借りしチカラとその代償

第1話後編「与えた者、得たチカラ」



「それは、君の人生に干渉する権利だよ」

アキトはなんの事だか解らなかった

「どういう事だ?貴方は「読み手」にまわるのだろう?」

「なぁに、確かにこのままでも面白いがもっと面白くしたいだけだ」

そういってニャルプーはクックックと笑った

「・・・・つまり、もっと厳しい人生になるかもしれない・・・ということか?」

「ああ、その可能性は非常に高いが・・・・言っただろう?私は君を不幸にするために動

くのではない、一時的に不幸になっても最終的には幸せになるはずだ」

「わかった・・・・・・・その条件・・・・・飲もう」

「そうか納得してくれたか・・・・・ではチカラを与えるとしようか・・・」

そう言って謎の光がアキトを包み込む

「な、なんだこれは!!!」

光から現れたのは14歳になったアキトだった

「まさか・・・・私がチカラの塊を与えるだけで爆発的に強くなる・・・なんて考えては

いないよな?」

「・・・・・・・・・少し・・・・」

アキトは顔を赤くしながら正直に告白した

「はぁ〜・・・・・・そんな事があるか・・・・まずは修行から入るが、数十年要するの

で先に若くなって貰ったのだ」

ため息をつきながら若くした経緯を説明する

「そうか・・・・でも何故14歳なんだ?」

納得しかけるが、疑問のを口に出すアキト

「何となくだよ、何となく」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

キャラが変わっていないか?と思うアキトだった

「でも、まずは食事を作って貰えるかな?ここ数百年食事をしなかったから味というもの

が恋しくなってね」

「あ、ああ、しかし俺は五感が・・・」

突然の提案に何故?と思いながらも作りたくても作れない理由を言う

「・・・もう治したが?」

「は?」
気付いていない?と思いながら治っている事を口にするニャルプー、そして一瞬言われた

事が理解出来ないアキト

「治っている?」

そう呟きながらバイザーをはずし、自分の頬をつまむ

「・・・本当だ・・・・でも、それならば何故匂いを感じない?」

納得するが匂いが無い事を不思議がるアキト

「当たり前だ、ココには今なんの匂いもないからな」

もっともな事を言うニャルプー

「解ったなら料理を作ってくれるか?」

「ああ、・・・・・・少し待っていてくれ」

そういう事か・・・と納得しながら出ていこうとするアキト

「って俺はこの家のキッチンの場所をしらんぞ?」

そう言ってUターンして戻ってくるアキト

「大丈夫だ、行きたいと思った場所に行けるから「キッチンに行きたい」と念じながらこ

の部屋を歩け」

この家の仕組みをアキトに解るように話す

「わかった、少し待っていてくれ料理を作ってくる」

そう言ってキッチンへと消えてゆく




30分後




「なんだ?これは?」

「なにって・・・チャーハンだが?嫌いだったか?」

アキトが久しぶりに作った料理・・・・それはチャーハンだった

それを一口食べた次のセリフが「なんだ?これは?」である

「そうではない・・・・・これが料理だというのか?」

「なんだと!!」

曲がりなりにも元料理人で久々にしては結構上出来だと思った料理をけなされたのである

「たしかに料理はもう2年は作っていないが、其処まで言われるような料理を作った覚え

はないぞ!!!」

アキトは怒りで少々言葉が荒くなった

「そうか・・・そうだったな・・・・」

ある事に気付き何処かに消えていったニャルプー

「おい!!何処に行った!!」

何の説明もなしに消えたニャルプーに怒鳴る事しかできないアキト



20分後



「味覚なんて・・・・人それぞれだもんな・・・」

一旦頭を冷やし、いきなり怒ってしまった自分を反省するアキト

「待たせたな」

その時ニャルプーが帰ってきた

「あ、その、さっきは・・・・悪かった・・・久しぶりに作った料理をけなされたんでつ

いカッとなってな・・・」

「別にイイ・・・それよりこれを食べてみろ」

全く気にした様子もなくアキトの前にチャーハンを置くニャルプー

「ああ、いただきます」

とりあえず言われたままに食すアキト

「う、うまい!!こんなにうまいチャーハンがあったのか!?」

大げさに驚くがアキトは本当にそう感じていたこのチャーハンなら3万払っても食べるだ

ろうとさえ思えた

「そうか、これが俺の食してきた最低限の食事だ・・・・」

「これで最低限!!??」

こんなにうまい物が?と信じられぬアキト

「予定を変更する」

そう感じているといきなりそのような事を言われた

「?予定変更?」

「ああ、先ずは料理を修業する、私の口に合う程度の料理は作れる様になって貰う」

「・・・・解った、教えて頂こう」

いきなりであったが、覚えれるのならどんな事をしても覚えたいレベルの料理を教えてく

れるというので素直に習う事にした

「しかし、料理だけでは身体がなまるので最低限の運動はするぞ?」

「それは勿論だ・・・・・」

そして次の日からアキトの修行の日々が始まった



500年後



「今日で料理の修業は終了する・・・・・よく頑張ったな・・・・アキト」

「はい!!師匠!!今までご教授ありがとうございました!!!」

アキトの姿は18歳の時に戻っていたが、実に500年の月日が経っていたその修業も過

酷な物で、ニャルプーのチカラで睡眠が必要無くなったので一日24時間の内、18時間

が料理、残りの6時間が運動といったものであった

が、そのおかげでアキトは人間としての料理人としては初めての域にまで上り詰めるに至

ったのだ

しかし、だからといって全てが終わったわけではなかった・・・・いや、今からが始まり

と言っても良かったのである

「では、アキトよ、今よりは武術の稽古をはじめる」

「はい!!師匠!!ご教授お願いします!!!」

どうやら500年も教えを受ければ、このような状態になってしまうようだ

ニャルプーも何処かより東の方で負け無しの方の影響を受けたようだし・・・

ルリとアキラが今のアキトを見ていたらこう言っただろう・・・「昔のアキトさんに戻っ

てきてますよ」と

「アキト、お前は昂気は習得しているな?」

「はい、昂気は習得していますが」

「では、出してみよ」

「解りました」

アキトの身体が蒼銀の輝きに包まれる

「これでいいでしょうか?」

「ああ、では私が先ず教えるのはその昂気をより高めたモノを習得させる」

「昂気を高めたモノ?そのようなモノが?」

「ああ、極めたモノは人類が誕生してより5人もおらぬ故に誰も知らぬが有るのだよ。そ

れを習得せし者はまさに敵無しだ・・・・神達には負けるかもしれんがな」

「・・・そのようなモノが・・・」

「ああ・・・・では修行を始める!!!!」

「はい!!師匠!!!!」



20年後



其処には姿変わらぬニャルプーと、身体に紫電の輝きを纏った20代後半になったアキ

トの姿があった

「ようやく極めたか」

「はい、やっと習得する事が出来ました」

「フッ・・・、しかし!!これで終わりではないぞ!!!」

「解っております」

「では、今からは技を極める事にする」

「はい!!!」

「アキトお前が極めし武術は?」

「はい!!木連式柔と木連式抜刀術です!!!」

「そうか・・・・・では、今よりはより高みに登るためその極めた技を基本とし、我流の

技を鍛えてゆくぞ」

「はい!!!」

また再び修行の日々が始まった・・・



200年後



その場にアキトは膝より崩れ落ちた、その身体は至る所より出血していた、その正面に比

較的軽いながらもアキトと同じように身体を血に染めたニャルプーが立っていた

アキトと違い崩れ落ちる様子は微塵も無いが・・・

「癒えろ」

ニャルプーがそう呟くと二人の身体があっとゆうまに何事もなかったかのように自然体へ

と戻る

「ようやくこの高みまで上り詰めたか・・・」

そう言いながら目の前で倒れて気絶している18歳のアキトを優しげに見つめる

「アキト」

そうニャルプーが囁くとアキトはゆったりと起きあがった

「また、気絶していたんですか・・・」

「ああ」

「やはり、まだ勝てませんか・・・」

そう言って項垂れるアキト

しかし、ニャルプーはそのアキトの言葉を聞きキョトンとした

「勝てるわけが無いだろう、一応私は最強の存在なんだぞ?」

呆れながら言葉を返すニャルプー

「は?そうなんですか?」

「ああ、だから無駄な事を思うのはやめろ」

「・・・・・・・はい」

そう言われても割り切る事がなかなかできないアキトだった

「で、だ、ようやくお前も私が納得できる高みまで上り詰めた・・・」

「本当ですか!!」

「ああ、だから本日で修行を終了する」

「今まで・・・・ありがとうございました。」

終了という言葉を聞き感謝の言葉を語るアキト

「ああ、そこで終了とともにお前に流派の名を授ける」

「はい!!」

「アキト、お前が今より名乗る流派は『熾皇天流』とする」

「熾皇天流・・・確かに、授かりました」

「うむ、これで全ての修行が終了した事になる」

「ありがとうございました」

そう言って頭を下げるアキト

「やっと、過去に跳ぶ事が出来るな・・・」

「はい」

「どうする?すぐにでも跳ぶか?」

「はい、師匠には申し訳有りませんが・・・すぐにでも過去に跳びたいと思います」

予想していたのだろうニャルプーの表情には全く揺らぎはなかった

「そうか・・・では、私からいくつかの贈り物と代償を払って貰おう」

「代償・・・人生への干渉でしたね・・・」

「ああ、では先ず贈り物を贈ろう」

そう言ったニャルプーの周りのに5「つの白く輝く玉と1つの紅き玉が浮かぶ

「1つ目は知識を・・・」

そう言った時白き玉が一つアキトの身体に消えて行った

「2つ目は20Gまで消す事が出来るフィールドを・・・」

そう言った時白き玉が一つアキトの身体に消えて行った

「3つ目はCCや装置なしにボソンジャンプを出来るように・・・」

そう言った時白き玉が一つアキトの身体に消えて行った

「4つ目は私が認めた者を証明する称号ルシルフを・・・」

そう言った時白き玉が一つアキトの身体に消えて行った

「そして5つ目は遺跡を味方に付ける事の出来るウィルスを・・・」

そう言った時白き玉が一つアキトの身体に消えて行った

「これで私からの贈り物は一つを残し全て贈った・・・」

「一つを残し?」

「ああ、後一つ、エステバリスのような機動兵器を後で贈るよ」

「何から何まで・・・・すみません・・・。」

「別に良い、さて一つ目から説明するが良いか?」

「はい、お願いします」

「では一つ目、もう私の元に来て720年が経っているので忘れた事や思い出せない事も

あると思うので、来た当時の知識と色々役に立ちそうな知識を贈った。二つ目は機動戦で

感じる重力を20Gまで消してくれるフィールドだ、常に1Gは感じるから浮遊する事は

なく感知される事もない・・・これで機体さえどうにかすれば戦闘がかなり楽になるだろ

う。三つ目はそのままCC等の補助が全く無しでボソンジャンプする事が出来る、流石に

ボース粒子を消す事は出来ないがね。4つ目は私が認めた証拠である称号を授けた、それ

により身体的能力の限界値が1.25倍にまで引き上がった今のお前なら限界値まで身体

を使えるだろう、それとその称号が無い者は後から贈る機体の秘められた能力を使う事は

出来ないし、まず乗り込む事すら出来ない。5つ目は詳しい説明は省くがその手で遺跡を

触りすらすれば遺跡が君に関わる者に害を及ぼす事や取り込む事は無い」

(まぁ、それだけじゃないがね・・・・・)

「以上が私がお前に贈ったモノだ」

「・・・・・・・・」

アキトはとっさに声が出す事が出来なかった、それほどのモノを貰っているとは思っても

いなかったからだ

「フッ・・・・では次は私が楽しませて貰うためのモノを受け取って貰う」

そう言って最後に漂っていた紅き玉がアキトの身体へと消えていった

「私が君に与えた代償の一つは価値観の変化・・・君には幸せになって貰いたいし、君の

周りの女性陣にも幸せになって欲しいからねぇ」

そう言ってクックックと笑いを零すニャルプー

「で、その言葉の意味は?どういう意味なんです?俺の幸せと、周りの女性陣の幸せって」

「もう、君の価値観は変えたから今言われても疑問に思わないよ、気にしないで良い」

「そうですか」

「さて、それじゃあ過去に跳ばすが・・・・いいか?」

「ええ、お願いします・・・・あ、最後に貴方の本当の名前を教えて貰えませんか?」

最後にアキトはまだ教えて貰っていないニャルプーの本名を聞いた

「そうだな・・・最後に私の称号と名前を教えても良いだろう」

そう言ってアキトの右肩に左手を置き、宣言した

「称号「ルシルフ」を持ちし天川アキトよ!!ここに称号「ケイオス」を持ちしニャルリ

トゥホティプの名において今一度、過去の出発の時へと舞い戻れ!!!」

アキトがニャルプーの本名と称号を聞いたときアキトは黒き暗き闇へと吸い込まれて行っ

た、後に残ったのは左手を宙に浮かせたニャルプー、いや『這い寄る混沌』ニャルリトゥ

ホティプだけであった

「アキトよ、再びやり直す権利を受け取りし『堕ちし天使』よ、我が与えた試練すら越え

て愛する者達をその腕に抱き守りきる事が出来るかな?」

そう言うとニャルリトゥホティプは目の前に出現した椅子に座り

「君が全てを乗り越えれば私は君と仲間に幸福を与えよう・・・」

どこからともなく取り出した一冊の『本』を読み出した

アキトに降りかかる試練とは?そして再び舞台は2196年へ・・・


第2話へ続く

この作品は、私にこころよく自分のオリジナルキャラや設定等を貸して下さいました

Benさん、T−SAKAさん、風流さん

のおかげで執筆出来ました。

作品の最後の部分ではありますが、この場で感謝の意を記させて頂きます。





後書き

やっと第1話が終わりました、後編は長くなってしまいましが・・・
まぁ、やっと逆行しましたし、新たなチカラも手に入れました、少しやりすぎかな?
と思う方もいるかもしれませんが、敵は木連や火星の後継者じゃないので・・・というか人間ですらありませんので、ご容赦を・・・
                              闇乃棄 黒夜

 

 

代理人の感想

いわゆる主人公最強主義ですね。

もっとも、バトル物で「強いぞ」「敵が出たぞ」「敵に勝ったぞ」では話が面白くなるわけがないので

大抵の場合主眼は「敵にどう勝つか」に置かれることが多くなります。

そう言う意味で主人公がどれくらい強いかと言う描写は実は不要なものとも言えるでしょう。