終わらない明日へ・・・



 

by ACE






 

第三話 崩壊の大地 〜激動〜




 

『ユリカァァァ!!!』
 アキトの窮地を救ったのは、純白の戦艦だった。

 突如現れた戦艦にアキトは何か安堵感を覚えた。
 「あれは味方なんですか?ユリカさん」
 通信でユリカに尋ねてみるアキト。戦艦から名指しされたユリカとはほぼ間違いなく彼女であろう。
 しかし、油断はならぬ。十中八九あれは味方に違いないが、状況が状況なだけにアキトは多少人間不信に陥っていた。

 『はい、あれは間違いなく味方ですよ、アキトくん。』
 ユリカの元気な声が返ってくる。

 『そこの機動兵器のパイロット!貴行の所属と名前を聞かせて貰おう。』
 ユリカとう通信に割って入って、別の通信が入る。通信源はどうやらあの純白の戦艦のようだ。
 通信の相手は女顔の男だった。
 しかし、彼のアキトを見る視線に嫉妬のようなものが混じっているように思えるのは気のせいだろうか?
 ここでなんと応えるべきかアキトは悩む。

 「ええ、こちらテンカワアキト。民間人ッス」
 実に端的な回答だった。まあ、彼は軍属ではないのでこれぐらいしか言えることがないのだが。
 これを聞くと画面の向こう側の女面男(仮称)の表情が見てて面白いように変わった。

 『な、ななな、なんで民間人がそれにぃぃぃ?!』
 彼の驚きも当然のことだろう。

 『君っ、危ないからそれから降りなさい!!!』
 「じょ、冗談キツイですよ!ここでこれから降りたらみんな死んじまうじゃないですか!」
 アキトは女面男の冷静さを欠いた発言に激怒する。
 『み、みんな?あ、そういえばユリカは?!索敵班!ユリカの反応を探し出せぇ!!!』
 一応、通信は繋がっているが、女面男の興味はユリカの安否に向いていて、アキトのことはアウトオブ眼中(注:作者はこれが死語だとしっかりと認識しています)だった。





 そんな馬鹿なことをしている合間、何故北辰は攻撃してこなかったのか?単なる作者のご都合主義?そんなことは断じてない。

 北辰がアキトの隙を突こうとする瞬間、遂に「瞬神の飛燕」が動いた。
 「むぅ!」
 北辰の表情が歪む。
 「・・・このエステバリス、貴様に討たせはしない。」





 アキトは気付く。
 今自分がいるのが戦場だということを・・・そして、背筋が凍る。

 何故この隙に攻撃してこない?

 そんな疑問はすぐに消え去った。
 アキトの目の前では、漆黒のデルフィニウムと朱色のマジンが壮絶な戦いを繰り広げていたのだ。
 それは先程の戦いとはまるで格の違う戦いだった。





 漆黒のデルフィニウムは、そのシャトルのように長い機体の限界を超えた機動力で朱色のマジンの攻撃を避ける。
 マジンの腕からはミサイルが間髪入れず発射されている。
 その無数の弾を掠ることなく華麗に避けていた。
 最中、回避から攻撃に移るときもあった。
 しかし、その攻撃もマジンには当たらない。
 客観的に見れば、マジンが圧倒しているように見えるが、アキトには双方の実力がほぼ同じに見えた。

 膠着状態を破ったのはデルフィニウムの方だった。それはマジンの弾切れの瞬間と一致している。

 バーニアを噴出口が焼ききれるほどに噴き、最大速度でマジンに接近。
 そして、そのまま突撃する。
 デルフィニウムには無論ディストーションフィールドは装備されていない。
 これがフィールドを装備しているエステバリスならば、敵に大ダメージを与えた上自機の損傷は皆無であったであろう。
 だが、そのフィールドがないため、この突撃は諸刃の剣であった。

 両機体共に装甲は見るも無残に拉げ、数刻の沈黙が続いた。





 「ヒエン大尉!応答してください、ヒエン大尉!!!」

 デルフィニウムとマジンが激戦をしている最中に、エステバリスは純白の戦艦に収容されていた。
 ヒエン大尉とは漆黒のデルフィニウムのパイロットらしい。

 エステバリスからアキトが降りると、整備班と見られる人々の視線を集めていた。

 「おい、あんな子供がエステ動かしてたのか?」
 信じられないのも仕方あるまい。
 それなりに腕のよいパイロットでも墜とすことのできないジンシリーズを二機も相手にして無事なのだから。

 漆黒のデルフィニウムが収容され、コックピットから漆黒のパイロットスーツに身を包み、バイザーをつけた男が降りてきた。
 「大丈夫ですか?!ヒエン大尉!」
 ユリカがその男に近寄り、声を掛けている。
 男がヘルメットを外すと、アキトと同じ栗色の髪をした頭から血を流しているのが見えた。
 「ミスマル大尉、俺は大丈夫だ。それより、そこの坊主・・・」
 突然指名され、めいっぱい動揺するアキト。
 「そうだ、お前だ。」
 冷たい声で返す男。アキトは嫌な予感がした。
 「お前・・・コーディネイターだろ?」
 アキトの予感は的中した。途端に周囲がざわつく。
 「いきなりの実践で何の訓練も受けていない素人がテツジンを落とせるわけがない。少なくとも、ナチュラルにはな。」

 一番知られたくないことの核心を突かれたアキト。周囲からの視線に殺意が混じるのがわかる。

 そんな場の気不味さを作り出した張本人がまた口を開く。
 「コーディネイターは地球軍の敵。これが軍の常識だが、君はどうなのかな?」
 アキトは数刻おいて返答する。
 「少なくとも、今あなた方を敵だとは思っていませんし、僕はZAFT軍の人間じゃありませんよ」
 そこへ意外な支援者が口を挟む。
 「そーですよ。アキトくんは私を守ってくれたんだから、悪い人なわけありません!!!」
 ユリカだった。頬膨らませ、男をまっすぐと見るユリカ。
 多少の妄想を含んでるにせよ、結果的にユリカを守ったアキトに、周囲の人間から殺意が消えた。

 ドゴゥン!

 一段落したその場に衝撃が走る。攻撃を受けているのは明白である。
 すると、ユリカの目の前にウインドウが開く。
 『ユリカ!今すぐブリッジに来てくれ!今指揮が取れるのは君しか居ないんだ!!!』
 きょとんとするユリカ。
 『フクベ艦長は戦死されたよ・・・』
 「!!!」
 一同に、先程とは異なった種類の衝撃が走る。

 「ミスマル大尉!何を呆けている。ブリッジへ急げ!!!」
 感傷などまったく感じていないのだろうか?男はユリカを怒鳴る。
 そんな怒鳴り声に押され、ユリカはブリッジへと向かった。

 「さて、コーディネイターの坊主・・・」
 「テンカワ、アキト」

 そうアキトが言うと、男はわずかに表情を崩したように見えた。

 「そうか、悪かったなアキト君?で、君はもう一度エステに乗らなくてはいけない。」
 「わかっていますよ、それくらい・・・」
 アキトはどこか割り切っていた。しかし、彼にはまだ人を殺しているという自覚はなかった。



 『アキト君、出番だ。』
 男の声が掛かったとき、アキトは先程激戦が繰り広げられていた場所に目をやる。
 朱色のマジンの姿はそこにはなかった。
 レーダーは接近するジンシリーズが数個の点となって表示している。
 「わかりました!その代わり、僕の友人の収容をお願いします!」
 すっかり忘れられていたガイ達だが、流石にこれ以上外にいては本格的に危険なため、収容を要求したアキト。
 男はそれを許可した。



 エステバリスは再度戦場に出る。
 先程までのエステバリスと若干の違いが見られた。
 白を基調とした機体の肩とバックパックに深緑の重武装が施されている。

 上空に目をやると朱色のマジンが一機、重武装のテツジンが二機。
 アキトはすぐさまバックパックに装備されている320mm超高速インパルス砲アグニを構え、今まさに大型ミサイルを発射しようとしているテツジンに照準をセットし、トリガーを引いた。
 銃口が発せられた赤い閃光はテツジンを貫き、コロニーの壁に接触した。
 テツジンは勿論のこと爆散した。ここまではアキトの想定の範囲内だった。だが、あまりにも意外なことが起きた。
 テツジンを貫いた赤い閃光は尚も威力を衰えず、コロニーの壁に接触し・・・・・・コロニーに大穴を開けたのだった。

 誰も予測しえなかった事態に、その場に居合わせた全ての人間―連合、ZAFTを問わず―が恐怖した。
 いや、たった一人例外がいる。北辰だ。

 「くっくっくっ、これは面白い・・・」
 マジンのコックピット内で北辰は嗤っていた。

 これがきっかけとなり、ヘリオポリスは本格的な崩壊を始めたのであった。
 それは同時に、偽りの平和が完全に崩れさったということでもあった・・・・・





 『アキトォォォ!!!』
 呆けているアキトを現実の世界に引き戻したのはこの声だった。
 声のする方を見ると懐かしい顔がモニターに映っていた。親友九十九の顔が・・・

 二人は過去に同じにコロニーに住んでいた頃があった。
 家は隣合わせで成長を共にした親友だった。共に、笑い、泣き、いつも一緒に遊んだ二人。
 悲しきかな、そんな二人にも別れがあった。
 プラント、地球間の緊張が高まる中で、プラントではコロニーの移動がさほど珍しくなかったからだ。
 しかし、そのとき彼らはそれが別れになるとは思ってはいなかった。

 「アキト・・・何もこれが懇情の別れになるわけじゃぁない。いつかまたきっと会える。」
 「九十九・・・」
 「また再会できる。絶対にな。だから、それまでこれを預かっていてくれ。」

 再会を誓う二人。そんな中九十九がアキトに差し出したものは・・・・・
 掌に乗るほどの、バッタ(注:虫型戦闘兵器。ただし、この世界では戦闘兵器ではない。九十九オリジナル。)であった。
 ほかに何かなかったのか?九十九・・・

 しかし、そんな異形な贈り物をアキトはにこやにで受け取ったのであった。

 そう、それは過去の話。現在とは違う。

 戦争とは実に皮肉なものである。親友である彼らをこのように再会させるとは・・・
 互いに動揺は隠せない。
 赤いエステバリスと白いエステバリスが対峙する。
 ヘリオポリスの崩壊は続いており、あちこちで大地に亀裂の走る音が聞こえる。
 そして、周囲でなお行われている戦闘が決定的な致命傷となり、ヘリオポリスは完全に崩壊しようとしていた。





 あとがき

 なんか種原作とだいぶ違ってしまいましたね・・・
 種そのままを期待されていた方には悪いですが、種原作のままであるとキャラに合いません。
 僕はナデシコのキャラを重視したいので、ストーリーよりもキャラに忠実に書いていきます。
 ではでは、今後も読んでいただけるのならば・・・・・・・乞うご期待!!!




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代理人の感想

そりゃまあ、これだけ好き放題やってればねぇw(褒め言葉)>原作と大分違う

後、話自体は面白いのですが文章がイマイチ練れてない罠。

「だった」「した」とか、完了形がちょっと多すぎますね。