時の流れに if 〜灰色の守護者〜

 第二話 「緑の地球」はまかせとけ
            ……さっそくバレちまった





 俺達がデッキに帰還すると……母さんが待っていた。

 

「あれ?ユリカ……艦長は?」

 

 アキトはさも珍しそうな顔をした。

 ユリカって人は仕事をほっぽりだしてここに来るんだろうか?

 ……クロノスさんみたいな人だな、それ。

 

「艦長は遅刻の件でちょっと……今はお説教か書類かのどちらかでしょうね」

 

「そうですか」

 

「ところで愁、アキト君……元の身体に戻りたくない?」

 

「戻れるんですか!?」

 

 お、アキト嬉しそうだな。
 やっぱし自分の身体が一番ってか?

 

「ええ、すぐにでもできます。ついて来て下さい」

 

(やっと自分の身体に戻れるんだな!)

 

 やだなぁアキト。
 まだ1日も経ってないのに。
 ……え?やっぱり俺も行くの?
 母さんが振り向きざまニヤッってしてたのにか?
 俺、行きたくないな〜。

 絶対ロクでもない事考えてるんだ。
 やめといたほうがいいぞアキト。

 え?それでも行く?
 おいちょっと、やめろ引っ張るなって!
 いやだぁぁぁぁ!!

 

――医務室

 

「何でここに集まるかなぁ?」

 

 ここにいるのは俺、アキト、母さんに紗夜に綾、それとルリちゃん。

 つまり事情を知ってる人全てが集まってるってこと。

 

「別にいいじゃないですか。戻る前に今後のことを相談しておきたかったので……」

 

「いいのか? ここで寝てる人もいるだろうに……」

 

「酷く痛むというのでさっき睡眠薬を飲んでもらいました。目は覚ましませんよ」

 

 ふ〜ん……無理矢理じゃないだろうな?

 

「しかしヤワですねぇ。怪我したところをちょっと殺気を込めて見ただけで痛み出すんですから」

 

 ……おい。

 

「……シュウ達のことでかなり影響はあると思うが……
 できればこれ以上未来への大きな干渉は防ぎたい。
 余り予測できない未来になって、あれ以上酷い状態になったら目も当てられないからな。でも……」

 

 アキトが本来の話に戻す。

 ……後頭部にでっかい汗をかきながら。

 

「……アキトさん。アキトさんは死ぬことが解ってる人を前にして助けずにいられるんですか?」

 

 こっちも汗かきルリちゃん。

 ただしアキトを見る目だけは真剣だ。

 ……結構器用な娘だなぁ。

 

「ガイ、白鳥九十九、サツキミドリの人達、火星の生き残りの人達……
 やはり俺は……彼等を見捨てることは出来ない」

 

「それでいいんです、アキトさん。
 私はそんなアキトさんを支えてあげたいんですから」

 

「ルリちゃん……有難う」

 

 二人ともまだどこか張り付いた笑顔を交わす。

 ……母さんの一面にまだ立ち直れてないみたいだ。

 

(……お前の母は『刻』の影響がなければただの真面目な娘なのだがな)

 

 クロノスさんって……。

 

 その後はアキトがある計画の実行の相談をし、

 母さんがそれに首を突っ込んだり、

 ハーリーくんという子もこの時代に戻っていたとかそういう話をして、一段落ついた。

 

「さて、話もとりあえず一段落つきましたし……始めましょうか」

 

 さっ。

 

 と取り出す一万トン表示のぴこぴこはんまぁ。

 

「あ、あの……ユキさん何を……」

 

 ずさっ。

 

 一歩後ろに引くアキト。

 別に恥じるべき事じゃないさ。

 俺は天井に張り付いてるからな(汗)

 

「きっと貴方の考えてる通りのことです♪」

 

 笑顔で答える母さん。

 だがいまはその笑顔が怖い。

 俺の本能がさっきから『ニゲロニゲロ』と危険を知らせている。

 アキトも同じだろう。

 紗夜、綾助けて……。

 

「これで戻れるんだから……」

「…大人しく殴られときなさい」

 

 ……ひいぃぃぃぃ! 見捨てないでえぇぇぇ!!

 

「後はちゃんとしておきますんでとりあえず逝っちゃってください♪」

 

 その瞬間、周りの空気が凍り、意識を失った。

 そして、たしかに『ぴこっ♪』という音が聞こえた。

 

「……私から逃げれるとでも思いましたか?」

(そーそー、アタシには勝てないよっ)

 

 

 

 

「う……」

 知らない天井だ。 って違う!

 

「ここは…医務室か。
 確か俺は元に戻らせられると母さんに聞いて……」

 

 

 ……身体は元に戻ってるみたいだ。

 

 うん、この感じ。

 やっぱり自分の身体が一番動きやすい。

 

 母さん達は何処に行ったんだろう?

 アキトも居ないし……。

 お、書置きがある。なになに……

 

『ご飯食べに行くので留守番よろしく』

 

 寝てる奴に留守番頼んでどうすんだよ、全く……

 

 プシュ!

 

「手を上げろ!」

 

「……へ?」

 

 

 怪我人もいるし、煩くて鬱陶しかったんでさっさと寝てもらった。

 病院とかでは静かに、ってマナー知らないのかよ。

 

 今の状況が良くわからなかったので
 ナデシコに乗艦する時に貰ったコミュニケでルリちゃんと連絡を取った。

 

 あの娘、冷静そうだから現在の状況を詳しく教えて貰えるだろう。

 

 ピッ!

 

「やほ、ルリちゃん」

 

「シュウさんですか。目が覚めましたか?」

 

「うん、さっき起きたばっかり。
 ……で、今どうなってんの?
 部屋に入ってくるなりいきなり銃突きつけられたんだけど。
 そいつには寝てもらったけどさ」

 

「キノコさんの叛乱です」

 

「キノコ……胞子で増えるアレか?」

 

 う〜む……

 

『オホホホホ……ナデシコを制圧するのヨ、お前達!』

『は〜い!』

キノコさんと言われ何か想像する愁(一発書き)

 

 ……妖怪キノコ?

 

「……あっはっはっはっ!!」

 

 む、アキト。

 ルリちゃんの隣にいたのか。

 でも何故笑う?

 もしや、まだリンクはこんがらがったままなのか。

 

「アキトさん何で笑ってるんですか?」

 

「くっくっく……シュウ、ムネタケ副提督は人間だぞ?」

 

 胸茸……ってことは胸からキノコが……

 

『オホホホホ……ほとばしる血と汗! 最高ヨ!!』

 

 何故か胸からキノコを生やしたマッチョマンを想像した。

 

 ……うげ、考えるのやめとこ。

 

 

「で、どうすんのさ。
 俺は動いた方がいいのか?」

 

「いや、今はいい。
 もう少ししたら皆が反撃に出るから、
 それの支援をしてくれ」

 

 ほう……

 一時の事とはいえ、俺の身体にいたからだろうが、
 俺の実力はある程度解る、ってことか。

 

 それに、頼られるのは嫌いじゃない。

 

「解った、それまでここで待機してる。
 でもここからじゃいつ始まるかわかんないから
 反撃が始まったらコミュニケでコールだけして貰えないかな?」

 

「了解」

 

「それじゃ、また」

 

 ピッ!

 

 

 ……に、しても暇だなぁ。

 暇つぶしに何かないだろうか。

 医務室って何もないもんなぁ。

 薬とかベッドとか怪我人とか……あ、怪我人。

 

 そういえば怪我人が二人いたんだっけ。

 何も無いしお見舞いしとこう。

 何故か都合よくフルーツ一式も見つけたし。

 

 お、ベッドに名札が付いてる。

『ヤマダ ジロウ』 骨折

 えっと……ナッパーの人か?

 でも誰も寝てないんですけど。

 骨折って動けるもんだろうか?

 まぁいいや。トイレか何かだろ、きっと。

 

 

 えっと……もう一人は、っと。

 お、寝てる寝てる。

「すぅ……すぅ……」

 えっと、怪我は……打撲だけか。

 でも所々青く腫れてるな。

 この娘、ぐっすり寝てるし今のうちに治療しちゃおうか?

 怪我してる身体で仕事したくないだろうし。

 

 うっし。そうと決まれば……

 魔力を集中して、と。

 

「癒し」

 

 ポウッ……。

 

 女の子の腫れが引いていく。

 今回は大体一分位だろうか。

 急げばもっと早くできるんだが、それだと体力を消耗させてしまうのだ。

 

「もうちょいだな……」「ん……」

 

 これでも結構ヒヤヒヤしてる。

 

 『癒し』でも何でも『魔導』を使ってる時には魔力が見えない人にでも見えてしまう。

 気のせいで済ませてくれると有り難いんだけど……やっぱり見られないのが一番だ。

 あれ、それなら始めから治療しなければ良かったんじゃないか?

 この娘の怪我もほっときゃ治ってたんだし。

 そもそも始めは見舞いだけのつもりだったのに。

 ……むぅ、何故だろう。

 

「あの……」

 

「うおわぁぁぁっ!?」

 

 お、起きてる……。

 

「ああ、いやあの見舞いに来ようとしたら
 なんかほっとけなくて俺の力を使って治療したわけであって……
 決して疚しい事はしてない!というかなんというか……ってげっ!!」

 

 自爆じゃん、俺。

 

「……」

 

「……見てました?」

 

「……はい、思いっきり」

 

「……きっと、キミの気のせいじゃないか?」

 

「今更の言い逃れはすでに遅いです」

 

 ひぃぃぃぃ……言ってるそばからバレちゃったよぉ。

 

「あー……そだ、リンゴ! リンゴ食べる?」

 

「話を逸らすのは知られたくない証拠ですね……さあ、白状しなさい!」

 

 うっ……ちくせう。

 

「ああもういいよ、言っちまえ!
 俺は那桐愁、しがない魔法使いさ!!
 ……これで納得したか?」

 

「はい。でも不思議です……魔法使いって実在したんですね。」

 

「へぇ……キミ、こういうの信じる方?」

 

 こっちの世界じゃ信じない人ばっかりだと思ったんだけど。

 

「ふふ……この目で見れば、ねぇ?」

 

 それもそうかもしれないが。

 

「あ、リンゴ剥いてもらえます?」

 

「……うぃ」

 

 ピッ!

 

『反撃開始!』

 

「……お、反撃開始か」

 

「え?」

 

「ゴメン、ちょっと行ってくる。
 すぐ帰ってくるからここで待ってて。
 あ、ついでに……」

 

「アナタが魔法使いということは他言無用に、ですね? 解りました、シュウさん」

 

「うん、そうしてくれると有り難い。えっと……」

 

「イツキ……イツキ カザマです」

 

「イツキさん。じゃ、行ってくる」

 

 医務室から出たところで俺は懐から木刀を取り出す。

 さってと……始めますか。

 

 

 

 

 俺が途中で遭遇した兵士を数人叩きのめした所で反撃が終了した。

 

 その後でアキトが空戦フレームでチューリップとかいうのを牽制し、

 ナデシコがグラビティブラストをチューリップ内部に発射、殲滅した。

 

 ……俺の出る幕はさほどなかった。

 機動兵器がメインだから当然か。

 このままじゃいてもいなくても同じじゃないか。

 IFS、付けた方がいいだろうか……

 母さん、すでに付けてるみたいだし。

 うん、そうしよう。

 

 

 つづく!


<灰色の守護者のあとがきっぽいもの>

 

 こんにちは海です。

 灰色二話、いかがでしたか?

 こんな駄文を読んで頂きありがたいです。

 

 身体は戻っても、リンクはこんがらがったまま……

 アキトやラピスは愁の天然?思考に晒されたまま物語は続きます。

 アキトの、ラピスの精神は正常を保てるのかっ!?(冗談っす)

 

 

代理人の感想

「懐から木刀」と言うことは・・・・・・

愁くんのおなかには四次元ポケットがあるんですね?

(あんなもん懐に入らないでしょう(笑)?)