機動戦士ガンダム0153 〜翡翠の翼〜
まえがき
この作品はサンライズ製作。富野由悠季原作。1993年に放映された「機動戦士Vガンダム」の二次創作とし
てかかれたものです。基本的には原作準拠で描いていますが、一部この作品にあわせて原作の設定を変更して
います。
主な変更点は、まず。V−MSVを知る人ならばすぐに突っ込まれると思いますが、ガンイージはV−MS
Vによるとプロトタイプが二機製作され、そのうち一機がテストパイロットをしていたシュラク隊のジュンコ
・ジェンコの愛機となり、初期生産型である三号機から八号機までの全部で七機のガンイージが地球に降下し、
活動したとあります。
その後、ガンイージは若干の改装を施された九号機から十五号機までが製作され、その後ガンブラスターが
開発、実戦投入という流れになります。なので、原作に完全準拠してしまうとこの作品の根本が成り立たなく
なってしまうので、初期生産型のガンイージを大幅に増やすという荒業に踏み切った次第なのです。なので、
熱心なVガンダムのファンの皆様。どうかこのあたりで突っ込むのはやめてください。お願いします。
続いて、セッターが宇宙でも利用できる、という設定にしていますが、それに関してもセッターは重力下に
おけるサブフライトシステムだといわれる方もいるでしょう。正直、ベース・ジャバーにしようかとも思った
のですが、なるべくVのマシンに限定したいと思い、こちらにしました。
あと、途中。バグレ隊に関する記述も若干こちらで修正させていただいており、その辺も突っ込まないでい
てくれるとありがたいなー、と思っております。
あと、かなり場違いな意見かもしれませんが、この作品を読んで興味を持ったなら、ぜひ「機動戦士Vガン
ダム」を見ていただけたらうれしいな、と思います。内容が内容なので嫌悪する人も多い作品ですが、個人的
にはリアルタイムで見た初めての「ガンダム」ということもありとても好きな作品なので(でもバイク戦艦は
勘弁して)多くの人に興味を持っていただけるとうれしく思いますので。
あと、UCガンダムに詳しくない、という人のために簡単な用語集を乗せておきますので一度目を通してお
くと読みやすくなるのではないかな、と思います。
用語集
ミノフスキー粒子
ミンフスキー博士が発見したため、この名がついた。その特性は静止質量がほとんどゼロで+または−の電
荷を持ちその静電入力とミノフスキー粒子間に働く相互転換作用のバランスによって結晶化する。
この粒子の存在の仮定により、アインシュタインが統一場理論で部分的にしか解明できなかった四つの力と
空間を別のものではなく、同一のものとして扱うという命題はほぼ解決された。
そしてこのミノフスキー粒子によって遠距離電波通信や、電波誘導が不可能となり、さらに電子機器等にも
誤作動を引き起こす作用をもつ。そのせいで宇宙世紀ではレーダーや誘導兵器が使えず、結果として宇宙空間
における有視界戦闘の必要性が生じ、モビルスーツという兵器が出現することになる。
なお、宇宙世紀のモビルスーツなどに積まれている小型の核融合エンジンはこのミノフスキー粒子の特性を
利用することで形成される力場にヘリウム3を閉じ込め、正負のどちらかの電荷持つという性質からきわめて核
融合反応を簡易に形成できるようになった。そのおかげで、モビルスーツという兵器が実用化できたといえる
だろう。
Iフィールド
ミノフスキー粒子を利用して形成される力場の一種でIはミノフスキー・イネスコ博士のイニシャルのM・
Iからとっているといわれている。その性質は基本的にミノフスキー粒子を閉じ込める作用があり、その作用
を利用してメガ粒子を作成したり、それを誘導してビーム兵器を実用化させることが出来た。
そして、Iフィールドのミノフスキー粒子を閉じ込める、という作用を利用して、それを逆にミノフスキー
粒子を弾くという形で利用したのがIフィールドジェネレーター。いわゆるビームバリヤーとして使用される
のである。
メガ粒子砲
ミノフスキー物理学を応用して生み出された荷電粒子兵器をこう呼称する。
メガ粒子、とは、ミノフスキー粒子を高電圧をかけて縮退させて生み出す荷電粒子のことをさす。それをI
フィールドを用いることで誘導、加速して撃ちだすのがメガ粒子砲で、一般のビームライフルなどはこれをさ
す。
なお、このメガ粒子砲は二種類の運用方法があり、一つはモビルスーツのビームライフルなどに用いられる
ビームCAPと呼ばれる方式である。これはIフィールドでメガ粒子を縮退寸前にまで押し込めて保存し、そ
れをエネルギーパックに保存して必要に応じて開放してメガ粒子砲として撃ちだすものである。これは携帯に
便利で、エネルギーパックの換装で即座に弾装交換が可能なためにビームライフルのシステムとして登場する
とすぐに普及することになる。
そして、もう一方の運用方法は、メガコンデンサーに電力を蓄え、それを用いて撃ちだすためのメガ粒子を
生成して撃つ、というものである。こちらは前者のようにライフルとしては扱えず汎用性にはかけるものの威
力の面では申し分なく、基本的には艦船のメガ粒子砲や大型のモビルアーマーの固有武装として扱われるケー
スが多い。
なお、メガ粒子を応用した兵器には他にビームサーベルとビームシールドが存在している。これはともに原
理は同じで、発振したメガ粒子をIフィールドで固定することで形を与える、というものだ。サーベルであれ
ば錐状に作り上げたIフィールドを。シールドならば幕状のIフィールドを制御する必要がある。
こうしたフィールド制御技術はきわめて困難であったらしく、サーベルはともかく、実用レベルのビームシ
ールドの登場はUC0120年代になるまで待たなければならなかった。
ミノフスキーフライト・クラフト
この二つの装置は基本的に同様の原理によって運用されるものである。その作用は散布されているミノフスキ
ー粒子を利用して立方格子上の力場を形成する。その力場はすぐに霧散するため、それを再構成する、という作
業を繰り返すことで、その力場が形成される際に生じる斥力を利用して自重を相殺して浮遊する、というシステ
ムである。
なお、ミノフスキークラフトとフライトの違いは、クラフトは自身でミノフスキー粒子を散布しながら浮遊す
るものであるのに比べ、フライトはすでに散布されているものを利用する、というものである。
ミノフスキードライブ
ミノフスキードライブとはユニット内部で形成したミノフスキー粒子を利用して発生させた力場同士を干渉さ
せ、ミノフスキーフィールドが持つ同じ電荷による反発する性質を推進力として利用する機関である。このシス
テムは駆動するのに電力だけですむという特徴があり、そのため推進剤を一切必要としないのである。故に、理
論上は無限の加速を得ることが出来る。
この特性から、はじめはヘリウム3の輸送を行う木星開発公団の艦船がこのユニットを長距離用の推進機関と
して実用化した。遠距離を巨大な積荷を持って航行する木星船団にとって、大量に積み込まねばならない推進剤
はむやみに重量を増す結果となり積荷を制限することもあり、非常に厄介であったので、推進剤を大幅に削減で
きるようになったこのシステムは積荷を多く詰めるようになったこと。航行にかかる費用を削減できること。加
速、減速が楽になることによる航行にかかる時間の大幅な短縮など、とてつもないメリットが存在していたため
である。
その後、その特性に着目したクロスボーン・バンガードがミノフスキードライブをはじめから組み込んだマザ
ー・バンガード級を開発。それによって軍用艦船でのこのシステムの有効性が確認されたため、UC0150年代には
ザンスカール系の艦船ははじめから設計に組み込まれているし、連邦系の艦船にも後付のユニットとして組み込
まれることとなった。これにより、航宙艦でありながら重力下においてもミノフスキークラフトなどを用いるこ
となく浮遊力を確保し、同時に推進力を得ることとなった。つまり、ミノフスキードライブの搭載によって全て
の艦船が大気圏における行動力をも同時に得られることとなったわけである。これは、この時代標準装備となっ
たビームシールドとあわせることによって大気圏再突入、離脱能力を得ることが出来たことを意味し、活動半径
が爆発的に伸びたのである。
このように艦船用に生み出されたミノフスキードライブであるが、ユニット内部のIフィールド内に封じ込め
た力場をうまく制御すれば、推進力を任意に操作できることも確認されていた。故に、モビルスーツに搭載する
ことが出来れば メインスラスターとアポジモーターの機能を単独で完全にかねることが出来、さらにジェネレ
ーターへの負荷が従来の熱核プラズマロケットとは比較にならないほど軽いためモビルスーツの推進システムと
しては最良のものであった。
なお、副次作用として慣性緩和の機能もあり、それもモビルスーツの推進機関としてより向いているといえる
だろう。
ただし、この時代においてなお、Iフィールドによるミノフスキーフィールドの封じ込めというハード的な技
術や戦闘機動用の力場のコントロールプログラムの開発などの面でこのユニットの小型化は難しく、いまだ実
用化はされていないようである。
モビルスーツ
宇宙世紀における人型兵器。モビルスーツとは、戦術汎用宇宙機器の略語でミノフスキー粒子の散布によるレ
ーダーの無効化、および誘導兵器の仕様不可という状況を作り上げたジオン公国が、その独立戦争時において(
UC0079〜0080)実用化した人型兵器をさす。
ジオン独立戦争後、この兵器は戦争の主役となり、作品の時間軸(UC0153)時にも戦場の主役として使
用されている。
その特徴は有視界戦闘がメインになっているというところから、戦術的には接近して攻撃を加えるという移
動砲台としての役割を果たす。ビームライフルの登場によって、その火力は大幅に増し一時は攻撃力などに特
化する、恐竜的進化を遂げるも、その後小型、高出力化した新世代型モビルスーツに取って代わられることに
なる。その際、ビームシールドの登場によって、遠距離からのビームの撃ちあいが決定打にならず、接近戦闘
をも修めなくてはならなくなり、パイロットにかかる負担は増したといえる。
なお、モビルスーツの機動にはアポジモーターと呼ばれる、機体各所に備え付けられている姿勢制御用バー
ニアを利用することと、AMBACと呼ばれる、機体の四肢を動かすことによって重心の移動を行い、それに
よって姿勢制御する、という二つの方法を組み合わせて行われることになる。これらによって、モビルスーツ
は従来の宇宙戦闘機などよりも小回りのきく運動能力を身につけ、さらに手持ち火器というアイデアによって
高い攻撃力と汎用性を確保し、戦場の主役を手にしたのである。
ニュータイプ
かつてジオン・ダイクンが提唱した宇宙に住むようになった人類が、その環境に適応した結果、なるであろ
うと予言された新人類。一年戦争においてRX−78−2ガンダムのパイロットであった英雄、アムロ・レイ
がもっとも有名なニュータイプである。
彼が語ることによると、ニュータイプとは超能力者ではなく、人がすべて潜在的に持つ能力を開放しただけ
の洞察力と拡大した認識能力を持ち、誤解なく人と分かり合える人種であるらしい。
しかし、戦場において驚異的な適正を示したアムロという青年の能力から、ニュータイプは戦闘に特化した
人種であるという誤解が固定観念として定着し、各政府機関によって「ニュータイプ研究所」が開設され、そ
れは多くの悲劇を生み出すこととなった。
なお。UC150年代における「ニュータイプ」の認識としては、ほとんど与太話の存在としての認識であるか、
異様なまでのパイロット適性を持つ人種、程度の認識でしかなく、ジオン・ダイクンの提唱した新人類として
の概念はほぼ忘れ去られているといっていいようだ。
サイコミュ
正式名称をサイコ・コミュニケーターという。
ニュータイプが独自に持つ精神波を読み取り、それをコンピューター言語に変換し、さらにミノフスキー粒
子を伝播して伝わる特殊な情報を発信する機能を持つ機械。この作用を利用して、機械と人との垣根を極力減
らそうという試みと、ミノフスキー粒子下における誘導兵器の実用化を実現した。
なお、サイコミュは人の意思を機械に伝える作用と、逆に機械が入手したデータを精神波に還元し、それを
人に伝えることも可能である。その相互作用を使うことによって、ニュータイプパイロットが乗るサイコミュ
搭載型モビルスーツは通常では知覚できないような遠距離の敵を把握したり、圧倒的な機体の追従性を発揮し、
通常型のモビルスーツを寄せ付けない性能を発揮した。
が、第二次ネオジオン抗争終了後。大規模に行われた軍縮と大きな戦乱の集結が、こうしたコストがかかる
割りに扱い手が少ない上に応用性が低い実りの少ない技術を廃れさせることになり、一時期。サイコミュとい
う機械は表舞台から姿をけすことになる。
その後、サナリィが開発したバイオ・コンピューターが普及することで一般兵用のモビルスーツの追従性が
向上したことによって、「ニュータイプ」にしか扱えないこのデバイスはさらに衰退することとなった。
バイオ・コンピューター
元々はサイコミュから発展した身障害者の義肢、義眼などの人工臓器の補佐のために考案されたシステムで、
それが後に兵器に転用されたデバイスである。
モビルスーツへの実用システムとしてはサナリィが開発し、UC123年にモビスルーツF91に搭載した新型のコ
ンピューターシステム。このデバイスは、超高速で動作する並列プロセッサは生物の脳に似た構造を持ち、パ
イロットの思考を推測、補完して戦闘機動中の補佐を行うことが可能となっている。
このシステムに、かつては準サイコミュと呼ばれていたバイオ・センサーを組み合わせて(バイオ・センサ
ーはパイロットの精神波を読み取り、機体の追従性を高める効果があった)コックピット周りにかつてRX-93
νガンダムに搭載されていたサイコ・フレーム(素材たる金属内部に金属粒子波のサイズのサイコミュ・チッ
プを鋳込んだフレーム)を装備し、連結することでパイロットとモビルスーツを同期させて極めて追従性が高
くなった。これはいわば、モビルスーツのほうを人に近づけた、と言うことが出来るだろう。そして、このバ
イオ・コンピューターはその思考の読み取るシステムにサイコミュ的デバイスを用いているため、その真価を
発揮できるのはやはり「ニュータイプ」と呼ばれる人種であったようである。それ以外の一般人に対しては機
能に制限を加える効果があるものの、それでも従来のモビルスーツの操作性とは比較にならないほどにパイロ
ットへと与える負荷が軽減され、高度な追従性を実現することとなった。
この装備を使えば、理論上はモニターなどの設備も不要で思考だけでモビルスーツを完全制御可能であるが、
実際にはパイロット自身の肉体的感覚などもあるため、モビルスーツ側からのデータを常にフィードバックし
続けていることのストレスにパイロット自身が耐えられないので、バイオ・コンピューター側からデータを絞
り込み、センサーが捕らえた敵機の反応などをパイロットに教える、などといったふうにデータを限定するこ
とで扱いやすくした。操縦系統に関しても同様で、それこそ手足のように扱うことも出来るが、やはり肉体と
モビルスーツという二重感覚によるストレスに関する問題からそれは見送られ、結果として発達したプログラ
ムによるセミオートによる制御が一般的なようである。
なお、この装備はベスパのモビルスーツ。ゾロアットなどに標準で装備されているため、戦闘機動用の補助
プログラムの優秀さもあり、短い訓練機関で素人のパイロットに一人前の腕前にすることが可能となった。人
的資源の少ないザンスカール帝国が圧倒的な軍事力を獲得できたのも、このバイオ・コンピューターの量産、
モビルスーツへの装備を可能としたことにあげられるだろう。
なお、同装備はリガ・ミリティアも採用しており、LM111E02やLM312V04。それ以外にも後発のすべてのモビ
ルスーツに搭載されている。そのこともあってこれらの機体はザンスカール製モビルスーツに対抗できたと言
うことも出来るだろう。
スペースコロニー
月と地球の重力の干渉によって安定している、ラグランジュ・ポイント。複数あるそのポイントの周囲を巡
る、7つのサイドと呼ばれる集団を構成する、人が住まう人工の大地をさす。
全長三十キロメートルを越える円筒形のシリンダーの中に、一気圧の空気を充填し、回転することで一Gの
人工重力を生み出す人類最大級の建造物。一基あたり、大体一千万人が住むことが可能であり、その管理は基
本的にコロニー公社と呼ばれるNGOの手によって行われている。
地球連邦政府
月のフォン・ブラウン市に本拠を持つ地球圏全土に影響力を持つ一大政府組織。なのだが、基本的に連邦政
府というのは宇宙移民のために生み出された暫定的な政府組織であったこともあるし、何よりも現在各コロニ
ー郡が自治を獲得し、それぞれに独立してしまった今、地球連邦政府はもはやすべての意見をまとめることが
出来なくなり、ほとんど形だけの存在に成り果ててしまっている。
だが、政府が保有する地球連邦軍は今なお地球圏最大の軍事組織であり、すべての組織が無視できない存在
でもある。