――――地球 北アメリカ テスラ・ライヒ研究所――――

 

 

 

 

「ふむ、まあ目処はついたか。後は実際に運用してみてデータを集めるだけだな」

ジョナサン・カザハラ博士はそう呟いて手のコーヒーカップを傾けた。

「……しかし、どうするかな。ゲシュペンストに積むには少々苦しいし、ここまでした物を単に艦に載せるってのも芸がなくてつまらんしなあ…………む?」

ぶつぶつと呟きながら片手で報告書をめくっているうちに、ふと目に入った資料に手が止まる。

「ほほ〜〜う、ほうほう。流石に火星だな。なかなか面白い物を。……よし」

そう言うと、コーヒーを置いて電話を手にとる博士。

「…………あ〜、マオ・インダストリー本社かね?テスラ研のカザハラだが。……うむ。すまんがそちらに軍から出向してる馬鹿息子に繋いでくれんかな?……うむ。いつも頼りになるダンディなマイトガイのパパからだと伝えてくれたまえ」

 

 

 


機動戦艦ナデシコ

 

猛き軍神の星で

 

第二章


 

 

 

 

――――火星 ホウライシティ防衛線――――

 

 

 

 

『キョウスケ〜、そっちに行ったわよ?』

「了解」

キョウスケ・ナンブ少尉はぶら下げていたジョロを切り離してそのまま低空で進撃してくる一ダースほどのバッタの群れを確認して機体の足を止めた。

「クレイモア……、抜けられると思うなよ……!」

機体の両肩から撃ち出された無数のベアリング弾が突っ込んできたバッタ共を一瞬でまとめてスクラップに変える。

「よし、次!」

距離を詰めてきたジョロの群れに左手の三連チェーンガンを乱射しながらキョウスケは乗機アルトアイゼンと共に突入していった。

 

「あらあら、相変わらず装甲任せの無茶が好きねえ……、っと!」

上空からそれをながめていたところにいきなりミサイルを撃ち込まれてエクセレン・ブロウニング少尉はとっさに機体を捻る。

「オクスタンランチャーのEモード!どうぞ〜〜♪」

新たな愛機の手にする長砲身ライフルから放たれる大出力ビームの掃射を受けて、バッタが三機、まとめて爆発する。

 

『う〜ん、軽快♪どんどんいっちゃうわよ〜〜♪』

「あの人、何処まで真面目なのかさっぱりわからないんだよなあ」

M950マシンガンでキョウスケの援護をしながら、ブルックリン・ラックフィールド曹長は軽く溜息をついた。

 

 

 

 

『アイランド1よりボルガ1へ……。ボルガ小隊は右翼に展開、敵駆逐艦を排除して下さいな』

「ボルガ1了解!いくぜぇ、ラッセル、レオナ!」

『はい!』『了解!』

ボルガ2、ボルガ3のコードを持つラッセル・バーグマン曹長とレオナ・ガ―シュタイン曹長の打てば響くような返事に満足気な笑みを浮かべながら、カチーナ・タラスク少尉は前の補給で地球のテスラ研から送リ返されてきた試作PT、ビルトシュバインのスロットルを押し込んだ。

IFS全盛の火星で主に開発されたPTの操縦システムにも当然の様にIFSは取り入れられているが、この機体は試作品という事もありマニュアルとIFSの併用式になっているのはありがたい。

IFSの利便性は確かに認めるが、自分にはやはり身体に覚えさせたマニュアル操縦の方が合っている。ごちゃごちゃ考えるのは性に合わなかった。

ヴァイスリッターとビルトラプター、上空に二機の白い機体が舞う戦場で、二機のゲシュペンストを従え、赤く塗られたビルトシュバインが敵艦隊に穴を空けるべく突進を始めた。

 

 

 

 

 

「敵戦艦、後退を開始しましたの……」

発令所にアルフィミィの声が響く。

「……ふう。今回もなんとかなりましたね」

全体の戦況を眺めていたレフィーナは、シートに背中を預けると軽い安堵の溜息をついた。

次の配属先に行く前に受領した改造機や高性能試作機への実戦を交えての機種転換訓練を都市防衛を兼ねて行っていたが、どうやら一機も欠けることなく異動する事ができそうだった。

「ここの後釜はディストーションフィールド装備型のカスタムタイプが来るって話ですし、これで安心して向こうに行けますね」

その言葉で、発令所内にやや弾んだ空気が漂った。

もちろん、今の火星に安心して見ていられる戦場など無い事は皆が承知している。

だが、自分でも信じていないような気休めでも、人間には安心感という物が時には必要なのだ。

例え気休めでもそれを聞いた人間が少しでも元気を取り戻してくれるなら、指揮官にはそれをやる義務があるのだった。

「全機に通達。深追いせず、残敵を掃討しつつ後退してください」

「はっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――地球 サセボシティ軍港 第三ドック 機動戦艦ナデシコ 艦橋――――

 

 

 

 

 

「まったく!!艦長は何をやってるのよ!!」

「まあまあ、少し落ち着きなさいな」

ネルガルグループ会長秘書、エリナ キンジョウ ウォンがブリッジ上段で騒いでいるのを、連合軍から派遣されてきたオブザーバーのムネタケ サダアキ中佐がなだめている。

「あの人ネルガルの会長秘書なんでしょ?こんなとこにやって来て何騒いでるんでしょう?」

ブリッジ下段の通信士の席についていたメグミ レイナードは、声を潜めて操舵士のハルカ ミナトに話し掛けた。

「そりゃあ、やっぱりお仕事がうまく行ってないからじゃないかしら?」

「どういう事ですか?」

「ん〜〜、ルリルリ、説明してあげてくれない?」

ミナトに話を振られてルリは思わず溜息をついた。

(しょうがないですね。ブリッジの人間関係を円滑にする為とでも考えましょう)

そう自分に言い聞かせて暇潰しにやっていたゲームを中断して、説明を始めるルリ。

「北米のテスラ・ライヒ研究所は御存じですか?」

「え?その…………知らない」

ばつの悪そうな顔のメグミには構わずルリは話を続ける。

「宇宙開発や新規のエネルギー開発関連の研究を行ってる機関で、火星開拓事業の縁でマオ・インダストリーとも結構深い繋がりがあるんですけど、そこがつい二週間前に相転移エンジンとディストーションフィールドの実用化に成功したんです。……結構大きくニュースで取り上げられましたけど?」

ルリの冷たい視線を受けて目に見えて狼狽するメグミ。

「え?そ、そうなの?二週間前っていうと私まだここに来たばっかりで色々ばたばたしてたし……」

「……いいですけど。ネルガルとしてはこのナデシコで相転移エンジン、グラビティブラスト、ディストーションフィールドの三種の神器を大々的に宣伝して市場独占してのぼろもうけを考えてたんでしょうけど、先を越されちゃったわけですね。テスラ研は研究機関ですから相応の代価さえもらえればどんどん他所に技術を渡しちゃうでしょうし。高いお金かけて独自開発した最新技術の二つを一遍にぱあにされちゃった訳です。後はグラビティブラストだけですけど、これも時間の問題でしょうね」

「いやはや、耳の痛いお話ですがまったくその通りでして」

ハンカチで額の汗を拭いながらちょび髭に眼鏡の中年男性が上段から降りて来る。

「あら、いいの?プロスさん。会長秘書さん放っておいて」

「いやいや、私ごときが何を言っても逆効果ですよ。ここは中佐にお任せしようかと」

「あ〜、ひどいんだ〜」

「はっはっは、つまらないおじさんでしてね、私は」

ネルガル会計監査役、プロスペクターと名乗るその男はそう言ってハンカチをしまったが、腹の中ではネルガルの現状についての思案を巡らせていた。

(ふむ、ですが、実際の話、いくら『あの』テスラ研とはいえ実用化があまりにも早すぎるんですよね。遺跡というカンペを持つ我々でもここまでこぎ着けるのには並大抵の事ではなかったというのに。……産業スパイ?……まさかね。企業ならばともかくあのプライドの高い方々が……)

そんな事を考えているような様子などおくびにも出さずに話を続けるプロス。

「とにかくルリさんの仰ったような事情がありまして、こうなっては最早このナデシコにおおいに活躍してもらって我がネルガルの技術の優秀性をアピールするしか無いのですが、肝心の艦長が遅刻しておりましてね。もう基地には着いている筈なんですが」

などというプロスのその台詞が終わるや否や、ブリッジ内に警報が鳴り響き始めた。

「な、何よ!何事!?」

エリナの当惑した声には構わずに、正面スクリーンに情況を映し出すルリ。

「敵襲です。無人兵器およそ五百」「「「「「「ごひゃくぅ!?」」」」」」

あまりの数に皆が驚きの声をあげる。

「何よその数!?この軍港は何重もの哨戒網で囲まれてる筈なのに、それだけの大群にこんな奇襲を受けるなんて……」

なまじ知識があるだけに信じられない様子のムネタケを押しのけてエリナが喚いた。

「軍の守備部隊は何をやってるのよ!?」

「ちゃんと働いてますよ。ゲシュペンストMk‐U二個中隊、先程から交戦中ですけど敵さんのほうがあんまり数が多すぎますね」

そう言うとルリは、スクリーン上に迎撃部隊の隙間を潜り抜けてドックに迫る無人兵器の大群を光点で表示してみせる。

「このぶんだとこのドックまで侵入してくるのに二十分くらいですか」

「マスターキーが無いと話が始まらないって言うのに!!こんな時に艦長は一体何をやってるのよ!!」

その時。

まるで計っていたようなタイミングでブリッジ上段のドアが左右に開いて脳天気な声が飛び込んできた。

 

「みなさ〜〜ん、私が艦長で〜〜す♪」

 

皆が呆気にとられて固まる様子などまるで目に入っていないかのように、にこにこと笑いながらその女性、ナデシコ艦長ミスマル ユリカはブリッジに踏み込み、

 

「V♪」

 

とVサインをしてみせた。

「……………………ばか?」

というルリの呟きに思わず頷いてしまいそうになる一同であった。

 

 

 

 

「ナデシコは海中より発進。海上に出ると同時にグラビティブラストで敵を一気に殲滅します」「「「「ほぉ〜〜」」」」

あまりにもアレな第一印象はさておき、思った以上にまともな作戦を聞いて感心した声を漏らす一同だったが、ムネタケが問題点を指摘する。

「けど敵もそうそう一箇所に固まってくれないんじゃないの?」

「はい。ですからおとりを出します。メグミちゃん、パイロットの方に繋い「あ、多分、それ無理です」ほえ?」

発言の途中で口を挟まれて不思議そうな声を漏らすユリカの視線を受けて、ルリは続けた。

「パイロットのヤマダ ジ『違う!!俺の名』ブツッ……うるさいです。ヤマダ ジロウさんなら先程右足を骨折されて現在医務室ですから」

「あ……、そ、そうなんだ…………」

ルリの突然の通信に対する情け容赦の無い対応に少々気圧され気味のユリカ。

「プロスさ〜ん、ほかのパイロットの方はいないんですか?」

「いや面目ない、本当ならパイロットの方々が乗り込むのは出港直前の予定でして……。パイロットというのは何分直接命を危険にさらすお仕事ですので、給料がお高いんですよ」

「そんなあ〜〜〜〜」

しょうがないわね……。ホシノさん、艦内でIFSを持っている人間を検索して出してくれない?」「了解」

作戦発表時の凛々しい様子は既に消し飛び、再び元のほにゃららな雰囲気に戻ってしまったユリカに苦笑して、口をはさんできたムネタケの言葉に従い全乗組員を検索するルリ。

「二人出ました。一人は私、もう一人は食堂のコックさんです」

そう言ってルリはその人物、テンカワ アキトのプロフィールを出した。

「ルリちゃん、そのコックさんに繋いでください」「はい」

「何でコックがIFSを?」「彼は火星出身でして、はい」などという外野の声は無視して回線を繋ぐと、黄色い制服の上にエプロンを掛けたぼさぼさ頭の平凡な顔つきの青年が画面に出てきた。

『な、なんです?』

「コックのテンカワさんですか?艦長のミスマル ユリカです。……あの〜、どこかでお会いした事ありません?」

『え、ええ!?…………いや、無いと思いますけど』

「ちょっと艦長、今はそれどころじゃないでしょう!?」

焦れたエリナに急かされて手早く事情を説明するユリカ。

 

 

「エステバリスはIFS操縦だ。お前の思った通りに動いてくれる。とにかく逃げ回って囮の役目を果たしてくれればそれでいい」

「もちろん、引き受けて頂けるなら給料とは別に危険手当て込みの特別給与をお支払いいたします。何卒、やって頂けませんか?」

ユリカの話が終わった後、戦闘オブザーバーのゴート ホーリーやプロスが畳み掛ける。

アキトはやや俯いてしばらく考え込んでいたが、やがて顔を上げると頷いた。

『わかりました。俺、やります!』

「助かります!……ウリバタケさん!陸戦フレームの用意を!」

『おう、任せとけ!三分でやる!』

 

 

 

 

 

 

 

 

モニターの中でピンク色のエステバリス陸戦フレームがドックのエレベーターに乗って地上に上がっていく。

直ちにドックへの注水を始めながら、こちらも慌しく発進準備を行うブリッジの中で当面やることの無いユリカが何か考え込んでいるのを今まで台詞どころか全く描写の無かった副長のアオイ ジュンが問い質した。

「ユリカ?何か気になる事でもあるのかい?」

「ん〜〜〜〜〜、テンカワ アキト、テンカワ アキト……、アキト、アキト…………、あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ、アキト!アキトだあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ジュンの台詞により何事かとユリカに注意を向けていたブリッジ上段の人々を超音波でなぎ倒して突然はしゃぎだすユリカ。

「さっすがアキト!!ユリカがピンチの時にはいつでも駆けつけてくれるんだねっ

「ユ、ユリカ?あのコックの人と……知り合いなの?」

ほかの人々が皆悶絶している中、慣れているのか無傷のジュンはいきなりはしゃぎだしたユリカに震え声で問い質した。

「うんっ!!アキトはユリカの王子様!!ユリカがピンチの時にはいつでも駆けつけてきて助けてくれるんだあ〜〜〜〜〜

その言葉を聞いて塩の柱になるジュンの様子など気付かずに、ユリカは下段にいたので直撃は避けられた為なんとか持ち堪えたルリに声を掛けた。

「ねえねえルリちゃん!アキトに通信繋いで!?」「お断りします」「えぇ〜〜〜〜っ、なんでえ〜〜〜〜!?」

ルリのにべも無い返事に不満の声をあげるユリカ。

「エステバリステンカワ機、もうじき地上に出ますから。パイロットの集中を乱すようなことは艦長といえども避けてください」

「ぶ〜〜〜〜。アキトなら大丈夫なのに。ルリちゃんのけちんぼ〜〜〜〜」

子供っぽく口を尖らせて不満を表すユリカだったが、やっと復活してきたエリナの呟きを耳聡く聞きつけて反論する。

「……なんでそこまで断言できるのよ……。ただの素人のコックだっていうのに……」

「アキトは素人なんかじゃありませんよ?中華のコックさんなんですから」「は?何よそれ」

言葉の意味が理解できずに鸚鵡返しに聞き返すエリナに向かってユリカは不思議そうな顔で言った。

「中華のコックさんはみんな拳法家なんですよ?ご存じなかったんですか?」

「「「「「「そんなわけあるかあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」」」」」

 

「ばか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日、彼はチューリップの落下のショックで大地震に見舞われたユートピアコロニーのシェルターにいた。

手抜き工事でもあったのか地震のためか、崩れ落ちてきた天井に潰されると思った瞬間、眩い蒼い光を見たような気がする。

何がどうなったのかはわからない。ただはっきりしているのは、その次に目が覚めた時には地球のヨコスカの郊外の野原であり、両親の形見の蒼い石のペンダントが鎖だけになっていたという事だけだ。

それから暫くの間は町の大衆食堂で働いていたが、たまたま昼食に立ち寄ったプロスと名乗る人物に手の甲のIFSを見られ、幾つか質問に答えていたら急にネルガルにスカウトされた。

幾らなんでも不審に思ったが、火星に行く手段があるという話を聞かされてはどうにも誘惑を断ち切る事はできず。

そして今、彼、テンカワ アキトは、機動兵器のコクピットに座って地上へのエレベーターに乗っている。

「……火星に帰るんだ。……帰ってみんなの無事を確かめるんだ。…………その為にも…………」

エレベーターが地表に辿り付いた瞬間、アキトは直ちにダッシュして目の前のバッタを蹴り砕き、疾走を開始した。

「その為にも!こんな所でやられる訳には、いかないんだよお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――火星 アガルタシティ 防衛部隊基地――――

 

 

 

 

「ええい、放しなさい!ダブルYはもう仕上げたんだからいいでしょ!?行くわよ、あたしは!!」

「そんな無茶言わないでくださいよ!あなたが居なくなったら誰が零式の面倒見るんですかあ!!」

「だから任せたって何度も言ってるでしょう!!」

「冗談止めてください!!できるわけ無いでしょう!!」

輸送機の発着所に怒鳴り声が響く。

発進準備を終えて後はエンジンに火を入れるだけのタウゼントフェスラー輸送機の乗降タラップ前に、乗り込もうとする白衣の女性とその片手にしがみ付いて必死に引きとめようとするリョウトの姿があった。

「あのね、何度も言ったけど整備や修理は整備長の親父さんに任せておけばいいの!斬艦刀はリシュウ先生が見てくれるしあたしたちのやる事なんて総合的な機体のチェックとかOSの保守点検やIFSのマッチングの微調整くらいなんだから!君にももうそれくらい務まるわよ!!」

「無理ですってばあ!!だいたいなんでそこまで向こうに行きたがるんですか!?研究や新規開発なら艦に乗ってるより基地に腰落ち着けた方がはかどるに決まってるでしょう!?」

「何言ってるのよ!あたしの可愛いグラビトンランチャー人の手に任せろっていう気!?自慢するけどイネス姉さんにだってそう簡単には扱えないわよあの子は!!」

「ええそうでしょうね!!何がどうなってるのかもまだ良く解ってないバッタのエンジン無理矢理出力補助に組み込んだ戦時急造品の見本みたいな代物ですもんね!!」

「あ〜〜〜〜〜〜っ、言ったわね言ったわね言ったわねえ〜〜〜〜〜!!そんなナマ言うのはこの口か?この口かあ〜〜〜〜!?」

 

 

 

「…………いい加減乗るのか乗らないのかはっきりさせて欲しいわね」

管制室からでは会話の内容はわからないが、モニター上の二人の行動からだいたいの察しはつく。

うんざりした溜息をつくと、リオはモニター上で口を左右に引っ張られているリョウトの映像を呆れかえった目で眺めるのだった。

 

 

 

                                                                                     続く


後書き

前回からどうにもルリの辛口化が止まりません。

このまま情け容赦の無い言動をエスカレートさせていったら遠からずナデシコの闇艦長と恐れられるようになってしまいそう。

「……あんまり性格捻くれさせないで下さいね」

ん?今回はなんか元気が無いな。

「……脱力もしますよ。ユリカさんたら……。あんまり恥かかせないで下さい……」

まああれは小さいころある人物に色々といい加減な出鱈目吹き込まれた名残みたいなもんだからな。ユリカばかり責めるのも気の毒ではある。

「まさかほんとにホウメイさんあたりが怪しい拳法の達人だったりしないでしょうね?」

安心しろ。ナデシコ食堂でホウメイさんがミニチュアの分身バラ撒いて大量の注文さばいたり変なマスク被ったサイゾウさんが影の中からにょろりと生えてきたりするような事は無いから。……それはそれで楽しいような気もするが。

「…………勘弁して」

しかしまあ、当面の問題として親分の扱い難さはどうにかならんかな?

「扱い難さ、ですか?」

ゲームと違って気力制限なんぞ無いから斬艦刀振り回し放題だしディストーションフィールド持たせたおかげで敵艦への突撃がそのままフィールドアタックだし。あちこちのナデシコSSサイトでたまに見かける重力レンズでの収束グラビティブラスト以上の凶悪さでな。戦闘でのほかの連中の出番一人で全部かっさらって行っちまいかねんのだ。さしあたり、いつもは居ないがいつでも出せる通り魔的立場にしてみたが。……どうしよう?

「ジンタイプみたいなバッタもんと違って正真正銘のスーパーロボットですからね」

バッタもんって……。こっちのおまえも結構辛口だな(汗)

 

※前回の更新で序章の前半を改訂しましたのでそちらも押さえておいて下さい。

 

 

代理人の感想

中華のコックさんは〜〜って、ああそっちか。

馳星周の映画でも見たのかと思った(笑)。

 

 

>親分

通り魔って・・・・サムライの通り魔だと辻斬りになっちゃうんですけど(爆)