤキソバを食べるなんて、君もまだまだだね。」

 ガツガツ………

 「世界有数の複合コンツェルン、クリムゾン・グループです。
 あ、ホウメイさん、かき氷お願いします。」

 ズズズ………

 「あいよ。 シロップは何にするんだい?」

 みんな半年以上前から、この事を知っているワケだが、つい最近に知ったように振舞わなければ、アカツキやムネタケに不審に思われてしまう。
 だからなのだろう。
 ルリちゃんは、「前回」のルリ君と同じように、この話を皆に振ってきた。

 「クリムゾン・グループ!! 知ってるわ!!
 ついこの間、一人娘が社交界にデビューして話題になってたわ!!」

 ガシガシ………

 「ふ〜〜……ん。
 でも、どうせろくでもない小娘なんでしょ?」

 ムネタケが渋い顔をして、そう呟く。
 そういえば、「今回」はムネタケがアクア・クリムゾンと接触した、とテンカワが言っていたな。

 「あら、よくご存知ですね、提督。
 社交界にデビューする時に、全員の料理に痺れ薬を混ぜたり。
 自分だけの少女漫画を描かせる為に、漫画家の誘拐未遂を起こしたり。
 ま、財閥にとっては唯一の汚点ですね。
 モグモグ……」

 ……改めて聞くと、物凄いな。
 ま、俺には関係ない話だな。

 シャリシャリ……

 「じゃあ、皆。
 食べ終わったら、チューリップの調査だ。」






 「………あれが新型のチューリップ……小さいですね。」
 「だね。」

 ま、大型のジョロが入っている一種のカプセルだからな。

 「それじゃあ、早速調査よ!! エステバリス隊を発進させなさい!!」
 「ですが提督。あのチューリップ、バリアで守られていて近寄れませんが……」
 「へ……? 確かに……しかもアレって、クリムゾンの紋章入りじゃない!!
 ……あの小娘、とことんまでふざけてるわね!!」

 …………一体、ムネタケとアクア・クリムゾンの間に何があったんだ?

 「構う事は無いわ!! さっさと、バリア発生装置を破壊しなさい!!」

 と、そのムネタケの一言があった瞬間!!

 ズドドドドドドド…………ッ!!

 チューリップから姿を現すや否や、ナデシコ改目掛けてミサイルを斉射する巨大ジョロ!!

 「ミナトさん、頼みます!!」
 「りょ、了解!!」

 ミナトさんが必死に艦を動かすが、如何せん艦船に小回りが効くはずも無く……

  ドゴォォォォオッ!!

 ディストーションフィールドで防ぎきれない衝撃で、激しく揺さぶられるナデシコ改!!

 「ルリちゃん、被害状況!! エステバリス隊発進しろ!!」
 「被害、左舷に集中しています。8ブロックが完全に破壊されています。
 人的被害は、現在のところ確認されていませんが、格納庫に2発ほど直撃……!!」
 『こちら格納庫!! 発進できる機体がブローディアとブラックサレナしかねえ!!
 他は、こっちに来やがったミサイルのおかげで、ボロボロだ!!
 とてもじゃねえが、出撃させらんねぇよっ!!』
 「ブラックサレナとブローディアは無事なんですね?」
 『ああ。両方共ミサイルの衝撃に耐え切りやがった。』
 「なら、アキト、β!! 今の話、聞いたよな。
 お前等だけで、あのお化けジョロを潰して来い!!」
 『『了解!!』』
 「ウリバタケさん、そちらに人的被害はありませんか……?」
 『大丈夫だ。怪我の酷い奴でも、足を折った位で、死人なんかいやしねえよ。』
 『ちなみに、パイロットも全員生きてま〜〜〜〜〜す。』

 そのウリバタケさんとヒカル君の言葉で、一瞬だが、安堵に満たされるブリッジ。

 『テンカワアキト、ブラックサレナ出る!!』
 『サクリファイス・β、ブローディア出撃するっ!!』




 その直後、巨大ジョロは、DFSで真っ二つにされた……





 「受けた被害の割に、あっけなかったな。」
 「ああ………」
 「結局、あのチューリップって、一体なんだったのかしら?」
 「恐らく、あの巨大ジョロを送りこむ為のカプセルだと思われます。」
 「向こうも、色々な兵器や戦法を試している、って事かしらね……」




Side Akito

 「あの……テンカワさん。
 ここにも、ヤドカリを置いていくんですか?」
 「え……そうだけど?」

 ヤドカリというのは、電子戦用のバッタの事だ。

 「ここって、重要度はそんなに高くないと思うんですけど。」
 「でも、出来るだけ色々な所にばらまいておきたいからね。
 第一、重要度が低ければ、発見され辛いと思うし。」
 「………判りました。」

第拾参話「闇の弾丸」に続く

あとがき

 鳥井南斗さん、感想メールありがとうございました。
 今でも、感想メールを戴けるほど大層な物を書けているか、と心配している平成ウルトラマン隊員軍団(仮)です。

 まあ、それは置いておいて、テシニアン島編、いかがでしたでしょうか?
 結局、パイロット三人娘は端役のままでした(涙)……
 その代わり、スポットを浴びたのがムネタケ。
 ひょっとしたら、彼って結構使いやすい人物なのかもしれません。

 さて、この次はナナフシなんですが……ナデシコ改の面々にとって、ナナフシは脅威足り得るのでしょうか?
 戦車二万台は脅威でしょうけど…

 ちなみに、今回がブラックサレナの初陣なんですが、ジョロをDFSでぶった斬っただけなので、詳しい描写はしませんでした。

 それでは、また。

 

 

 

 

代理人の感想

哀れブラックサレナ!

晴れの初陣に描写無しッ!(爆死)

 

 

後、枝織ちゃん真人間フラグがちょっと立ちましたけど・・・・・・後いくつくらいあるんだろう(笑)。

どう考えても十や二十じゃ利かないような。

(もっとも、いちいち描写できるわけはさすがにありませんが)