<あの刻、あの場所で>



やり直せるのか?もう一度?

これは運命?それとも偶然?そんな事どうでもいい

俺はチャンスを手に入れた、

もう一度、やり直すチャンスを!

ならば…同じ過ちを繰り返すわけにはいかない!

今度こそ、皆を救ってみせる!

大切な人たちを護ってみせる!!


ここから俺の『過去』を変える戦いが始まった

初めの問題は、戦闘服でなく『普通の服を探す事から』だったが…(汗)


二章 『ずっと私の傍に…』




『もしもし、愛の伝道師、アカツキ・ナガレだ。』


はぁ、相変わらずだな、コイツは…

『過去』を変える決心をした俺はネルガルにアカツキに協力を頼む事にした

クリムゾンと木連の繋がりを断つことは出来ないだろう

だがその繋がりを弱める事なら出来る


「ネルガル会長のアカツキ・ナガレだな?取引をしたい。」


『取引?突然だね、そもそもどうやって僕の

プライベートコールのナンバーを調べたんだい?』


「…企業秘密だ。」


『まあいいや、で、取引の内容は?』


今までの軽い口調とはうって変わりネルガルの会長としての口調になる


「ボソンジャンプ……。」


『なっ!?』


「今、言えるのはそれだけだ。で、どうするんだ?」


『今すぐ迎えを向かわせるよ。現在位置を…』


「その必要は無い、今からこちらから出向く。」


『えっ!?』


俺はアカツキにそう言い終えると会長室をイメージし

ボソンジョンプの体勢に入る

光が俺を包み込み俺の姿はその場から消え去った









徐々に視界が晴れていき俺の目の前に映ったのは

『未来』とあまり変化の無い会長室と

デスクに座るアカツキ、その横に立つプロスさんだった

二人とも平静を装ってはいるがかなり動揺しているのが解かる

まあ、今、自分達が研究している生体ボソンジャンプを

目の前で見せられたのだから当然だろう


「はじめまして…と言うべきかな?俺はテンカワ・アキト、

ネルガルの火星の研究所で働いていて前の会長達に謀殺された

テンカワ夫妻の息子だよ。」


「テンカワ夫妻の!?生きてらっしゃったんですか?」


「あっ、安心してください。別に復讐なんて考えてる訳じゃないですから。

それより取引の話がしたいんだがいいか?」


「あ、ああ、頼むよ。」


「簡単に言う。俺のする事に協力してもらいたい。」


「キミのする事?一体何をする気なんだい?」


「木連との和平。」


俺は短く言い放つ


「なっ!?一体何処でそのことを!?」


「知りたいか?知りたいなら教えてやる。だが、この話を聞けばもう

後戻りは出来ない。絶対に俺に協力してもらうぞ?

まあ、協力すればネルガルの上げる利益は保証するがな。」


俺のその言葉にアカツキは少し考えて答えた


「…いいだろう、教えてくれ。君が何処でその情報を手に入れたかを…ね。」


「解かった。俺は…ボソンジャンプの事故で『未来』からやって来た。」


予想外だったんであろう、俺のその言葉に唖然とする二人


「ボソンジャンプで?ボソンジャンプは空間移動の技術じゃないのかい?」


「正確には空間移動ではなく、時間移動だ。

だが、狙って過去や未来にいけるわけじゃない。

その事を踏まえて俺の要求を聞いてくれ。

一つは俺をナデシコに乗せてほしい。

二つ目はさっきも言ったが木連との和平に協力してもらうこと。

三つ目はネルガルが行っている非人道的な実験を止めさせること。

この三つは最優先でして貰いたい。」


「一つ目と二つ目は解かった。でも三つ目は僕は知らないが…?」


やっぱり知らなかったか…


「各研究所の独断だよ。自分たちの研究心を満たす為だけのな!」


言葉に殺気が篭る

アカツキは関係ない、それは解かってはいるが

この怒りだけは抑える事が出来ない!


「解かったよ。君の言う通りにしよう。

で、それに協力する事によっての僕たちの見返りはなんだい?」


やっぱりきたか


「そうだな…まずは俺の持つボソンジャンプと機動兵器の情報だ。

少なくとも今から、五、六年先の情報だ。

重工関係はネルガルが独占できるようになるだろう。

ボソンジャンプについては今から話す事を聞いてから考えてくれ。」


そして、俺は話し始めた

これから先に起こり得る事を、ボソンジャンプが生み出した悲劇を…

火星の後継者のこと、そして…俺のしてきた事など、全てを…


「アカツキ、今ネルガルで逢いたい人物が居るんだが…何処にいるか解かるか?」


「逢いたい人物?誰だい?」


「『ヒューマン・インターフェース・プロジェクト』のAAA被験者

ホシノ・ルリだ。」


「どうしてだい?」


「俺がこの時代に来ているならもしかしたら彼女も来ているかもしれないからだ。」


「…解かったよ。恐らくこの研究所に居るはずだ。

僕が連絡しとくから迎えにいってやってくれ。」


「すまん。世話をかけるな、アカツキ。」


「気にしないでくれ。持ちつ持たれつ仲良くいこうよ。」


「ありがとう。」


その言葉を残し俺は会長室から消え去った


「…プロス君、どう思った?さっきのテンカワ君の話を聞いて…?」


「火星の後継者…ですか?とても人間とは思えない所業ですな。

彼らの話を聞いてるときは流石に胸糞悪くなりましたよ。

…おっと、失礼いたしました。」


「僕もだよ。正直、初めは信じられなかったけど彼の話をしている時の

眼を見てこの話は事実なんだと思ったよ。

その仕打ちを受けた者にしか解からない、痛み、口惜しさ、憤怒、憎悪…

それらが彼からヒシヒシと伝わってきた。

…プロス君、ネルガルはテンカワ君を全面支援で行くよ。

手配を頼む。」


「お任せ下さい。」


二人の会話は続いていた









「ル、ルリちゃんなのか?」


俺は驚いた

研究所に着いた俺の目の前にはナデシコ乗船時の

ルリちゃんではなく、成長した十六歳の姿で居たからだ

俺は若返ってるのに…何故?


「はい、連合宇宙軍少佐ナデシコC艦長、ホシノ・ルリです。

アキトさんもやっぱりここに跳ばされて来てたんですね。

待ってて正解でした。」


「待っていた?俺がここに来ている、来ていてもくる確証も無いのにかい?」


「『私に知っている』アキトさんなら必ず来てくれると思ってましたから。」


『私に知っている』…か、その俺は死んだと思っていたのにな


「もし、俺がこなかったらどうしてたんだい?」


「そうですね…アキトさんの居ない世界に私は興味ありませんから

自殺でもしてたでしょうね。私にとっての『アキトさん』は

貴方だけです。例えこの世界にもう一人の『アキトさん』が居ても

私にとってそれは『アキトさん』ではありません。」


「ルリちゃん!?」


ルリちゃんは一通り話し終わると俺に抱きついてきた

震えている…?


「アキトさん、私、大きくなったでしょう?

貴方の隣に立てるぐらい、貴方を支える事が出来るぐらいに…。

傍に居てください、ずっと私の傍に…。

私の幸せはアキトさんの傍に居る事です。」


ルリちゃん…この娘は俺を追って来てくれた

両手が血に塗れ、唯の殺人鬼になった俺を

刻を超えてまで…

いいのか?俺が傍に居ても君は幸せなのか?


「ルリちゃん…解かった。誓うよ、俺は君を護る。

君と共に在り、ずっと君の傍に居る。」


一度は護れなかった誓い…だが、今度こそ護ってみせる!

俺の大切な人たちを、家族を、

たとえ、この俺の全てを賭けても!!










そして一年後


「着きましたよ。ラピス。」


「これが『ナデシコ』…アキトの思い出の場所…。」


サセボのドッグでネルガルの新造戦艦ナデシコを見上げる

二人の少女の姿があった





つづく