なんてったってアイドル最終回
あの戦いから8年。
「銀河、僕はスバルの所に行っているからね!」
「おお!分かった!!」
電童のコクピットから降りた北斗は、そう言うと駆け出していった。
まるで、これから起こる事を邪魔しない様に。
「ほら、ここがアルクトスだよ」
銀河はコクピットの中にいる人に向けて手を差し伸べる。
「うわ〜〜〜、すご〜〜〜い!」
そしてコクピットから出て来るのは、ユキ。
始めてみるアルクトスの自然に圧倒されながら、ユキは銀河の腕に捕まって、一緒に大地に下りていった。
心地よい風に揺られるアルクトスの草原に立つと、ユキは心の底から嬉しそうに駆け出す。
「あははは!すっご〜〜〜〜〜い!こんなに広い草原があるなんて〜〜〜〜〜!」
腕を広げながらターンをするユキ。
白いロングスカートがその弾みにゆれ、裾が広がる
「空も、こ〜〜〜んなに高くて蒼くって、きれ〜〜〜〜〜い!」
その光景を嬉しそうに眺める銀河。
普段忙しい彼女の貴重なオフに、ここへ連れてきたのは正解だったな、と思いながら、
はしゃぐ彼女に近づいて行った。
「気に入ってくれた、ユキちゃん?」
「うん!!つれてきてくれてありがとう、銀河君!!」
「へへへ、、、」
銀河の顔を覗き込むように言うユキ。そして少し照れながら、ユキの隣に並ぶ銀河。
風に揺られる髪を、片手で軽く抑えながら彼女は、隣の銀河を覗き込みながら、尋ねる。
「、、、ここが、銀河君たちが戦った所なんだね、、、」
「うん、、、最後に戦った所だよ。実はさ、今だから言うけど、、、実際は結構やばかったんだ、、、」
「え?」
そんな話はこの8年間付き合っていながら、聞いていなかったので驚くユキ。
だが銀河は、そのまま一気にしゃべり続けた。
「北斗とは、はぐれちまうし、『ゼロ』って奴がすんげ〜強くてさ。もうヤバイと思った、、、」
「、、、」
木星軌道上での事、衛星攻略時の事、アルクトス最深部での事。
すべてを包み隠さず、淡々と彼女に話す。
そして彼女も、静かに彼の話に聞き入っていた。
「でも、俺は北斗を信じた。それに地球には待っている人たちがいるから、、、負けられない、、、てね」
「銀河君、、、」
「ごめん!、今まで嘘ついてて、、、」
ユキに向かって頭を下げる銀河。
だが彼女はそんな彼に、やさしく声をかける。
「ねえ、なんで今まで黙っていたの?なんで教えてくれたの??」
「、、、始めは、あんま格好悪い所話したくなかった、てのがあったけど、、、」
「『あったけど』?」
「時間が経つうちに、『本当の事、話したら心配する』と思って、今まで言えなかったんだ、、、」
「銀河君、、、」
「でも、いつまでも黙っているのは、良くないと思ったんだ。それで、、、」
「ありがとう銀河君。また、私の事を思ってだったんだね」
銀河のやさしさに触れ、瞳にうっすらと涙をためるユキ。
「でもね、ゆるしてあ〜〜〜げない!」
「いぃっ!ご、ごめん!ユキちゃん!!この通り!!!」
そう言うと銀河に背を向けるユキ。なぜか背中が少し震えている。
銀河は彼女のその態度にあせり、慌てて頭を下げ、あやまる。
「ふ〜〜〜んだ」
「何でも言う事聞くから!!」
だがユキは後ろを向いたまま、どこか甘えた口調で、言う。
だが銀河はそのような事には気付かず、必死になってあやまる。
「ふふふ!じゃあ、何聞いてもらおうかな〜〜〜」
そう言うと笑みを浮かべた顔で銀河の方に振り返り、なにやら考え出す。
「、、、へ?、、、あ、、、あの、、、ユキちゃん?」
「う〜〜〜んと、そうだ!」
突然の変わり身に、脱力する銀河。
だが彼女はそんな事にはかまわず、『お願い』を考え思いつく。
「今度はミキやサキもつれて、ここに来たいな」
「え、でも、、、」
「大丈夫!草薙君の方に、二人には一緒に乗ってもらえば、ね!」
「、、、ああ、分かった!まっ、アイツもいい思いができるから、文句は言わねえだろうし」
「ありがとう、銀河君!」
そう言うと銀河の腕に飛びつき、胸元で抱きしめるユキ。
そしてそのまま、頬にキスをする。
「い、いや、、、そ、、、そんな、、、」
銀河はただ、顔を赤くして照れるだけであった。
「うっほん!あ、あのさ、、、俺からも、お願いって言うか、、、その、、、」
空を見上げながら顔を赤くし、視線を落ち着き無く動かしだす銀河。
「???」
そんな彼の様子を見て首をかしげるユキ。
しばらくそのような光景が続いたが、エリアス(実体)化したレオたちに応援されて、彼は意を決して話し掛けた。
「そ、、、その、、、ユキちゃん!」
「は、はい!」
緊張した銀河につられ、ユキも緊張して、背筋を伸ばす。
「電童で戦う時、俺は北斗をパートナーとして、信頼している!」
「う、うん」
「アイツを信頼して、俺はアイツと一緒に戦った。つらい時、やめたいときもあった」
「、、、」
「でも、二人だから、あの苦しい戦いも勝てたんだ」
「うん」
「俺の戦闘時のパートナーは北斗だ。北斗と二人で、力を合わせて敵と戦う」
「うん」
で、、、その、、、ユキちゃんには、そのさ、、、せ、、、せ、、、」
ドモリながらズボンのポケットから、手のひらに載る程度の箱を取り出し、彼女の前にふたを開けて差し出す。
そこには銀色に輝く指輪が収まっていた。
そして顔を耳まで真っ赤にしながら、彼は清水の舞台から飛び降りる覚悟で続けた。
「俺の生活のパートナーになってください!!」
「!!!!!そ、、、それって、、、」
「そ、、、その、、、突然だって事は分かってるんだ!でも、その、、、」
銀河の言葉を聞き、驚くユキ。そして、不安に駆られながらも、出した手をそのままにする銀河。
その銀河の手から、彼女は指輪をとり、自分の『左手の薬指』にはめる。
「!!!ユキちゃん!!!」
「私、銀河君の良いパートナーになれるようにがんばるね、草薙君に負けないパートナーになれるように。
だから、、、これからもよろしくお願いします、銀河君」
お互いに近づき、抱きあう二人。
そして、一つに重なる影
彼らは結ばれる。大地と、風と、D・W達の祝福をその身に受けながら。
「でも、、、いいの?銀河君???」
「かあちゃんと、とうちゃんは、『お前のやりたいようにしな』って言ってくれたし、
乙女も『ユキちゃんならかまわない』って言っている。それよりもユキちゃんの所に挨拶に行かないと」
「うん、一緒に行こうね!」
「ああ!」
おまけ
「ふう、銀河の奴やっと言えたみたいだね」
『ムガ〜〜〜〜!!(ちょっと、ほどきなさいよ!!)』
「そうだな、幸せそうだな、アイツ」
『フガフガ〜〜〜〜〜!!!(人の話を聞け〜〜〜〜!!!)』
衛星軌道のカメラを使って覗いていた二人と、GEAR本部に転がっているイモムシ。
「さ〜〜てと、そろそろ二人の所に行っても大丈夫かな?じゃあ、僕帰るねスバル」
「ああ、分かった。また暇な時にでも来てくれ」
「うん、またくるね」
『フッガ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!(いいかげんにしろ)』
その時、雄たけびを上げるイモムシ。もとい、、、
「あっ、そうだ。もう少しエリスを抑えるのに、3チップス貸しといてね」
「ああ、それは良いが、、、何時までああしておく気だ?」
「う〜〜ん、できれば、、、二人の結婚式が終わるまで、ああして置きたいんだけど、、、」
「さすがにそれは、、、ヤバイだろ、、、」
そう言ってスバルが目をやったモニターには、簀巻きの上に猿轡をされ、じたばたと暴れるエリスを、
必死になって押さえつける3チップスが写っていた。
『だ〜〜〜!もう、凶暴すぎるダワさ!』
『いたた!蹴るなんてひどいジャン!!!』
『まったく、だから振られるバリ!!!』
『フンガーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!(あんですってーーーーーーー!!!!!)』
まるで暴走したE○Aかジャ○ウォックの様に暴れ出そうとするエリスだが縛ってある紐は、
ベガ愛用の鞭の予備を使用してあるので切れるはずも無く、ただ無駄にもがくだけだった。
『ほらエリスちゃん、男は銀河君だけじゃないんだから、ね?!』
『でも、この凶暴女に』
『絶えられる男なんて』
『この世の中に』
『『『いる分けない(ジャン)(バリ)(ダワ)!!!』』』
『!!!!!!!!!!!』
織絵の説得は、3チップスの一言により失敗。
その後、本格的に暴れ出した怪獣により、本部機能の一部に支障が発生したと言う。