The answer

天使編第12話

「倍返しだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ドガガガガガガッ!ドゴオッ!ドシュウッ!

Ez8の全身の火器が揺れ、バルカンと胸部ガトリング砲が鳴り響き、180ミリキャノンが火を噴き、ビームライフルが輝く。

近づきすぎたのが仇となり、回避不可能であった。

「間に合わない・・・!」

「飛翔虎竜波!!」

突然、ランファの前を、巨大な気の塊が通り過ぎていく。

その塊は、ビームや実弾をまとめて弾き飛ばしていった。

「助かったの・・・?」

「ふむ・・・遠距離における気の操作も、問題ないな・・・。」

「き、紀柳?今の、あんたなの?」

「諾。」

「・・・ありがと。助かったわ。」

「礼には及ばぬ・・・たあっ!」

最低限の返事だけを返し、紀柳は再び黒の群れに飛び込んでいった。

ちなみに、そのうちにヘルハウンズ隊は撤退していた。

「ヘルハウンズ隊は退けたが、いまだ向こうには大量の敵。

 こっちで動けるのは紀柳、フォルテ、ミントぐらい・・・おわっ!」

敵からの砲撃がエルシオールを揺らしつづけている。既に何発か直撃も受けていた。

「第3、6、15区画を閉鎖!」

「3時方向より、敵の増援部隊が出現!」

時間を追うごとに、増えてくる戦艦。狭まる包囲網。

エルシオールが沈むのは、時間の問題と思われた。

が、その時――――――

「全艦、主砲一斉射撃!」

「・・・エルシオールを、援護。」

「正面に、ワープ反応!」

「また敵か!」

「いえ、これは――――――!」

「どうした!」

「後方より、襲撃を受けました!

 この信号は・・・皇国軍です!」

エオニア軍の背後から、それを上回るほどの数で大量の皇国軍が押し寄せ、囲みの正面を破った。

「もしかして、ローム星系からの援軍か?」

「あの陣形は・・・。」

「通信が繋がりました!」

通信を繋がせると、タクトもレスターも、いや、紀柳以外この船のクルーは全員知っている老人がモニターに現れた。

「無事か?エルシオール。」

「ルフト先生!生きていらっしゃいましたか!」

「勝手に殺すでない、レスター。

 囮をつとめたつもりが、逆にそっちに敵が集まってしまったようじゃのう。」

「お陰で、こっちは大変でしたよ。」

その時、一人の女性がルフトの隣から現れ、エルシオールに指示を出す。

「・・・エルシオールは、前方から戦線離脱してください。」

「へえ〜、こっちにもユリカ似の人・・・が・・・。

セリフの途中で、タクトはフリーズした。

それもそのはず、ユリカに似ているどころか、制服以外は完全にうりふたつなのだ。

とりあえず再起動したタクトは、かなり動揺しながら訊ねる。

「・・・もしかして、ユリカ?ナデシコ艦長、ミスマルユリカ?」

「・・・(コク)。」

その瞬間、タクトは彫像と化した。

「・・・ゼロ?」

首をかしげるユリカと、石になったタクトを交互に見つつ、何となく事情がわかったレスターが代わりに指揮をする。

「解った。本艦は戦線離脱する。

 全機、帰還せよ。進路を取れ。」

「はい、副指令。」

「そうか。エルシオールは、ファーゴへと入ったか。」

エオニア旗艦、ゼムの艦長席でエオニアがシェリーの報告を聞いていた。

「申し訳ありません。ルフトの邪魔が入ったもので・・・。」

「いや、気にすることはない。今回は、向こうに運があっただけのことだ。

 それより、皇国軍の集結ポイントの戦闘はどうなった?」

エオニアが言うと、シェリーは微笑を浮かべた。

「予定通り、我が軍の敗北に終わりました。」

「よかろう。

 よくやってくれた、シェリー。」

「では、失礼します。」

シェリーが下がった後、入れ違いに部屋に1人の、左腕が鞭のような触手になっている金髪の少女が現れた。

どこからともなく。

「やあ、ノア。うまくいったかい?」

「もちろんよ、お兄様。」

ノアと呼ばれた少女は、感情の感じられない冷たい笑みを見せる。

「紋章機のデータはちゃんと取ったわ。あの変なロボットも。」

「そうか。」

「それと、お兄様に頼みごとがあるの。」

「なんだい?ノア。」

「私の渡したロボットでも、ヘルハウンズの人たち、天使に勝てなかったみたい。

 もっと強力なマシン、造ってもいい?」

「ああ、もちろんだとも。期待してるよ、ノア。」

「期待していて、お兄様。どんなことをしても、勝たせてあげるから。」

「・・・そう。どんなことをしても・・・。」

「はあ・・・疲れた。」

「大変だな。ほら、栄養ドリンク。」

いかにもサラリーマンの朝帰りの如く憔悴したタクトに、レスターが声をかける。

タクトは栄養ドリンクのビンのふたを開け、ごくごくと飲んでから、

「大変なんてもんじゃないさ。

 シヴァ皇子を守り通した英雄やらなんやらで、皇国のお偉いさんがわいわいがやがや・・・付き合いきれん。」

「運命だな。」

「更にそのお偉いさん方が見たところ、後ろで威張って自分は何もしませんって感じなやつばっか。

 どこもかわんねえなあ・・・。」

「・・・そうそう。」

「だよなあ・・・

 って、ユリカ!?いつの間に!?」

いきなり気配も出さずに現れたユリカを見て、タクトは跳びあがって驚いた。

「・・・ゼロ?」

「い、いつ現れたんだ?」

「・・・秘密。」

ユリカは静かに微笑みを浮かべる。

そのしぐさに、レスターがグラリときたのを、タクトは見逃さなかった。

「大体、ユリカはどうやってこの世界へ?」

「・・・ゼロに、跳ばされて。

 ゼロは、あのジャンプさせる機械、どうやって手に入れたの?」

「古代火星人だ。

 正確には、火星人の技術を学んだ、ってとこだな。」

ユリカは、疑問に思うところがあるのか、まだ質問は続く。

「・・・どうやって、古代火星に?」

「こちとらそのときゃ機械だしな、うまくジャンプを、何とかして・・・。」

「・・・偶然?」

「ぐはっ!」

どうやら図星らしく、精神にシャイニングフィンガーを食らったタクトは地面に崩れ落ちる。

それをほっておいて、レスターは訊ねる。

「で、ミスマルさん。本当の用件は?」

「ルフト准将から伝言。明後日、ダンスパーティーがあるから、タクトは出席するように、って。

 その他のクルーについては、任せるって。」

「またか・・・。もうエルシオール司令官の仕事は、終わりなのになあ・・・。」

「俺は、出ないぞ。頑張ってこい、タクト。」

「あと、タクトはダンスのパートナーに誰か誘って来い、だって。」

「・・・マジ?」

「・・・マジ。」

その後、廊下にて。

「そういや、そもそもユリカって、何でこっちに跳んできたんだ?あっちの俺の方に跳んだら良かったのに。」

回想中。

ナデシコの時の、明人とゼロの会話。

「明人、おまえはどうやって戻ってきたんだ?」

「妻のユリカに・・・ごにょごにょ。」

「・・・お前、結婚していたのか!?」

「あれ?俺もお前なのに、結婚してないのか?」

「誰ともしていない。お前の歩んできた人生とは、違うものだろうな。」

「・・・どんなんだ?」

「そうだな・・・。」

回想終了。

「不思議だ・・・。

 それより、ダンスパーティーって言っても、いったい誰を誘えばいいのやら・・・。」

廊下でぶつくさ言いながら歩いているタクトに、声をかける者がいた。

「あの・・・タクトさん?」

「やあ、ミルフィー。どうかしたの?」

ミルフィーユの様子は、どことなく遠慮がちだった。

「あの・・・その・・・えっと・・・。」

「・・・?」

「だ、ダンスパーティー、私と踊りませんか!?」

「・・・??」

「あ、あの、嫌ならいいんです!聞いてみただけですから!」

「あっ、ちょっ・・・。」

タクトが何かを言う前に、ミルフィーユは言うだけ言って走り去ってしまった。

「あ、いや、俺も嬉しいから別に・・・まあいいか。

 今日はもうすぐ終わりだし、部屋で寝て明日もう一回会うか。」

ふわあとあくびをし、タクトはのろのろとその場を去っていった。

ダンスパーティーまで、あと一日。

ブリッジに来たタクトに、ココとアルモが花束を持って駆け寄ってきた。

ちなみに今はレスターは休息中らしく、ブリッジにはいなかった。

「・・・どうしたの?その花束。」

「マイヤーズ司令、聞きましたよ!」

「ダンスパーティーの一件。」

と、2人が花束をタクトに差し出す。

「これを、誘う人に渡すのに使ってください!」

「女の子は、花束を好きな人から貰ったら嬉しいものなんですよ!」

「はは・・・ありがと。使わせてもらうよ。」

女性2人に気おされながら、タクトは花束を受け取る。

「で、誰に渡すんですか!」

「司令、教えてくださいよ!」

と、何故か脳裏にある少女の顔が思い浮かび、同時に首から上がかあっとなるのを感じる。

「あ!顔が真っ赤になってますよ!」

「もう決まってるんですね?」

「は、ははは・・・それじゃ!」

北辰と対峙するときにも感じなかった異様なプレッシャーに圧倒されまくったタクトは、仕事もそこそこにブリッジから逃げ出していった。

>タクト

「しかし・・・これを渡すことイコール、告白って事になるんじゃないのかな・・・。」

俺は、さっき思い浮かんだ人を思い出すと、再び顔が赤くなってるのが自分でもわかった。

慌ててぶんぶんと首を振るが、考えは止まらない。

「俺って、ああいうタイプが好きだったのか・・・。」

(確かに可愛くて、家庭的で、ほんわかしてるけど・・・

 そうじゃなくて!)

とりあえず否定してみたりしてみるが、思考とは裏腹に、俺の足は勝手に動き出す。

「・・・覚悟を決めるか。・・・いろんな意味で。

 ・・・戦闘に出るときよりも緊張するな・・・。」

そして、俺は部屋のドアの前に立つ。ミルフィーの、部屋の前に。

(あー、うー、おー・・・コホン。)

「・・・ミルフィー、いるかい?」

「あっ、タクトさん!どうぞ〜。」

多少緊張しつつ、俺はミルフィーの部屋に入る。

背中に、花束を隠すのを忘れずに。

「どうしたんですか?タクトさん。」

ミルフィーは、いつもの明るい笑顔で、俺を迎えてくれた。

ミルフィーの部屋は、全体がピンクにまとめられていて、今彼女が使っているキッチンが一番にぎやかだった。いろんな意味で。

「えっと・・・これ。」

俺は恥ずかしさに消え入りそうな声で言いながら、花束を渡す。

「え・・・?」

「ダンスのとき、一緒に踊ってくれないか?」

その時、ミルフィーがどんな表情をしていたか、俺には知るよしはないが、

彼女の答えが嬉しそうに聞こえたのは、俺の妄想ではないだろう。

「・・・はい!」


コメント

シナリオの進みもへったくれも無い進み方です。

全然進んでません。

・・・8月22日までにこれ終わらせねば・・・。