えりなせんせいといっしょ!第七話勝者は高らかに歌う!





ナデシコブリッジ


イネス・フレサンジュ、アカツキ・ナガレ、
そして、ヤマダ・ジロウのことダイゴウジ・ガイ・セカンが合流した。
イネスとアカツキは、プロスとゴートを口止めすれば何とかなるが、ヤマダについては隠すしかない。
苦渋の選択である。まぁ、ヤマダが自分から本名を名乗る事はないし。
敢えて尋ねる馬鹿もいないだろうし。

ちなみに『なぜなにナデシコ』は、イネスがエリナに怒涛の説明攻勢をかけ、
大満足をしたことにより日の目を見る事は無かった。



そして、イネス主導の元、ブリッジではこれからの方針会議が行われていた。

「つまり、このナデシコに搭載されている相転移エンジン…、
 それにディストーション・フィールドの開発した一人は、この天才の私よ。だからこそ、分かるの。
 今のこのナデシコ一隻の実力で火星から脱出する事はもちろん、火星を解放することさえも

 余裕のよっちゃんよ♪任せなさい!


ドテン!!×2

アキトとルリは思いっきりこけた。

更に私の開発したグレートガンガーがある今、正に無敵よ!

そうだぜ、博士!俺のグレートガンガーは無敵だ!!

大きく胸を張って宣言するイネスとガイ・セカン。

「…ルリちゃん…」
「…アキトさん…」

思わず見詰めあい、最後の砦のエリナに視線を向ける二人。

「…という訳で、当初の計画通り、ネルガル第二研究所に向かうわよ、艦長!」

が、エリナはノリノリであった。

ハイ!ナデシコ!研究所に向けて出発っ!!

更に、ユリカちゃんもノリノリであった。

…いいのか、本当に…
…アキトさん、過去もこうでしたか?
…違うと思うけど、俺、自信なくなってきた…
…私もです…





医務室


ナデシコが研究所に向かう間に、イネスは速攻で医務室を占拠していた。
他の医療班メンバーはイネスの目を見て、あっさりその軍門に降ったのだ。どこの世界もマッドは強い…


「さて、イネスさん、説……お話して貰いましょうか?」
「ちっ!」

流石にあの説明では納得できないアキトとルリがイネスに説明、いや、お話を求めた。
ちなみにメンバーは、他にエリナ、ラピスである。
百合なアカツキは、エリナの手を逃れ、食堂でホウメイガールズのナンパに勤しんでいる。
ガイ・セカンは知らない。

「まぁ、いいわ。アキト君、ブリッジで話した通りよ。折角火星に居るんですもの、
 何も一度地球に戻り、木連に準備時間を与え、又、火星に来る必要はないでしょう?」
「それは、そうですが、ナデシコに火星の戦力と戦う力はないじゃないですか?」

アキトは、過去にフクベ提督が犠牲になり辛うじてチューリップを使い脱出した事を思い出しながら尋ねた。

「フフン♪でも、今はグレートガンガーがあるわ」

グレートガンガー…外見はゲキガンガーそのもの。
大きさはエステバリスよりかなり大きく、何やらジンタイプを思い出させる複座機動兵器である。
中途半端に小型の相転移エンジンに威力の低い小型のグラビティ・ブラスト、
更に短距離ジャンプシステム……イネスはやっぱりジンタイプを一台ガメテきたのではなかろうか?

「機動兵器一体増えただけでどうするんですか? 相手は確かチューリップ5個ですよ?」

ルリも不満げな顔でイネスに聞く。

「そう、でもね、これは只の機動兵器ではないのよ。この私が只のダイマジンなんか出す訳ないでしょう!」

……ダイマジン? やはり強奪してきたのだろうか、試作機でも…

「あれには、無人兵器の動きを止める電波を発信する装置を付けているのよ。今、火星には有人兵器はないわ。
 無人兵器だけ。つまり、グレートガンガーは文字通り無敵なのよ!!」

ババン!!

胸を張り得意そうなイネス。

無人兵器を無効化できれば、確かに作戦としては成り立つ。
そこで、アキトは確認した。

「……有効範囲はどれ位なんだ?」
「10mよ」
「そう10mか……って、役に立たないじゃないですか!」

確かに役立たずだ…

「アキト君、贅沢言わないでよ。このシステムを説明するとね…」
「簡単にお願いします」

ホワイトボードを白衣から取出し、嬉々として説明を始めようとするイネスにアキトが冷酷に宣告した。

「……お姉さんは悲しいわ……昔のアキト君はとっても素直だったのに……ヨヨヨ」


スッ…パシィ!!


エリナの緋色のスリッパの一撃をイネスが白いスリッパで受け止める……腕は互角か…

「……エリナ、腕を上げたわね?」
「……鈍ってはないようね、ドクター?」


ちりちりちりちりちり……


二人の視線が交錯する。…二人の過去に何があったのであろうか?

「エリナさん、イネスさん、話を戻しませんか? 時間もあまりありませんし」
「…そうね、簡単に説明すると、無人兵器無効化システムは、
 敵の音波センサー受信器にある一定の音波を流すことなのよ」

本当に簡単である。何にホワイトボードを使うつもりだったのか…

「ただね、この一定の音波は、可聴出来るだけではダメなのよ。やはり一定以上の音量も必要なのよね。
 そうするとグレートガンガー付属の大型スピーカーからゲキガン音頭のテープを流しても
 10mが限界なのよね」

木連とはそういう軍隊である…

「やっぱり、役立たずですね」

ルリが心底呆れたような口調で呟いた。

「そうでもないわよ、このナデシコクルーは性格はともかく、腕は超一流を揃えたから、十分有効な武器になるわ。
 それに、私の方も新兵器を用意してあるから」

エリナがそう言って、ルリをたしなめる。

「新兵器ですか? アキトさんもご存知なのですか?」

ルリは自分だけ仲間外れなのかな?と少しイジケ気味に聞いた。

「……初めて知った」

パッとルリの顔が明るくなる。現金なものだ。

「エリナ、俺も聞いてないんだけど…」
「私も初めて言うもん。知ってたら、驚きよ」

アキトの苦言をサラッと流すエリナ。

「それで、エリナは何を用意したのかしら?」
「ウィンドウ・ボール・プロトタイプよ」
「な!?……まさか、ワンマンオペレーションシステムの基礎を持ってくるとは思わなかったわね。
 それにしても、考えたものね…」
「本当に基礎の基礎よ。ナデシコCはおろか、ユーチャリスにも劣るわ。でも、今の時代なら有効でしょう。
 電子の妖精が二人もいて艦のオペレーションだけなんて、もったいないわ」
「確かにね。それに戦闘結果も過程も残さないつもりね、エリナ? 下手にブラックサレナなんかを出して、
 パワーゲームにしたくないというのが、本音でしょう?」
「泥沼に自分から入る必要はないわ」

ネルガルをリードする大人二人が高度な会話をしている。
その後ろで子供が話していた。

「ルリちゃんは気付かなかったの?」
「ええ……オモイカネに妙なブラックボックスが付いていたから、もしかしたら、アレだったかもしれません。
 そういうアキトさんは……聞いてないんですよね?」
「うん。全く知らなかった。でも、エリナが何かブラックサレナの開発に否定的だったんだ。
 俺はみんなを助ける為にも力は必要だと思ったんだけどね…」
「エリナさんとイネスさんの考えですと、ハッキングとクラッキングで証拠を残さず、一気にケリをつけるようですね」







ナデシコブリッジ


エリナとイネスの怪しい新兵器の事は全く知られていないが、クルーの士気は高い。

何故なら、ナデシコは、未だにまともな戦闘はした事がない!

故に、グラビティ・ブラストは一撃必殺兵器と信じているし、
敵に強力なディストーション・フィールドを張る物がいる事も知らないからである。


「敵は、チューリップが5個に無人兵器です!張り切っていきましょう!!」

ユリカちゃんの宣言と共に、本来なら無謀極まりない戦いが始まった。


「グレートガンガー先行して下さい」
                                                          「……モグモグモグ……」
『『了解』』
                                                          「……グーッ……モグ…」
「各エステバリスは、指示があるまで待機です。グレートガンガーとの通信カットを確認して下さい」
                                                          「…ンッ……グー…ムッ…」
『了解』×エステバリス全機
                                                          「……ヌン…ブチ…プハー」
「オモイカネは、グレートガンガーからの通信を一切カットしなさい。ブリッジに流さないだけでなく、
 あなたも聞いてはいけませんからね」

『分かったよ、ルリ』

「ラピス、ナデシコのコントロールを渡します」
「うん、まかして。ルリ姉は一人でヘーキ?」
「ありがとう、ラピス。大丈夫ですよ。オモイカネもフォローしてくれますし」

『うん♪任して♪ルリもラピスも頑張れ!』


着々と準備が進行するナデシコ。
5個のチューリップ側も戦艦タイプからバッタ、ジョロまでを布陣し防御隊形を整えている。
圧倒的な戦力差だが、向こうから来る以上、まず迎え撃つ体勢のようだ。


「グレートガンガー出ます!」

メグミから報告が入る。

「皆さん、念の為、気をしっかりもってくださいねっ!」

ユリカちゃんがブリッジの気を引き締める。


待て!俺のグレートガンガーをどうするつもりだ!!

「うるさいです、ヤマダさん」

俺の名前は、ダイゴウジ・ガイ・セカンだー!!

「だから、うるさいですってばぁ」

ユリカちゃんがジト目でガイ・セカンを見る。

だから、何故、俺のグレートガンガーに他人が乗っているんだ!!

そう言うガイ・セカンは簀巻きにされ、ブリッジに転がされている。
先程までは、猿轡をされていたが、根性で自力で噛み破ったようである。化け物である…

熱血だからだぁーー!!!

「……邪魔です。エリナさん、やっちゃって下さい」

ユリカちゃんの依頼に、エリナは無言で席を立つと懐から漆黒のスリッパを取出した。

俺のゲキガン…


スパン!スパン!スパン!
             鹿                         「…三連殺!」


エリナの背後に三枚の花札が舞ったように見えた。が、…


グフッ!…痛いぞ、ナナコさん!!

「な……いいわ……本気で行かせてもらうわ!」



ガン!バン!ビシ!ベキ!ボン!
                                               

五光斬!!

エリナの背後に5枚の花札が乱舞したかのように見えた。

「……馬鹿は滅びたわ」
「さっすが、エリナさん♪ さぁ、戦闘に集中です!」



















ベベン            ベベン            ベベン
             チリン             チリン



戦場に轟き渡るウクレレ風鈴涼やかで怪しい音色

グレートガンガーに搭乗する二人のパイロット、マキ・イズミイツキ・カザマは絶好調である!

「刺し傷、死ぬ傷、全ては師匠の為に!」

「火星にはなを見せてあげるわ」

イズミの言葉とともにグレートガンガーの指が顔の中心を指す。

そして、始まった…



「…………………………ププププ…」


「…………………………クククク…」



























  無人兵器群はフリーズした!!




グレートガンガーの無人兵器無効化システム…
ゲキガン音頭では可聴範囲10m以内という音量を必要としたが、
ナデシコの腕は超一流のクルーにかかれば、可聴範囲全てが対象である(爆)


更にはナデシコから電子の妖精がクラッキングをかけ、
無人兵器群をそれぞれ近場のチューリップに特攻させている。


こんな非常識な奴等に対抗する術は、まともな無人兵器にある訳がなかった!

瞬く間に5個のチューリップが炎に包まれた。

しかし、暴威は止まない。

電子の妖精ホシノ・ルリの手が届く範囲、Wアイの声が届く範囲。全てが非常識空間である。


この日、木連の火星駐留師団は謎の大打撃を受け、組織的な行動が不可能になった。

更に三日後、ナデシコは火星から普通に飛びたった。




後に派遣された調査団は、破壊された無人兵器はもちろん、僅かな生き残りの小型無人兵器のAIからも
原因を突き止める事は出来なかったという。

唯一、ナデシコが火星から行方不明になりしばらく後に地球に帰還したとの情報が入ったが、
草壁春樹中将以下木連上層部のまともな人達は、無関係と判断した。
戦艦一機の戦禍としては考えられぬ結果であり、もし、ナデシコがそれだけの戦果を上げれば、
ナデシコへの表彰や連合軍からの大反攻が予想されたからである。

これにより木連は、戦争の終結点を模索する動きが活発になり、政局、軍内部とも混乱を極めることになる。



ちなみに地球連合軍側は、この火星駐留師団のほぼ壊滅という事態を一切知らない
誰も連絡を入れてないし、木連相手に諜報活動をしていないのだから、当然である。

え?クリムゾン? 木連側が自分達の不利な戦局を漏らす訳がないでしょう。























ナデシコブリッジ


金星と水星公転上の中間距離にナデシコは浮かんでいる。

そのナデシコから太陽方向へ向け、射出されるコンテナが一つ。
それを感慨深そうに見ている人影がブリッジにあった。
アキト、エリナ、ルリ、イネスである。ラピスは余り興味は無さそうである。

「これで、終りね…」

エリナの呟きには、様々な想いを感じる事が出来た。

「そうね…これで誰の手も届くことはないわ…」

イネスもいつになくしんみりしている。

アキトとルリの想いは更に複雑である。

コンテナには、ボソンジャンプ演算ユニットが入っているのだから。

木連火星駐留師団壊滅から三日間、ナデシコが何をしていたかといえば、火事場泥棒である。

時空を越えて存在する演算ユニットを太陽に投げ捨てる。正しい廃棄物処理法である。
これで、人間が3,4回滅亡できる位であろう時間は、誰の手にも渡らないことであろう。


そんな雰囲気を断ち切るように、エリナが言った。

「アキト君、これで解禁よね? もう、我慢しなくてもいいわよね?」

急に明るく問いかけるエリナにアキトは困惑する。何を言っているのか分からないのだ。

「…もう、覚えていないの? まさか忘れたとか…」
「え、え〜と、何のことか……?」

アキトは、思い返してみるが、『解禁』や『我慢』に該当する約束の覚えは無い。

「私がアキト君にこれからどうするかと尋ねた時のことよ」

エリナの言葉にルリの目に不穏な炎が宿る。
アキトは、それに気付いた様子もなく、逆行直後の過去を思い起こした。



         「俺が過去してきたことが変わるわけではない。それは俺の持つ罪。
          これからどう行動しようと白紙に戻るわけではない。だけど……」

         そっとエリナはアキトの手に自分の手を重ねた。
         この人の心の傷を知っているから。未来の自分では癒せなかった傷だから。

         「だけど、すべての元凶、火星極冠遺跡!! あれだけは処分する。
          破壊できないあれを人が扱ってはいけないあれを人の手の触れられない処へ!
          歴史に干渉はしようとは思わない。でも。この一点だけは譲れない!!」

                             ・
                             ・
                             ・



が、別に思い当たる事はない。

「ごめん、エリナ。やっぱり何のことかわからないよ。俺、何か約束でもした?」

心底分からず、アキトは問いかけた。

「アキト君の目的は達成された訳よね?」
「……そうなるな」
「だったら、次は私の番じゃない?」
「……そうなるね」
「私はアキト君に出来る限りの協力したわよね?」
「…うん」
「そしたら、アキト君も私の為に協力してくれるわよね?」
「…………(汗)」

アキトの額に汗が浮かぶ。

エリナの嬉しそうな顔。ルリの恐ろしげな顔。イネスの面白がっている顔。ラピスの不思議そうな顔。
全てがプレッシャーとなりアキト一人にかかっている。


私の目的はね、アキト君と一緒に暮らすコトよ!!

 ナデシコを降りて、地上で一緒に暮らそう、ね?

エリナは言葉と共にアキトに抱きついた。

すぐさまルリも反応する。

「ダメで…」

ペチャン!


ダメ!絶対ダメ!!
 アキトはユリカの王子様なんだよぉ!!!

が、ユリカちゃんに潰された。文字通り、ルリにユリカちゃんが圧し掛かり遮ったのだ。


アキトはユリカのことが大好き!

 ユリカもアキトのことが大好き!

 私がアキトと一緒に暮らすの!!


ユリカちゃん、12歳必死である。
だいたいブリッジでこんな話をしていて、割り込まない筈がない。

「ふ〜でもね〜プロス、艦長に契約書を見せてあげて」
「はい、どうぞ」

プロスは懐から、ユリカの契約書(控え)をいつものように取出し、差し出した。

「え?なぁに?男女交際のことなら知ってるよ?」
「違うわ、ここを見なさい、ここ」

そこには、

『尚、この契約は3年契約であり、途中での解約は理由の如何を問わず、一切認められない。
 これは、通常契約金の2倍を支払う事により効力を発揮する』

と表記があった。
しかも、かなり大きい字で。

「プロス、契約金の支払いは完了しているのかしら?」
「ええ、領収書の控えでしたらありますよ」


ドテン!

ユリカちゃんは撃沈した。

代わりに、ルリが復活する。

「でも、私は、そんな契…」

そうだぁ!ルリちゃんやラピスちゃんがいなかったら、

 ナデシコは動かないもん!ルリちゃんやラピスちゃんを

 置いて、アキトがナデシコから降りる訳ないもん!!

復活を遂げたユリカちゃんに、又もや邪魔をされたが、ルリは隣でウンウンと肯く事で賛意を示している。

「あら、ホシノ・ルリやラピスがいなくても、ナデシコは動くわよ。
 地球に帰還したら、ハーリー君というオペレーターの子が乗る事になってるから」


スーーーッ

ルリはVサインを出しているラピスの隣に移動すると言った。

「艦長、長い間、お世話になりました。あなたの事は一生忘れません」


ルリちゃんの裏切者ぉーーーー!!

「エリナ、私はどうなるのかしら?」
「貴方を敵に回す程、私は怖い者知らずじゃないわ」
「でも、俺は戦争を終わらせる為にも和平も実現させたいんだ」
「あら、その為にナデシコを降りるのよ」
「アキト君、冷静に考えてみて。最前線で戦い抜群の戦果を上げている戦艦が一隻で和平を唱えて、
 誰が信じてくれるかしら。前回で分かったでしょう? 和平は外堀からよ」


エリナとイネスの二人がかりの説得にだいたい納得してきたアキト。

「そうか……でも、俺がいなくてもナデシコは大丈夫かい?」

しかし、アキトが漏らした言葉にユリカちゃんが反応した。

「あ!それよ!アキトはナデシコのエースパイロットだもん!
 ナデシコの為にもいてくれるよねぇ?」
「オモイカネ、パイロット達の戦績を表示して」

『ルリ、了解だよ♪』

ピッ

「艦長、見て下さい。パイロットの戦績はダントツでイズミさんイツキさんがトップです。
 ですから、何の問題もありません」


う、うう、うっわぁぁ〜ルリちゃんのイジメっ子ぉ!!

さしものユリカちゃんも泣きながら、ブリッジを飛び出して行った。






















ヨコスカ連合軍宙港


ナデシコの初の寄港地で、一つの別れが演出されていた。

ナデシコを降り、地上勤務に戻る4人。

アキト、エリナ、ラピス、イネス。

そう4人である。



エリナさん!これはどう言う事ですか!!

プロスとゴートに捕まっている電子の妖精が叫んだ。

「代えのオペレーターにハーリー君が乗るって言ったではないですか!」

「あら、私はハーリー君が乗るって言っただけよ。代えなんて一言も言ってないわ。
 先輩オペレーターとして、後輩の指導を頼むわね。それにね言ったでしょう♪」

エリナは楽しそうにウインクをして、言い放った。


裏切りは一度きりが勝利の秘訣よ。ず〜っと正しい情報を与えておく、最後に偽情報を出す。
 絶対に疑われることは無いわ。これが人間心理よ



「く〜〜、I Shall Return!!」





<あとがき>

書き始めから、火星に最初に到達した時点で全て決着をつけるという構想でした。
また、自分が連載を完結させる事ができるかどうかを試す意味合いもありました。

それにしても、まさか、こんな形で終わるとは夢にも思っていませんでしたが…

シリアスとは言わないが、少なくともほのぼのを目指していた筈である。
いったい、どこから壊れ始めたのであろうか? 分からない。不思議だ。謎である。

ちなみに最後まで活躍の場を与えられなかったうちのアキト君が逆行した意味は、エリナの意欲の為だけである。
エリナとしては、公にしたくない存在、それがアキトです。過去のトラウマなんですよ、実は。
好きな人の心が壊れていくのを黙って助長させていく事でしか協力できない自分がいた。
今度こそ守りたかったのです。どんな手段を使っても。壊れは別として…

尚、これにエピローグがつきます。

できましたら、最後までお付き合い下さい。

 

 

代理人の感想

 

むぅ。

契約のこの項目、現行法に照らすと民法に・・・・・は反するかどうかはかなり微妙ですが

労働基準法第14条(特例を除き一年を越える労働契約の禁止)にもろに引っかかりますな(笑)。

まぁ、法律には素人っぽいユリカちゃんなら騙せるでしょう(苦笑)。

(もちろん、立派に詐欺行為に相当しますが(爆))

 

 

 

 

 

どこから壊れ始めたかって?

・・・・・・・・・プロローグで既に壊れてたと思うけど(ぼそっ)。