<あの刻、あの場所で>


一話 『もう一度、あの刻へ』


「ナデシコC…ルリちゃんか…?」


火星の後継者の反乱から半年、ナデシコの皆の前から姿を消した

俺は、ユーチャリスを駆りその残党狩りを行っていた

ブラックサレナを操り、火星の後継者の残党を叩き潰していく…

それがここ半年での日課だった

そして今回の戦闘で敵をあらかた片付けたその時

俺はナデシコCにルリちゃんに出くわした…


『アキトさん、帰って来てください。貴方が戦う必要はもう無いんです!!』


ルリちゃんが俺に通信を入れてくる


「行った筈だ…『君の知っているテンカワ・アキトは死んだ』と…

ここに居るのは唯の血に塗れた殺人鬼だ…もう俺に関わるのは止めろ…。」


『なにバカなこと言ってやがる!さっさと帰って来いって行ってんだよ!!』


リョーコちゃんが俺に大声で怒鳴る

帰って来い?今更、そんな事できるはずが無い…


「何度も言わせるな…俺は戻るつもりは無い。」


『なら…力尽くで連れ戻すまでだ!!』


そう言ってナデシコCから四機のエステバリスが飛び出してくる

火星での決戦の時、六連を相手にしたパイロットたちだ


「面白い…出来るものならやってみろ!」









『くそっ!何で勝てねぇんだよ!?』


「ラピス、ジャンプフィールド展開…。」


ナデシコのパイロットたちとの戦闘、それに俺は勝利した

俺はここでまだ捕まる訳にはいかないんだよ

ジャンプフィールドの展開を始めイメージを始めたその時

予想もしないことが起こった


『そうは…させません!!』


ズガァァァン!!


一体のエステバリスが物凄い速度で俺のブラックサレナにぶつかって来た


「くっ、このエステ…まさか、ルリちゃん!?」


『アキトさん…逃がしません!!』


ルリちゃんのエステバリスの体当たりの衝撃で

俺のサレナとルリちゃんのエステはユーチャリスに激突した

そして…


『アキト、ブラックサレナのジャンプフィールド発生装置が暴走してる!』


ラピスが慌てて俺に告げる

ジャンプフィールド発生装置の暴走だと!?


「ラピス、フィールド解除だ!!」


『ダメ!解除を受け付けないよ!!』


火星の後継者の反乱鎮圧後、俺はネルガルのドッグにも寄らず

ひたすら残党狩りを続けていたサレナには相当ガタが来ていたらしい

そう、何時壊れてもおかしくないほどに…

くそっ!このままじゃ…!!


「ルリちゃん、聞こえているだろう!?

今すぐ離れるんだ!ランダムジャンプに巻き込まれるぞ!!

ラピスも今すぐユーチャリスを離すんだ!!」


『嫌です!やっと…やっと逢えたのに…もう離れ離れは絶対に嫌です!!』


『ヤダ!私はアキトとずっと一緒に居る!!』


<ジャンプ開始、5秒前…4…3…>


サレナのシステムが俺に告げる


「くそっっっ!!間に合わな…!!」


<…2…1、ジャンプ開始>


「うわぁぁぁ!!」


カウントダウンの終了と共に虹色の光が俺たちを包み

俺たちの姿は光の中へと消え去った









風を…頬に感じる

これは…草木の匂い?もう忘れたと思っていたのに…

俺の意識は徐々にハッキリしてきた


「ここは…地球!?」


空に浮かぶ月と星々を見上げながら俺は呟いた


「空が…月が、星が見える!?」


視覚が戻っている!?

それだけではなく嗅覚も!?

馬鹿な…夢じゃないのか!?


「とりあえず…場所を確かめないと…」


俺は持っていた携帯端末を操作し現在位置を調べた


「2195年8月21日、ここは日本のサセボ?」


どうして俺はサセボなんかに跳んだんだ?

……ん?2195年………………?


「なにぃ!?」


ナデシコ出航の一年前だと!?

…戻ってきたのか?俺は?

俺の心の奥底にいつも有った、たった一つの願い…

叶うはずが無い、叶う事など有り得ない、願い

『もう一度、あの刻へ』

幸せだった、あの時に…


「はは…あはははは!」


やり直せるのか?もう一度?

これは運命?それとも偶然?そんな事どうでもいい

俺はチャンスを手に入れた、

もう一度、やり直すチャンスを!

ならば…同じ過ちを繰り返すわけにはいかない!

今度こそ、皆を救ってみせる!

大切な人たちを護ってみせる!!


ここから俺の『過去』を変える戦いが始まった

初めの問題は、戦闘服でなく『普通の服を探す事から』だったが…(汗)





つづく