〜刻の涙〜

                   第二話

 俺達が着いたのは、大きなドアの前だった。確かに中から電子音などが聞こえてきた。

 「ちょっと待っててください」

 詩緒音に言われたが、気にしないで部屋の中に入っていった。

 「誰ですか、今忙しいんです。それに、早く仕上げないと・・・」

 「少しは休んだらどうだ」

 俺のこの一言で画面に集中していた彼女が、こちらを見た。一瞬の驚きと

 どういう顔をしたらいいのかという戸惑い。そのすべてを同時に表そうとしても出来ない

 「不器用さ」を感じ取れた。しかし、俺の知っている「ホシノ ルリ」とは少し違う

 ようなきがした。それは、初代ナデシコ時代のオペレータの顔でもなく、ナデシコCの艦長の顔

 でもなく一人の「技術者」としての顔だった。ちょうど、イネスさんがこんな顔を時々

 していたような。

 「詩緒音さん、こちらは誰ですか?」

 俺はその言葉を聞き間違いかと思った。俺を忘れているというよりももともと知らない人間

といったような感じだったからだ。

「ルリちゃん?俺のことが分からないのか?」

ようやくそれだけの言葉を発することができたが、それが精一杯だった。

「私は、あなたにそれほど馴れ馴れしく呼ばれる必要があるのですか?」

「え・・・・・」

絶句。一抹の不安。そして恐怖・・・今度は俺がどういう顔をしていいのか分からなくなるほうだった。

「すいません。今忙しいので出来れば後にしていただけませんか?」

「アキ「あ、ラピス集中してください」

 なにか言おうとするラピスをさえぎった。

「ここの構文は違いますよ。

反応速度の計算を間違えると機体も動かなくなります。もうちょっと集中してやってください。」

隣では、必死にプログラミングをしながらも此方を覗き見ているラピスがいた。しかし諦めて作業に戻る。

焦るというよりも淡々とといった感じで。

彼女は、俺を気にしながらも、てきぱきとルリに指摘された個所を直していた。

「アキトさん、彼女たちも忙しいようなので。とにかく私たちには時間がないのです。あなたがどういう事情

かは分かりませんが、今は、この機体を完成させるのが最優先ですし。私でよければあなたの事情を聞かせて

ください。なにか力になれることがあるかもしれませんし。それに、機体も気になるんでしょ?」

その言葉を最後に、俺と詩緒音は部屋をでた。

(いったい、どうなっているんだ?ルリが俺を忘れている?しかも、ラピスまで。ジャンプのさいに時間軸が

混乱したのかもしれない。とにかく、俺は俺の知る過去と近くて遠い未来にきてしまったのかもしれない)

「多分、違うと思います。彼女達も色々なことが重なり自ら心を閉ざしてしまったんです」

俺は一瞬ギクッとした。

「すいません。私って、時々人が考えていることが分かってしまうんです。無理に覗こうとするわけじゃないんですが。」

「とにかく、あなたのことを聞かせてください。今は、一人でも優秀な人間が必要です。あなたはパイロットでしょ?

だったら、あの機体を操縦することができるかもしれません。」

俺は、初代ナデシコでパイロット兼コックをやっていたこと。そして、火星の後継者の反乱時に悪鬼のごとく戦ったこと。

ナデシコCとユーチャリスとの戦闘でジャンプし、この時代に来てしまったことを事細かに話した。

彼女は、一切質問せずにただ聞いているだけだった。そして、話が終わり、しばしの空白の時間のあと、

「分かりました。まずはあなたの身体の治療からします。あなたは私たちのとって利用価値のある人間だと思います。

ただ、あなたが何モノなのか今の話では曖昧すぎます。もう少し様子を見させてください。

とりあえず、ここでは誰一人遊んでいられないのです。機体ができるまで、あなたには身体の治療後コックをやってもらいます。

それに、この時代の状況とかももっと把握したいでしょうし。それでもいいですか?」

俺は迷わず「わかった」とだけいった。少し力ない言葉だったかもしれない。しかし、自分に今は何かしらの役目を与えるのが

先決だとも思った。

「これが、私たちの切り札です。」

しばらく歩いて、最下層の倉庫のようなところにつれてこられた。その機体は俺のまったく知らないもので、何人もの人が

機体に張り付いて作業をしていた。

「詩緒音さん、この機体名は?」

「まだつけていません。それに、機体に名前なんて必要ないですし。しかし、この機体をみた限りには、あなたは私達の組織から

抜け出すことは許されません。それをするということは死に値すると思っていてください。」

その時の彼女は全くの別人だった。そう「深い湖のような人を飲み込む目」をしていた。

「わかった。とりあえず、俺はコックとしてここで働けばいいんだな。」

「では、部屋と診療所。そしてあなたの作業場を案内します。ついてきてください。」

いつしか彼女の目ははじめて会ったときのように優しい目に変わっていた。


〜〜〜あとがき〜〜〜

ちょっと雨龍の仕事が忙しいので時雨がとりあえず勝手に書き進めました。え、俺は誰かって?時雨です。

まぁ、その内俺の正体も分かるだろうし。ただ、雨龍の考えている小説とはちょっと違う方向に行きそうです。

なんていうか、多分、彼は「ルリ・アキト・ラピス」が中心の小説を書こうとしていたんだと思うけど、俺的には

「詩緒音中心」の小説に仕立て上げようと思います。まぁ、二人で書くかどうかも分からないけど、小説が支離滅裂に

ならないように注意していかないと。あ、もしかして、俺がこのまま乗っ取ってしまう・・・っていうこともアリ?かな


〜〜〜楽屋裏〜〜〜

時雨(以降:時) すいません。突然、ワケの分からない人間が小説を書き始めてしまって。

ルリ(以降:ル) っていうかあなたこそ何者なんですか?雨龍さんはどこに行ったんですか?

時 まぁ、そんな細かいことは気にせずに。

ル 雨龍さんは私中心の物語を作ってくれるはずだったのに・・・時雨さんはそーじゃないんですよね?

時 はい(きっぱり)

ル それ以上に、なんですかあの私の台詞は!なんだか、とーっても冷たい性格じゃないですか。それに台詞も少ないし(半泣)。

時 まぁ、それは以降善処しましょう・・・・

ル 政治家用語では「善処=全く対応しない」ってことですよ。

時 そのつもりです。

ル 時雨さんって私のこと嫌いなんですか?

時 そんなことはないです。ただ、普通のナデシコ小説は面白くないと・・・まぁ、書き手の飽くなき探究心ってことで(^^;

ル そんなわけの分からないこと言わないでください。それとも、私を怒らせたいワケですか?

時 怒ったときのルリちゃんもかわいいよ(はーと)

ル な、なに言ってるんですか!(怒) よーく分かりました。おしおきです(ビシッ)

時 ってことで(どーいうことか分からないけど)生きていたら続き書きます。

ル オモイカネ相転移砲・・・・発射 細胞単位で消滅させてやってください。

時 それはちょっと痛すぎるんでやめて欲しい・・っていっても聞いてもらえそうもないな。やっぱり続きなんて書くんじゃなかった

 

 

代理人の感想

 

いつの間にリレー小説になったんですかこれは(笑)。