「正義と信念と感情」

 

(Aパート )

 

 

 

 

「まさかお前がここにくるとはな・・・・・」

 

その部屋には男と女がいた。

男は女に話しかけていた。

男は五十を少し超えたような年齢に見える。

女は二十代初めと言ったような年齢のように見える。

長い黒髪を持ったなかなかワイルドな美女である。

男は実に面白いという表情をし、女は無表情であった。

 

男の名はウィリアム・ウェンリーク。

 

女の名はマリア・ウェンリーク。

 

ファミリーネームと年齢差から解かるように二人は親子である。

しかし二人からあまり友好的な雰囲気は出ていない。

 

二人の間になにがあったのだろうか?

 

 

 

そしてもう一つ、ウィリアムには一つ異名があった。

 

 

そう"メディア王"と言う異名が・・・・・・・

 

 

 

「"あの事"をもうつかんでいるでしょうね・・・あんたなら。」

 

実の父親を"あんた"とゆうところにマリアのウィリアムに対する複雑な感情を窺い知ることができる。

 

「なんの事かな?」

 

シラバッくれるウィリアム。

 

「"彼"のことよ・・・・・」

 

ここで出た"彼"とは漆黒の戦神テンカワ・アキトである。

 

「ほ〜う"彼"の何をだ?」

 

「ごまかさないで・・・・」

 

組んだ腕を解こうせずに話すマリア。

 

「ふ〜〜。」

 

溜息をつくウィリアム。

 

「確かに"あの事件"の真相はある程度把握してる。

 "あの事件"に関しての政府発表が大嘘であるということぐらい

 ならとっくの昔にな・・・」

 

「その情報をどうするつもり・・・・・・・」

 

「さあどうしようか・・・・・・・」

 

そうして二人の間にまた沈黙が現れた。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

「お願い・・・・」

 

 

 

先に沈黙を破ったのはマリアが先であった。

 

とてつもなく小さな声で・・・・・

 

いつものマリアらしくなかった・・・・・

 

 

「何をだ・・・・」

 

無論ウィリアムはマリアの父親だ。

その声を聞き逃しはしなかった。

 

「その情報を・・・・・記事ににしないで・・・・・・」

 

マリアはやっとそれだけを言った。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

それに対してウィリアムは沈黙で返した。

 

「頼むわ・・・・・」

 

「いつもと言ってることが違うな、マリア・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そのことに関してはマリアはウィリアムに何も言い返せなかった。

 

「お前は、私のやり方に反発してきた。

 私の国情を考えて報道に手心を加えるやり方を・・・・。

 お前は、いつも私にこう言っていた。

 "ジャーナリストは常に真実を世間に伝えなければならない"

 と。」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

マリアとウィリアムは非常に仲が悪い。

その一つがウィリアムが報道に関してやや反則技を使っているからだ。

マスコミは常に反政府の立場を取らなくてはならないとマリアは考えていた。

マスコミが政府と迎合した時、それは悲劇を生む。

 

しかし、ウィリアムはマスコミ各社が反政府キャンペーンを敷いてる時に、

その論調に微妙に政府を弁護するところを入れているのである。

 

それが、マリアには気に喰わなかった。

それに、カジ内閣が成立後ウィリアムはどこか政府批判には消極的であった。

 

そして何よりもテンカワ・アキトに関して他のマスコミ各社がテンカワ・アキトをヨイショしているのに対して、

堂々とテンカワ・アキト批判を行っていたのである。

だが、それはよくある根拠のない中傷ではなく、

正しい政治的根拠によってアキト、及びナデシコの危険性を論じているのである。

 

(ナデシコの政治的危険性については私のSS「悲劇の温床」をみてください)

 

マリアもその危険性はわかるがアキトに関してはそんなことは絶対無いと確信していた。

 

 

だが、アキトはこの新聞を結構気に入っていた。

なぜなら、アキトは仲間に自分を倒せる手段を渡したように自分の政治的立場というものをよく理解していた。

だからこそ、マスコミ界にある自分をヨイショする風潮がいやであったのである。

 

しかしこの新聞だけは、テンカワ・アキトと言うものをできるだけ客観的とらえようとしており、

これを見るとまだ地球連邦に社会的理性が正しく作用していると安心できるからである。

 

たとえ、これによって自分が危機的状況に陥るかもしれないとしても・・・・・

 

だからこそ、妖精たちもこの新聞社を潰そうとはしなかった。

これがただのアキトの中傷するものであるならば、容赦しなかったであろうが、まともなこと言ってるのでやりようがかった。

 

それよりなにより、そんな事をすればアキト嫌われるだろうから・・

 

 

 

 

マリアが今までテンカワ・アキトを弁護し、記事をすっぱ抜いてきたのはアキトに対する想いだけではない。

 

(それでもそれが全体の9割を占めていたのも事実である。

 そのあたりから見ても彼女がナデシコでやって行ける逸材であることがいえよう)

 

 

それは父に反発し自分のジャーナリズムの正義に従ってきたというものでもあったのである。

テンカワ・アキトに関する彼女の行動は正に、反政府の立場を貫き、真実は人に伝えるというもにであった。

 

 

しかし・・・・・・・・

 

 

「お前の"正義"によれば、ジャーナリズムは常に真実を伝えなければならない。

 しかしおまえが今言ったことは、真実を隠すと言う事にほかならない。」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「何が、お前にそうさせた?。

 何がお前に正義と信念を捨てさせた。

 そして・・・・・・・何故私に頭を下げてまで頼む・・・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

きつく問い詰めるウィリアム。

実はウィリアムは迷っていたのだ。

先日ある人物から面会を申し込まれた。

 

その人物は、ロバート・クリムゾン。

 

そしてウィリアムはロバートに会ったのである。

そしてロバートは"あの事件"のかなり詳細な書類を見せてくれたのである。

それは驚愕に値するもであった。

なにしろエステバリス一機でコロニーを完全に消滅させたのだから驚くなと言うのが無理である。

 

いや、もはやテンカワ・アキト専用機ブローディアはエステとはいえないであろう。

 

そしてそれを作り出し乗りこなすテンカワ・アキトという存在は・・・・

 

そしてロバートは言った。

 

それは悪魔の囁きに等しかった。

 

「これは言わずと知れた大スクープです。

 また貴方が日ごろ言ってるテンカワ・アキト危険論をこれほど証明するものありません。

 今こそ民衆にテンカワ・アキトを恐ろしさを知らしめるべきなのでは。」

 

「何故貴方はそんな事を私に言うのか・・・・・・。」

 

「いや、テンカワ・アキトが邪魔なだけですよ。

 なにせ彼はネルガルに近い・・・イヤ、近すぎる。

 そんな人物にこれ以上英雄でいられては此方としてもはなはな都合が悪い。

 それに戦争もそろそろ終息に向かっている。

 となると戦時の英雄など平和時に無用、イヤ有害です。

 歴史を紐解け解かるでしょう。

 戦時の英雄が戦争が終わった後、どれだけ社会に害を及ぼしたか・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「だからこそ、私と手を組みませんか。

 テンカワ・アキトを危険視してる者同士。」

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

そうしてロバート・クリムゾンとウィリアム・ウェンリークと会談は終了した。

 

 

ウィリアムは迷った。

 

たしかにテンカワ・アキトを自分は危険な存在だと思っている。

しかし、テンカワ・アキト本人には何の罪もない。

それにその記事は社会への警告の意味をこめて書いていただけであって

テンカワ・アキトには何の恨みもなく、消そうとは考えていなかったのである。

 

もしこの事を公開するとどうなるか・・・・・・・

 

これは間違いなく大スクープである。

もしかすると歴史に名を残す事が出来るかもしれない。

 

それは、非常に魅力的である。

 

 

しかし・・・・・・

 

 

今まで民衆はテンカワ・アキトを英雄と見てきた。

まだチューリップを一機で落とすことですら十分非常識なのだが、

まだそれ落とせる戦艦(ナデシコとか)の存在もあり、現場を知らない人間からは驚かれはしたが、

驚愕と言うほどではなかった。

 

(此れはどれだけ後方が現場と離れていたかを表す証拠であろうが、

 これだって現場の人間から見れば十分常識はずれであるに違いない。)

 

大多数の戦争を知らない後方の民衆など推して計るべしであろう。

 

しかしこの事をこんなお気楽連中が知ったらどうなるか。

 

 

(魔女裁判が起きる可能性があるな・・・・・。

 かつてヒロイン、ジャンヌ・ダルクを火あぶりしたように)

 

 

ジャンヌ・ダルクが魔女裁判にかけられ火あぶりされたのは有名な歴史的事実である。

これは当時は中世から、近代へ過渡期と言える時期である。

それまで力を持っていたのは教会であった。

 

ローマ教皇インノケンティウス3世など

 

「教皇が太陽、国王は月のようなもの」

 

とまで豪語した程であった。

しかし、相次ぐ十字軍の失敗よる教皇の権威失墜、それに伴う東方貿易の発展などによる社会構造の変化・・・・

特に社会構造の変化などは教会にとって深刻なダメージである。

なぜなら東方貿易(地中海貿易ともいう)の発展は農業中心であった中世の社会に貨幣を中心とした、

商業主義の波が押し寄せてきたのである。

そうして、ローマカトリックが唱える精神主義や来世主義の考えが後退し、

物質主義や現世主義の考えを肯定され始めたのである。

 

まあ、農業中心で身分も固定され、人生の先が見えやすい世界ならば、

精神主義や来世主義も有効だろうが、身分の固定が緩み未来が予測しにくくなれば誰もが現世利益を求めるであろう。

 

そうこの時期は変化の時期であった。

時代の変遷と言うものえてして血を欲するものである。

そして変遷の時期は得てして不安定なじきである。

 

さらに、このころヨーロッパの人口の三分の一を死滅させたペストの大流行の時期であり、

社会不安はどうしようもない状況であった。

 

こうなると教会は自分の地位の不安から、民衆はペストや社会への不安から暴走し狂気に走ったそれが魔女裁判である。

 

魔女裁判というものは実は女性そのもの指したものではない。

悪魔と契約した者すべて指す言葉、それが魔女なのである。

更に魔女裁判で狙われた者の多くは商人関係(主には高利貸)などであった。

 

これは正に最悪の裁判である。

 

最早魔女かどうかなど関係ないのである。

まずカトリックでは物と物とを動かすだけで利益を得る商業というものを卑しいモノと見ていた。

更に金を貸して利益を得る高利貸など最低の職業だと言っているのである。

さらに商人が狙われたのは、商人は武力を持たないのに金持ちであり狙いやすく、

またルターの天職思想やカルバンの資本活動の肯定などもない状況では、

宗教的に彼らを弁護するのは難しかったのである。

 

更に高利貸は必要なのに卑しい職業なので、誰もなり手いないので結局、

異教徒であるが故に差別されまともな職に就けないユダヤ人がつく事になるのである。

当時のヨーロッパ人がユダヤ人をどう思っていたのかしるには、名著「ベニスの商人」を見れば良くわかる。

 

正に異教徒で高利貸。

 

魔女裁判の被告にはにはうってつけであった。

 

 

 

無論これらの連中を襲うのは財産狙いでもあるが(教会は権威の再確認の意味もある)しかし、

最大の目的は領主は集団ヒステリーの矛先をかわすためであり、民衆は安心する為であろう。

特にペストのような当時の人には正体不明のモノによって人が死んでいく様を見れば、

迷信深い当時の人が見れば悪魔の仕業と思ったとしても仕方がない。

 

しかしそれは

 

「不幸(ペストや戦乱)があった所に魔女がいた。」

 

から

 

「魔女がいる所に不幸がある。」

 

に変質してしまったのある。

 

 

 

話はジャンヌ・ダルクに戻すがジャンヌの戦功は正に空前絶後のものである。

 

しかし、当時は男女平等の思想はない。

なぜ、十代の農民の小娘がそんなことが可能なのかと。

ジャンヌは神のお告げあったと言うが、もしかしたら悪魔が乗り移っているのではと考え始めて不思議ではない。

 

フランス国王がジャンヌが捕らえられた時、それは単純なジャンヌ対する嫉妬などではなく、

人外の者に対する恐れがあったとすら言われているのだ。

更にジャンヌを処刑したイギリス。

なぜジャンヌわ火あぶりにしたのか?

そんな事をすればフランス軍の士気が上がりとんでもないことになると予想できなかったのか?

 

イヤ、ジャンヌ戦闘指揮能力を恐れたならわざわざ殺す必要はない、むしろ人質と利用する方法を模索しなかったのか?

 

恐らくイギリスはジャンヌを人間と見ず、悪魔と契約を交わした化け物と見てしまい、

理性的な判断能力を失ってしまったのかもしれない。

 

 

 

 

この事をテンカワ・アキト合わせてみたら・・・・

 

もし、"あの事件"を公表しても民衆はテンカワ・アキトを英雄と認めるであろうか?

それは難しいであろう。

少なくとも人間の想像限界を超えた今となっては・・・・・

それどころか、人外の化け物と見てしまう可能性すらある。

そしてどうなるか?

 

もしテンカワ・アキトが民衆より異端の存在だと認識されれば、最早悲惨の一言であろう。

テンカワ・アキトが社会より、人権すら認められない仕打ちを受けても仕方がないと見るだろう。

 

そう人間ではないのだから・・・・・・・と。

 

もしマスコミがテンカワ・アキトのネガティブキャンペーンをやればテンカワ・アキトを社会的に抹殺できるかもしれない。

 

無論それには伝説のナチスの宣伝相ゲッペルス並みの手腕が必要ではあるが。

今マスコミ界でそれが出来るのが恐らくウィリアムであろう。

だからこそ、ロバート・クリムゾンはウィリアムに手を組もうと言ってきたのである。

 

テンカワ・アキトをそしてマリアもその情報をつかんで、会いたくない父親に会いに来たのである。

 

 

 

「たいした理由なんてないわ。

 ただ、見てみたいのテンカワが作る未来を・・・・・」

 

「未来を?」

 

「彼は何かとんでもない事を考えてる気がする。

 こう言っちゃ何だけど彼の周りでは数多くの悲劇が起きたわ・・。

 そして彼は英雄でありながら普通の人間。」

 

 「普通の!!」

 

ウィリアムは驚いた!

自分の娘はあの常識はずれの英雄は普通と言ったのである。

 

「そう、普通・・・・・・

 彼と同じ世代の子と同じように彼も泣いて、笑って、騒いで、喜んで、そう正に普段の彼は普通の人。

 でも、それはあえて普通になろうとしてるな気がする。」

 

「あえて普通になろうとしている・・・・・。」

 

「一言で言えば私たちの方こそ異常なのかもしれない。

 戦場で人が死ぬ事が、人が犠牲になることが当たり前でと思ってしまう事が。

 無論、それが奇麗事だということは百も承知してる。

 実際、人が誰も死なないなんて戦場ではあり得ない。

 私も戦場カメラマンをやってるけど、どうしても戦場にいると人の死に対して鈍感になってしまう・・・・・。

 戦場カメラマンですらそうなんだから、軍人なんてね・・・・。

 でも、彼はその現実を拒否してる。

 別に彼は人を殺すと言う事を、拒否してるわけじゃない。

 人が死んで当たり前というものを拒否してるだけ。

 だからこそ彼は軍人にはならない。

 だからこそ彼は・・テンカワは普通でいたがっている。

 軍人の普通になんてなりたくないから。

 闘うマシーンになりたくないから・・・・・。

 そんな彼が夢見る未来を見てみたい・・・・・。」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「やめ、やめ!」

 

「!!」

 

「理屈なんてつけたってしょうがないわ。

 私はテンカワ・アキトに惚れた。

 そうあの儚いまでに美しい戦いっぷりに。

 あの黒い瞳に、あの優しい笑顔に。

 そう私が私のジャーナリズムの正義を捨てたのも単に彼に惚れたから、理性よりも感情を優先させただけ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

「ただそれだけよ。」

 

 

 

「フフフフフ・・・・・・・」

 

 

「???」

 

「わはははははは!!!!!!!」

 

「!!」

 

突然大笑いするウィリアム。

それに怪訝な表情をするマリア。

 

「ははははははは・・・・・・・・・

 フゥ〜。

 解かった帰れ。」

 

「!!!!」

 

「久しぶりに大笑いさせてもらったよ。

 その礼はちゃんとしよう。」

 

「じゃあ・・・・・・」

 

「そう言うことだ。」

 

「解かったわ・・・・・・」

 

そうして部屋を出て行くマリア。

そして小さく一言いった。

 

「ありがとう・・・・。」

 

 

無論ウィリアムその声を聞き逃さなかった。

 

 

「ありがとうか・・・・・・・・

 アイツからその言葉を聞いたのは何年ぶりかな・・・・」

 

 

マリアが出て行ったドアを見ながらウィリアムはそうつぶやいた。

 

 

 

 

マリアとウィリアムは別に昔から仲が悪かったわけではない。

ただマリアはとても出来た子で決して父親に甘えようとはしなかった。

それは父を尊敬しており、父の迷惑になりたくなかったからである。

 

 

しかし、それが狂ったのはマリアの母の死であった。

 

 

母はウィリアムの最高のパートナーであった。

どんな時でもウィリアムを支え続けた。

どんなきつい仕事でもいやな顔一つせず全てをウィリアム優先させてそれで、家庭を保っていたのである。

しかし、それが悲劇を生んだ。

ウィリアムの大転機が来た時である。

まさにこれから羽ばたこう言う時に、マリアの母アリアは病気になってしまった。

それは別に入院してしばらく静養すれば回復するような軽いものであった。

しかし、そのチャンスは二度とこないようなビッグチャンスであり、

ウィリアムはりきっており、そのようなビッグプロジェクトのはアリアは必要不可欠であった。

そのためアリアは病気を隠し、そのプロジェクトに加わった。

そして、いつも通りウィリアムはアリアに大量の仕事をまかせた。

しかし、それは病魔に侵され始めていたアリアの体にはものすごい苦痛であった。

さらに今までにないビッグプロジェクトであるが故にいつもよりもきつい仕事でありさらにアリアの体を蝕んだのであった。

 

そして、プロジェクトに目処が立った頃アリアは疲れたし、目処もたったから先に帰ってちょっと骨休みしたいといった。

 

ウィリアムもかなりキツイ仕事だったから許可した。

ウィリアムもこれで仕事は一つの節目を越えたから、次への療養を兼ねて今度、家族で旅行しよといった。

それに対してアリアは良いわね、と言った。

 

しかしアリアは気づいていた。

自分の体がどうしようも位に病魔に蝕まれていた言う事を。

 

そして、二人は笑顔で別れた。

希望で満ち溢れたウィリアムは気づかなかった。

それが夫婦の今生の別れであるということを・・・・・

 

 

 

 

 

 

(Bパートに続く)