えりなせんせいといっしょ!第二話『秘書です!口では負けません』




ナデシコブリッジ


「じゃあ、ジュン君、後は任せます!」

戦闘終了後、早速とばかりにアキトの元へ駆け出そうとするユリカちゃん。

「お待ち下さい、艦長。初出勤からの遅刻の理由をお聞かせ下さい」

す〜っと気配を感じさせずに近寄ったプロスペクターが呼び止めた。

「え〜ジュン君に聞いといてぇ。私は愛しい旦那様を迎えに…」
待ちなさい!その前に説明しなさい、艦長!!プロス!これはどういうこと!!

すべての疑問を解決すべくエリナは、気合の篭った視線を二人に向ける。

「え〜何を説明するのぉ?」
「はて、エリナ女史、何ですかな?」

ユリカちゃんとプロスの何も考えていない口調に、我を忘れそうになるエリナ。

「……ホシノ・ルリ!艦長のプロフィール出して!!」
「はい。オモイカネ、お願い」
『ルリ、出すよ』

ピッ

みんなに見やすいように大画面で表示されるミスマル・ユリカのプロフィール。





「…本当に20才だ……私より年上…」
「…あら、本当に連邦大学主席卒…」

メグミとミナトの言葉通り、ユリカちゃんは、確かに20才で、確かに主席卒業である。
ただし、18才で連邦大学入学、20才で卒業となっており、10才からの八年間が完全な空白となっていた。

「…この空白は何かしら?」
「あ、それについては、さる方からビデオを頂いています」

エリナの疑問に、影の薄いアオイ・ジュンが一枚のディスクを差し出した。
受け取り、ルリに渡すエリナ。

「オモイカネ……念の為ウイルスチェックしてから再生して」

『OK!ルリ……既存ウイルス該当無……再生します』

大スクリーンには、黒いバイザーを付け顔の分からない金髪を後ろでまとめた白衣の女性が現れた。
しかも、おもむろにホワイトボードを白衣から取り出している。

エリナとルリの顔に縦線が走った。


説明しましょう!!






 

 

「…つまり、原因不明の奇病で艦長は8年間眠り続けて、その間成長していない。
 しかも、どうせ原因不明なら睡眠学習でもとしておいたら、それが成功して天才になったと…
 …これで、いいのかしら…」

3時間後、疲れきったブリッジの中で、エリナがジュンに確認した。

「はい、その通りです」
「…原因不明のくせに、三時間も説明して……あのおばさんは…」
「え? 担当医をご存知なのですか?」
「……ええ、心当たりがあるわ!嫌になるくらい!!」
「…まったくだな」

エリナの怒りの声にアキトが同意した。

「え!?アキト君? 何でここにいるの?」
「あれから、何時間経っていると思っているんだ。ブリッジから何の指示もないから各部署が騒いでいたぞ」
「まったくです。どんな緊急事態かと思えば、ビデオを見てるなんて…」

呆れ果てたという感じのアキトとイツキの発言に固まるブリッジ。

「……きゃあ!通信が溜まってる!!」
「…航路設定してないわ。それ以前に目標も聞いてない。これからどうするんですか?」
「オモイカネ、先程の戦闘解析。エンジン運転状況確認。艦内…」

突然、動き始めるクルー達。そして、

あ!アキトだ!!わ〜い!抱きっ!!

ユリカちゃんがアキトにおもいっきりタックルを決めた。

ねぇねぇアキトは私のこと、覚えててくれた。浮気してない。ねぇねぇ、アキ…

スッパーーン!

スナップを効かせたスリッパの一撃でユリカちゃんを黙らせるエリナ。

「艦長!とにかく遅刻したんだから、プロス、ゴート、説教お願いね」
「はい、お任せ下さい。無事だったからいいようなものの危険だったのですから」
「うむ、今後の為にも厳しくせねば」
「いやぁ〜誰かぁ〜たすけてぇ〜」

ネルガル三人衆の前に虚しく艦長の叫び声が響き渡った。


「あと、ラピス。今のうちにオモイカネに予備オペレーターの承認をさせて、仲良くしていなさい」
「わかった、エリナ」

返事をしてルリのオペレーター席の方に走るラピス。

とてとてとてとてとてパタ……むく……とてとて

機動力がほとんどなく何もない所でこけるラピスを見て、ミナトは上半身をいやんいやんとくねらせながら喜ぶ。

「あ〜ん、本当にかわいい(は〜と)」
「ミ、ミナトさん…(汗)」

隣のルリがちょっと引いてしまう。


「お疲れ様、アキト君、イツキさん」

改めて、エリナが二人に声をかけた。

「今更あれくらいで疲れないよ、それにもう休んだし」
「はい、テンカワさんのシミュレーション設定の方がよっぽどきついです」
「あら、アキト君、普段そんなにいじめているのかしら?」
「はいはい。ネルガル上層部が厳しくてね」
「む〜生意気ね〜」

エリナとアキトのじゃれあいに微笑むイツキ。

清々しさの中に凛とした雰囲気の今までナデシコにいなかったタイプだなとルリは思った。




 

エリナのお部屋


「エリナさん、何かお話があるのですか?」
「あら、なぜそう思うの?」
「エリナさんが過去にわたしを部屋に呼んだことなんてありませんでしたから」
「そう……そういう話の早い所、私は好きだな〜」
「なっ!?」

驚くルリを他所にくすくす笑うエリナ。

「からかわないで下さい!」
「別にからかってないけど、気を悪くしたかしら?」
「知りません」

ここら辺、ルリとエリナとの経験差はかなりある。実際9才差だし。
くすくす笑いをおさめ、エリナは真剣な顔で話し始めた。

「私は、アキト君が好き。愛している」
「知っています」

何を今更と憮然とするルリ。

「ホシノ・ルリ、あなたは?」
「アキトさんは大切な人です。家族として……一人の男性としても……」

エリナを睨みつけるかのように宣言するルリ。

「私も知っていたわ」
「………」
「もし、アキト君があなたを選んだとしたら、私は残念だけど納得できるわ……」

驚きに目を丸くしてエリナを見つめるルリ。

「でもね、ユスマル・ユリカがアキト君の隣にいるのは納得できない!!」
「な……ユリカさんは立派な人です!!」

意外な話の成り行きに声を荒くする。

「ごめん、私も艦長がすごい子だということは分かっている。
 でも、私の言っているのは、未来の艦長でなく今の艦長のこと」
「今の艦長?」
「そう。今の艦長。それにアキト君のことを何も知らずに、
 子供の頃の思い出や格好良さや戦闘力や誰にでも発揮する優しさにだけ惹かれる人のこと」
「………」
「そういう人達にはアキト君に近寄ってもらいたくない!! アキト君は何も言わず笑うと思う。
 けど、心の傷はどんどん増えていく!」
「………」
「間違っているかしら……」

少し沈黙が落ちる。

「エリナさん、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「アキトさんとエリナさんはわたしが戻ってくるまで1年間も一緒にいましたよね。
 わたしが知ってるエリナさんなら、その時間を無駄にしていません。既成事実でも何でもして
 アキトさんと結婚してたと思います」
「………」
「違いますか?」

ルリは正面だけを見てエリナを向かずに話した。

「ふ〜〜〜もう私はどう思われていたのかしらね〜 既成事実は私のキャラじゃないのよ」
「他にも手はあるはずですが……」
「確かに私は欲しいものは自分で手に入れてきたわ。でも、こればっかりはね。
 彼が自分から私の元にいたい、私を抱きしめていたいと思ってくれないと意味ないのよ。わかるかしら?」
「はい」
「それでこれが一番大事なこと。あなたも分かると思うけどアキト君は、黒の王子から
 少しづつ前向きに変わってきている。また、人を愛せるようになるかもしれない……」

突然ニコッとルリがエリナに微笑んだ。
電子の妖精という言葉が自然と浮かんでくるような笑み。
エリナがその気もないのに赤くなるような純粋な笑み。

「わたしたち、仲間でライバルですね」

エリナも微笑む。

「よろしくね」
「はい」

 

ナデシコ内居住区


「も〜う、たった5時間遅れただけで、あんなに怒ることないのにね〜
 待っててね、アキト。今、貴方のユリカが疲れた体を癒しにいくから……いやんいやん」

艦長ミスマル・ユリカちゃんは反省するわけなく、アキトの自室を目指していた。

ドンドンドン

アキトー、アキト、アキトったら〜

ドンドンドンドンドンドンドン

「う〜ユリカは艦長さんなんだからねぇ〜偉いんだぞぉ〜」

艦長特権のマスターカードキーでテンカワ・アキトの自室扉を開けたユリカちゃんは固まった。

そこにはトランクス姿のアキトがいた。
しかも、全裸のラピス6才を大きいバスタオルで拭いている最中だった。

「なんだユリカ勝手に入って来るなよ」

アキトの至極真っ当な意見も耳に入った様子は無い。
大きく息を吸い込むと叫び声を上げた。

きゃあぁぁぁ〜〜〜 アキトのエッチィィィ!!そういうことは夜にするものよ
「「うう……」」

アキトとラピスは狭い空間での反響付超音波兵器に意識を失いかけた。





「はいはい、話を整理しましょうか」

叫び声に集まった野次馬を解散させてからプロスは事情を聞き始めた。

「え〜アキトと女の子が部屋で裸だったのぉ」

とことん話を省くユリカちゃん。寂しそうに上目遣いで言う姿は、20才ユリカより破壊力がある。

「こほん、ルリさん、状況を拝見できますかな?」
「はい、オモイカネ、できる?」
『はい。テンカワ・アキトさん自室前映像出します』

部屋のノックから叫び声までの行動が映される。

「あ〜艦長、何か問題がありますかな?」

映像を確認してプロスが改めてユリカちゃんに聞く。

「アキトと女の子がシャワー一緒に浴びてるんだよぉ。私以外の女の子とだよぉ」
「よろしいですか、艦長。この子はラピス・ラズリといいましてテンカワさんのお子さんです。
 何ら問題はありません」
え〜アキトの子供!?
「うん。養子だけどな」
「アキトの子供、アキトの子供、子供子供、そうよアキトも男の子だもの浮気の一度くらいあっても
 おかしくないわそれが過ちで責任取ってもそうアキトの子供は私の子供もいっしょそうこれから
 3人で幸せな家庭を築けばいいのよママと呼んでいいのようん3人で結婚式も新婚旅行も……」

スパコ〜〜ン

絶妙な音。ルリの手には、人間開発研究所とかすかに読める銀色のスリッパが握られていた。
身長差がないので楽に叩けるのだ。

「うう……痛い……」
「おお、艦長戻って来ましたな。このまま逝ってしまったらどうしようかと思いましたよ。
 こちらのラピスさんは、そちらのルリさんと同じマシンチャイルドで身寄りが無く、
 テンカワさんが養子として引き取ったのです」
「な〜んだ、そうだったの〜そうか〜なら、私のこともママと呼んでいいよ!」

ユリカちゃんはニコッと優しく微笑んだ。元が可愛いからかなり可愛い。
が、先程の妄想を聞かされているラピスにはニヤリとしか見えなかった。

「ルリ姉、……こわい……」

ヒシッとルリに抱きつくラピス。

「大丈夫ですよ。噛み付きませんから」

桃色の髪の手触りを楽しむかのようになでるルリ。
一枚の絵のようである。
なにげに非難された本人を除けば。

「ル、ルリちゃん(泣)……そうだ、やっぱりアキトも男の子だもん。
 女の子とのシャワーは問題じゃないかしら、ねぇ?」
「ラピスさんは、過去のトラウマで水が怖く、お風呂シャワーとも一人では駄目ですので
 テンカワさんが補助しているのです、自分のお子さんの。何ら問題ありません」
「「そうですよね」」

プロスが一蹴。ミナトとメグミも相槌を打つ。

「でも、ちょっと問題よね」

とエリナ。加勢があったと喜び笑顔になるユリカちゃん。

「艦長がこうも勝手にマスターカードキーを使うのは問題よね。そのキーはプロスに預かってもらいましょう。
 プロスの許可があれば使用していいということで」

撃沈するユリカちゃん。もう声も出ないようだ。

 

ナデシコブリッジ


プロスペクターが主要メンバーを集めスキャバレリプロジェクトの説明を開始した。

アキトとエリナとルリは聞く必要がないので3人で内緒話をしている。
聞いても意味のないラピスは、ルリのオペレーター席の隣に作ってもらった補助席で
足をプランプランさせて、ミナトのラピス萌え萌え度を無意味にアップさせている。

「アキトさん、そういえばキノコはどうしたのですか? ここで胞子を撒くはずだったと思いましたが」

ルリがナデシコ出航時に何か足りないと思っていた人のことを聞いた。

「あ、それは俺じゃない。エリナだな」
「私もあのキノコはこりごりだから連合軍と交渉したのよ」
「よく連合軍が納得しましたね?」

ルリは不思議そうに聞いた。

確か、前回も呼びもしないのに自分から乗り込んだという話を聞いているからだ。
また、キノコが駄目なら代わりをよこすように思えた。何と言っても連合軍はあきらめが悪い。
自分が所属していたから余計わかる。

「キノコの親のムネタケ参謀に副提督は一切要りませんって伝えただけよ。
 キノコの成長記録極悪編(ネルガルSS編纂)コピーディスク20枚とともにね」
「「え!?」」
「快く了承していただけたわ♪」
「……親キノコって、あのまともな方だよな……」
「……ですよね……」

ムネタケ参謀を思い出しながら、顔を見合わせるアキトとルリ。

「そうね、やっぱり、まずったかしら?」
「「ちょっと」」
「やっぱり乗せて反乱起こさせて鎮圧して、賠償金をふんだくった方が良かったかしらね〜♪」

少しあきれるアキトとルリ。こういう発想はエリナかプロスにしかできないだろう。

「アキトさん、歴史を変えまくっていますね」
「歴史的に無茶なことや大きすぎることはしてないよ。というか既に大きく歴史が変わっているしな。
 エリナとも話したんだ。どうせ俺とエリナとラピスが最初からナデシコに乗り込むことで歴史が変わるなら、
 快適に生きようってね。ユリカの件は知らなかったけど…」
「まったくですね。パイロットの件もそのひとつですか?」
「そう」
「他には何を考えて……」
アキト、ずるいっ!!ルリちゃんやエリナさんとばかり話してぇ。
 私もお話したい!したい!したいったらしたい!!!

ユリカちゃんの乱入で話は終わった。
アキトとしては、別段ユリカを避けている意識はない。避けても追いかけるから無駄と諦観している。
話せないことのないエリナとルリが話しやすいことは事実だが、
それ以上にエリナとルリがユリカの邪魔をしている結果とは考えつかないようだ。

「プロスさんの話は終わったのかい?」
「うん、だから、ね、お話しよ」

『ナデシコ正面海中エネルギー反応感知』

突然オモイカネから警告が入った。

「ありがとう、オモイカネ。艦長、海中から何かきます」
「え、もしかして、敵襲!?」

『エネルギー体。戦艦級1隻駆逐艦級2隻』

「オモイカネ、船籍を確認して」

ルリが冷静に処理している。実際調べるまでもなく知っているし。

『識別コード確認。連合宇宙軍極東方面軍第3艦隊旗艦トビウメ。同護衛艦クロッカスとパンジーです』

「トビウメ他2隻浮上します」
「トビウメより通信入ります」

メグミが報告するのに合わせ、アキトはラピスの耳をふさいだ。ルリとエリナは自分の耳を。

ユリカ〜〜〜〜〜!!!
「お父様!」

くう〜自分のこと忘れてた
アキト君…ばか…

ユリカ! お〜久しぶりだな、こんなに立派になって
「まぁお父様、昨日も一緒に食事をしたじゃないですか」





サリーちゃんのパパ型対人超音波兵器と美少女型対人超音波兵器の会話。
遮ることができたのは、復活したプロスのみだった。

「これはミスマル提督、いったいどんな御用ですかな?」
「機動戦艦ナデシコに告ぐ。直ちに停船し、武装解除せよ。極東方面軍提督として命ずる」

親馬鹿提督から連合宇宙軍提督に顔を変え、重々しく言った。
今更遅いとは思うが。

「これは困りましたな。既に軍との話し合いはついているのですが」
「今の現状でそれだけの戦艦を無駄に火星に捨てる余裕はない!」

「お父様!」
「ユリカ、お父さんも辛いのだよ。お父さんが今まで間違ったことをしたかい?」

何と言うかこう、軍の士気に関わるような顔のミスマル提督である。

「ふむ、これは交渉ですな。そちらに伺いましょう」
「うむ。だが、艦長とマスターキーはこちらで預かる。よろしいな?」

いいわけないでしょう!!

突然エリナがミスマル提督、ユリカちゃん、プロスに割って入った。

「な、誰だ!?」
「誰でもいいわ! こちらには、民間船に公海上で戦艦の主砲を向け脅迫、海賊行為を働いたとして
 ミスマル提督あなたを地球連邦議会に告発する用意があります!!」
「なにっ!?」
「すぐに撤退しないのであれば同時に極東方面軍第3艦隊を地球連邦憲章に違反する反乱軍として
 告発します。戦時特別法などの法案が可決されていない現在、法的根拠のない脅迫行為をする
 あなたがたは犯罪者になります」
「……うぐう」

左手を腰に当て、右手人差し指でミスマル提督を指し、胸を張るエリナ。
けっこう形といい、大きさといい自慢の一品である。

「完全に悪乗りしているな」
「本当に気持ちよさそうですね。昔のエリナさんを思い出します」
「エリナ、かっこいい…」
「だめだよ。ラピスは真似しちゃ」
「エリナがしているのになんでだめなの?」
「「う〜ん(む、難しい)(何て教えたらいいのかしら)」」

後ろでこそこそする3人。
エリナは気にしていない。
合法的に完全に有利な条件で交渉できるというのは、滅多にないが気持ちよい。

「こ、こちらも子供の使いというわけにはいかぬので交渉してくれぬか?」

ミスマル・コウイチロウ、20歳の小娘に負けた瞬間である。

「いいわ。艦長と交渉役を送るわ。当たり前ですがマスターキーは渡しません。
 主導権はこちらにあるのですから(ニコッ)」

艦長ユリカちゃんと交渉担当プロスペクターと放置予定の副長ジュンの3人はトビウメに向かった。

「エリナさんって凄い人だったんですね」

メグミが感嘆して言う。

「でも、いいの? 連合軍にけんかを売って?」

いくらか大人のミナトは心配そうに聞いた。

「いいのよ。特に極東方面軍は」
「なんで?」
「トップ二人がね、今のミスマル提督とその懐刀ムネタケ参謀なんだけど家庭内の問題で
 弱みのネタにことかかないのよ。やりすぎなければね♪」
「あ、あれで、やりすぎじゃないんだ、はは」

エリナ、本当に楽しそうである。





『ルリ、前方海底エネルギー量増大感知。チューリップみたいだよ』

「海底付近で活動停止中のチューリップ。動き始めました」

ルリが報告した。といっても指揮系統上位者がいないので影の実力者アキトとエリナにである。
ぜんぜん隠れていない気がするが。

『チューリップ浮上。クロッカス、パンジーの至近距離になります』

「む〜まずいな、テンカワどうする?」
「とりあえず艦長の確保とチューリップへの牽制でしょう」
「うむ、エステバリスは任せていいな」
「はい、ゴートさんはナデシコの方をお願いします」

アキトとゴートの間で方針の確認が行われた。
が、すぐ破綻する。

く〜燃えるぜ、博士の帰還を援護する為、単身敵に向かうヒーロー、待ってろよ!!
『こ〜ら〜ヤマダ・ジロウ「ダイゴウジ・ガイだ〜ぁ!」……』
ダイゴウジ・ガイ、行くぜ!!

「こちら、ブリッジです。格納庫どうしました?」

メグミが律儀に仕事をこなす。

『おう、ウリバタケだ。ヤマダ「ダイゴウジ・ガイ!」…の奴が勝手に出撃しやがった。
 しかも、陸戦エステでだぞ!!』

整備班長ウリバタケ・セイヤがぼやく。

「おい、ガイ、大丈夫なのか?」

ヤマ…ガイのエステバリスは海水に落下し、ジェット噴射で飛び上がっては落下、着水を繰り返している。
バッタかノミである。

おい、アキト、親友のピンチだ! 早く助けに来い!! ぐぉ〜足も痛ぇぇぇ…

ガイからコミュニケで身勝手な通信が入る。
が、ルリの手により、すぐ切られた。

「「ばか」」

ルリとラピスがはもった。

プチン

「「え?」」

何かが切れる音がしてルリとラピスがはもり、振り返った。
そこには無表情に笑うアキトがいた。ただ、怖いというより虚ろという感じだが。
親しい人の生死に敏感なアキトがきれたのだ。

「ふふふ、ガイ、俺の目の前で楽に死ねると思うなよ」
「ちょ、ちょっと、アキト君、しっかりして!」

ルリとラピスが絡まなければナデシコの良心ミナトが励ます。
アキトにここで壊れられては危ないと必死である。

「イツキちゃん、チューリップの牽制。近づきすぎないように触手に注意して。
 くれぐれも陸戦ででないように!」
『イツキ、了解。馬鹿は一人で十分、以上』
「あ、戻った」

冷静に指示するアキトを見て、ミナトは安心した。

「ふふふ、待ってろよ、ガイ!助けてやる。楽には殺さん」
「あ〜〜〜まだ逝ってるぅぅ〜(泣)」

「テンカワ、今ミスターから……って聞いてないな……」

ゴートの声が虚しく聞こえた。





「イツキちゃん、お待たせ」
「艦長と馬鹿は?」
「両方とも回収済。チューリップの側面から後方がナデシコに向くように誘導する。手伝って」
「了解」
「うん、やっぱり素直な子はいいね(にこっ)」
「えっ(ぽぉ)……鯉…あ、封印…

ギンッ

「うっ、殺気!?」
「どうしました?」
「いや、ちょっと……」

ふふふ、浮気はゆるしませんよ、アキトさん……エリナさんにも教えときますね





ナデシコのグラビティ・ブラストのチャージが完了し、アキト、イツキ機が射線から退避する。

「てぇ〜!!!」

ユリカちゃんの叫びとともにクロッカスとパンジーを飲み込んだチューリップは爆砕された。


「あれ、なんか足りなくない?」

周りを見渡し、ふと顔をしかめるミナト。

「え〜そんなことないですよ。ナデシコ2連勝です。ぶいっ!!」

ユリカちゃんが明るく戦いを締めくくった。





あわれだな〜ジュン
あわれよね〜アオイ・ジュン
でも、少女のユリカさんでも好きな事はかわらないんですね
ジュンってだれ?
『ピッ アオイ・ジュン ナデシコ副長…』
…みたことないよ
………



<あとがき>

うちのアキトくんは、既に最強ではないな。エリナの方が強そうだし。
エステでも殆ど戦ってないし。肉弾戦もしていないし。帰還者が泣いているぞ!

当番組御提供は、明日のネルガルを香港から牛耳ろう!キンジョウ・ウォン家でした。

 

 

代理人の感想

 

「壊れ IS No.1!!」

・・・・え? 違うの(爆)?

 

だって・・・・・・

女でユリのアカツキ、

実年齢十二歳のユリカ、

そのユリカを好きなジュン。

 

・・・・・・・・・・・・・。

 

うぉんうぉんうぉんうぉんうぉんうぉんうぉんうぉんうぉん・・・(壊れ充填率60%)

 

 

 

追伸

 

肉弾戦と機動戦以外でアキトがそうそうエリナに勝てるとは思えません(笑)。