第七話

「テンカワ・・・。」

「・・・すまない。」

サツキミドリから更に先に進むナデシコの格納庫の中で、アキトはウリバタケに平謝りしていた。

「・・・だが、あの状況ではああするしか生きる方法は無かった。」

「そりゃ、生きて帰ってきたことに関しては文句は無いがよお・・・。」

と言いつつ、ウリバタケは背後にある、壊れかけの空戦フレームを見上げた。

「まず、左腕が完全に死んでる。それに伴って、空戦用のスラスターがどうにかなってしまって、起動しない。

 つまりは、お前の空戦フレームはしばらく無くなったわけだ。

 火星までまだ時間がかかるのと、アサルトピットが死んでないのは幸いだな。」

「う・・・。」

「――――――だが!」

と、何故かいきなり、ウリバタケは嬉しそうに語りだした。

そのプレッシャーはアキトを一歩引かせるほど。

「そのかわり、さっき拾った剣撃フレームを使わせてもらった!」

「・・・ん?」

「まず剣撃フレームを母体に、潰れた右腕を空戦から流用!

 更に右腕に電磁式ヒートロッドを追加!これは熱式や、シールドガトリング砲に換装可能だ!

 もう完成するぞ!」

「・・・趣味に走ったか?」

「当然だ!!」

「そのお金はどこから出たのですか?」

「そりゃあ、予算をちょろまかして・・・のわっ!!」

後ろに血管を浮かべたプロスがそびえ立ち、ウリバタケは飛びずさる。

プロスは南極の大気顔負けの冷たい視線を向け、宣告の鉄槌を振り抜く。

「ウリバタケさん。その分は給料から引かせていただきますので。」

「――――――ノウ!!」

二人のコントをじっと見ていたアキトは、感想を一言。

「・・・次回へ続く。」

サツキミドリから更に時間の経つこと数週間。

敵の攻撃も散発的で、多くの面々は暇していた。

「ふひ〜、暇だよ〜。」

ブリッジにて、ユリカは艦長席でぐてーっとのびていた。

「艦長。」

「なあに〜、ルリちゃん?」

「暇なら、仕事をすればいいじゃないですか。」

「もう終わったよ〜。」

「じゃあ、葬式は?」

「もう終わった〜。」

ルリの言うとおり、サツキミドリの戦闘で、少なからず死者は出てしまった。

本来ならサツキミドリで葬式は行うのだが、戦闘後のゴタゴタで、ナデシコで行うことになった。

それを主にするのは、艦長たるユリカ。

「・・・ルリちゃん。」

「何ですか?」

「・・・葬式って、やだね。」

「・・・私には、よく解りません。」

「そうかもね。

 どうせやるなら、結婚式だよね。」

「・・・それも、解りません。」

ルリがそっけなく答えると、ユリカはふふっと微笑む。

「女の子は、好きな人が出来て、その人と付き合って、結婚するのは凄く嬉しいこと。

 ルリちゃんも、好きな人が出来たら、解るようになるよ。」

ナデシコ出航からついぞ見たことのないユリカの表情に、ルリはしばし見とれる。

「・・・・・・・・・。」

「・・・ルリちゃん?」

「あ、艦長は、経験はあるんですか?」

ルリは誤魔化そうとして言った。

が、

「うう・・・・・・。」

ユリカにはクリティカルだったようだ。

「いいもん、私にはアキトがいるもん。」

「・・・たまには、会ってきたらどうですか?」

「・・・いいの!?」

「攻撃もここしばらく散発的ですし、攻撃が来たら呼びますから。」

「わーい!行ってきまーす!!」

ユリカは元気よく立ち上がり、ダッと賭けて行った。

その様子を見て、残り二人のブリッジの人間の内、雑誌を見ていたメグミが問う。

「・・・ルリちゃん、アキト君にそれはまずくない?」

「・・・・・・・・・あ。」

「アーキトー!!」

ユリカが食堂に駆け込んでくると同時、

「ギャース!!」

皿洗いを止め、アキトは厨房の方へと逃げ出した。

「あんた達、出番だよ!

 ホウメイレンジャー、出撃!!」

「ラジャー!!」

ホウメイの合図に厨房の中の5人から返事が返って来た。

そして一分後。

「ミギャース!!」

さっきよりひどい悲鳴が食堂まで届き、首根っこを掴まれて痙攣したままアキトが引きずられてきた。

「・・・ミギャースはギャースの進化系・・・ガク。」

「・・・あんた達、何したんだい?」

「・・・ちょっと、皆で抱きついただけですよ?」

女が苦手と言う欠点を抜きにしても、硬派(にみえる)でけっこう素直なアキトは女性陣にかなり人気がある。

「・・・それだね。」

「ずるーい!!

 私も抱きつきたい!!」

「はいはい、艦長がやると冗談にならないから止めときな。」

はやるユリカを、ホウメイが止める。

「テンカワ、艦長に料理作ってやんな。」

「・・・・・・あう。」

何とか再起動を果たしたアキトが、エプロンを装着して調理の準備をする。

「・・・・・・何する?」

「ラーメンとチャーハン!!」

「毎度・・・。」

アキトはユリカのほうをあまり向かないようにして、米を炒め始めた。

「わあ〜っ、上手いんだね、アキト!」

「・・・仮にもコック見習いだからな。」

「あれ?コックさんじゃないの?」

「謙虚なんだよ、テンカワは。」

ユリカの問いに、ホウメイが笑って答える。

「かくいうユリカは、仕事はどうしたんだよ?」

「今日はもう終わったの。」

「そうか・・・・・・。」

少し複雑そうな表情をするアキト。

「ねえアキト!私も、アキトみたいに料理できるかな?」

「――――――無理だ!!」

ユリカの質問に、アキトは隙間なく反論する。

大声で。

「何で間が少しも無いの・・・?」

ブスーッとしたユリカの表情に、アキトの呆れ顔がカウンター。

「お前、昔俺にした事忘れてるだろ?

 完膚なきまでに。」

「・・・なんだったっけ?」

「ねえアキト!今日アキトのおばさんいないでしょ?」

「うん、それがどうしたの?」

「じゃあ、私がご飯作ってあげる!」

「はい、どうぞ!」

「・・・何これ?」

ユリカが出した料理は、おわんに入った何かだった。心なしか、沸騰しているようにも、何かがうごめいている様にも見える。

「・・・ねえユリカ?これ、何?」

「おみそしる〜!」

「・・・本当に?」

「見たら解るでしょ!ぷんぷん!!」

「味噌汁って、紫色だったっけ?」

「そんな気がしたけど・・・。」

「断じて違う!それに具も!

 味噌汁には海老とか蟹とか入ってない!!」

「うちは入ってるよ?」

「それは実だ!はさみは入ってない!皮も!!

 それになんで液体じゃなくて固体!?」

「うちは作るとき味噌はそれだったよ?」

「それは作る前の味噌!

 しかもなんでスライムみたいになってるんだ!?」

「うう〜、いいから食べて〜!!」

「んなあっ!!」

「・・・んで、お椀を勢いあまってひっくり返して、俺に中身をぶちまけてくれたな・・・!」

「・・・そうだったっけ?は、はは・・・。」

「中身はマジでスライムで、親父がちょうど帰ってこなけりゃ、俺は顔面ふさがれて呼吸困難で死ぬとこだったぞ?」

「うう・・・。」

「しかも花畑と川と赤い世界が同時に見えて、先祖が俺に手招きだ!」

「ううう・・・・・・。」

「更にそのせいで、多分だが、俺は女に触れなくなったんだ!」

「はいはい、その辺りにしときな。艦長、マジで泣きそうだから。」

アキトが見ると、既にユリカは涙を目に思いっきり浮かべていた。

「す、すまん・・・。

 悪かったから、泣くな。」

アキトはさりげなく(本人も無自覚に)ハンカチを出し、目にたまった涙を拭いてやる。

「ありがと、アキト。」

その時のユリカの微笑みに、アキトは少しとまどう。

「見せ付けてくれるねえ、最近の若いもんは。」

「ち、違う!!」

ホウメイのツッコミには律儀に対処。

「キャ〜!!」

ホウメイレンジャーの黄色い声は無視。

「何であいつばっかり〜!!」

遠くで吠えるウリバタケの絶叫は更に無視。

そして、火星までもう少しと言うところで、事件は起きた。ナデシコ艦内で、クーデターが発生した。

首謀者は、ウリバタケやリョーコ達、いわば相手いない軍団。

銃で武装したウリバタケ達は、各所を占拠し、一気にブリッジへとなだれ込んだ。

「我々は〜、ネルガルに断固抗議する〜!!」

ウリバタケのスピーカー越しの怒声と、

「はて、要求はなんでしょうか?」

自分のスタイルを崩さないプロスの視線が向かい合う。

>ルリ

はい、ホシノルリです。

今、ブリッジは契約書のことでもめています。

どうやら、恋愛に関する事項がどうのと言う話です。

・・・・・・私には関係ないです。

「あ〜っ!ルリちゃん、前、まえ〜!!」

どうかしましたか、艦長?

その時、艦全体に轟音と振動が叩き込まれた。

今までの散発的ではない、戦力を集中させた堂々たる正面攻撃。

フィールドによって被害は無いものの、揺れまでは消しきれず、みんなよろめく。

ユリカはいち早く立ち直ると、その場の全員に向かって叫ぶ。

「皆さん、この話は後です!今は恋愛より、目の前の敵です!

 全艦、戦闘準備!!」

さっきまでの騒ぎはどこへやら、クーデターの面々は、あっという間に持ち場へ戻ってしまった。

そして、ちょうどその時、パイロットの中で唯一アサルトピットの中にいたアキトがブリッジにつなぐ。

「艦長、今の揺れは何だ?」

「敵襲です。直ちに出撃してください。

 ――――――ところで、何でもうそこにいるの?

 さっきのクーデターのとき、ここにいなかったっけ?」

「クーデター?何だそりゃ?

 俺は休憩を利用して、お守りの石を探してただけだ。

 さっき、やっと数個見つかってな。

 ――――――出撃か?今すぐ出られるぜ。」

「アキト、あまり無理しないでね!」

「・・・熱でもあるのか?」

「ひどいよアキト!」

プンプンと怒るユリカを見て、いつも通りかとアキトは苦笑。行ってくるとばかりに軽く敬礼し、カタパルトに足を乗せる。

「テンカワ、出る!!」


コメント

今回は少し・・・みじかめかなあ?そうですね。

ORフレームのツッコミは・・・勘弁(ヲイ

 

 

管理人の感想

ヴェルダンディさんからの投稿です。

今回はアキトが女性に触れない理由が判明しました。

つまり、ユリカの料理にはカース(呪縛)の追加効果が発動するのです。

・・・もし、体内にそれを取り込んでいた場合、アキトは一体どうなっていたのでしょうか?

実に興味深いですねぇ(苦笑)