第17話

もうすぐ白き月というところで、戦いは始まっていた。

というより、エルシオールが戦う前に戦いは始まっていた。

近くの惑星から、皇国軍の援軍が来ていた。突撃艦20隻に、巡洋艦15隻。対する敵は高速艦たった5隻、そして5機のロストテクノロジー。

それだけの差がありながら、先遣部隊は圧倒的に敗北し、敵は1機と2隻を失ったのみ。

辛うじて拾った情報から、俺は作戦を考える。

「よーし、そこだっ!」

カミュ搭乗、戦闘機形態にも人型形態にもなれ、4本のビーム砲が脅威のクラウドセイバー。

「ブロウクンマグナムッ!!」

ギネス搭乗、恐ろしいほどのパワーを持つ黒鋼の巨神、ガオガイガー。

「アン、ドゥ、トロワ・・・。」

リゼルヴァ搭乗、雷の如き速さで切り裂き、攻撃をかわすギア、サンダーブレイカー。

「ゲッタービィィィィィィィムッ!!」

レッドアイ搭乗、破壊の奔流を腹部から吐き出す、ゲッター1.

「ミルフィーは、クラウドセイバーを。

 4本のビームは、全部に当たらなきゃラッキースターのシールドでも防げるはずだ。」

「はい、頑張ります!」

「ランファは、ガオガイガーを。

 あいつの攻撃は受けたらどれもおしまいだから、とにかくかわして!

 まずは左腕のプロテクトシェードを狙うんだ!」

「オッケー!」

「ミントは、サンダーブレイカーを。

 あの変幻自在の動きは厄介だ。全方位から少しずつ詰めていって。」

「お任せください。」

「フォルテとヴァニラは、ゲッター1を。

 多分近距離の戦いになるから、前のビームには注意してね。」

「よっしゃ!まかせな!」

「・・・頑張ります。」

「紀柳はみんなの援護を!」

「諾。」

「それとみんな、俺はみんなを信じてる!

 必ず、生きて帰ってくることを!行こう!!」

『了解!!』

「こちらラッキースター。攻撃します!」

ラッキースターが吐き出すミサイルとバルカンの弾幕を、クラウドセイバーは暴風の如くかわし、接近。

「速い・・・!」

「よし、行くぜっ!!」

ラッキースターの零距離で、コンマ未満で人型に可変したクラウドセイバーが実体剣を振り下ろす。

「きゃあっ!!」

だが力場が刀を阻み、はじき返す。

「ちっ・・・。」

カミュは離れつつもライフルを連射し、シールドを散らす。

「ええいっ!」

相手が離れた隙に、中型ミサイルをバラバラと撒くが、戦闘機形態に変形して当たる事は無い。

「外しちゃった・・・。」

「今だッ!」

クラウドセイバーはエネルギー全開、高出力を出しつつ突撃。

大型艦を一撃でぶち抜く程の、4門のビーム砲が全てラッキースターに直撃する。

「うわあああああっ!?」

「これでも・・・食らいなさいっ!!」

ランファが、対艦用の大型ミサイルを発射する。だが、ギネスは左の掌を広げ、モーション大きく前に掲げる。

「プロテクトシェェェェェェェェェドッ!!」

ミサイル着弾の衝撃は、しかし左腕から発せられる不可視の壁によって、本体に通される事は無い。

「アレがプロテクトシェードね・・・。」

と、ガオガイガーは右腕を上に掲げる。

激しい摩擦音とともに右腕部が回転し、そのまま振りかぶる。

「ブロウクンマグナムッ!!」

勢いとともに右腕から発射された螺旋の衝撃は、ギリギリでかわしたはずの、カンフーファイターの機体を揺らす。

さながら、渦潮に巻き込まれる小船のように。

「わっ・・・!」

その間にガオガイガーは腕を回収。両手から網のような電撃波をランファに向かって放つ。

「プラズマホォォォォォォルドッ!!」

電撃波はカンフーファイターに命中。ダメージこそ少ないものの、動きを止めるには充分だった。

「なっ・・・何これ・・・。」

「ヘル・アンド・ヘブン!!

 ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・。」

その隙にガオガイガーは右腕に破壊の力、左腕に防御の力を集め、それらを次の呪文で1つに収束させる。

その寄り合わせた力を持って、対象を貫くために。

「はあああああああああああっ!!」

「・・・・・・キャアッ!!」

固まったランファ機をさらに拘束する如く、ガオガイガーは力を内包した両拳からEMトルネードという電磁波の嵐をぶつけ、

その渦はカンフーファイターの動きを完全に捕まえる。

懸命にランファは操縦桿を動かすが、うんともすんともしない。

「うおおおおおおおおおおおおっ!!」

渦の中を迫り来るガオガイガーに、ランファは死の恐怖を覚え、硬直した。

「――――――っ!!」

「フライヤー、お行きなさい!」

ミントは3機のフライヤーを操作し、3次元で攻めにかかる。

しかし、サンダーブレイカーは名の由来の雷の如き早く、捕らえどころの無い動きで宇宙を滑り、走り、かわす。

「やりますわね・・・」

スリップしているようにふらふらした動きだが、それが災いして予測できない。

まるで酔拳ですわね、とミントは思う。

こういうときには落ち着きが必要ですわね、とも。

その一瞬のスキに敵機はこちらを上回るスピードで背後に回りこみ、突撃。

すれ違いざま、機体横部に内蔵された(勝手に内蔵した)数枚の電磁ブレードで切り刻む。

「あうっ!・・・・・・なかなか。」

トリックマスターには深い傷が入り、ミサイル発射口の片方と姿勢制御スラスターが死んでいた。

「どうだ、僕の力は!」

「あら、どうしましょう・・・・・・そうですわ!」

「人の話を聞け!!」

リゼルヴァの勝ち誇った声を無視し、ミントは一人頷くと、紀柳に通信をつなぐ。

「紀柳さん、フライヤー6機、貸していただけます?」

「諾。」

程なく、6機のフライヤーが飛んでくる。

ミントはいつもより精神集中し、心を研ぎ澄ます。

3機でフライヤーダンスと言う技をするだけでもかなりの疲労がたまるのだが、9機を制御下に入れるとどうなるかは容易に想像がつくだろう。

いつもより多くの負担が頭を突き刺すが、今はそれを意図的に無視する。

「覚悟なさい・・・!」

9機のフライヤーのうち4機がまず飛び出し、サンダーブレイカーを包む、巨大な四面体フィールドの頂点となる。

そして、頂点は一斉に高出力の電磁波を撃ち出し、動きを止める。

「がああああああああっ!!」

「まだまだですわ!!」

フィールドの体積は小さくなり、同時に残ったフライヤーもあわせて、捕獲した獲物を中心に回りだす。

そして、フィールドが9つの頂点で形成される形に変わる。

頂点は縦横無尽に飛びながらそれでもフィールドを崩すことなく、内側に向かってビームと電磁波を撃ちまくる。

「フライヤー・・・ハリケーンですわ!!」

「ぎゃあああああああああっ!!」

嵐の直撃は、緑のギアを完全に破壊した。

「トマホォォォォォォォォクッ!ブウゥゥゥゥゥゥゥゥメランッ!!」

赤い死神が、腕をブンと振って手に持った斧を投げる。

「当たるわけには・・・行かないねえっ!!」

重い機体を振り回し、フォルテはすんでのところでかわす。

「行くよ、ヴァニラ!」

「・・・はい。」

合図一声、ハッピートリガーとハーベスターの大型ミサイル網がゲッター1を捕まえる。

着弾、爆発、振動、そして衝撃。

「・・・!」

「まだです、フォルテさん。来ます!」

「ああ、そうらしいね・・・ッ!!」

百万パワーは伊達ではなく、ゲッター1のダメージは殆ど無い。

ミサイルに対してかわすどころか、凄いスピードでハッピートリガーに突撃、肉薄。

「ゲッタァァァァァァァァッ!!トマホォォォォォォォォォクッ!!」

戻った斧を受け取って、ハッピートリガーに斬りかかる。

重い衝撃とともに、レールガンの一本が本体から分かたれた。

「ちっ・・・!」

「修理します。」

ヴァニラが近づくが、ゲッター1は返す斧でハーベスターを振り払う。

「うっ・・・!」

シールドを突き破って、ハーベスターの機体に傷が入る。

幸い直進運動が速いだけで、その隙にハッピートリガーは離れる事が出来た。

「至近距離で全弾ぶちこみゃ、倒せるんだろうけどね・・・。」

「フォルテさん、私が囮になります。

 その隙に・・・。」

「囮って、ヴァニラの機体じゃ、当たったら一発で沈むじゃないのさ。」

「大丈夫です。方法は考えています。

 ただ、やった後は修理ができなくなりますが・・・。」

「・・・解った、任せるよ。」

と、ハーベスターはミサイルを撃ちながらちょこまかと動き回り、攻撃を誘う。

「鬼さんこちら・・・です。」

ゲッター1は斧を振り回すが、なかなか当たらない。

「・・・・・・!!」

「ヴァニラ!!」

だが、とうとう重い斬撃がハーベスターを一閃して――――――

「・・・?」

「あれ・・・?」

予想していた爆発は起きず、ただいなくなるだけ。

と、フォルテは気づく。レーダーに、ハーベスターが一機どころか、無数に浮かび上がっていた。

それはゲッター1も同じで、目の前に広がるハーベスターの山に驚愕し、動きを止めていた。

「・・・ナノマシンを使って、レーダーをごまかせる分身を作りました。

 まだまだ改良が必要ですが、短時間なら有効のはずです。」

だが、この技の弱点は分身が動けない事。

ゲッターの動きが復活すると、片っ端から斬りかかる。面倒くさくなったのか、とうとう必殺技を繰り出す。

「ゲッタァァァァァァァァァッ!!ビィィィィィィィィィィィィィムッ!!」

腹に開いた穴から出てくるエネルギービームが、まとめてハーベスターの山を吹き飛ばす。

そして、ハーベスターは一機残らず消え去った。

「・・・・・・。」

ハーベスターがいなくなると同時、ハッピートリガーは動き出す。

出力を最大にして、敵の懐へと――――――

「ゲッタァァァァァッ!!トマホォォォォォォォォクッ!!」

それに対して、ゲッターは斧でそのまま斬りかかる。

ハッピートリガーのスピードでは、どうしても間に合わなかった。

ドゴォンッ!!

突如ゲッター1の腹部に起こった爆発が、動きを止めることに成功する。

ビーム発射後、どこからか本物のハーベスターが、ビーム発射口に攻撃を打ち込んだのだ。

「・・・今です。」

「解ってるよ!!」

フォルテは初めから解っていた為、そのまま飛び込んでいたのだ。

至近距離に近づく事に成功し、ハッピートリガーの全砲門が吼える。

「ストライクバーストッ!!」

ドゴォォォォォォォォォン!!

「・・・終わりました。」

「どんなもんだい!!」

一瞬意識が飛んだミルフィーユは、回復するとすぐに自機を確認する。

「ビームファランクスとシールドは死んでる・・・。

 ミサイルとビーム砲は・・・大丈夫。」

目の前の敵は、人型になって遠い距離。とても手強いし、速い。

だけど、と一人呟く。

「私は、エルシオールを・・・。

 大好きな人を、守るんだからっ!!」

彼女の心からの叫びに呼応するように、機体背部から再び光り輝く翼が浮かび上がる。

「な・・・何だと!?」

「行きますッ!!」

ミルフィーユが操縦桿を握り締めると、ラッキースターが前方に急加速。

羽を後ろに撒き散らしながら、前の敵へ。

前から拾うは敵へ突撃する恐れない意思。後ろに捨てるは自らの心に沸きあがる怯えの心。

「か、かわせない!速すぎる・・・!!」

「はあああああああああああああっ!!」

ドスッ!!

ラッキースターの大型ビーム砲が、ベクトルを味方につけてクラウドセイバーの胸部に打ち込まれる。

「う・・・!!」

「これでっ・・・!!」

ズガアァァァァァァァッ!!

巨大なビームは、クラウドセイバーを零距離から圧倒的出力で宇宙に帰した。

「蘭花!!」

ランファが次に受けた衝撃は、拳に貫かれる自機の悲鳴ではなく、夜天光が自分を突き飛ばす音。

「紀柳!?」

「我を・・・信じよ!!」

有無を言わせぬその声の響きに、ランファは首をコクリと振る。

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

そして、緑の輝きの拳が、夜天光を貫く。

メリメリと金属が軋む音とともに、夜天光の各所から火花が飛び出す。

「ふんっ!!」

拳を引き抜くとともに、夜天光は弾かれたように爆発。だが、ランファは動揺を押さえ込む。

紀柳は、自分に信じるように言ったから・・・!!

「うおおおおおおおおおっ!!」

気合。絶叫。咆哮。激情。全てを心に込める如く、操縦桿をへし折らん力で前に押す。

心の力はエンジンに伝わり、エンジンの動力は爪に伝わる。

「てえいっ!」

激しく伸ばしたクローの一本が、掲げた腕の左に突き刺さる。

「はっ!!」

刺さった方の操縦桿を引き、

「とおっ!!」

反対の爪を伸ばし、片腕をへし折る。

「がああああああああっ!!」

「まだまだあっ!!」

右、左、右、左の連撃で、二つの脚が獅子の全身を砕く。

砕き続ける。

喰い散らかす。

蹂躙する。

陵辱する。

暴食する。

成すがままに。

成されるが故に。

「うぎゃあああああああああああっ!!」

「・・・じゃあね。」

「ちっ、ヘルハウンズめ・・・役に立たん。」

ブリッジで、ヘルハウンズと残りの艦が全滅する様子を見ていたシェリーが毒づく。

「まあ、いい。これを使うまでだ・・・。」

と、シェリーはブリッジの機器のうち、一つのレバーに手を伸ばし、引っ掛けた。

「時間稼ぎだ・・・。

 これでも・・・食らえ!」

「いたっ・・・!」

「つ・・・何だこれは・・・。」

ユリカとレスターが、ふいに頭に起こる鈍痛に顔をしかめる。

「何だ・・・?」

「どうやら、敵艦から何らかの波動が感知されています。」

ココやアルモも、頭を押さえている。

「それが、この痛みの原因かい?」

「そのようですわね・・・。」

エンジェル隊の面々も、同様の現象に陥ったらしい。

「あっ!それより紀柳よ!紀柳!!」

「声が・・・大きいぞ・・・。」

ランファが叫びを上げると、雑音混じりのかすれた声が聞こえる。

「き・・・りゅう・・・。」

「さすがに無事とはいかんがな。

 早く救助してくれると助かる。」

「解ったわ。」

と、誰もが鈍痛の事を忘れようとしていたその時――――――

ドサッ。

「タクト!?」

ブリッジに響く、レスターの叫び。

その視線の先には、タクトマイヤーズが、まるでマネキン人形のように、固まって倒れていた。

誰もが知らぬ、一瞬の出来事に。


コメント

なんか・・・ありがちな展開になりそう・・・。

FCソフトが復活は嬉しい限り。

 

 

 

管理人の感想

ヴェルダンディーさんからの投稿です。

・・・歴戦のスーパーロボット達が、こうも呆気なくやられるとは(涙)

やはり、パイロットが違うと全力を発揮できないのでしょうね。

それにしても、いっそ見事なまでに出番も見せ場も無いなアキト(タクト)