The answer

天使編第11話

「・・・さて、長い間忘れておったが、我を騙る犯人を探さねば。」

「別にいいじゃない、そんな事。

 もうどうでもいいし、覗いたことも許してあげるわ。」

「そうはいかん!犯人には死の制裁をば!」

「死の制裁って・・・。」

そのとき、手がかりは向こうから訪れた。

「あら、榊さん?先ほど公園に向かいませんでしたの?」

ミントが我の姿を、まるで幽霊のように見つめる。

「あ、でも榊さんは瞬間移動ができますから・・・。」

「その者はどこへ行った!」

我はミントの両肩をがっしと掴んで前後にぶんぶんと振り回す。

「く、苦しいですわ・・・。」

「む、許せ。」

「はあ・・・つい先ほど、榊さんが公園はどこだとおっしゃいましたので、教えたばかりですわ。」

「その者が犯人だ!向かうぞ、蘭花!」

「え、ち、ちょっと待ちなさいよ!」

未だ状況が読めないミントを置いて、我と蘭花は急いで公園に向かった。

公園では、案の定我の偽者がいた。そして、偽者が見ていた先には――――――

「し、シヴァ皇子!?」

「偽者め・・・何をする気かは知らんが、我が刀の錆びに・・・。」

と、蘭花が我より先に飛び出した。助走をつけ、偽者のほうへ思いっきり跳躍。

「流星一文字キィーック!」

ドゴッ!

気持ちいい打撃音とともに、偽者がのけぞる。強さは本物とは程遠いな、フッ。

「うわっ!な、何これ!」

蘭花の叫びを聞き、様子を見る。

偽者は首より上が完全に取れていたが、未だゾンビの如くゆっくりと動いていた。

「紀柳!何なのよ、これは〜!」

「ふむ・・・面白い!二の太刀は無いと思え・・・!」

「は?・・・そ、それって・・・。」

我は刀を上段に構え、一気に詰め寄る。

「必殺!」

「こら!それって有名なネタじゃない!やめなさい!」

「豪烈雷光斬!!」

雷がほとばしった刀を、勢いに任せてそのまま振り下ろす。

音も無く、偽者は二つに割れて、正体を現した。

「・・・機械の哨戒機か。故に我の姿を盗めたまま、不自然無くおれた訳よ。」

「・・・なあんだ、斬○刀じゃなかったのね。」

「無論だ。本来ならハンマーが欲しいところだがな。」

「・・・某勇者のゴルディオンハンマー?」

「・・・無残なり、某貧乏高校生よ・・・。

 しかし、どこからこのような物が・・・?」

ヴヴーン!ヴヴーン!

「・・・む!敵か・・・!」

「行かなきゃ!」

>タクト

目的地であるローム星系にもうすぐたどり着こうとしたエルシオールの前に、突如現れた無数の艦隊と、

2機の大型戦闘機、そして3機のロボットが現れた。

戦闘機とロボットには、今までの無人艦隊とは違ってパイロットがいた。

彼らは、どうやってかは知らないが、エンジェル隊の通信回線に割り込んできた。

何故かは知らないが、それぞれ1人が、1人ずつばらばらに。

カミュとミルフィーユ。

「やあ、ミルフィーユ桜葉。僕の愛しいハニーよ!」

「は、ハニー!?」

「そうさ、ハニー!

 僕は君のことなら何でも知っているんだよ!」

「いや〜!ストーカーです〜!!」

ギネスと、ランファ。

「勝負だ!蘭花フランボワーズ!!」

「な、何であたしの名前知ってるのよ!?」

「貴様が、我がライバルとなるかどうか、確かめてやるぅぅぅぅぅぅっ!!」

「人の話を聞きなさいっての!」

リゼルヴァと、ミント。

「ふん、ブラマンシュの成り上がりか。下らんな・・・。」

「あら、貴族もどきの貴方に、言われる筋合いはございませんわ。」

「な、何だと!?」

「そうやってすぐ怒るということは、図星ですの?」

レッドアイと、フォルテ。

「・・・勝負だ・・・。」

「はん、やってやろうじゃないのさ!」

「・・・面白い・・・。後悔させてやる・・・。」

「そりゃ、こっちのセリフさ!」

ベルモットと、ヴァニラ。

「修理もできないうちに、やっつけてやるよ!」

「・・・・・・。」

「・・・おい!何か喋れよ!」

「・・・必要ありません。」

「2勝1敗2引き分け・・・

 よっしゃ!勝った!!」

「何の勝負だ、何の。

 ・・・それはともかく、エンジェル隊の情報が知られているのは、皇国のデータバンクをやられたのが原因と見ていいだろうな・・・。

 諜報部として、不覚を取ったか・・・。」

レスターが、俺の隣で不思議なことをつぶやいていた。

「・・・誰が諜報部だって?」

「それより、目の前の大艦隊をどうするつもりだ?」

しかも流しやがった。

とはいうものの、言ってる事は正しい。

目の前のモニターには、一面黒、黒、黒の戦艦が多数。新型も発見できた。

「余った紀柳に任せるしかないだろうな・・・。」

「前方の旗艦から、通信です!」

アルモの呼びかけに、多少面倒臭さを覚えながら、

「・・・繋いでくれる?」

「はい。」

そして、モニターには頬に傷を持った女性が現れた。

「貴方が、シヴァ皇子を運んでいるので有名なタクトマイヤーズね?」

「・・・人にものを訊ねる時は、まず自分から名乗るものだろう?」

「ふっ・・・余裕ね。」

目の前の女性は微笑を浮かべ、

「私はシェリー・ブリストル。エオニア様の忠実なる部下。」

「俺は、タクトマイヤーズ。シヴァ皇子とエルシオールを、護る者だ。」

「護る者は、エンジェル隊じゃなくて?」

「いやー、一本取られたな。」

相変わらずいつものスタンスを崩さないタクトに、

「このアホ・・・。」レスターは呆れ、

「・・・やりにくい・・・。」シェリーは困惑していた。

シェリーは一息入れて落ち着くと、自分の要求を告げた。

「シヴァ皇子を渡しなさい。そうすれば、命は見逃してあげるわ。」

「・・・やだって言ったら?」

「貴方達に、引導を渡すだけ。」

「はあ・・・。」タクトは最近癖になっているため息を一つつき、愚痴る。

「俺達は、何かを貰う気も渡す気もないけどね・・・。」

「じゃあ、交渉決裂ね。」

「そういうことだ。全機、戦闘開始!」

「そこだね!マイハニー!」

カミュの搭乗機、イージスガンダムのビームライフルが火を噴くが、ラッキースターは間一髪で回避する。

「うわわっ!・・・危なかった〜。」

「ふっ、さすがはマイハニー。簡単には殺されてはくれないね。だが!」

イージスが人型からクレーンゲームの手のような4つ爪のMA型になり、ラッキースターに襲い掛かる。

「これなら、どうかなっ!」

「わあっ!」

イージスMAの4つの手の抱擁を、すんでのところでかわす。

「ええ〜いっ!」

反撃のミサイルとバルカン攻撃も、イージスには傷ひとつつかない。

「ええ〜っ!何で〜?」

「ふふっ、秘密さ。

 さあ、覚悟!」

イージスの4つ爪の中心部にエネルギーが収束し、大口径360ミリビーム砲<スキュラ>が唸る。

「キャアッ!」

「ビームのエネルギーは持つのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ギネスがナデシコ艦長もびっくりの大声で叫びながら、ビームライフルを連射する。

「バルカンにビーム砲に大砲・・・。

 あいつ、ハッピートリガー並に武器持ってるじゃない!」

Ez8の猛攻による高密度の弾幕を、懸命に回避していくランファ。

が、一瞬の隙をつかれた。

「そこだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「しまっ・・・!」

ドゴォォォォン!!

180ミリキャノンの1発が、カンフーファイターのスラスターの片方を打ち抜く。

「やばっ!機動力が40%ダウン・・・。

 まずいわね・・・あっちと同じ位のスピードになっちゃった・・・。」

「行くぞ、ライガーゼロ・イクス。」

レッドアイの静かな声とともに、狼型のロボットが猛スピードで突進する。

そして、背部の2本のスタンロッドで、すれ違いざまにハッピートリガーを何度も叩く。

「くっ・・・やるじゃないのさ!これでも食らいなっ!!」

ハッピートリガーのミサイル一斉発射を、ライガーゼロはサイドステップ(?)でたやすくかわす。

「ステルス・・・。」

と、ハッピートリガーのレーダーから、敵の反応が消失する。

「・・・ありゃ?反応がない・・・?」

「どうかなさいましたか?フォルテさん。」

そのとき、ミントのトリックマスターが飛び込んでくる。

「ああ、こっちの敵が、レーダーから急に消えてさ。」

「お任せください。相手のステルスを破りますわ。」

トリックマスターは主に遠距離戦や、特に電子戦を得意とする機体。

名前通り相手を騙したり、相手の騙しを見破るのに長けている機体だ。

「そういや、ミント。あんたの敵は?」

「既に追い払いましたわ。口ほどにもありませんでしたわ。ヴァニラさんも、敵を片付けてミルフィーさんの支援に行きましたわ。

 ・・・情報、送信完了ですわ。」

レーダーに反応が再び戻ったその時、ライガーゼロが飛び込んでくるところだった。

「そこだ・・・。」

「蜂の巣にしてやるよ!ストライクバースト!!」

「・・・大丈夫ですか?」

「あ、ヴァニラ!うん、ありがと。」

ミルフィーユが外を見ると、自機の周囲が緑色に染まっていた。

ヴァニラの機体、ハーベスターの特殊能力で、ナノマシンを使用しているからだった。

「気をつけてください・・・。」

「うん。えっと・・・。」

ミニターには、イージスが2発目のスキュラを打つ態勢に入っていた。

その前に、先制攻撃。

「ハイパーキャノン!」

「確かにスピードは落ちたけど・・・。」

Ez8のバルカンとサラミス砲を、ランファはカンフーで鍛えた気配察知で何とかかわし、ギネスの背後に回りこむ。

「後ろを取っただとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「攻撃力が下がったわけじゃないから!」

ここぞとばかり、ランファはカンフーファイターを接近させる。

「鉄・拳・制・裁!アンカークロー!!」

ドゴオッ!バキッ!

「なにぃぃぃぃっ!!」

二本の爪が、Ez8の背中を貫く。が、撃墜には至らない。

「げっ!まだ沈まないし・・・。」

「やるな・・・

 それでこそ、我が戦友(とも)だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あんたと友になった覚えはないっ!!」

そして、Ez8がカンフーファイターに向き直る。

何か嫌な予感がしたランファは機体を離そうとするが、時既に遅し。

「倍返しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ドガガガガガガッ!ドゴオッ!ドシュウッ!

Ez8の全身の火器が揺れ、バルカンと胸部ガトリング砲が鳴り響き、180ミリキャノンが火を噴き、ビームライフルが輝く。

近づきすぎたのが仇となり、回避不可能であった。

「間に合わない・・・!」


コメント

大口径360ミリビーム砲<スキュラ>

大いに名前を勘違いしている恐れがあります。

第九話にて。

「あっなたのハートに直撃よっ!」

声ネタの間違いが発生しました。すみませんでした。