玄武戦記〜玄武説得〜



ナデシコは、地球の防衛ラインの突破を図っている。
しかし、この防衛ライン、何を守っているのだ。次元跳躍門を防ぐこともできないくせに。
地球人類というものは分からぬものよ…


戦神と妖精が何やら話をしている。婿殿よ、11才では……我のような誇りある外道の所業ぞ!
思えば、さな子も若かったな……いや、そんなことよりやはり正しき道を我が導くべきか……

「ア〜キ〜ト〜!!もうルリちゃんとばっかり。私もアキトとお話がしたい!したい!したい!」
「何を話すんだよ。昔の事も今の事も全部話して聞かせたろ」
「う〜じゃあ、ルリちゃんと何話していたか教えて」
「プライベートの侵害です」
「う、ルリちゃん、怖い。でもでも、そう、艦長命令!」




たしかに戦神よ、艦長に冷たいな。やはり妖精の方がいいのか……さては人の道を踏み外したいのか……
漢の浪漫だからな。だが、北斗の為、我慢してもらおう。

が、話に割り込みたいが、我は操舵士ハルカ・ミナトに捕まっている。

「ふ〜ん、で、北辰さん、食事の時は仮面どうするの?」
「こうする」

パカッ

鼻より上の部分を残し、口だけ仮面をとる。

「あら、おもしろい。それ家族と一緒のときも付けてるの?」
「いや、外だけだ」
「何人家族なの?」

ほう、我に尋問をする気か、この女。ふ、我から有効な情報でも引き出せるとでも思っているのか?

「妻と娘がいる」
「「妻と娘!!」」

隣で戦神と妖精が叫んだ。突然でびっくりするではないか。
ミナトも艦長も叫び声にびっくりしている。

「ルリルリもアキト君もびっくりさせないでよ!家族構成聞いてただけでしょう」
「その通りだ」
「す、すまない……北辰の家族……」
…似合わない…
「奥さんと娘さんか〜見てみたいわね〜」

ミナトは尋問を止めるつもりはなさそうだ。

「ふむ、写真ならあるが、見るか?」
「「写真!?」」
「ちょ、ちょっと、さっきからうるさいわよ!ルリルリとアキト君、仲が良いのは分かったから」
「「はぁ〜すみません」」
「ほんと仲が良いのねぇ〜あなたたち」
「む〜アキトは私の王子様なんだからね、ルリちゃんでも駄目だからね、ぷんぷん」

『敵機確認』
「ありがとう、オモイカネ。艦長、第三次防衛ラインに入りました。同時に敵機デルフィニウムを9機確認。
 10分後には交戦領域に入ります」

オモイカネと妖精の報告が入った。ふむ、切替の早さは、さすがだな。





パイロットのヤマダ・ジロウ骨折中が出撃。クロスオペレーションとかいうものを失敗し、
追加砲戦タイプを破壊され、ミスターが怒りの電卓を打っている。
不幸なことだ。我でもこの状態のミスターとはやりたくないというのに。

この騒々しい未熟者などここで殺しておいた方がよいかとも思ったが、戦神が黙っている訳がなく出撃して行った。
今、デルフィニウム9機と相対している。ふ、軍でなければ、壊滅しただろうに、運の良い奴等だ。

「ユリカ〜今なら間に合う!ナデシコを地球に戻すんだ!!」
「駄目、出来ない!」
「何故、どうしてだ!?」

艦長と副長が暢気に通信をしている。
こいつらは何をやっているんだ。兵器に乗って武器をお互い構えれば、やる事はひとつしかあるまいに。
一言、戦神に「滅」と言えば済むのだがな。

「駄目なの、ジュン君。ここが、ナデシコが私の居場所なの。私が私らしく居られる所、ミスマル家の娘でなく、
 お父様の娘でもなく、私自身を見てくれる所はここしかないの!!」

ほう、強い娘だ。特別に抹殺ポイント−1。

「…そんなに、ユリカの決心が変わらないのなら…」
「分かってくれたの、ジュン君!」
「あの機体を破壊する!!」

「ふっ、遅かりし未熟者よ……」

突然、戦神から幾線もの光が走った。デルフィニウムが8機煙を上げながら落下して行く。
ほう、あの一瞬でライフルを乱射したか。しかも、ブースターのみを打ち抜くとは、相変わらずの手だれよ。

アキトさん、どうしたんですか?
す、すまない、北辰の嘲る声が聞こえた気がしたんだ
大丈夫です。北辰はここでおとなしくしていますよ
…ああ…もう大丈夫だ…

「凄い腕前だな、お前、本当にコックか」
「ああ、ガイ、今のうちに逃げろ」
「わ、分かった」


「テンカワ・アキト!正直に言おう、僕はお前が憎い!!」
「これは、随分ストレートにきたな」
「お前の何がユリカを魅了したんだ!僕は…僕がずっとユリカの側にいたんだ。身の回りの世話をしたんだ!!」

アッシー君にメッシー君ね
何ですか、それ?
昔、流行ったのよ


「…ジュン、お前はユリカの為だけに、ここまできたのか?」
「違う!それも理由の一つだが…僕は正義の味方になりたかったんだ!!……」


お子様ね
ほんとですよねぇ〜
若いですな〜
坊やなだけだ


「ならば…テンカワ・アキト!僕と一騎打ちをしろ!!」


一騎打ちって、もう二人しかいませんよね
もう悲劇の主人公になってるのよ、男の子なのよね〜
契約違反で給料カットですな
敵を知り我を知れば百戦危うからず。所詮、惰弱な未熟者のすることよ


うるさい、うるさい、うるさ〜い!!誰も僕のことを分かってくれないんだ〜!!


「「「「おや?」」」」
「みなさん、通信は繋がってます」

妖精が冷静に言った。
見ると、副長機がナデシコから全力で離れようとノタノタとした機動をしている。初心者が戦場に出るな!

『第二次防衛ライン侵入、ミサイル発射確認』

オモイカネの報告が入る。

「ジュン、直ぐに物事を諦めるのが、お前の悪い癖だ!もう少しユリカに見せる執念を他に活かせ!!」

あっさり追いついた戦神の機動兵器が、副長機をナデシコに蹴り落とした。

「な、何をする!?」
「黙って、ナデシコに向かえ!! …ルリちゃん!!」
「はい、アキトさん」
「俺はミサイルを破壊しつつ、回避行動に出る!!ナデシコのエネルギー供給フィールド内の行動だからな、
 かなり制限されるだろう。それでもディストーション・フィールドは絶対解除するなとユリカに伝えてくれ!!」
「そんな、アキト、無理だよ」
「今からでは間に合わない。俺を信じろ!」




「私、信じたからね。だから、嘘ついたら、ぷんぷんだからね」
「ああ、ブリッジで待っていろ。後で、合流する」
「うん、絶対だよ」
「ミサイル来ます。わたしも信じてますから」

ゴワァァァァァアアアアアア!!!

ミサイルの大量到来。後の戦神降臨が始まったか。
エネルギー供給フィールド内かつディストーション・フィールド外での機動戦闘。緊張感のあるものだ。
ライフルと拳での破壊。回避。ミサイルの爆風、衝撃波を流す。
ほう、この状況でも力を隠すか。ん、カメラからロストしたか…となると…

「オモイカネ、カメラを上方向にずらせ!テンカワ機上昇している!!」

スクリーンにまた戦神機が映る。もっとも光とスピードにでろくに確認できないが。
ん、ブリッジの者達が我を注目しているな。何だと言うんだ……

「…あの北辰さん、アキトのエステバリス見えてるんですか?」
「うむ、見事な機動だ」

艦長が何故かおそるおそるという感じで聞いてくる。おかしな奴だ。

「うそ、見えてるの?」
「オモイカネ、確認できますか?」
『すみません、ルリさん、ノイズがひどく確認できません』
「北辰さん、どこですかな?」
「また、ロストした。更に上に逃げたな」

…さすがは、北辰…





「第二次防衛ライン突破…」
「ルリちゃん、アキトは?」
「テンカワ機……テンカワ機、応答願います!」
「メグちゃん、アキト…応答ない? 北辰さん、アキトは?」
「我はセンサーではない」
「ぼ、僕が、変な意地を…」
「ジュン君、アキトはそんな事…」
「アキトさんを信じられないんですか、艦長?」

妖精の静かな声がブリッジを走った。
ほう、なかなかに意思のこもった良い声を発するものだ。さすがは危険人物第二位。

「アキトさんは強い人物です。約束を必ず守る人です。私はアキトさんを信じています!」
「あれだけの技量、死ぬわけがない」

妖精、いいかげん仮面は見慣れろ!変な顔で我を見るな。

「私もアキトを信じている!…この気持ちはルリちゃんに負けないんだから!!」
「じゃあ、言って下さい。お疲れ様、お帰りなさい」
「……うん、アキト、お帰りなさい!」
「はは、はい、ただいま」
「え!?」

『テンカワ機確認』
「オモイカネ、どこ?」
『ナデシコより更に上空にて発見』

「何ですと…信じられない人ですな」
「へ〜北辰さんの言った通りね。ナデシコを待ちきれなかったのかしら」
「そうですよ、ミナトさん。先にミサイル包囲網から抜け出したのでしょう」
「良かった…アキト、戻ってきてくれた…」


ブリッジが歓声でうるさくなった。後に戦神が帰還した。
しかし、帰還した直後、戦神は気を失い医務室に運ばれた。

婿殿よ、芸が細かいな。余力を残していたくせにあれしきの事で全力を使い果たしたと思わせるとは。
相変わらず、実力のすべてを見せるつもりはないということか。ふふふ、それでこそ、


北斗の婿にふさわしいというものよ!!




<あとがき>

北辰頑張っています。順調にナデシコ生活を送っています、壮大な勘違いとともに。

 

 

 

代理人の「パパは仮面のナイスガイ」のコーナー(爆)

 

婿殿よ、11才では……我のような誇りある外道の所業ぞ!

 

壊れてますねぇ(笑)。

いい塩梅です(爆)。

・・・・・やっぱりアキトも外道(大爆発)?

 

 

しかしパパさんもさることながら、他のキャラの壊れ具合も見逃してはいけません。

例えば前回のルリ。そして今回はやはりこの人、アオイ・ジュン!

 

「僕は…僕がずっとユリカの側にいたんだ。身の回りの世話をしたんだ!!

 

所詮、従僕は従僕でしかないことに何故気がつかぬ、ジュンよ(核爆)。