無重力用0Gフレームにも何故かキャタピラがついている。

 汎用と言うべきであろうか、まあ、今のような時の場合には便利だ。


 コロニーの非常用通路をエステバリスで疾駆しながらアキトは心の中で設計者に感謝する。

 もし、キャタピラがついていなければ、今の走行は激しい縦揺れにさらされていたかもしれないからだ。




 アキトの腿に腰かけ、ライトで照らされている通路を見ているルリが身動ぎした。


 太腿の上の柔らかな感触と、腹に当たる鉄の感触。




 太腿の上の感触は……………………考えないことにする。




 だが、鉄のほうの感触はアキトにも馴染みがあった。

           拳銃
 間違いなく、『ブラスター』。



 その大きさからすると、今、アキトの携帯している電子制御銃と同じようである。

 連合陸軍が正式採用しているアスカインダストリー製の無反動ブラスター『BS137』


 通称『アビス』


 この冥府の王の名称をつけられた漆黒の銃は、全長260ミリ、重さ1.2キロ、トリガーハンマー200グラム。エネルギーカートリッジ6発。

 出力調節によって一本の薬莢で三点バーストや、出力を絞った状態で6発全てを連続で使い緊急時のエネルギーソードにも出来る優れものである。



 だが、アキトは何も言わなかった。

 ルリも先ほどから何も喋らない。

 ワーニングランプの点灯するアサルトピットで、二人は橙色光が照らす非常用通路を無言で眺めていた。



 今回、このサツキミドリは助かった。


 皮肉なものだ、とアキトは思う。ナデシコが地球を脱出するときの連合軍との戦いで300人の人命を自分の手で奪ってる。

 そして、今回は200名余りの人の命を助けた。


 運命の皮肉か?

 それとも地球での戦闘の反作用か?

 関係の無い人間が死んだ為に時空は別の人間の命を助け、釣り合いを取ったのだろうか?



 アキトは顔を歪めた。

 思わず逃げそうになる自分の心を嘲笑う。


 アキトは大きく頭を振った。

 馬鹿だ。

 馬鹿げた考えだ。

 あまりにも愚かな詭弁だ。



 自分たちの生死が人間以外の手に操られているなど、責任逃れもいいところだ。



 連合軍の人命を奪ったのは自分だし、サツキミドリを助けたのはルリちゃんたちだ。


 免罪符など貰いたいわけじゃない。殺しの言い訳が欲しいわけでもない。


 連合軍人を300人殺した。サツキミドリは助かった。

 二つの事柄には何の関連もなく、単なる事実のみ。


 それだけだ。


 それだけでいい。




 そろそろ、格納庫に着くはずである。アキトはエステバリスに緩やかな減速命令を出した。



 格納庫という単語でアキトは思い出した。

「そうだ、ルリちゃん」

「はい?」

「メグミちゃんをナデシコに送ってくれたんだってね。ありがとう」


 ルリは小さく首を振る。

「送っていったのは、リョーコさん、ヒカルさん、イズミさんです。私は何もやってません」

「でも、指示してしてくれたのはルリちゃんだろ」

「それは…………そうですが」

「だから、ありがとう」



「…………別に」




 アキトは微かに笑いが込み上げてくる。



 『前』もお礼を言ったとき、そう返されたことがあった。たしか……あの時は…………、


「ルリちゃん。そういう時は『どういたしまして』って言うんだよ」

 今回も、アキトは『前』と同じ言葉で諭した。




 一度、アキトを見上げたルリが、何も言わずに再び正面に向き直る。


 その仕草にアキトは小さく苦笑した。





 ほんの僅かな間、コクピットにおとずれた静黙を破り、アキトはルリに語りかける。


「そう云えば、ルリちゃん。前、俺に注文したよね。…………チキンライス」



 その言葉にルリが猫のような仕草で首を傾け、アキトの顔を見上げた。


 アキトの顔を覗き込むように、ルリの金の瞳がアキトの瞳に固定される。

 顔には何の表情も浮かんではいない。が、言葉の続きを促がしているのがわかった。



 膝の上に抱かれ、胸に頬を擦りつけるようにしてアキトの顔を見上げているルリを見て、アキトは子猫を抱いているような気分になる。ひどく、気難しい子猫を。



「今、練習してる。もう少しでホウメイシェフに合格をもらえそうだ。近いうちに、ご馳走して上げられると…………思う」



 ルリは何も言わない。ただ、金の瞳がアキトを捉え続ける。



 金の瞳を見つめながら、アキトは言葉を紡いだ。


「ルリちゃんには感謝してる。言葉にはできないほど。だから………………だから、俺の一番初めの料理は…………ルリちゃんに食べてもらいたい」



「……………………」



 ルリの無表情は動かない。言葉も発しない。ただじっと、闇色のバイザーをかけたアキトを凝視している。




 互いの唇が触れ合いそうなほど近い位置で、互いの瞳を見合わせていた。



「………………」



「………………」











 ふと、アキトから目線を外したルリが、正面に視線を戻す。

「格納庫に着きます」



「うわっ!!」

 アキトはエステバリスに急停止をかけた。


 ブレーキフックから火花が散り、格納庫の埃を舞い上がらせる。

 整備用ハンガーに正面衝突するギリギリ手前でエステバリスは停止した。


 アキトは小さく嘆息した。


 先の高速機動戦で深刻な損傷を負った機体である。これ以上の負荷をかけると、行動不能になるか、空中で分解するはめになる。



 アキトは格納庫の射出口を眺めた。


「さて、後は脱出だけど………………」

 そう、つぶやいたアキトはこめかみを指で掻く。


 管制室で、あれだけ啖呵を切ってしまったのだ。今さら、射出口を開けろと要請しても聞いてくれないだろう。


 ラピッドライフルでは格納庫の扉を吹っ飛ばせない。

 アキトは格納庫を見回すが、爆発物など見当たらなかった。

「………………どうするかな?」


 ルリが右手をエステバリスのIFS操縦コンソールの上に置いた。


「ルリちゃん?」


 ルリの右手の甲が虹色に輝き始める。

「連絡通路、閉鎖。非常用通路、ルート12、ルート88、閉鎖確認。格納庫搬入口、開きます」



 格納庫に通じる三通路の扉が閉まり、重々しい音を立てて格納庫の搬入口の大扉が開き始めた。


 扉の隙間から真空に流れ出だした空気は、内に含む水分を一瞬で蒸発し、凍結させ白い氷の靄となって流れ出てゆく。

 格納庫に突風が吹き荒れ、床に散乱していたものが扉の隙間に吸い出されていく。が、5秒もしないうちにそれは緩やかな風となった。


 大きく開いた格納庫扉の向こうには、星が連なる真空の宇宙。



 ルリがIFS操縦からそっと手を離す。



「通常射出口が先の攻撃で開閉不能になった為、搬入口をこじ開けました」

「ハッキングしたのか?」


「はい」



 アキトは何とも言えぬ表情を作った。



 エステバリスのIFSや通信機能はハッキングのために作られてなどいない。

 エステバリスを操縦しながら、ハッキングなど行なえる人間などいないから当然だ。


 軍事上重要拠点ではないにしても、このコロニーはネルガルが作ったものであり、そう簡単にはハッキングなどできないはずである。

 ハッカー対策用の侵入防壁システムも幾重にもかけられているだろう。


 そのコロニーを、規格が違うシステムを使って、あっさりとシステムを掌握したルリの手際にアキトは正直、舌を巻いていた。


 『電子の妖精』と呼ばれた兆しは、こんな頃から顕れていたのだ。

 とんでもない姫様である。


 アキトは呆れたように首を振った。


 ルリが身じろぎをする。

「どうしました?」



「いや、なんでもない。………………帰ろう。ナデシコに」


 アキトのエステバリスが宇宙に滑り出る。




 どこまでも続く星の大海。



 はるか遠くに白く輝く太陽が見える。この宇宙で唯一の目印。力の象徴。

 自動で偏光がかかったモニターを見ながら、アキトは心の中で問う。


 この世界に…………神は……いないのか?…………罪人を……裁く…………神は…………。


 『前』の7年後と同じように、星々は何も答えない。



 代りに返事をしたのは、

「アキト!!こっちのバッタは全部ぶったおしたぜっ!!」

 アキトのエステバリスに気づいて通信を寄越した山田の眼が驚きに見開かれた。


 山田の眼の前には無感情無表情の銀髪金瞳の少女。

 ルリが顔を上にあげた。


 コミュニケ画面がズームアウトし、ルリを膝上にちょこんと乗せて、苦笑しているアキトが映る。

「そうか。リョーコちゃんたちは?」

「え…………え、ああ。あいつらな無事だぜ。…………ああ、驚れえた」



「おうっ、テンカワ!!こっちは終わったぜ!!」

「ほ〜〜ら〜〜〜。お花がいっぱい」

「引かぬなら、咲かせてみよう、木星蜥蜴……………………字余り」


 山田に続いて通信を入れてきたリョーコ、ヒカル、イズミの声がそこでピタリと止まった。



 三人の眼がまじまじとバイザー無しのルリの素顔を見つめる。

 驚きのような、唖然としたような、信じられないような視線がルリの素顔に突き刺さった。



 その視線にさらされながらも、無表情のルリが訊ねる。

「どうしました?」


「あ、あ〜〜〜〜〜」

「ル……ルリさんてさ」

「………………今、何歳?」


「11歳です」



 その返答に三人は凍りついた。



 11歳の少女がバッタ三匹を一瞬にして屠り、戦闘指示を出し、管制コントロールをしてのけたのだ。

 軍で『常識外れ』と呼ばれているリョーコたちでも、ここまでの『常識外れ』は見たことがなかった。


 むりもない。

 絶句した三人を見てアキトは苦笑いを浮かべた。



「あ〜〜〜〜〜〜!!アキト!!アキト!!アキト〜〜〜〜〜〜!!」

 四つのコミュニケ画面を吹っ飛ばして胸の前で手を組んだユリカが現れる。


「よかった〜〜〜〜〜〜!!アキト、無事だったんだね!!急に通信がとぎ――――!?

 ユリカの歓声が途中で途切れた。



 ユリカの眼に映るのは、アキトの膝の上に座る白銀の少女。



「あ、あ、あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜!!
ルリちゃん!!アキトに抱っこされてる〜〜〜!!
ずる〜〜い!!ずるい!!ずる〜〜〜〜〜い!!
あたしだって、まだしてもらったことないのに〜〜〜〜〜〜!!」


「よかったぁ〜〜〜。ルリルリ、無事だったんだねぇ。寿命が縮んだぁ〜〜〜〜〜」

「ルリちゃん。ありがとう。ルリちゃんがいなかったらアタシ、今ごろ………………」

「いや〜〜〜〜。テンカワさん、ルリさん、ご無事で何よりです」

「………………見事じゃ」

「アキト!!てめ〜〜〜。せっかくの0Gフレーム、ボロボロにしやがって!!」

「この空域を離れる。パイロットは至急、ナデシコにもどれ」


 ナデシコクルーが一気に喋り始めた。


 静かだったコクピットに活気が満ち溢れる。皆は勝ち戦に浮かれていた。



 無言で彼らを眺めていたルリが右手を伸ばし、中央でズルイだの、あたしにもして、だの騒ぎたてているユリカのコミュニケ画面を指で上に弾く。



 ユリカ画面が上に弾かれた後に出てきたのは沈痛の面持ちのジュン。


 眼を伏せて、歯を食いしばっている。


 二人の視線を受け、ジュンが意を決したように顔を上げた。

「ごめん。ルリくん。僕は…………グラビティブラストを……撃てなかった」

「アオイさんが謝る必要なありません。その場にいなかった私が悪いんですから」

「だが…………、僕は………………」

「思いつめる必要はないさ。ジュン。ナデシコクルーは全員無事だったんだ」

「テンカワ…………。だが…………だが、僕がグラビティブラストを撃てれば、コロニーが被害を受けることはなかったんだ!!」

「先も言っただろう。それは、お前だけが悪いわけじゃない。事前に危険を察知できなかったナデシコのせいでもあるし、第一射を阻止できなかった俺にもある」

「あの場でグラビティブラストを撃っても、全艦撃沈できる可能性は低かったです」


 ルリとアキトの慰言を受けて、ジュンが左手を固く握り締めたまま押し黙った。


 アキトは僅かに口の端を歪め、ルリが微かに眼を細める。




「次回は、こういうことが無いように『コルリ』にマニュアルでの撃ち方を教えておきます」

「うにゃ〜〜〜〜。ルリネェ。初戦から大ピンチだったよ〜〜〜〜〜〜ぉ」

 鎧兜を纏い、折れた矢などが鎧に刺さった戦乱後の将軍の格好をして、半泣きになりながら『コルリ』が現れた。


「いいえ。『コルリ』。こんなものピンチでも何でもありません。本当の『ピンチ』は、こんなものではありません」

 淡々としたルリの断言にコルリが眼を見開いた。

「これでもピンチじゃないの?」


「はい」


 ルリの即答にコルリが唖然とした表情を浮かべたまま沈黙した。



 ルリとアキトの前でスパナを振り回しているウリバタケが叫ぶ。

「おらっ!!射出口開けるぞ!!とっとと帰って来い!!」




*




 ナデシコの格納庫で黒色の0Gフレーム型エステバリスが片膝をついた。




 数時間前はロールアウトされたばかりの新品同様だったとは信じられないほど、その機体は傷ついていた。

 前面フレームは大きくへこみ、スラスターは例外なく焼け焦げ、表面の傷は数えるのが面倒なほどである。



 ウリバタケは大きく溜息をつく。


 サツキミドリの部品搬入のときに、一応、3〜4機分のスペアパーツは確保しておいた。

 が、まさか、搬入してから二時間後に使うはめになるとは。


 たしかに、重力ユニットをもう一つ取り付けることになれば、全て作り直しになるだろう。それでも、こうも破壊されると、気分的によくない。





 整備班が見守る中、エステバリスの前面フレームが異音を響かせながら開いた。




 そこには、黒髪で夜色のバイザーと闇色のマントを羽織った青年と、その膝の上に腰かけている銀髪で月色の瞳とプラチナ色のマントを纏った少女。


 照明の中に浮かび上がる二人は、一枚の絵画と云われても信じてしまえるほど、幽静だった。




 白銀の少女がコクピット前面に足をかけると、誰の手も借りず、飛び石を蹴るようにフレームの各所を足場にして跳び下りてくる。


 白色のマントは膝下までしかなく、テルテルボーズの傘のようにルリの膝元で広がっていた。

 そこから、伸びる白い脚が広がるマントのせいで針金のように細く見える。


 ルリは誰とも口を利かずに格納庫の隅へと歩いていった。



 呆気に取られている整備班を見下ろし、一つ苦笑を浮かべると、アキトはコクピットに足を掛け、一足飛びに飛び降りる。


 アキトの漆黒のマントはルリの物と違い、足首までも覆い隠しているが動くのには邪魔にならない。



 アキトはウリバタケに歩み寄り、開口一番に謝る。

「すまない」

「謝るぐらいだったら、始めからやるんじゃねぇよ」


 アキトとウリバタケはボロボロのエステバリスを眺めた。

「火星に着くまでには直せるか?」


 ウリバタケがスパナで頭を掻く。

「直さなきゃならんだろうがよ。無理矢理でもな」

「すまないな」


「まっ、無事で帰って来て何よりだ」



「班長〜〜〜!!エステバリス収納、終わりました〜〜〜〜〜〜〜!!」

 管制にいる整備員の声が格納庫に響き渡った。


「お〜〜〜〜し、射出口閉めろ〜〜〜〜!!新パイロットの顔見せだ!!手〜〜あいたヤツは集まれ〜〜〜〜〜!!」


『へ〜〜〜〜〜い!!』









「たまんね〜〜〜ぜ。ったくよ〜〜。人使いの荒い船だよな〜〜〜」

「温泉で隠し芸…………銭湯芸劇………………戦闘迎撃…………クククククク」

「そうそう、やっぱりジョーって最高だよね!!」

「おう!!やっぱ男の死に様ってのは、ああでなきゃな!!」

 エステバリスから降り立った四人のパイロットはそれぞれ声高に会話しながら、格納庫に歩いてくる。



 片手でヘルメットを回していたリョーコが、ふと気づいたように足を止めた。


「おめ〜〜〜が、テンカワか。…………やっぱり、奇天烈な格好だな」

 黎黒のバイザーを被り、漆黒のマントを羽織っているアキトを頭から爪先まで眺め回した。


「え〜〜〜〜。格好いいと思うけどな〜〜〜〜。ほら、孤高のヒーローみたいでさっ」

 手はネタメモ帳に何かを書き込みながら、ヒカルがアキトの周りをピョンピョンと飛び跳ね、あっちこっちから観察している。


「背中に…十字架………………バック……クロス……まっく…くろす……真っ黒…黒すけ………エヘ…エヘ……エヘヘヘヘ」

 イズミが懐中電灯の光を顎の下から当てながら、無気味に笑った。



「お、お前らが、新しいパイロットか?」

 引き気味のウリバタケにヒカルが元気よく手を上げる。

「は〜〜〜い。そうで〜〜〜ス。『アマノ・ヒカル』。ピッチピチのジュ〜〜〜ハッサイで〜〜〜ス。好きなものはピザの端っこの固い部分と、ちょっと湿気たお煎餅で〜〜〜ス」


「お、俺はウリバタケだ。整備班の班長をやっている。メカのことなら何でも任せてくれ!!」


「へ〜〜〜。ウリピーか〜〜〜。よろしく〜〜〜」

 にやけているウリバタケの手を握って、ヒカルがブンブンと振り回した。




「ア〜〜〜キ〜〜ト〜〜〜〜!!アキト〜〜!!アキト〜〜〜〜!!」

 格納庫に言わずと知れた甲高い声が響く。


 格納庫の入り口にはブリッジからダッシュしてきたユリカ。

「アキトッ!!あたしも抱っこして〜〜〜〜〜!!」




 飛びついてくるユリカをアキトはひらりと躱した。


 『空中で・急には・止まれない』


 放物線を描き、ユリカは0Gフレームに顔面から――――

 ゴンッ!!




 頭から白煙を上げているユリカを、アキトは親指で指し示す。

アレが『ナデシコ』艦長の『ミスマル・ユリカ』だ」


「「「…………そ、そう」」」

 リョーコ、ヒカル、イズミは冷汗を垂らし、床に潰れている艦長を眺めた。



「いや〜〜〜〜〜。皆さん。ご無事で何よりです」

 黒ぶちの眼鏡をかけ、赤いベストを着たプロスがにこやかに話かけてくる。

「え〜〜〜〜と。プロスさんだっけ?」

「はい。お久しぶりです。ヒカルさん。さて、リョーコさん、イズミさん、ヒカルさん、食堂のほうで歓迎会の用意が出来ていますので、ぜひ」



「それよりも、風呂、入りたいんだけど」

「……………………シャワーを浴びて…………シャアーワせ」

「そうですか。では、大浴場の方に案内させていただきます」

 一流ホテルのボーイのごとく頭を下げるプロス。ボーイをやっていたことでもあるのだろうか?謎な人である。



 プロスが眼鏡を押し上げた。

「テンカワさん」

「わかってる。食堂が人手不足なんだろ」

「はい」



 苦笑したアキトは踵を返して格納庫を出ていった。






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