悲劇の温床

 

 

 

「う〜む。冗談ではないのだな。」

 

男はそう言って黙り込んだ。                          

年齢は三十半ばと言ったところであろうか。                 

男の名は、ヨシダ・ヒロフミ。                           

現在、連邦大議会の下院議員であり、軍務省政務次官である。     

また現首相カジ・リュウノスケの第一の側近でもある。           

役職は政務次官ではあるが、現在の軍務大臣は、地位のたらい回しで、その地位を得た無能な老人である。

                    そのため、軍務省は与党若手議員のなかでも一番切れ者と呼ばれる彼が、取り仕切ることなった。 

これは現内閣すべてに言えることではあるが。

先の内閣は、木星蜥蜴の火星侵攻にたいする不手際などで、支持率を落としたところに

ナデシコの地球脱出事件でトドメをさされた。       

この内閣は利権屋などの集まりであり、なによりひどっかたの外交能力ゼロというものであった。

そこで、現首相のカジ・リュウノスケが、若手議員や、なかなか大臣になれない老人たちなどを結集して与党の

実権を握り内閣を組織したのである。

ちなみにこのシナリオを書いたのは、ヨシダとそのライバルの一人であり、現在、連邦警察長官をつとめてい

る、ジョセフ・フーバーである。   

このとき、カジは老人達に約束通り大臣の椅子を与えたが、その一方でフーバーに老人たちの弱み調べさせた。

そうして老人たちの弱みをにぎり、老人達をだまらせ、実権は、側近の若手に握らせたのである。

なお、先の内閣のメンバーみなフーバーによって監獄に叩き込まれた。

そのような訳で、いまそこにいる男は並の人物ではない。         

そんな男がある書類とにらめっこをしていた。                

その書類はこう書かれてあった。  

「T・A報告書」                                            

このイニシャルを理解出来ない者は、少なくとも現内閣にはいない。   

そう、そのイニシャルの人物が彼の悩みの種であった。

(T・A・・・・いやテンカワ・アキトこの男はいったい?)

1日に一度は思う疑問であった。

今回の報告書はある意味、直接テンカワ・アキトに関係することではないかもしれない。

しかし、ある意味それ以上に重要なことである。

それは、先日行われた、ピースランドでの戦闘記録である。        

彼はナデシコが、なにやら目的あってピースランド向かっている。     

という情報を得た。                                

そこで信頼できる人物である、ミキ少佐にアフリカ方面軍の中に加わり、そこでテンカワ・アキトについて

調べてきてもらった。

そうヨシダはこの機会を逃すつもりはなっかた。               

なにしろテンカワ・アキトが、初めて政治的表舞台に立つのだから。   

そして、その報告書の内容はヨシダの想像をこえたものだった。

まず目にいったのがのが、テンカワなしでのナデシコの戦い。       

正直いってここまですごいのかと驚きをとおりこして呆れた。        

まず、戦艦一隻で、チューリップ八機を落とすとは、

(それもテンカワ・アキトが参加せずにか)

(一隻の戦艦に一個軍団超える人物がいるのに                

彼なしでここまでの戦果をあげるとはな)

しかしその報告書もっと重要な事が書かれてあった

それは、ミキ少佐が見たテンカワ・アキトの人物評であった。       

まずテンカワ・アキトが出てきたとき、周りの空気が変わったという。

そして、だれもが、彼に圧倒された。                      

彼に圧倒されなかったのは、ロバート・クリムゾンだけであったと。    

そして、会議の流れを逆転させた、ピースランド王女の決意。       

また、彼のために獅子奮迅の戦いをしたナデシコ。            

最後まで仲間を信じ毅然としたとした態度くずさなかった、「漆黒の戦神」 テンカワ・アキト

報告書にはテンカワ・アキトすごさ、これでもかと書かれてあった。    

そして報告書にはこう締めくくられていた

「テンカワ・アキトの器、尋常にあらず。」

これを見てヨシダ最初の言葉を言ったのだが。                

これは民主主義国家、いや国家にとって極めて都合の悪いことなのである。 

政府のコントロールの効かない桁はずれな戦闘集団が存在する。    

それが、民衆に人気のある英雄によってうごいている。           

その英雄のバックにはネルガルがいる。                   

軍部の方でも西欧方面軍は英雄の全面バックアップをおこなっている。 

そして、その英雄の器は尋常ではないとくる。

(いつクーデタが起きてもおかしくない状況だな)

実際ナデシコの解散や、テンカワ・アキトの召喚はなんども議論された。

しかし、ヨシダはそれらの議題のは常に反対の立場を貫き通した。   

ナデシコを解散するとしてその後前線はどうなっしまうか?        

テンカワ・アキトを無理に召喚するとどのようなじたいなるか?

普通に想像すれば、だれもが想像できる。                  

もはや、ナデシコやテンカワ・アキト抜きで前線を支えられるか?

答えは、NOだ。

こんなことが解からないものなど政務次官たちにはいない。

だからといって、このまま放置をしてしまってもいい問題ではない。    

政治家に必要とされるに能力のひとつに危機管理がある。        

そしてその概念から今の危機を乗り越えるために将来の、災いをみのがしてよいのか?

古代ローマ共和国は、国内の矛盾や、対外問題を一気に解決するため、ユリウス・シーザーに強大な権力と

軍団を与えた。

フランス革命後のフランス政府は、諸外国の干渉や国内の政情不安や反革命運動を抑えるために、    

ナポレオン・ボナパルトに強大な権力を与えた。

ワイマール共和国時のドイツでは壊滅的な国内事情をどうにかする為に時の大統領ヒンテンブルグはその

危うさを承知しながら、アドルフ・ヒトラーを首相に任じた。

そしてヨーロッパ諸国は戦争を起こさないためとソ連の脅威のために、 ヒトラーを放置るだけでなく、

懐柔のためにヒトラー要求を呑み続けた。

その後それらはどうなったか?

シーザーはルビコン川をこえた。 

そして、共和制の崩壊が始まった。

ナポレオンはクーデタを起こし実権を握り、国民投票によって、皇帝になり、ヨーロッパに大戦乱を引き起こした。

ヒトラーは議会によって絶対的な権力を握りユダヤ人の大虐殺を行い、 

ヨーロッパの弱腰ぶりをついて、二次大戦を引き起こした。

このように政治家は安易な危機解決手段にたより、

将来起こるやも知れない事態に対して目を瞑ってはいけない。 

そして、軍隊が政府のコントールからはずれ軍閥化するのは、   

政治家にとって永遠の悪夢なのである。 

もしナデシコがこのことを拡大解釈したら、このことを一番憂慮しているのは、

連邦警察長官ジョセフ・フーバーである。

彼の危惧も一理あるのである。   

ナデシコのような存在は本来あってはならない。            

ナデシコは軍のコントロールほとんど受けてない。              

政府の制約から外れた存在。                         

いかなる罪も問うこと事ができなくなるかもしれない。            

そして、ナデシコにはそれを無理やり行うことのできる軍事能力がある。

そして最大の懸念はテンカワ・アキトが並外れた英雄だということである。

テンカワ・アキトは民衆にとてつもない人気を誇っている。         

もしテンカワ・アキトが殺人のような倫理的、道徳的以外の        

罪を犯したとしたら、民衆はそれを、容認するかもしれない。       

そう、かつてフランス国民がナポレオンを皇帝とし、ドイツ国民がヒトラーに絶対的な権力を与えたように。

それがどんな意味を持つのか考えもせずに。

そうこれこそが一番怖いのである。

あと、政治家たちがテンカワ・アキトに対して悪夢の想像をしてしまう原因のひとつに政治家たちは

テンカワ・アキトに会ったことがないというものがある。

まずテンカワ・アキトは大の権力者嫌いである。               

そのため、テンカワ・アキトは決して政治家などには会おうとしなかった。また現内閣は、戦時中だけに

強権的にならざるえず、アキトが好む要素がなっかた。

そうなると情報から判断するしかないがしかし、まったくと言っていいほどテンカワ・アキトの情報は手に入ら

なかったのである。           

 

(これは電子の妖精たちがテンカワ・アキトの情報シャットアウトしてしまったがためであるが)

 

そうなると政治家たちは少なすぎる情報から想像するしかないのである。

そして、想像はあらぬ悪循環を生むのである。

だからこそ、ピースランドでのできごとは絶好の機会だったのである。

フーバーも側近をピースランド送ったという。

(となるとフーバーもテンカワ・アキトがあの事実を知ってたということ知る ことになるな)    

あの事実は政府の最重要機密である。                    

ヨシダ自身、閣僚になってから初めて知った事実である。

(なぜ一パイロットがそのことを知っているのだろう)

そのことは、当然疑問でありこのことからテンカワ・アキトの危険度はさらにアップした。

(少なくともフーバーはそう判断するな)

しかしヨシダはテンカワ・アキトがあの事実を知っていたことをすでに知っていたのである。

これはテンカワ・アキトが西欧方面軍からナデシコに戻るとき、      

これを助けてほしいと、西欧方面軍総司令官グランシス・ハーテット中将からたのまれたときに。

ハーテット中将はヨシダを説得するためには、本当のことを話したほうがよいと判断したのだ。

そして、そのことを知ったときヨシダは戦慄した。

そのとき、ちょうど閣議でテンカワ・アキトについて話し合われていたのだ。

テンカワ・アキトの異常な戦闘力は政府が直々に管理すべきではないかと。

そして、その急先鋒がフーバーであった。                   

そして、ヨシダは管理論に行きかけた。

しかしヨシダはハ−テット中将から聞いたテンカワ・アキト個人の話しに心動かされた。

テンカワ・アキトには、長者の風があるとハーテット中将は言った。

テンカワ・アキトは戦争が大嫌いである。                   

基本的には多少女にだらしない、優しい青年である。            

しかし、自分の大切なものを守るためにはどんなことでもする。    

優しさと激しさ、炎と氷が同居していると。                  

権力欲はゼロである。                              

そしてハーテットは笑いながら初めてテンカワ・アキトと会った時の事を 話した。

ヨシダはこのことなどから要請に応じた。

なぜなら、閣議のことが実行されれば、テンカワ・アキトは無理やり連合軍の追撃を逃れナデシコに合流するか

も知れない。            

テンカワ・アキトにはそれだけ力がある。                   

それはナデシコ地球脱出事件の繰り返しであり、そんなことになれば政府の面目丸つぶれである。

そのような自体だけ、避けなければならなかった。

またヨシダはテンカワ・アキトという人物は、                 

こちらがよほどの馬鹿なことをしないぎり、もしくは追い詰めないかぎり、 決して反乱など起こさないと判断した。

そう判断するとヨシダはカジ首相を説得し、自分の同士達を説得した上で閣議でテンカワ・アキトの

ナデシコ復帰を実現した。

しかしこのピースランドの結果をフーバーが知ったとしたら、また閣議はこの問題でうるさくなるだろう。

 

しかし、テンカワ・アキトが反乱を起こす可能性は少ないとはいえゼロではないのである。

しかも今現在ではこの反乱はまず100%成功する。            

そのような存在を野放しにするわけにはいけないのである。

(とりあえず、しばらく間の様子見だな)

そう様子見。                                    

これしか今の政府の取るべき選択だろう。

(しかし、暴君は初めから暴君だったわけでわない。             

それも最初は明君、最後は暴君という例は歴史上多々あることだ)

そう、人の心をはかる物差しなど存在しない。                

人の心は一瞬にして変わるのである。

シーザーもナポレオンもヒトラーも最初から独裁者を目指していたわけではない。

最初はみな理想に燃える青年だったのである。               

しかしみな、権力の麻薬にあてられしまい権力の虜になってしまった。

(結局だれもテンカワ・アキトそうならないとは言い切るこはできないそう私も含めて) 

(いつか決断しなければならない時が来るかもしれない。          

決してやりたくないが、やらなければならない決断を)

そしてヨシダは心の中で苦笑した。    

(所詮政治家なんて、どたんばで行き当たりばったりの判断しかできない ないな)

これがある政治家の憂鬱な一日の一幕である。               

そう悲劇の選択を迫られるかもしれない政治家の。             

しかしその決断からヨシダは逃げるつもりはなかった。            

そしてそのことをヨシダは表情に出すことはなかった。 

 

 

 

あとがき      

どうも掲示板では自称カグヤ近衛隊総長を名乗っている槍です。     

初めてSSを書きました。                             

めちゃめちゃつかれました。                           

本来なら、名前通りカグヤ様のSSをかきたっかたのですが、       

ネタが浮かびませんせんでした。                        

そして書いたのが決して他のひとが書かないであろう、          

政治家ネタでした。                                

私のSSに出て来る政治家は、決して無能ではありません。        

むしろ有能です。                                 

だからこそ政治上のアキトの危険さゆえにアキトを警戒しているのです。 

しかし、初めてのSSだからな〜                         

うぐぅ〜、ツッコミが怖いよ〜                        

それでは槍でした〜

 

 

 

管理人の感想

 

 

槍さんからの初投稿です!!

なんと、政治家視点でのお話です!!

Benは政治関係には疎いで、この手の話はとても参考になりますね!!

でも確かに、ナデシコは危険な存在なんですよね〜

アキトの胸先三寸で、クーデターも可能とは・・・

そう考えると、怖い話ですね。

 

では、槍さん!! 投稿有難うございました!!

 

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