玄武戦記〜玄武終話〜




「御父様」

我の目の前に北斗が座っている。

紅い髪をポニーテールに結わえ、普段着の着物で正座をし正対している。

「御父様」

もう一度呼びかけられた。ふっ、何度聞いても心地よい声だ。

「何用だ、北斗?」

我は既に知っている事をまったく知らぬ気に聞いた。

北斗の頬が少し紅く染まる。その真紅の瞳といい、北斗には紅が良く似合う。

「御父様に会って頂きたい男性がいます。御父様も良く知っていらっしゃる方です」

「我も知っている……何時会えばよいのだ?」

ふふふ、我も役者よ。家の中の気配など容易く読み取れる。しかし、あ奴も緊張するのだな。

「あ、あの…」

少し落ち着きがないぞ、北斗よ。まぁ、そこもいいのだがな。

「何だ?」

「はい。もう来ています。今、会って頂けないでしょうか?」

覚悟を決めて言う北斗。その目が真っ直ぐに我を見ている。

「ふむ、我だけで良いのか? さな子も呼ばなくて?」

「御父様!!知ってらっしゃるのですか?」

北斗が目に見えて狼狽する。今日一日で幾つもの北斗の顔が見れたな。普段では考えられぬ。

「連れて来るがよい。さな子も呼ぶようにな」

「はい」









人気の無い荒れ果てた採石場。

時より吹く突風が砂塵を撒き散らす。

ここに立つ者は、3人だけ。

我、北斗、そして、戦神よ。

「北斗が欲しくば、我を倒してみよ!!」

我の宣言に、北斗が悲鳴を上げる。それを戦神が優しく止めた。

「全力で行かせてもらいます、御義父さん」

「主に義御父さんと呼ばれる謂れは無い!!」

戦神の体が蒼銀に彩られる。構えはない。あくまで自然体。

「……昴氣か」

我は力を抜いた。木連式裏柔術無位の位。表裏一体。つまり、戦神と同じ構え。

我は昴氣が使えない。

長き木連式柔術の歴史でも使えるのは、創始者、そして、10人に満たぬというに…

だが、我のもう一つの心臓が唸りを上げるのを感じる事が出来る。

使えぬ昴氣の代わりの圧倒的なパワーが体中に満ちる。

我が外道から極外道になった証。

「行きます」

「来い」

突然、戦神から輝きが失せる。

何!昴氣を消した……違う!手の一点に集中させたのか!!

馬鹿な!あれだけの氣を一点に…

そのわずかな驚きが、我の無位の位を解いた。

戦神は目の前にいた。

手が我に触れる。

何かが走った。

弾けた。

滅。









『きぃーーーーー!まだ、まだよ!!ボソン・エネルギーを照射するのよ!!!」

ドクターイネスの言葉が何処からともなく木霊する。

我の中の力が増大する。溢れる。留まらぬ。

我の意識が深遠に飲み込まれる。

こ、これは何だ!?

イ、イネス!?

謀ったな!!

『北辰、あなたはいい人だったわ。あなたの父上が悪いのよ』




















そして、北辰は巨大化した!!


両腕を大蛇と化し、顔が二つ増え、


蛍光どピンクの昴氣を纏う!!!




「御父様ーーーー!!」

「駄目だ!もう御義父さんの魂は見えない!!もう倒すしかない!!!」

「そ、そんなーーー嘘、嘘……」

「北斗……」

「ダリアーーーー!!」

「な、北斗?」

「私が殺る!私がすべての決着を着ける!!」

「プローディア!」

「え?」

「一人で背負うな。いつも俺が一緒だ」

「アキト…」

「さぁ、一緒に行くぞ。御義父さんを解放しに!」

「……ああ、解放しに…」















ジリリリリィィィィィィィィィィンン!!!












玄武戦記〜玄武寝坊〜




おい!起きろ!

……煩いな……

起きろ!出撃だ!

……煩わしい……とりあえず狩るか…

「ゲキガン…」

ズベシッ!

まず裏拳を放っておいた。

「…ぬおぉ!この程度…」

シュ!シャ!シャ!

ついでに四方手裏剣と八方手裏剣、隠し千本を放っておいた。

「…なんのこれしき、ガイ式鉄身術・我慢!

木連式裏柔術奥義蛇王四方脚!!

「…………」

返事がない。ただの屍のようだ。

我は、ハルカ・ミナトお手製北ちゃん式抱き枕を胸に再び眠りについた。

ふふふ、未熟者が……
















ぬごぅ!!

は、ここはどこだ!

そうだ。火星で次元跳躍門から跳び通常空間に復帰したのだな。

しかし、先程まで何かを見ていた気がするが……まぁ、よい。思い出せぬ所をみるとたいした事ではあるまい。
何かを蹴りつけた覚えもあるが……まぁ、よい。思い出せぬ所をみるとたいした事ではあるまい。

それよりも、ここはどこだ。我の知っている通りなら、月付近で戦闘中のはずだが…

我は、まず周囲の確認をしようとしたが、ベットの足元に何かがあった。
例えていうなら、飛厘が作った何かに似ている赤黒い物体。
我は、何となく念入りに踏み潰してブリッジに向かった。





ブリッジでは……すでにナデシコは、ナデシコ級弐番艦ドック艦コスモスに収容されていた。

ぬぬぬぬぬぬ……我無く戦闘を終えたというのか!

我の欲求不満の捌け口がぁ!!

何故、大事な戦闘時に我を起こさぬ!
                                                   ヤマダ・ジロウが起こしに行った。
何故、誰も我の所に来なかった!
                                                         ヤマダの惨状見たし。
何故、妖精は我だけ起こさぬ!
                                                     嫌なことは、見ない主義だし。







我は今ブリッジで一人戦闘記録の整理をしている。

ミスターに怒られてしまった。いつまで寝ているのですかなと。
く〜勤務評定がA+から下がってしまったわ、不覚!

皆は、新乗組員を見に行った。

まー我は知っているから、構わんがな。
ん? そう言えばキノコが再合流なるのもこの時だな? 奴はどうなったんだ?

心の赴くままに破壊の限りを尽くしたつもりだが…


ところで、妖精よ。

『大丈夫です、奇跡的にも連合宇宙軍に死人は出ていません』

と報告しているが、我の目にはグラビティ・ブラストで一瞬で崩壊して行く有人機が見えるぞ…

直撃を避けた駆逐艦が脱出艇が出る前に爆発しているのが、確認できるぞ…

そう言えば、サセボでの初戦の後も妖精は、

『地上軍被害甚大ながら、奇跡的にも死者いません』

と報告していたな。

あの大地に散乱する真っ赤な肉塊はどうした。爆発した有人戦車群はどうした。

都合の悪いモノは、その目に映らぬか…















さすがは、妖精!人にあらざる魔女よの〜


人間、ああはなりたくないものだな。


なるなら、やはり誇りある外道よ!!




<あとがき>

え〜一人でも最終回!?と思ってくれたら、成功ですね。
書体が違う!何かある!と思った人は、電波系ですね。

次は、外伝玄武秘話です。

 

 

代理人の「ぱぱは仮面のお寝坊さん」のコーナー

 

・・・・むぅ、タイトルがいまいちだな。連載第五回にして早くもネタ切れか(爆)?

 

それはさておき、「奇跡的にも死者なし」ってそうですか、そう言うオチでしたか(爆笑)。

 

座布団二枚(笑)。

 

 

ちなみに一つ突っ込んでおくと昂氣を発動させたのは「木連式の創設者」の「師匠」で、

「十人に満たない」のも「木連式のもとになった古武術」の歴史の中でなんだそうです。

詳しくは十八話のその十(四日目)をどうぞ。