__それでは、自己紹介からどうぞ。

 

西欧方面軍第17独立機甲部隊、通称moonnight所属エステバリスライダ−、オリファ− フィンガ−ハットだ。

 

__今日は「彼」の元同僚としてのお話を聞かせていただけるとか。

 

まあ、期待に添えるかどうかは知らんがな。…そうだな、あいつがうちに来た最初の戦闘の話でもするか。

 

 

 

漆黒の戦神アナザ−

オリファ− フィンガ−ハットの場合

 

 

 

__と言うといきなりチュ−リップ四基を破壊して「漆黒の戦鬼」の二つ名のついたあの戦闘ですね?

 

ああ。あの時まではうちの隊の中でも浮いた存在だったんだ。あいつ自身いつもむっつりしていたし、

 

来たその日にカズシ副官を投げ飛ばしたりもしてたんでな、俺たちもどう扱ったらいいか解らなかったしな。

 

__それがどのように隊に溶け込んでいったんです?

 

それをこれから話すんだよ。あの戦闘の後だ。英雄の出現の現場に立ち会った興奮で

 

皆してあいつを揉みくちゃにしてたんだがな、カズシ副官がふと聞いたんだよ。

 

「しかしアキト、あのチュ−リップを切り裂いた武器はいったい何なんだ?」

 

ってね。

 

__それで?

 

あいつが

 

「ああ、それは…」

 

って答えようとしたところでいきなりあいつのエステの前にでっかいスクリ−ンが開いてね…

 

「説明しましょう!」

 

3

 

2

 

1

 

どか−ん

 

「わ〜〜〜〜い」

 

「なぜなにナデシコ 〜出向編〜」

 

「はい、西欧方面軍の皆さん、はじめまして、こんにちは、こんばんは。説明求めて西東、疑問難問即解説。戦艦ナデシコ科学班主任兼医療担当のイネス フレサンジュです。さて今回の質問のDFSについてですが……」

 

って…、おい、どうした?

 

__い、いえ、何でも有りません。続けてください。

 

そうは見えんが…、まあいいか。まあその時は皆呆然と眺めていたんだがな、シュン隊長が隣で一人だけ呆れたような嬉しそうな顔で

 

大して驚いていないアキトに言ったんだよ。

 

「なあ…、ナデシコではこういう事は珍しくないのか?」

 

「まあ、いつもの事ですね…。」

 

「そうか……なかなか楽しそうな所だな。」

 

__なかなかの、感性ですね…。

 

まあ、赴任初日からあっさり馴染んだっていうしな。で、それを聞いたアキトが

 

「ええ…、本当に、楽しい人達ですよ…クククク、フ、アッハッハハハハハハハハハハ」

 

って、年相応のガキの顔で笑いだしてな。あの時、あいつとの接し方が解った気がしたよ。ただ、自然体で付き合っていけば良いんだっ

 

てな。

 

__簡単な事ですね…。

 

ああ。それが解らなかった奴もいたがな…。いや、何でもない。話は此処までだ。

 

__本日はどうもありがとうございました。

 

                                                                                                       民明書房刊「漆黒の戦神の軌跡」十一巻より抜粋

 

 

 

 

「懐かしいわね…。」

 

ペ−ジをめくりながらサラは言った。

 

「あの時はナデシコってどういう所かと思ったけど。」

 

「姉さんもですか?私も初めてあれを見せられたときは気が遠くなりましたよ。」

 

「基地内の通信網にまで入り込んでくるんだものねえ。レイナは面白がって外してくれないし。」

 

「全自動説明デ−タリンクシステムでしたか?自分がリアルタイムで説明するのは無理だからって…。おかげでナデシコに来てからもイ

 

ネスさんに初対面という気がまるでしなかったんですよね。」

 

「ふふっ、本当にね。」

 

 

 

「ドクタ−、ちょっといい?」

 

「あら、何かしら?」

 

「何時の間にアキト君の専用機にあんなシステム組み込んだの?あれは確かに少し前から作らせてたけど、急に出向が決まったせい

 

で突貫で組み上げさせて、工場から直接駐屯地に送りつけた機体だったんだけど?」

 

「ふ、イネス フレサンジュの科学する心に不可能は無いのよ。」

 

「そんなんで納得できるわけないでしょ!」

 

「よろしい。いらっしゃい。親切、丁寧、コンパクトに説明してあげるから。」

 

「え、そ、それはちょっと、遠慮したいん、だけど…。」

 

「遠慮は要らないわ。さあ、説明しましょう!」

 

「は、離して……」

 

 

 

 

 

後書きのような物

 

「なんですか,これは!」

 

「何がだ?」

 

「これじゃ、アキトさんにお仕置きが出来ないじゃないですか!」

 

「そんなしじゅう女引っ掛けてるわけでも有るまい。大体おまえさんたち手段と目的が入れ替わってるの自覚してるか?」

 

「う…。それはそれとして何でこんなの書いたんです?」

 

「(話をそらしたな)うむ、それはだな「説明しましょう!」

 

「いきなり出てきましたね…。」

 

「言ったでしょう?科学する心に不可能は無いのよ。さて、今回の話を作者が考えた理由だけど,アキト君は最初出向先では浮いた存

在だった。でも外伝二話では既に皆に受け入れられていたわね?外伝一話から二話の間に食堂の事なんかもあったけれどそれだけ

では打ち解けるには少々弱い。むしろあれはやや打ち解けた後の事と考えた方がしっくり来るのよ。とすればその前にもうワンクッショ

ン有ったはずと考えたのね。そこで…」

 

(こそこそ)「とまあそういう訳だ。」

 

(こそこそ)「いいんですか?ほっといて。」

 

(こそこそ)「じゃあ,止めてくれるか?」

 

(こそこそ)「嫌です。」

 

(こそこそ)「じゃあ、そういうことで。」

 

(こそこそ)「忘れたころに、またお会いしましょう。」

 

「ちょっと、聞いてるの?」

 

 

 

代理人の感想

 

おまえ・・・・婿養子になったのか(笑)。

 

という意味不明の感想は置いといて・・・・・・・上手い!

某Dr.リーさん(どこが某やねん)の作品もそうですがこういう「ツボ」を突いた作品は好きですねぇ。

芸能人は歯が命・・・・・ではありませんがやっぱり短編はアイデアが命!

そして今回のクリーンヒット。

 

 

「ふ、イネス フレサンジュの科学する心に不可能は無いのよ。」

 

 

やはりマッドサイエンティストたる者この程度の矜持を持たねばいかんでしょう!

まあ、本人にマッドの自覚があるかはさておき(笑)。