玄武戦記 〜玄武日記〜




「クルスク工業地帯……私達が生まれる前には、放射能漏れで盛り上がっていた所よ」

ベニテンの言葉にブリッジに嫌な空気が満ちた。

我も嫌だ。突然変異体などにはなりたくないからな。
フッ、同じ人の道を踏み外すにしても、外道のような気高き理想とは訳が違うのだ。

それにしても…

「それ、チェルノブです」

妖精の冷たい言葉が流れた。

「…そうとも言うわね〜」

ジロリ……プイ……くくくくくくく……×ブリッジ全員

…駄目だ、奴をまともに見る事など出来ぬ。

「そこ何笑っているのヨ!アタシの話をちゃんと聞きなさい!!」


「は〜〜〜い!」×ブリッジ全員

い、いかん!つい、釣られて返事をしてしまった。

ぬ〜我は人にあらず!外道なり!この程度の事で、心を乱される謂れはない!!

魂!神!意!魄!精!


タタッタッタタンタン♪トン♪テッテテ……♪

ぬ〜バッホロよ、そのような鼻歌を歌うな!


……ククククククク……ププププププ……ンムムム……

ブリッジに再び笑いが満ちてくる。

我は負けぬ。

たかが、ベニテンが顔だけ日焼けしているだけではないか!
頬にベニテンと白く残っているだけではないか!


歳!鎮!辰!螢惑!太白!……


ねぇねぇ、あれ食べたら大きくなれるかなぁ?

「ックククッ……ホロちゃん、止めなさい。お腹壊すから」

ねぇねぇ、あれ食べたら火を吐けるようになれるかなぁ?

「ププ……無理だから、止めてね」

ミナト、頼む。バッホロを止めてくれ。我ももう限界だ…


でも、あのキノコ、スーパーマ〇オみたいだよぉ♪


髪を見事な斑キノコ模様に染めたベニテンを正視できる者はいなくなった…

いったい誰がやったんだ…

怨むぞ……クク……

 

「このクルスク工業地帯を、木星蜥蜴の奴等が占拠したのよ。
 その上、奴等ときたら、今まで見た事の無い新兵器を配備したわ…」

ベニテンの説明が再開された。

結局、クルー全員の強い要望で目と口の穴を開けた紙袋を、頭からかぶせることで決着した。
我が懇切丁寧に教えてやったのだ。
…だが、これも中々くるものがあるな。

「司令部では、ナナフシと呼んでいるわ。
 今までも軍の特殊部隊が破壊に向かったわ……三回とも全滅したけどね」

ほう、あの高価な欠陥兵器も役に立っていたのだな。知らなかったぞ。安定性が悪くて量産されなかったからな。
マイクロブラックホールの生成にだいたい三回に一回は失敗して、自滅するのだがな。

あれさえなくば、大量生産して、ナガシノ・オペレーションができたと閣下が言っておったな。
フッ、今は亡き草壁閣下か。懐かしい思い出だ。

ん?考えてみると三回連続で成功したのか? 次あたり、勝手に自爆するのではないか?

「そこで、ナデシコの登場です!!グラビティ・ブラストで決まり!!」

艦長が胸をそらして言いおった。

普通、まずは、特殊部隊三回の全滅原因を確かめんか?

「そうか!!遠距離射撃か!!」
「その通り!」

愚か者共が!戦神がおらぬナデシコなら、赤子の手を捩じ切るも同じよな…

「ただちに作戦を開始します」

艦長の宣言で作戦は始まった。

と言っても、撃墜されてからが本番だ。暫し休むとするか。






「作戦開始まで、後8分37秒♪」

妖精のやたらと機嫌の良い声がブリッジに響く。
だいたい何だ、その中途半端な時間読み上げは!1分刻みとは言わんがせめて30秒刻みにせんか!!

クッ!先程の夢見が悪かったのか、やたらと攻撃的になっているな…

夢……う〜む、よく覚えていないが、さな子が出てきた気がする…
…はて?何故、さな子が出て夢見が悪いのだ? 分からぬな…

「エネルギーチャージと共に山陰から出てグラビティ・ブラスト発射!!
 ど〜〜んとやっちゃって下さい!!さて、ルリちゃん、正直に言って、何があったの?」

艦長、何を言ってるんだ?
…こっちは心臓に悪い思いをしているというに…歴史が変ってきている以上、絶対安全だとは言い切れんのだぞ。
流石の我や戦神とて、マイクロブラックホールの直撃を喰らって……戦神は生きてる気がするな…

歴史を唯一知る者としての不幸か。ふっ、我に相応しき業よな。


「相転移エンジン全システム問題無し。ディストーション・フィールド出力13%ダウン。最終セーフティ解除。
 ルリちゃん、正直に答えてよ、何かあったの?」
「よ、予定作戦ポイントまで1500」

ああ、喧しい、何もないわぁ!戦神は北斗の王子様だ!!
…だが、つい魔がさして我とさな子のように…外道と呼ばれる正しき所業を戦神も望んだとか?

いかん!どうにもこうマイナス思考になっておる。

やはり夢が悪いのか……何やら浮気がどうこう……我は無実ぞ、さな子よ!!


「……敵弾発射!」

「へ!?」×ブリッジ全員−我


ドギャァァァァァァンンン……


「何か当たった?」

うむ、思い切りな。


             ドゴオォォォォォォンンン!!!


「ディストーション・フィールド消失!!」
「被害は11ブロックに及んでいます」
「相転移エンジン停止!!」
「へ?」

フン、歴史通りか。なら問題ないな。我だけが心配していたのだ、精々慌てるがいい!

にしても、4連続成功とは、精度が上がっているのか? 3回に1回で自爆の確率だった筈だが…
2/3×2/3×2/3×2/3=16/81…フッ、男ならやはり分数よな。まぁ、それはともかく、
4連続成功確率は約2割か。我なら絶対にしない賭けだな。

そう外道なら常に8割を超える状況を整えてから正々堂々と戦うか、
正々堂々と不意打ちか人質を取るというのが常道よ。

ピッ

『きっとナナフシの正体は重力波レールガンよ。あの砲身で…』

「イネスさん、説明ご苦労様です!今はそれ所じゃないんですってば!!」

ドクター……そこで我を睨むな。この状況では、艦長が正しいと思うぞ。

「操舵不能!墜落します!!」
「補助エンジン全開!」

『ちょっと、北辰さん、私の説明を聞かせてあげなさいよ〜』

ドクター、いくら契約でもそれは無理というものだ。我への協力の見返りに
ドクターイネスの説明を邪魔する者は排除するという契約を結んだが、
世の中、無理な時もあるぞ!

結局、我はドクターの目が怖かったが、聞こえぬフリをした。


ズザザザザザアアアアアァァァァァ……


『北辰さん、覚えてらっしゃい……ともかくね、威力は凄いけど、
 マイクロブラックホールの生成には時間がかかるから、暫くは安全だと思うわ』

ピッ!!

「貴重な意見をどうも…」
「タフですね……イネスさん」
「何か、北辰さん、怨まれてません?」
「うむ、逆恨みだ」

とりあえず、ミナトには返事をしたが……後が怖いな。ササミチーズ味でも持って行くか?


「さて、これからどうしましょう?」
「やっぱりエステバリスの出番かな」
「対空攻撃システム……軍の迎撃部隊はコイツに全滅させられているのね」
「あ、おられたのですか、ベニテン?」
「誰がベニテンよ!!」
「あ、紙袋取っては駄目ですよ、ベニテン」
「だから…」
「そんな大事なことは早く言ってください、ベニテン」
「こ、この…」




ミスマル・ユリカよ……強くなったな。
あの斑模様キノコと相対して、笑わずに会話できるとは…

ブリッジは又もやほぼ全滅してるというに…

「タタッタッタタンタン♪トン♪テッテテ……♪」
「…プププ……お願い、ホロちゃん……それだけはやめて…」













フハハハハハハハハハハハハ……


愉快だ!愉快すぎる!これが笑わずにおられようか!


赤い子猫も妖精も某組織も出し抜いてやったぞ!!


ククク……

あの後、旧時代の戦車が2万両程襲い掛かり、少数精鋭での陸からのナナフシ急襲が決まったのだ。

少数精鋭…つまり戦神という事よ!


様を見曝せ!中途半端で壊れにも成り切れん臆病者めが!!



さて、まずは我の実力を見せ、戦神の信頼感をアップさせねばな。

我は、DFSを構えた。白い刃を出現させる。

「バーストモード・スタート!」


フイィィィィィィィィンンンンン!!!


我の命令にエステバリスが全力を上げるのが感じられる。

真紅のフィールドが展開された。


「さらに、フルバースト!!

無針注射器を我の首筋に突き立てた。

ドクターイネス謹製『かみころし君α』、試作品第一号だ。


……ピクッ…ピクピクッ…効く…効いてきた……見える!見えるぞ!…我は覚醒した!!




























北斗!時が見えるよ!!



我の掲げるDFSの白き刃がエステの赤いディストーション・フィールドを吸い上げ、ピンクに染まる。

長大なピンク色の刃を徐々に球形に変えていく。

今なら、出来る。過去の我が到達しえなかった高みにいる今なら!


我が内なる大蛇よ!

我が心の檻を喰い破り、今こそ顕現せん!!


八首大蛇皇刃!!


我は、八つの桃色の刃を前方に放った。
刃はそれぞれが回転し、大蛇の顎のように戦車共を喰い散らかす。

フッ……成功…だ……な……な…なんだ……体が傾く……視界が暗く…
…ドクターよ……副作用……ないと……言ったで……あろう……

我が最後に思い出したドクターは…

『北辰さん、覚えてらっしゃい…』

だった…





我が目覚めたのは、医務室であった。

「ドクター、副作用は…」
「検体不足ね。ヤマダ君では大丈夫だったのよ」

…あやつ、我よりも丈夫だというのか…

だが、今、ニヤリと笑わなかったか、ドクター。ぬし、我を恨んでないか? あれは、不可抗力だろうに…

ともかく、我が眠っているうちに戦神とスバル・リョーコはナナフシに向かったということであった。

不覚!







覚醒した我はブリッジに戻った。が…


シイィーーーーン


と静まり返った中、妙な音だけが、聞こえる…


カキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキカキ……


しかも。四方八方から…

これは、一体何の真似だ? 今は作戦行動中ではないのか?

ブリッジ全員が軍服を着ているのは、許そう。

妖精が鎧兜を着ているのも、許そう。

だが、何故に…























写生板を付けて、絵を描いている !?



「おや、気付かれたようですな、北辰さん。お疲れでしたな」

ミスターまで……写生板を付けて、筆を持ったまま言われてもどうしろというのだ。

「あ、パパ、お帰り♪」

バッホロまで…

「ミスター、これはどういう事だ?」

我は、いささかの殺気を込めて聞いた。
我も戦神も余裕とはいえ、真剣な戦闘をしているのだぞ。まぁ、我は終わったが。

「いやいや、バッホロさんがですな、素晴らしいモノを見せてくれましてね。
 幸い皆、軍服に着替えたことですし、記念にどうかという話になったのですよ」
「素晴らしいモノ?」
「ええ、アレですよ」

ミスターが指差した所には…!!


北斗ぉぉ!!!
























(核爆)

多謝。別人28号さん!『北辰異聞』好評掲載中!!




我が描いた可愛い北斗憎たらしい犬コロではないか!!

あれは、我が神聖なる宝物

草葉の壁で泣いている閣下からいただいた遺品の『にっきちょう』。

初めは、256色の色鉛筆を使っていたのだが、
さな子のたっての薦めで12色のクレパスに変えてからの初めてのページ!!

けっこう自信作。

だが、あれは、我の木星唯一の思い出として、誰にも分からぬよう枕の下に隠していた筈だ。
夢にもさな子と北斗が出てくるようにとの願いをこめて。


「何故、アレがここにある?」
「あ!私が見つけたんだよ♪」
「なに!?」

バッホロの仕業か。同室の奴なら確かに見つける事は可能だが、何故にブリッジに持って来る?


だって、私、感動したんだもん♪
「ぬ?!」
「これには、パパの『』が満ちてるんだもん!
 だから。みんなに見せたかったんだもん!!羨ましかったんだもん!
 それで、『私も描いて欲しいなぁ』って言ったら、みんな、コレを用意してくれたんだよ♪」

バッホロが誇らしげに写生板を見せてきた。
実験体か……研究用の写真しか撮られたことはあるまい…

「そうですな、ですな」
「そうよね〜コレは以外のナニモノでもないわね」
「家族をしているんですよね」
「私のアキトへのには負けるけど、北辰さんもだよね♪」
「たまには帰りなさい、有給取って。随分溜まっているでしょう。家族サービスも大切よ。があるなら?」

ミスター、ミナト、メグミ、艦長、エリナ……我は外道……我に感動など涙など似合わん……が…


「愛がなければ、娘さんが取ったカブトムシなんか描くわけないもんね♪」

バッホロ!

「あら、ホロちゃん、勘違いしてない?」

そうだ、ミナトの言う通りだ。勘違いしているぞ。

「あれは、コガネムシよ」
「何言ってるのよ、テントウムシに決まってるじゃない」
ですな」
トーテムポール♪」






我は、『にっきちょう』片手に部屋に戻って、漢泣きをした。

別に我が描いたものが分かられぬことが悔しかったからではないぞ。

初めて気がついたのだ。

最後のページに描かれていたものにな…

フフフ…



さな子、愛しているぞぉ!!















どこか遠き所、深き所で…


…周りの海水が紅く染まっていく……

…もう手足の感覚なんかとっくにないというのに……

…妙に意識だけはっきりしやがる……

…近くをクルクル周る魚の群が急に離れやがった……

…来るか?遂にサメが来たのか?……

…短い人生だった…もう終わるのか……

…クッ!あの男に騙されねば……

…俺が最後に見た光景は……

…海底からゆっくりと浮上してきた何かに飲み込まれ……

…そして、光が消えたとこまでだった……










<あとがき>

別人28号さん、ありがとうございます

『北辰異聞』の『にっきちょう』の設定を使わせて頂きました。ただ、256色色鉛筆はちょっと…(汗)
私は基本的に色鉛筆使いなんですが、これで北パパ絵の再現は難しいので12色クレパスにさせて頂きました。

うちのパパと別人28号さんのパパとの一番の違いは、パパ×さな子がLOVE!という所ですから(笑)
大目に見て貰えれば、嬉しいです。


それにしても、今回は違う方向に暴走した気がするな〜何かほのぼのしてると思いませんか?
……私は、『ほのぼの』という言葉にトラウマでもあるのか?何かこだわっている気がする…

さて、死亡確定第一号の助命嘆願というか復活を望む声が多かったので、只今復活の儀式を行っております。
でも、死んでいた方が良かったという扱いになりますが、本当にいいんですかね?

一応、シーモンキーが進化した王国に拾われる予定ですが、どの程度の人が元ネタわかるのかな?
ダブルスコアの幅広い年齢層だから、あまりはっきりとした元ネタを使わないように心がけるつもりですが、
まぁ、知らなくても絶対笑えるキャラになりますから(笑)

 

 

 

 

代理人の「パパは仮面のゴミ処理係」のコーナー(毒電波)

 

プロスペクター「どうなのですか、北辰さん? 彼女は使えるようになりましたか?」

北辰「ああ、子猫か? 普通だな」

リョーコ(すてーんっ!)

 

リョーコ「ほ、北辰ーっ!」(バキューン)

北辰「ん?」

リョーコ「『子猫』って言わないでくれよ。俺にはスバル・リョーコって言う名前が・・」

北辰「五月蝿いこの臆病者。お前なんか『子猫』だ(冷たい目)」

リョーコ「そっ、そんな〜(涙)」

北辰「壊れも萌えも出来ん、お前のようなハンパな者に名前などいるか」

ルリ「さっぱり話が見えないんですが・・・」

 

ギャフン
END

 

以上、毒電波でした(爆)。

 

 

追伸

 

ささやき・・・・・

いのり・・・・・

えいしょう・・・・・

ねんじろ!

 

ナオ は まいそうされます

 

 

 

 

・・・・・・いや、復活の儀式って言うから(爆)。

もっとも、ヒトのままで生き返る確率はゼロに等しいと思いますが(激爆)。

まぁ、「死にかけの所を改造手術によって一命を取りとめる」というのは王道ですから、

その内仮面のヒーローとして活躍してくれるでしょう(爆)。

しかし、シーモンキーですかそうですか(笑)。・・・・・ラストは蒼いクジラにでも飲まれたんかいな?

(そういえば旧約聖書に鯨に飲まれたヨナという男の話がありますね。関係ないとは思いますが(^^;)