<あの刻、あの場所で>




その後、海に沈んだヤマダさんの代わりにアキトさんが出撃

戦闘はナデシコがチューリップの入り口に頭を突っ込み、グラビティ・ブラストの一撃で決着はつきました

因みにヤマダさんは海に落ちた衝撃で骨折しました

ほんと、バカですね

そんなこんなでナデシコは宇宙に向けて発進です

勿論、アオイさんは置き去りですけど





六章 『行くぜ!心友!!』






ドオォォォ……


ナデシコのディストーション・フィールドにまたミサイルが着弾し艦が少し揺れる


「第4次防衛ライン突破しました。」


次は第3ラインか…確かそこには…


「来ますね、アオイさん。」


ルリちゃんが小声で話し掛けてくる


「そうだね。でも俺って説得とか苦手だから大丈夫かな?」


「アキトさんならきっと大丈夫ですよ!

でも、アオイさんもあきらめがわるいですね。

徹底的に振られないと解からないんですかね?」


ははは、キツイな…ルリちゃん(汗)

等と話をしていると突然ユリカが割って入ってきた


「ア・キ・ト!ぶ〜う、ルリちゃんとばっかりお話して、私ともお話しようよ!」


しかし、何処の世界でも変わらないな、ユリカだけは…

それとも変わらないって言うより成長が無いと言うべきなんだろうか?


「ねえねえ、アキトってナデシコに乗る前は何してたの?」


「……別に、ホウメイさんの食堂で働いてただけだよ。」


ユリカのことは吹っ切ったとは言えまだまともに顔を合わすのは

……辛いな…ふっ…つくづく弱いな…俺は…

この『ユリカ』はかつて俺が愛した『ユリカ』ではないのに……


「じゃあさっきルリちゃんと何はなしてたの?ユリカにも教えて♪」


「プライバシーの侵害ですよ。ユリカさん。」


「いいじゃない♪アキトはユリカの王様なんだし♪」


「ユリカさん…何度も言うようですがアキトさんは

私とラピスの騎士であってユリカさんの王子様ではありません!」


「そんなこと無いよ!アキトは私の王子様!!

ねっ!アキト!」


ユリカの言葉に苦笑する俺…どうやって切り抜けようか?(汗)

さりげなくミナトさんに助けを求めるが……ダメだ……完全に状況を楽しんでる(涙)

どうする俺!?ユリカの言葉を否定すれば……延々と追い掛け回されるな(汗)

かと言ってユリカの言葉に頷けば……

死ぬかもしれん(滝汗)

………………………逃げるしかないか?

そう思い逃げの体勢に入る俺、だが…


「アキトさん、逃げたら後でお仕置きですよ♪」


ルリちゃんの俺の心を見透かすかのような一言で敢無く撃沈した(涙)


「さあ、アキトさん。はっきり言ってください!」


「アキトはユリカの王子様だよね!!」


その時


<敵機確認、第3防衛ラインに突入と同時に敵機デルフィニウムを確認、

数分後、交戦領域に突入します>


オモイカネが俺たちに知らせた

ありがとう!オモイカネ、ジュン!君たちは命の恩人だ!!


「ディストーション・フィールドがあるから大丈夫です!それより…」


「無理です。今のフィールド出力では防ぎきれません。」


「艦長、エステバリスが一機、発進しようとしてます!」


「えっ!?」×ブリッジ


一人って………まさか、ガイ!?

勝手に出撃できないように医療室にセイヤさんから借りた

ガン○ニュウム合金製の鎖で縛り付けていたはずなのに?


『お〜い、アキト、早く格納庫に来てくれ。あのバカ一人で出て行きやがった!』


通信でそう言ってくるセイヤさん、あんた止めなかったんですか?


「…という訳だから、とりあえず行ってくるよ。」


「わかりました。許可します、アキト無茶しないでね?」


それはあのバカに言ってくれ!

それから数分遅れて俺はナデシコを発進した










『ガイ!スーパーナッパー!!』


無駄にでかい声と同時に確認できたのはガイの戦っている姿

一応、ちゃんと戦えるみたいだな?

どうしてこいつは接近戦ばかり仕掛けるんだ?一対多数じゃすぐに囲まれてお終い……

ってもう囲まれてるし…


『アキト!何してるんだ!親友のピンチだぞ!速く助けろ〜!』


……本当にコイツは一流の人材なのか?プロスさんの眼を疑う訳じゃないが……

だんだん信じられなくなってきたぞ?

ジュンの前にガイを説得するか…それでもダメなようなら

いっそこの場で……(ニヤリ)


『アキトさん、何か危ないこと考えてませんか?』


「……気のせいだよ。ルリちゃん。」


『……が気になりますけど…山田さんを説得する気ですか?』


流石ルリちゃん、解かってる


「まあ、ガイも少しはまともに戦ってもらわないとね。」


ガイの回りのデルフィニウムを数機、墜しながら言う


「なあ、ガイ?どうしてお前はそう必殺技ばかりで敵を倒そうとするんだ?」


『決まっているだろう!ヒーローといえば必殺技で敵を倒すのが当たり前

いや、大宇宙の摂理だろう!?』


「…それが間違いなんだよ。いいかガイ、必殺技というのは元来、とどめの一撃や

絶体絶命のピンチになった時の使うものなんだよ。

ゲキガンガーを見てみろ、 彼らはザコなんかには必殺技を使わないだろう?」


『……ッッッ!!??』


「ハッキリ言って、必殺技を連発しているようじゃザコと変わらないぞ?」


『うぉぉぉ!そうか、そうだったのか!

ありがとうアキト!よくぞ俺に間違いを教えてくれた!!

俺は知らず知らずのうちに必殺技というものを汚していたのかぁぁぁ!!』




自分でも良く解からん説得だったが…結果オーライか?



『ありがとうアキト!それでこそ俺の真の友、親友だ!!

いや!これからは『心』の友と書いて
『心友』と呼ばしてくれ!!』


「あ、ああ、好きにすればいいけど…。」


『よし!行くぜ!心友!!』


何とかガイの説得に成功?した俺は戦闘を再開した










『ユリカ!今ならまだ間に合う!ナデシコを戻すんだ!』


「ごめん、ジュン君。ここが、私も居場所なの…。

ミスマル家の長女でもなく、お父様の娘でもない、

私が、私らしくいられる場所なの!」


『…そうか。ユリカの決心が変わらないなら…』


「解かってくれたのね!ジュン君!」


『あの二人を……』


『邪魔だ〜!!』


チュド〜〜〜ン


ガイの攻撃で実にアッサリと墜されるジュン

どうやらガイの目から見てジュンは完全にザコの様だ(汗)

………説得の仕方がまずかったか?


『くっ、やるな!テンカワ・アキト!』


今のは俺じゃないんだが…


『…隊長、今、テンカワ・アキトって言いませんでしたか?』


『ああ、それがどうかしたか?』


『まさか、あのネルガル重工のテンカワ・アキトですか!?

地球圏最強のパイロットと呼ばれてる男ですよ!?

我々だけでは絶対に敵いません!撤退しましょう!』


結構、俺って有名なんだな

確かにテストパイロットとして軍の連中と何度か訓練とかしたけど…

こんなに有名になっているとは…気に入らない連中を

問答無用で叩き潰したのがマズかったのか?


『…くっ、テンカワ・アキト!僕と一騎打ちで勝負しろ!』


ジュン…半壊したデルフィニウムでそう言われてもなぁ…


『隊長!無茶です!勝てるわけありません!』


『五月蝿い!お前たちはステーションに戻ってろ!

もうすぐ第2防衛ラインだ!ミサイルも雨がくるぞ!!!』


『りょ、了解しました!!!』


そう言って、ジュンを残して全員が去っていった


『僕の人望なんてこんなもんさ…』


改めて現実に絶望したのかジュンが呟く


『ジュン、お前は何の為にここに来た?ユリカのためか?それとも、軍の掲げる正義のためか?』


『どっちもだ…僕は正義の味方になりたかったんだ…その正義の象徴とも言える

連邦宇宙軍も全てが正義ではなかった…。それに、ここで逃せばユリカに、ナデシコに帰る場所が……』


『あ、そのことなら心配するなよ。ネルガルが上手くやってくれるから。

それよりジュン、今ナデシコは人材不足でなぁ…特に、艦長を補佐する人材が…な。』


『僕を必要としてくれるのか?こんな僕を?』


『うん、私にはジュン君が必要だよ!』


聞いてたのか?ユリカ?


『ユ、ユリカァ…』


涙目で喜ぶジュン


『アキトさん、第2防衛ラインに入りました。もうすぐミサイルが来ます!』


ちっ、来たか!

「ガイ!ジュンを連れてナデシコにもどれ!」


『なっ!アキト、どうするつもりだ!』


「ルリちゃん!俺はミサイルを落としつつ回避行動をとる!

ラピスはサポートを頼む!」


『解かりました、気をつけてくださいね?アキトさん!』


『任せて、アキト!』


『そ、そんなの無理だよアキト!死んじゃうよ!』


まあ、『普通』なら死ぬかな?


『テンカワ君、死ぬんじゃないわよ』


ムネタケ…もとい、シイタケが俺に言葉をかける

こいつ、本当にまともになったんだな


『テンカワ(君)、こんな時こそ我が神の加護を受けしこの……ブチッ』


前言撤回、人間的にはまともになったようだが、

ゴートさん共々、以前より危険な人間になってしまった様だ(汗)


「安心しろ!俺はこんなことぐらいじゃ死なないさ!」


そう告げて俺はミサイルの方へとサレナを向かわせる

そう、こんなことぐらいで死んでる暇はないんだ!!










来たか、数えるのもバカらしくなってくるようなミサイルの数

昔の俺なら恐怖しか感じなかっただろう…

でも今の俺にはこのミサイルさえ止まっているように見える

俺はミサイルをライフルでピンポイントで叩き落し

落としきれなかったものを素手で叩き落す!

復讐の為に手に入れた力……今度は護る為に使ってみせる!!










「第二防衛ライン突破しました…」


「メグミちゃん、通信は…?」


「テンカワ機、応答ありません…」


「アキト、嘘、嘘だよね…」


「僕のせいだ!僕が意地を張ったばかりに…」


「くそっ!アキト!死んじまってどうすんだよ!!」


「「テンカワ(君)、ラグナロクで逢おうぞ!!」」


「…ルリちゃん、ラピスちゃん、どうして平気なの!?アキトが死んじゃって平気なの!?」


「信じてますから!」


「えっ!?」


「アキトは約束を破らないから、心配しなくてもいいんだよ?」


「「おかえりなさい、アキト(さん)」」


『ただいま、二人とも。』


「!?アキト!!、無事だったの!?」


『当たり前だろ?そう皆と約束したんだからな!』











その後、俺はナデシコに戻り、皆から熱烈な歓迎を受けた

整備班の人からは、「心配させやがって〜」と、殴る蹴るし

ラピスやユリカは跳び付いて来るし大変だった…

俺はこんなことでは死にはしないさ、

護りたい人がいるから、傍にいたい人がいるから…









つづく













あとがき

ガイ、パワーアップ!(笑)